著者
殷 燕軍
出版者
関東学院大学経済経営研究所
雑誌
関東学院大学経済経営研究所年報 (ISSN:13410407)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.131-150, 2013-03

中国では,11月8日から始まった共産党第十八回代表大会は,2002年に最高指導者となった胡錦濤(Hu Jintao)の替わりに,習近平(XI Jinping)を総書記とする新執行部が選ばれた。また今年の3月に開かれる全国人民代表大会にて国家主席にも選ばれ,名実ともに中国の最高指導者になった。まさに10年一度の世代交代である。2002年胡錦濤氏をはじめとする中国指導部から10年経ったいま,中国の対外政策の変化も見え始めている。本稿は,21世紀最初の10年における胡錦濤体制の対外政策を振り返りつつ,習近平新体制の対外政策を予測してみたい。
著者
田中 翼
出版者
東京芸術大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究の目的は、音楽において個々の作品よりも一段抽象化されたレベルの音楽理論的構造をコンピュータや計算を用いて生成し、新しい音楽スタイルを作り出すことである。25年度の成果は大まかに3つの項目に分けられる。1つ目は、旋法の生成に関するものである。旋法は感情の差異を表現するのに役立つが、その種類は数学的に膨大なため、感情と旋法の良い対応づけを得るのは困難である。そこで私は、固定された実験サンプルを評価する通常の心理実験ではなく、強化学習のアルゴリズムによって実験サンプル自体を評価者に適応変化させていく手法を案出した。そして、4つのタイプの感情をターゲットとした実験において、それらの感情を表現する旋法を得ることができた。この手法は、感情の表現力をもつ音楽スタイルを生み出す研究のプロトタイプとして大きな意義があると考える。2つ目は、旋法の研究から派生的に見いだした「音程スケール」という新しい音楽概念の研究である。これは、使用しうる音程の集合として定義される概念である。旋法や音階と異なり、音高ではなく音程の集合を使用することで、音高の制限がなされない無調音楽において通常の音階のような差異を生み出せる可能性がある。私はどのような音程スケールを選ぶべきか、無調の音楽が生成できる条件は何かなどを数学的に解明した。また、この理論を応用してピアノ作品を制作・発表しその有用性を示した。3つ目は「サウンドファイルの対位法」という私の考案した音楽理論に関係するものである。「サウンドファイルの対位法」とは、録音音源の内容を音響分析し、その情報を元にサウンドファイル断片の適切な同時的、経時的な組み合わせを自動決定する枠組みである。この研究は、コンピュータの探索能力を活かすことで、従来の録音された音素材を耳で聞いて配置する電子音楽の作曲に対して、新たな作曲のあり方の提示を意図するものである。本年度は1年目に構築したシステムを発展させ、使用する音源と音響分析の多様化を行い、美術館で展示を行った。
著者
福田 千紘
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.40, pp.21, 2018

<p>ガラスは古代より装飾品として使用されており各所の遺跡の出土品からも様々な形態の装飾品が報告されている。現在は天然素材を用いた宝飾品が高く評価されるためガラスを用いた装飾品は主にアクセサリーとして流通している場合が多い。 19 世紀頃からは装飾品にするために様々な工夫を凝らした特殊なガラスが製造されていた。本研究では主に 19 世紀から 20 世紀中ごろまでに製造されたいくつかの特殊な外観を呈するガラスについて主に化学組成と特徴を報告する。</p><p>今回入手した試料はそれぞれサフィレット、アイリスグラス、ドラゴンブレスと呼ばれ流通しているガラスである。</p><p>サフィレットは19世紀にチェコで製造され、その後製法が途絶えてしまったが 20 世紀に入ってから旧西ドイツで復刻生産されたと報告されている。主に青色透明で背面に反射膜を有するものと無い物が存在する。強い自然光や人工光下で褐色に見え一見すると変色性のような特徴を持つ。アイリスグラスはアイリスクォーツを模して造られたガラスで無色のガラスに赤、青、緑系の各色ガラスが混入されている。背面には反射膜を有する物と無い物が存在する。ドラゴンブレスは主に赤~オレンジ色を呈するガラス中に不規則な青色の干渉色を呈する事を特徴とし背面には反射膜を有する。</p><p>EDXRF にて組成を分析した結果、主要成分はいずれも Pb、 Si、 K に富み B に乏しく、一般的に"クリスタルガラス "と 呼ばれるガラスであった。また着色原因と考えられる元素としてサフィレットからは Fe、 Cu、アイリスグラスからは Cu、ドラゴンブレスからは Se がそれぞれ微量検出された。アイリスグラスの赤色部は紫がかった色調から金コロイドによる着色が考えられるが Au はXRFでは検出出来なかった。そこで可視分光分析を行い現在生産されている金コロイドの赤色鉛ガラスと比較した。また、サフィレットはその外観から何らかの金属コロイドの存在が考えられこれの検出を試みた。ドラゴンブレスは 2 層の異なる組成のガラスから構成されておりガラス組成の差と境界面の構造から青色の干渉の原因を考察した。</p>
著者
斎藤 嘉孝 木村 忠正
出版者
一般社団法人社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:09151249)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.45-58, 2004-09-30

