著者
中村 哲也 丸山 敦史 矢野 佑樹 Tetsuya Nakamura Maruyama Atsushi Yano Yuki
巻号頁・発行日
vol.10, pp.63-79, 2012-03-15

本稿では、葉取らず、無袋、有袋といった3 つの栽培リンゴについて、色、糖度、価格を消費者に評価してもらい、総合的に比較検討した。その結果、葉取らずの糖度、有袋の色づきの評価は非常に高かった。色づき・甘さとも評価された無袋秋星・北斗・シナノスイート等の中生種は甘さと価格の相関が、有袋ふじ・むつ等は色づきと甘さの相関が確認された。そして一般的に色づきや糖度を評価するのは高齢者や高所得者であった。さらに、品種の価格差が30 円程度ならば若干高くとも高く評価したリンゴを購入するが、100 円以上の価格差がついた場合は購入せず、有袋ふじや無袋秋星を購入する者は著しく減る結果となった。ただし、有袋ふじ・むつ、無袋秋星は、高齢者や高所得者に販売が期待でき、葉取らず・有袋といった栽培方法を上手く使い分けることで、よりよい販売環境の構築が可能になると思われる。
著者
宇野 毅明
雑誌
研究報告アルゴリズム(AL) (ISSN:21888566)
巻号頁・発行日
vol.2020-AL-177, no.2, pp.1-7, 2020-03-09

データ研磨は,データのゆらぎを除去することで中小規模の構造を明確化し,マイニングアルゴリズムの効率や精度を高める手法である.例えば,ネットワーククラスタリングの場合,グラフの密な部分をクリークにし,疎な部分を独立集合とすることで,クラスタ構造を明確にする.通常のクラスタリングが,比較的大きなクラスタを見つけることが上手であるのに対して,データ研磨によるクラスタリングは,小さくてまとまりの良いクラスタを網羅的に,かつ独立性高く,適切な個数で見つけることができる.実際にそのクラスタは意味解釈がしやすく,新聞記事やツイッターのクラスタリングによりトピックを網羅的に見つけることが可能である.また,アルゴリズムの挙動も極めて安定しており,大規模なデータでも数十の反復で収束に至ることがほとんどである.データ研磨のアルゴリズムの基本的なデザインはシンプルであり,根拠となるデータに対する観察も明らかである.一方,収束性や得られた解と数理構造との対応は不明瞭であり,いわば実行可能仮説寄りのモデルである.本稿では,データ研磨アルゴリズムの数理的な側面を明らかにすべく,その挙動に関する数理的な解析や確率的な解析を行い,データ研磨アルゴリズムの現実データでの挙動の良さを数理的に裏付ける.
著者
安井 寿枝 Kazue Yasui
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
研究論集 = Journal of Inquiry and Research (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.116, pp.87-104, 2022-09

本稿は、高浜虚子の三作品「風流懺法」「斑鳩物語」「大内旅宿」にみられる京都府方言・奈良県方言・大阪府方言の特徴を確認し、虛子の各方言に対する意識を考察するものである。それぞれの方言が特徴的に用いられているのは、尊敬語表現・文末表現・接尾辞であった。尊敬語表現の助動詞では、京都府方言は「お~やす」が、大阪府方言は「やはる」が特徴であり、奈良県方言は両方言の特徴を併せ持っていた。また、「なはる」は京都府方言としては避けられる傾向にあり、大阪府方言としては命令表現で使われていることがわかった。文末表現では、京都府方言は「え」「おす」「どす」が、奈良県方言では「なー」「おます」「だす」が、大阪府方言では「おます」「だす」が特徴であった。一方で、「です」のように共通語と同じ語形は避けられていることが予想された。接尾辞では、大阪府方言の特徴として「どん」が使われていた。
著者
柳園 順子
出版者
鹿児島純心女子大学看護栄養学部
雑誌
鹿児島純心女子大学看護栄養学部紀要 = Bulletin of Faculty of Nursing and Nutrition, Kagoshima Immaculate Heart University (ISSN:13484303)
巻号頁・発行日
no.26, pp.41-47, 2022-03

占領下の日本の学校教育における保健教育の実施には,教育の基本政策に対するGHQやアメリカ教育視察団報告書の指摘の存在があった。1947年4月第一次アメリカ教育使節団報告書で「保健の教授は(中略)生理についても衛生についてもなんの教授も行われていない」と指摘されたことで,学校衛生は戦後指導要領によって組織活動が重視される新しい学校保健へと出発する。GHQの助言により文部省は体育局を中心に「学校の要望に応える」と謳い中等学校保健計画実施要領(試案)を編纂するが,この中の「成熟期への到達」については,学校現場の無理解な批判にあったとして占領解放後に改訂されている。本稿は,戦後早い段階で性に関する内容の指導が示されたにもかかわらず後に後退する要因を当時の資料を基に明らかにし,保健教育において何が包摂され排除されていくのかを検討した。
著者
林 由紀子 松原 茂樹
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.47(2007-NL-179), pp.49-54, 2007-05-25

