著者
尾崎 名津子
出版者
弘前大学人文社会科学部地域未来創生センター
雑誌
地域未来創生センタージャーナル (ISSN:24341517)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.5-12, 2022-02

旧制弘前高等学校の卒業生である映画監督の鈴木清順(1923-2017)は、同校同窓会の求めに応じて一本の映像作品を残している。それが『弘高青春物語』である。同窓生たちの証言をメインにパッチワークのように編まれたこの作品は、旧制高校のありようを事後的に再構成したものとして理解すべきものであり、そこにとりわけ色濃く表出するのは在校生だった戦没者たちへの追悼の意志である。さらに、在校生の多くが県外出身者であった旧制高校であれば、それはまた彼らが見た津軽・弘前の表現であると同時に、鈴木清順の作品としても受容可能な本作は、彼の映像表現を検討する上でも有意義なものである。これらの観点から本稿では『弘高青春物語』を多角的に検討し、その特色を摘記する。
著者
増田 弘
出版者
立正大学法学会
雑誌
立正法学論集 = The Rissho law review (ISSN:02864800)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.93-115, 2021-03-20
著者
東条 敏 萩原 信吾
出版者
JAIST Press
巻号頁・発行日
vol.3, 2008-06

In 2002, Toyama Prefecture in Japan had a change of policy allowing residents to submit various kinds of forms electrically, in accordance with the development of the Internet. At that time, many municipal officers were forced to rewrite regional ordinances by hand. Legal codes are intrinsically destined to be modified and revised in later years, to catch up with the requirements of our society. However, with each revision the coherence of the code is threatened, and in worse cases it may contain discordance and inconsistency in itself. In many research on legal reasoning, researchers often regard that the code is always consistent though they may sometimes need to add incomplete knowledge to get beneficial consequences. However, when a new legislation, jurists need to inspect rigidly whether it is coherent with existing one. In this revision procedure, jurists must assess how the affected area is large. If (s)he finds discordance with a new legislation, and (s)he modifies it, then (s)he needs to search for the affected area further from the newly revised law recursively. Thus, such a revision would be a tedious and painstaking work. Our motivation in this study is to identify the affected area automatically and to detect discordance in a practical code.
著者
下出 茉波
出版者
富山大学比較文学会
雑誌
富大比較文学
巻号頁・発行日
vol.9, pp.84-100, 2017-03-10

