著者
藤井美優
雑誌
サイエンスキャッスル2018
巻号頁・発行日
2018-11-21

<考察・展望>仮説ではエノキと同様に明所条件が色素形成には良いと考えていたがまったく逆の結果となった。ジャガイモ抽出液及びショ糖共に添加量の多い処理区で良好な結果となったため、さらに高い濃度の処理区を設け再度実験を行いたい。菌糸が液体培地の表面のみで生育していることから、幅が広い培養器に薄く培養液を入れ効率化を図りたい。熱に弱い色素があると解ことから、酸抽出法で他のキノコはどのように発色するのか調べてみたい。
著者
山田 俊弘
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

日本地球惑星科学連合の英語表記は Japan Geoscience Union となっており,Geo (地球)関連学会の連合組織であることを示唆している.言い方をかえれば earth science のことであるが,これは戦後発足した地学教育の「地学」earth sciences に通じる.「地学」には天文分野も含まれており,ある意味では現在の「地球惑星科学」に近い内容だからである.しかしこうした領域設定がどのような背景で1940年代の時点で出て来たのか必ずしも十分に説明されていない.戦後地学教育の成立に主導的な役割を果たした地質学者の一人小林貞一 (1901–1996) の足跡を追うことによってこの問いに答えられないか検討してみたい.​ 小林が1942年に公にした地学教育の振興策についての論考ではすでに「地学を地球を対象とする諸学の総称と解するのが最も適切であろう」として,地球を宇宙の一天体として見る天文学や,固体地球物理学,海洋学,気象学まで含めていた (小林 1942: 1474).戦後になるとその主張は明確化し,「地学」とは「地球の科学 (Earth Sciences) の事である」として,古今書院の地学辞典 (1935) や旧制高校の地学科の内容を例に,地質学を主体としつつ地球物理や測地,地球化学,天文気象,気候,海洋,湖沼等を含めた分野と定義した (小林 1946 : 17).同じ時期に地学教育を推進した藤本治義 (1897–1982) が地質学鉱物学を中心に「地学」を考えていたことをみれば,小林の認識の新しさがわかる.​ このような小林のある種の確信に満ちた主張の背景には1930年代までに知られるようになってきた宇宙の進化や太陽系の形成についての諸説があったと考えられる.​ たとえば天文学者の一戸直蔵 (1878–1920) が翻訳したアレニウス (Svante August Arrhenius, 1859–1927) の関係書は,『宇宙開闢論史』(小川清彦と共訳)(1912年),『宇宙発展論』 (1914年),『最近の宇宙観』 (1920年) と出版されていた.一方,京都帝大で宇宙物理学の分野を開拓した新城新蔵 (1873–1938) の天文関係書には,『宇宙進化論』 (1916年),『天文大観』 (1919年),『最新宇宙進化論十講』 (1925年),『宇宙大観』 (1927年) などがある.またハッブル (Edwin Powell Hubble, 1889–1953) の The Realm of the Nebulae が『星雲の宇宙』として翻訳されたのは1937年のことだった(相田八之助訳、恒星社).​ 小林が京都時代に新城の一般向けの講演を聞いたかどうかわからないが,1930年代にアメリカで在外研究をした際に,ヨーロッパを含む多くの博物館を見学したことも考慮に入れると,このころまでの地球像の提示が宇宙や太陽系の生成を含むものになっていたことを実感していたことが彼のジオサイエンス観の背景にあったと推測されるのである.引用文献小林貞一 1942: 地学の特質と教育方針, 地理学, 10, 1473-1494.小林貞一 1946: 地学とは何ぞや, 地球の科学, 1-1, 17–19.
著者
髙木智子 松本修治 横田健一 阿部雅弘
雑誌
コンクリート工学年次大会2023(九州)
巻号頁・発行日
2023-06-16

