著者
小山 尚之 Naoyuki Koyama
出版者
東京海洋大学
雑誌
東京海洋大学研究報告 = Journal of the Tokyo University of Marine Science and Technology (ISSN:21890951)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.75-92, 2020-02-28

本稿は二〇一九年春号の『ランフィニ』誌第一四四号に掲載された「前衛の死:メディ・ベラージ・カセムとフィリップ・ソレルスとの対談」を翻訳しそれにコメントを付したものである。この対談でソレルスは『テル・ケル』の前衛性、他の前衛との違い、ギー・ドゥボールと『アンテルナショナル・シチュアシオニスト』との関係、『テル・ケル』から『ランフィニ』への移行などについて証言している。
著者
安藤 正人
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = The Bulletin of The National Institure of Japanese Literature Archival Studies (ISSN:03869377)
巻号頁・発行日
no.01, pp.51-61, 2005-03-28

本稿は、20世紀の戦争や植民地支配がアーカイブズに及ぼした影響についての研究の一環として、第二次世界大戦期に在外公館文書の押収等をめぐり日英両国の間に繰り広げられた確執の問題をとりあげるものである。ただし、日本側の史料については、まだほとんど見ていないので、今回はもっぱらイギリス側史料の紹介を中心とし、詳しい分析は次の機会に譲りたい。まず「はじめに」で、外交施設や外交官の記録文書をめぐる国際法について概観したあと、第一章「開戦前におけるイギリスの在外公館文書保護策」では、第二次世界大戦前、イギリス外務省が在外公館に発した指示や規程類のうち、記録文書の保存・廃棄等に触れている主要な指示や規程類を紹介する。開戦時の中心的な規程は、1939年7月31日付外務省回章「戦争指令」である。続いて、開戦前のヨーロッパならびにアジアのイギリス在外公館の状況を、各在外公館との往復文書などから明らかにする。第二章「開戦後における在外公館文書の捜索・押収をめぐる日英の確執」では、日本によるイギリス在外公館文書の捜索・押収の事実と、それをめぐって日英間に繰り広げられた確執に関する史料を中心に紹介する。事例として、在東京イギリス大使館をはじめとする日本国内ならびに日本植民地のイギリス在外公館、ついで上海などの日本軍事占領地、最後に非占領地としてバンコクのイギリス在外公館の状況をそれぞれみる(以上『史料館研究紀要』35号に掲載)。イギリスによる日本在外公館文書の捜索・押収については史料が乏しいが、ロンドン、シンガポール、インド、ベルリンなどの状況について若干の史料紹介を行う(本号)。The present essay deals with the discord issues between Japan and Britain concerning capturing or looting diplomatic and consular archives in the World War II period. Because of the short age of time for consulting Japanese sources, the present essay only introduces British sources avoiding detailed analysis accordingly. After referring the international law regarding the immunity of diplomatic and consular archives briefly, the author introduces some important instructions to the British diplomatic and consular posts a broad issued by the British Foreign Office before the World War II concerning the protection of diplomatic and consular archives at the event of armed conflicts. Then, the conditions of archives at some British diplomatic and consular posts in Europe and Asia before the outbreak of war are revealed by the Foreign Office records such as correspondences. The following chapter is devoted to introduce British sources regarding the looting of British diplomatic and consular archives by the Japanese in the main lands, colonies and occupied territories of Japan, after the outbreak of war. In the last part of the essay, the issue of capturing Japanese diplomatic and consular archives by the British authorities in such places as London, Singapore, India and Berlin, is dealt with.
著者
菊田 千春 Chiharu Kikuta
出版者
同志社大学人文学会
雑誌
同志社大学英語英文学研究 = Doshisha studies in English (ISSN:02861291)
巻号頁・発行日
no.102, pp.109-139, 2021-03

本稿は日本語の逆接仮定条件を表す命令文(譲歩命令文)のうち、中世の終わりまでに成立したとされる、動詞「する」を用いるタイプの成立過程を構文文法の視点から分析する。構文化におけるチャンク化の意義を踏まえ、「する」の命令形が「もせよ」というチャンクを形成する条件や過程を詳細に検討し、「する」を3つに分類した上で、「もせよ」成立に重要な役割を果たしたのは、名詞や漢語と結びついて動詞を作る補助用法の「する」であると論じる。そしてその成立時期を説明する間接的証拠として、「する」の造語力を高めた中世の漢語の増大との関連を指摘する。
著者
遠藤 織枝
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 = Bulletin of The Faculty of Language and Literature (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.39-67, 2008-09-01