池澤夏樹「キップをなくして」は、『小説 野性時代』にて二〇〇三年十二月から二〇〇五年三月にかけて連載された小説である。連載が終了した四か月後である二〇〇五年七月には大幅な本文の修正を加え、角川書店より初版を刊行しており、また文庫版がその四年後である二〇〇九年六月に発売されている。この作品には多くの実在する駅や地名が登場し、それが物語の魅力の一つでもある。駅構内の様子や電車が発車する時刻なども忠実に再現されており、読者はまるで実際にその駅で登場人物たちと行動を共にしているかのような錯覚に陥るだろう。また、物語の主人公が小学生でありながら、生と死という重いテーマについて向き合っているのも、この作品の特徴だといえる。作者である池澤の価値観をベースに、作品では生と死という問題について分かりやすく解説されており、清々しい気持ちで読者も物語を読み進めることができるだろう。だが、それと同時に読んでいる最中にどこか釈然としない感覚もある。主人公であるイタルがやけに大人じみているのである。時代設定も連載当時より一昔前であり、最後の旅行の行き先もなぜ急に北海道なのか。そのわりに鉄道関係の描写は非常に丁寧で、現実味を帯びている。これらの諸問題について、旦敬介が文庫版にて解説を添えている。旦はこの作品の時代が、書かれた二〇〇三年ではなく一九八七年前後であることに注目し、一九八〇年代後半の鉄道文化に焦点を当てている。国鉄が廃止になり一九八八年四月一日からは民営化されたJRが発足し、一九八八年三月には本州と北海道を結ぶ青函トンネルが、同年四月には本州と四国を結ぶ瀬戸大橋が開通した。なお、本州と九州を結ぶ関門トンネルは随分と昔である一九四二年に開通している。このことについて旦は、「きわめて具体的な意味で、日本列島が歴史上初めて、ひとつに統合されたのが一九八八年の春」であり、「連絡船の時代の終わり、鉄道の(ひとつの)時代の終わりに対して池澤さんが捧げた別れの歌だったようにも見えてくる」と、作者である池澤について語っている。また、寝台列車や厚紙のキップ、駅員さんの入鋏作業など、今はなきものが多く存在していたのがこの作品の時代であり、「すっかりファンタスティックな物語であるように見えて、これはある意味で実は、きわめて現実に密着したリアリスティックな物語」であると解説を締めくくっている。旦は一九八〇年代後半の鉄道文化に注目しているが、作品の連載が始まった二〇〇三年当時の鉄道文化については触れられていない。二〇〇〇年代前半の鉄道文化に焦点を当ててみると、その時期は交通ICカードの導入が開始され、鉄道に乗車する際のシステムの移り変わりの時代であった。第一章では、タイトルにもある「キップ」に成り代わるものとして登場したICカードに注目する。キップとICカードの性質の違いから、池澤の連載当時の様子を考察したい。また、この作品は昭和五〇年に発表された黒井千次「子供のいる駅」という短編と、設定が似ていることが指摘されている。第二章では「キップをなくして」と「子供のいる駅」を比較し、両作品でのキップの描かれ方についてまとめたい。第三章では池澤の作品に対するインタビューから、第四章では作品に実際に登場する駅から作品の深層を読み取り、「キップをなくして」という作品に対する読みを深めていきたい。
著者
平田 未季
出版者
北海道大学高等教育推進機構国際教育研究部
雑誌
日本語・国際教育研究紀要
巻号頁・発行日
vol.26, pp.42-65, 2023-03

本稿では、江別市を事例とし、来訪者との国際交流を目的として活動を開始した住民有志による団体が、地域の内なる国際化に目を向け日本語教室を開設するに至るまでの過程と、彼らが教室の運営において抱える課題や思いを、当事者へのインタビュー調査に基づき記述する。インタビューから、当事者が、日本語教育や多文化共生支援は専門家が行うものであり自らが主体的に関われるものではないと認識していること、日本語教室が軌道に乗らない中でかつての国際交流活動こそが多様化する市において必要な活動ではないかと考えていること、しかし、現在の文脈で国際交流を中心とする団体には戻ることは難しいという意識があることが分かった。本稿では、日本語教室が団体にもたらした質的変化についても述べ、地域日本語教室の存在意義について考える。
著者
古山 彰一 松澤 照男
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 : ハイパフォーマンスコンピューティングシステム (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SIG1(HPS6), pp.50-57, 2003-01-15

伸縮性領域を用いることで,適応格子法に関する並列計算手法を提案した.本手法を用いることにより,通信量コストを低く抑え,かつ,負荷分散を良好に行うことができた.その結果,一般的に並列計算が難しいこの問題に対して,32PE利用時に73%の高い並列化効率を得ることができた. : Elastic Domain Decomposition Method (DDM) for a parallel Adaptive Mesh Refinement (AMR) Solver is described. To use this method saving a message passing cost, a good load balancing, and a high parallel performances (73% on 32 PEs) were achieved.
著者
池原 優斗
出版者
日本科学哲学会
雑誌
新進研究者 Research Notes
巻号頁・発行日
vol.6, 2023

This research proposes Actor-Network Theory (ANT) as a methodology for organizing and analyzing problems involving "artificial agents," which are artifacts that induce humans to experience them as a certain kind of agent, such as AI and robots. ANT makes it possible to handle the boundaries of the categories of human, “artificial agent” and “other artifacts” in a dynamic and flexible way. This enables effective organization and analysis of problems involving “artificial agents.” After presenting an overview and discussion of ANT, this paper will present how ANT can be used concretely to describe and analyze problems involving "artificial agents" through an analysis that applies ANT to the problem of AI image generators.