コンクリートの高所への場内運搬において,圧送行った場合と,バケットを用いた場合のコンクリートの品質変化を比較する目的で,施工中の斜張橋主塔を対象に運搬前後のスランプ,空気量,圧縮強度試験を実施した。また,品質変化が耐凍害性に与える影響として,気泡径分布とスケーリング量を測定した。その結果,コンクリートポンプにより圧送した場合,スランプが低下したことに加え,空気量は増加し圧縮強度が低下した。一方,バケットにより運搬した場合,品質変化は確認されなかった。スケーリング試験の結果,打込み方法によらず場内運搬後のコンクリートが良好な耐凍害性を有していることが確認された。
著者
田中 敦子 坂本 靖英 眞弓 大介 東野 晴行 坂田 将 中尾 信典
雑誌
日本地球惑星科学連合2015年大会
巻号頁・発行日
2015-05-01

化石燃料をエネルギー源とする発電所で燃焼によって発生するCO2や、天然ガス・石油等の精製所から精製の工程で発生するCO2を処理する手段として、CO2地中貯留技術が期待されている。CO2地中貯留技術は、臨界状態の密度の高いCO2を地中に隔離するため、大量のCO2の固定が可能である。CO2地中貯留の対象とされる地層は主にかん水層や枯渇したガス油田である。 CO2地中貯留(CCS)の重要な候補サイトの一つとなっている枯渇油ガス田には、未回収の原油が半分以上残されている。近年眞弓らは、油ガス貯留層内に自然に存在する嫌気性の特定の微生物のメタン生成能力が、CO2分圧の上昇によって活性化されることを見出した 。これは枯渇油ガス田を対象としたCCSサイトにおける、原位置での天然ガス資源創成の可能性を示唆するものと言える。 このような地下環境における微生物活動を考慮した新たな資源創成型のCCS技術を確立するためには、まず、微生物によるメタン生産量とCO2固定量をはじめとする諸元の定量的に評価して便益を把握する必要がある。 我々は、微生物活動を考慮した新たな資源創成型のCCS技術の基本的な便益を明らかにすることを目標に、地層モデルに地下微生物の働きを組み込み、CCSプロセスにおける地層モデルの挙動とメタン産出量の評価を行うとともに、CO2地中貯留にかかわるサイト周辺の環境インパクト評価および産業安全面のリスクアセスメントを進めている。CO2地中貯留サイトの地下の貯留層・地表・注入井坑口周辺の大気環境をとりあげて、CO2漏洩のリスクの評価を進めるとともに、CO2地中貯留リスク評価プログラムを開発中である。本報告ではこれらの取り組みの中から、とりわけサイト周辺のリスク評価について報告する。
著者
星 博幸
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

Geological and paleomagnetic data suggest that the Japan Sea backarc basin has a two-phase opening history. The first phase may have been relatively slow opening that began in the Eocene or early Oligocene, and the second phase was relatively fast opening occurring in the early Miocene. Paleomagnetic data reported from the Japan arc over the past 40 years show that the second phase was accompanied by differential arc rotation, namely, clockwise rotation of the southwestern lithospheric sliver of the arc (SW Japan) and counterclockwise rotation of the northeastern sliver (NE Japan). However, it is uncertain whether the first phase was also accompanied by differential arc rotation. Here, new paleomagnetic data are presented to address this issue. In this study, Paleocene (~60 Ma) andesite dikes were sampled at 17 sites in the Toki-Mizunami area in SW Japan. These dikes vertically or subvertically intrude a late Cretaceous (~70 Ma) granite batholith and comprise an ENE-striking dike swarm. Stepwise demagnetization experiments were performed on all samples for obtaining characteristic remanent magnetization (ChRM) components. As a result, site-mean directions of ChRM components were determined for 14 sites. Thermal demagnetization of natural remanent magnetization (NRM) and isothermal remanent magnetization (IRM) shows that magnetite is the main magnetic carrier. Comparison of the site-mean directions with the anisotropy of magnetic susceptibility (AMS) suggests that the influence of the preferred orientation of magnetic particles upon the site-mean directions is absent or negligible. Although the site-mean directions display a small dispersion, the presence of dual polarities suggests that the dike emplacement extended over a set of normal and reverse polarity chrons. The overall mean direction of the 14 site-means is therefore interpreted to be a time-averaged paleomagnetic direction at ~60 Ma. It is deflected ~57° clockwise of an expected paleomagnetic direction calculated from a late Cretaceous paleomagnetic pole for the North China Block in the Asian continent, and the amount of clockwise deflection is larger than that (~44°) reported for early Miocene sediments in the Toki-Mizunami area. Therefore, small (~10–15°) clockwise rotation occurred in the study area between the Paleocene and the early Miocene. It is likely that this small rotation is associated with the early opening of the Japan Sea.
著者
勝間田 明男 中田 健嗣 藤田 健一 田中 昌之 西宮 隆仁 小林 昭夫 吉田 康宏
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