情報化の進展によって人びとが懸念することの1つにデジタルデバイドの問題があるが, 本稿ではデジタルデバイドへの懸念が日本社会において集団間で差があるかどうかを検証する。性別や年齢といった人口学的集団で差がみられるのか。あるいは階層集団によって差があるのか。あるいは情報機器(PC, 携帯電話)の使用の有無で差があるのか。これらの議論の根拠となるのは, 橋元(2001)の提示した「合理的無知」という概念であり, それによれば人びとは情報機器を使用しないことをあえて選択することが少なくない。つまり, デジタルデバイドの懸念を感じるような社会的認識に, 日本社会は至っていないと解釈できる。情報化の進展は目まぐるしいが, はたして橋元の調査以降もこのような状況が続いているのかどうか, 2001年と2003年に収集された全国対象のパネルデータを用いて検証する。また, 2時点での変化も考慮し, 使用機器の開始や中止, あるいは地位移動がデジタルデバイドへの懸念に影響を与えたかどうかをも検証する。さらに, デジタルデバイドへの懸念を2時点間で増加させた層がいるとしたら, それはどのような人びとなのかも分析する。結論として, 集団間でデジタルデバイドへの懸念があまり存在しないということが, 分析結果からいえる。2時点の変化を考慮しても同様の結果だった。それが意味することは何なのか, 日本社会の情報化の特質をふくめ詳しく検討する。
著者
松野 哲哉 河本 大地 馬 鵬飛
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 = Bulletin of Teacher Education Center for the Future Generation (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
no.5, pp.175-184, 2019-03

本稿は、1960年代の山間地域における「へき地教育」について、奈良県吉野郡十津川村の大字出谷の事例を中心とした調査により、現代的評価をおこなうことを目的とする。玉井(2016)の挙げるへき地小規模校教育の良さを指標とした。本稿で調査した旧十津川村立出谷小学校は、標高約600mの山頂部に位置し、児童は毎日長い時間をかけて山道を上り下りして通学していた。また栄養状態が悪く、学習面のみならず、環境の面でも「遅れた」状態であった。しかし、児童の自然体験は豊かだった。また、授業以外にも教員と子ども、および子ども同士の信頼関係が深いことを示す出来事が多数みられた。例えば、学校で使うための木炭づくりや、水の確保、通学路の整備などである。子どもたちはその生活を通して、リーダーシップや社会性を身につけた。こうした教育を実施するにあたり、保護者のみならず地域社会全体が学校に対し、非常に好意的、協力的であったことがわかる。これにより、教員は一層子どもと向き合う時間を確保でき、深い信頼関係を構築することができたと考えられる。
著者
姜 暻來
出版者
日本比較法研究所
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.75-102, 2012

近年、韓国では、児童を対象とする凶悪な性暴力犯罪に対処するため、2000年に性犯罪者の身上公開制度(インターネットでの性犯罪者の個人情報の公開及び閲覧制度)、2005年に電子監視制度(性犯罪者へのGPS機能を搭載した電子足輪の装着)、さらに、2008年には、性的倒錯(小児性的嗜好及び加虐性愛)等の性的性癖がある者を治療監護対象者とする新たな対策を次々と導入してきた。しかし、その後にも児童を対象する凶悪な性暴力犯罪が発生したため、化学的去勢(chemical castration)を主な内容とする「性暴力犯罪者の性衝動薬物治療に関する法律」を2010年に制定し、2011年7月から施行している。これは、性犯罪者に対する薬物治療を通して性衝動を抑制することで、再犯を防止することを内容とする制裁手段の一つであるが、身体に直接影響を与えるために人権侵害等の問題等が指摘されている。そこで本稿では、化学的去勢の意義と効果、「性暴力犯罪者の性衝動薬物治療に関する法律」の概要等に対して分析を加え、韓国の化学的去勢に関して論議されている問題点について論じることにした。
著者
三品 浩基 横山 葉子 Mitchell D Feldman 角舘 直樹 福原 俊一
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.75-80, 2011-04-25 (Released:2013-03-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1

欧米では,メンター制度が医学領域の研究成果の達成のみならずキャリア形成,研究資金獲得にとって有用な教育システムとして認められている.わが国の医学研究教育においてもメンター制度を活用するにあたり,その試行経験から,メンタリングの促進因子と阻害因子を検討することが重要と考える.1)メンター制度下で臨床研究の実施経験がある医師12人を対象として,メンタリングの促進因子および阻害因子を探索するインタビュー調査を行った.2)インタビューの逐語録を質的に分析し,メンタリングの促進因子と阻害因子を抽出した.3)促進因子として,メンティーのレベルの適切な評価,メンティーの考えているキャリアパスの把握,コミュニケーションの双方向性,身近な先輩研究者の存在が抽出された.4)阻害因子として,メンターの忙しさ,相談内容のレベルの低さについてのメンティーの不安,メンター・メンティー間の上下関係が抽出された.5)施設におけるメンタリングの評価制度,およびメンターの教育制度がメンタリングの促進に必要な対策として期待された.

3 0 0 0 OA 数学物語

著者
矢野健太郎 著
出版者
小山書店
巻号頁・発行日
1949

3 0 0 0 OA 人事興信録

著者
人事興信所 編
出版者
人事興信所
巻号頁・発行日
vol.第12版 下, 1939
著者
佐伯 香織 平松 朋子 秋山 蘭 生野 佐織 小田 民美 森 昭博 左向 敏紀
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.17, no.Suppl, pp.46-47, 2014-06-30 (Released:2015-04-15)

健常ビーグル犬に対し、血糖降下作用があると言われる桑の葉を0.5g/head添加した食事を給与し、糖脂質代謝に与える影響について比較検討した。桑の葉添加食ではコントロール食と比較して食後30分の血糖値が有意に低値を示し、桑の葉摂取が食後の血糖値の上昇を抑制することが明らかとなった。さらに、桑の葉添加食ではコントロール食と比較して食後30分、180分の血中インスリン濃度に低下傾向が見られ、桑の葉摂取が食後のインスリン分泌を抑制する可能性が考えられる。また、血中TG濃度には変化が見られず、今後も検討する必要がある。