著者
大内 秀雄
出版者
日本循環制御医学会
雑誌
循環制御 (ISSN:03891844)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.103-109, 2018 (Released:2018-09-07)
参考文献数
46

最近の医療の進歩の恩恵から成人先天性心疾患(adult congenital heart disease: ACHD)患者は急増し、一般の成人循環器外来で遭遇する頻度が増加している。しかし、その病態は一般循環器疾患と大きく異なることも多く、その対応にはACHD患者特有な病態の理解が必要である。後天性循環器疾患の病態が左心室機能不全に伴う左心系心不全で肺うっ血を伴うことの頻度が多いのに対し、ACHD患者では右心室機能不全に伴う全身臓器のうっ血を伴う頻度が高い。更に、後天性成人循環器疾患領域に存在しない特殊な循環病態が存在する。これらの循環病態の代表的なものに単心室血行動態であるフォンタン循環、体循環を支える心室や房室弁が必ずしも左心室や僧帽弁でない修正大血管転位や完全大血管転位に対する心房内血流転換術後の循環、そして心内短絡が存在し複雑な形態の心臓で未修復の心室により循環が支えられ、通常低酸素血症を有する循環がある。更に、特に複雑ACHD患者では上記の特殊な循環病態に加え、手術の侵襲は無視できなく心肺機能に大きく影響している。今回はこれら術後ACHD患者に共通する病態について概説する。
著者
河 正一 金井 勇人
出版者
埼玉大学日本語教育センター
雑誌
埼玉大学日本語教育センター紀要 (ISSN:21875871)
巻号頁・発行日
no.11, pp.15-27, 2017

本稿では、言葉の変化の過程として現れる敬語表現に焦点を当てて、二重敬語(敬語連結)、敬称、マニュアル敬語、謙譲語、不均衡な表現、さ入れ言葉、(さ)せていただく、慇懃な表現について、それらの表現における規範性と印象を調査した。そして、二つの要因の調査に基づき、敬語表現の変化の段階や揺れの原因とは何かについて、分析を試みた。
著者
長沼 悠介 立花 潤三 後藤 尚弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.II_351-II_359, 2014 (Released:2015-02-28)
参考文献数
27

本研究では,代表的な食料8種類について,食料供給システム(食料生産・流通・消費)における食料フローを解析し,1965年から2005年までの各消費量,食品ロス量,食料供給に係る投入エネルギー及び二酸化炭素排出量を明らかにした.二酸化炭素排出量は2005年において約5,400万t-CO2(日本の二酸化炭素総排出量の約4.5%)であることが明らかになった.また,国民が摂取した熱量(摂取熱量)と食料供給に要した熱量(投入エネルギー)の乖離幅と食品廃棄物量に関係があることが明らかになった.そして,必要とする栄養素量を満たしながら,投入エネルギーが最も少ない低炭素型の食生活を線形計画法によって明らかにした.その結果,穀類・豆類・肉類等の摂取を増加し,野菜類・魚介類等の摂取を減少させる解が得られた.この食生活を日本人全員が行うと,年間で約500万t-CO2の削減が可能である.
著者
矢野 葉子
雑誌
AA1199157X = 昭和女子大学大学院日本語教育研究紀要
巻号頁・発行日
no.1, pp.57-64, 2001-11-01

世界の多くが多言語使用社会であり、そこで暮らす人々の多くがバイリンガルである。シンガポールも多言語使用社会の一つで、中国語、マレー語、タミール語、英語が公用語と定められている。国民が多民族で構成されていることから、政府は多言語主義を掲げ、二言語教育制度をとっており、多くの国民が英語と民族語のバイリンガルとなっている。そのようなシンガポール人が日本語を学習する際、彼らにとって日本語は第三またはそれ以上の言語となる。この第三の言語の教授に際して、過去に行われてきた第二言語習得の研究に基づいた教授法の採用は適しているのだろうか。教師は学習者が身につけている言語の影響を考慮した教授法を考えなければならないのである。多言語使用社会とバイリンガル、シンガポールにおける日本語教育についてまとめ、第三言語習得の研究の必要性について考える。
著者
Masahito Hitosugi Masashi Ikeda Xia Zhu Hisayoshi Kato Kazunobu Omura Toshiaki Nagai Shogo Tokudome
出版者
Japanese Society of Biorheology
雑誌
日本バイオレオロジー学会誌 (ISSN:09134778)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.35-40, 2007-03-25 (Released:2012-09-24)
参考文献数
12

We compared the anticoagulant and fibrinolytic effects of the major functional food products generated by Bacillus subtilis natto. We analyzed NSK-SDR and NKCPR powders that consist mainly of nattokinase and bacillopeptidase F, respectively. The specific activity of the plasmin-like activity of NKCPR H was about 2.5-fold higher than that of NSK-SDR. Although both NSK-SDR and NKCPR reduced fibrin monomer levels in human blood, the anticoagulant effect of NKCPR was over 100-fold higher than that of NSK-SDR. Dietary supplements with anticoagulant and fibrinolytic effects might play an important role in preventing thrombotic diseases.
著者
古島 大資
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.130-137, 2015-07-31 (Released:2017-12-28)

近年,初交年齢の低下やそれに伴った10代の妊娠,人工妊娠中絶の増加が危惧されている。高校生時期における性行動は,友人,家族,学校,メディア等からの性情報に影響を受けており,とりわけインターネットはその影響力が大きいと言われている。昨今の急速な携帯電話の普及により,高校生が日常的にインターネットを通じた性情報へのアクセスや,通話やメールによる性に関する情報交換を行っている可能性が推測される。本研究の目的は,高校生における性行動と携帯電話使用との関連について明らかにすることである。平成26年7月に高校1校を対象として無記名質問紙調査を実施し回答の得られた400人(男子学生305人,女子学生95人)を解析した。性行為経験率は男子学生70人(23.1%),女子学生17人(18.7%)であった。性行為経験の有無別に分け多重ロジスティック回帰分析によりオッズ比(95%信頼区間)を算出したところ,携帯電話の所有開始時期が小学校時期であった場合は,所有開始時期が高校生であった場合と比べ7.19倍(2.27-23.88),1日平均10分以上の通話時間であった場合,10分未満と比べ7.04倍(2.16-26.60),メールの送受信回数が1日50回以上であった場合,50回未満と比べ5.00倍(2.57-10.09),インターネットを利用した性情報の検索・閲覧の経験がある場合は,ない場合と比べ3.91倍(1.97-8.13)と高くなる傾向がみられた。高校生の性行動には携帯電話使用が関連する可能性が明らかになり,携帯電話の適切な使用方法と有害なインターネット情報へのアクセス制限(フィルタリング)等を働きかけていく必要性が示唆された。