1998年7月にパプアニューギニアにおいて発生したMw 7.0の地震の後に10mを超える津波が沿岸に押し寄せ、この津波により2,200名を超える犠牲者が出ている(Tappin et al., 2008).この津波は,地震の規模に比べて高すぎること,津波の発生が地震の発生よりも10分ほど遅れているとみられること,海底地形において地すべりを起こしたとみられる場所が確認されていることなどから,海底地すべりが発生源であるとみられている(例えば,Tappin et al., 1999; Synolakis et al., 2002).通常の地震による津波の場合には,地震計で記録される地震波が警戒の最初のトリガとなることが多い.しかし,この1998年のパプアニューギニアのような事例が発生した場合には,地震波から予測される規模の津波には備えるものの,それを超える規模の津波への警戒は通常なされない.もし,海底地すべりが地震計で捉えられるならば,この種の津波に備えることが可能となる.以前の調査(勝間田・他, 2016)に,調査対象の観測点の追加,理論波形の再検討を行ったので報告する. 海底地すべりが発生した地点から900km離れた場所にPMG観測点がある.PMG観測点の地震データをIRISより入手し,0.2秒から50秒までの様々な帯域のフィルターを施して特異な信号有無を確認したが,直前のMw 7.0の地震の後続波の振幅を超える特別な相は確認されなかった.PMG観測点において,海底地すべりに対応した相が確認できないことはSynolakis et al.(2002)によって既に指摘されている.東京大学地震研究所の海半球観測研究センターにPMGよりも更に地すべり地点に近いJAY観測点(約150km)のデータがアーカイブされている.JAY観測点のデータについても確認したが,顕著は相は確認されなかった. Watts et al. (2003)の津波発生源モデルによると,この規模の津波を発生させることができる地すべりは長さ4.5km,幅5km,厚さ760m(半楕円体)の規模のものであった.それが傾斜角12度の下で特性時間32秒の地すべりを起こしたとされる.地すべりが進行している時にはそれまで摩擦力で支えられていた地塊が加速度運動をしていると考えられる.それ以前に地塊を支えていた力が減ずるのでその分の地面に加わる力が変化したと考えられる.その力を,密度(2.15×103kg/m3)×体積(9 km3)×加速度(0.36m/s2)として見積もると7×1012Nとなる.この程度の力が作用したと仮定した場合の理論波形をTakeo (1985)により計算した.震源時間関数として数十秒程度の継続時間のものをいくつか仮定してみた.その結果,理論波形は直前の地震の後続波に比べて同程度以下の振幅にしかならず,理論波形からみても地すべりにる地震波は検知可能レベル未満であると見積もられた(図).海底地すべりによる津波の検知には,沖合い津波計のような別の手段が望まれる.謝辞IRIS及び東京大学地震研究所海半球観測研究センターに保管されていた地震記録を用いた.理論地震波形の計算にTakeo (1985)を用いた.