戦時中の家庭雑誌『家の光』のグラビアと、戦時中のドラマ台本に基づいて、当時の日本語を検証している。今回は当時の日本語の中でも、形容詞・形容動詞・副詞に焦点を当てて、戦時中のそれらの語群が、現代語と比較したときどのような部分に差があるのか、あるいはどのような部分に差がないのかを考察する。また、戦時中に多く使われた漢字「国」「聖」「戦」について、それぞれの熟語を拾い出して、その特徴を分析する。その結果、戦時中の形容動詞には古語の「タリ」活用「ナリ」活用の語が比較的多く残っていること、オノマトペも多く見られたが、それらはすべて、現在の辞書にも収録されているものであることが分かった。「国・聖・戦」のつく熟語の中には、現在では辞書にも収録されなくなっているものが多く、まさに戦時色の濃い語群であることがわかった。
著者
吉田 幸一
出版者
札幌医科大学医療人育成センター
雑誌
札幌医科大学医療人育成センター紀要 = Journal of center for medical education Sapporo Medical University = Journal of center for medical education Sapporo Medical University
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-3, 2018-03-31

大学の授業と言えば、大きな教室に大勢の学生をあつめて教師が話しをする講義が思い浮かぶ。講義の長所は、一度に多くの学生に対して包括的に知識を伝えることができる点である。しかし、講義形式の授業にはいくつかの問題が指摘されている。学生にとって、講義は教師の話を聴いてノートをとるという受け身の授業である。もし、その授業に興味がない、学ぶ意欲がないならば、授業は成り立たない。一方向性の教授法であるため、学生の集中力が続かなくなり、おしゃべりや授業に関係ないことをはじめる。教室後方の座席に、授業を聴くことに積極的でない学生が集まる。これでは、授業の効果がなかなかあがらないだろう。本学の教養科目の授業の多くは、大きな教室に100 名ほどの学生を集めて講義形式で行われる。ここでは、医学部1年生を対象にした生物学の講義をとりあげ、学生が着席する教室内の座席位置と成績の関係について述べる。教室内の座席を教壇からみて前方群、中央群、後方群に分けたとき、学生は毎回の授業においてほぼ同じ群内の座席に着席する。成績は、授業がすべて終わった後でおこなう定期試験で評価した。後方群の座席にすわる人は前方群や中央群の座席にすわる人に比べて、得点が有意に低い。クラス全体の1/4 からなる成績下位層は、その6 割が後方群の座席の人である。また、2 年次の成績を追跡すると、1 年次後方座席の人は2 年次も成績が振るわないことが多い。座席が教室後方に固定すると、成績不振におちいる恐れがある。後方座席のリスクを、暗黙あるいは無意識ではあるが多くの学生や教員が知っている。この問題が身近で起きることを改めて認識し、どのように向き合うかを考える。
著者
畠山 篤
出版者
弘前学院大学文学部
雑誌
紀要 (ISSN:13479709)
巻号頁・発行日
no.45, pp.13-60, 2009-03-25
著者
近藤 好和
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.11-36, 2010-09-30

本稿は、これまで研究のなかった天皇装束から上皇装束へ移行する転換点となる布衣始(ほういはじめ)という儀礼の実態を考察したものである。
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.41-57, 1994-09-30

明治日本の朝鮮との関係を論ずる場合、明治初年の征韓論はともかく明治九年の江華島条約を日本の朝鮮への侵略の第一歩として叙述する場合が多い。しかし、実際にその当時の新聞論調を読むと、むしろこの朝鮮との条約の締結を、ペリー来航時の状況に譬えて考えているものが多いことがわかる。
著者
孫 漢洛
出版者
近畿大学臨床心理センター
雑誌
近畿大学臨床心理センター紀要 = Bulletin of center for clinical psychology Kinki University
巻号頁・発行日
no.3, pp.95-105, 2010-10-01

[要約] 年間の自殺者が3万人を超え、同時に自傷行為を繰り返す人達が増え続けるなかで、自傷する側の論理、治療する側の論理で自傷行為を考え直し両者の溝を埋める必要がある。自傷行為は決して「生きるため」だけの行為や「気を引くため」の行為ではなく、自殺関連行動である。我々は自傷を繰り返す彼・彼女らに対して、自傷=境界性パーソナリティ障害といった迷信にとらわれてはいけない。自傷行為じしんを治療対象と考えるのでなく、自傷を繰り返す彼・彼女らの"クール"な援助者(サポーター)になることを目指してもいいのではないだろうか。