一般に,新聞記事など文字による伝達を意図したテキストは,語彙や言い回しなどにおいて通常の話し言葉とは異なる.このため,音声合成ソフトウェアを使ってテキストをそのまま読み上げると,不自然な印象を与える音声となる.本論文では,不自然でない聞きやすい読み上げ音声を出力するための,書き言葉から話し言葉へのテキスト変換として,文体の変換及び体言止め表現の補完について述べる.文体の変換処理は,変換規則の適用により実行した.体言止めの補完を実現するために,文末の名詞及び時制等を考慮した決定木を作成した.新聞記事テキストを対象に評価実験を行い,精度89.7%,再現率86.7%という結果を得た.
著者
落合 功 オチアイ コウ Kou Ochiai
雑誌
修道商学
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.1-17, 2001-02-28
著者
藤木 淳 牛尼剛聡 富松 潔
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.3762-3771, 2007-12-15

人間は静止した2 次元画像の観測からだけでなく,2 次元動画像によるキャラクタの運動表現からも3 次元構造を解釈する視知覚特性を持つ.一方で,静止した2 次元画像から3 次元構造を解釈する際に,1 つの2 次元画像から推測される3 次元構造が一意に定まらない場合がある.我々はこのような2 次元動画像に対する3 次元解釈の視知覚特性を利用したインタラクティブなだまし絵表現を持つアニメーションシステムOLE Coordinate System のプロトタイプを考案した.また,プロトタイプで提案する5 種類のキャラクタのだまし絵表現の評価のために被験者実験を実施した.本論文ではシステム概要と5 種類のだまし絵表現について述べ,被験者実験から本だまし絵表現が鑑賞者の知的好奇心を刺激する効果とシステムの有効性を議論する.
著者
小幡 幸和 Yukikazu OBATA
出版者
茨城キリスト教大学
雑誌
茨城キリスト教大学紀要 I.人文科学 = Journal of Ibaraki Christian University I. Humanities (ISSN:13426362)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.41-50, 2020

In this paper I investigate how Masunori HIRATSUKA (1907-1981) viewed the theory of teaching profession in relation to his understanding of Christianity. A well-known Japanese education scholar who served as Professor of Kyushu University, Director of Japan’s National Institute for Educational Research, and the head of the Education Sector of UNESCO, Hiratsuka was also the son of a Japanese Christian pastor who served in Tokyo. After reviewing the life of Hiratsuka especially by noting his religious involvement and understandings, I focus on three areas that are emphasized in contemporary discussions on the theory of teaching profession, namely: 1) the importance of character, 2) the need for learning continually as teachers, and the global awareness teachers ought to have. I examine how Hiratsuka tackled these issues in light of his views on religion and Christianity.
著者
Yuta Hirasawa Hideya Iwasaki Tomoharu Ugawa Hiro Onozawa
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, 2022-10-15

Virtual machines (VMs) for dynamically managed languages such as JavaScript are generally implemented in C or C++. Implementation of VMs in such low-level languages offers the advantage of high flexibility, but it suffers from problems of descriptiveness and safety. These problems are due to the fact that even though a variety of VM operations are based on the VM's internal datatypes for first-class objects in the target language, the C code typically treats all VM internal datatypes as a single type in C. In addition, VMs implemented in C or C++ have a size problem which is a serious issue for VMs on embedded systems. The reason for this problem is the difficulty of eliminating unnecessary code fragments from the C code for a specific application. To solve these problems, we propose a domain-specific language for describing VM programs and a corresponding compiler to C programs, called VMDL and VMDLC, respectively. We also propose related utility tools. This framework enables generation of C source code for an eJSVM, a JavaScript VM for embedded systems. VMDL's concise syntax enables static VM datatype analysis for optimizations and error detection. We evaluated the framework and confirmed its effectiveness from both qualitative and quantitative viewpoints.------------------------------This is a preprint of an article intended for publication Journal ofInformation Processing(JIP). This preprint should not be cited. Thisarticle should be cited as: Journal of Information Processing Vol.30(2022) (online)DOI http://dx.doi.org/10.2197/ipsjjip.30.679------------------------------
著者
渡辺 大登 柗本 真佑 肥後 芳樹 楠本 真二 倉林 利行 切貫 弘之 丹野 治門
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.1564-1573, 2022-10-15

自動プログラム生成(APG)の実現を目指し,生成と検証に基づく自動プログラム修正(APR)を転用した手法が提案されている.APRはバグを含むソースコードをすべてのテストケースに通過するように全自動で改変する技術である.APRを転用したAPGでは,初期状態のソースコードを未実装,つまり複数のバグが含まれていると仮定し,ソースコードの改変,評価,選択を繰り返してソースコードを目的の状態に近づけていく.一般的なAPRでは改変ソースコードの評価指標として,テストケース通過数がよく用いられる.この指標は単一バグの修正を目的とした場合には問題にならないが,複数バグの修正時にはコード評価の表現能力不足という問題につながる.よって,初期状態に複数バグの存在を仮定するAPGにおいては,解決すべき重要な課題である.そこで,本研究ではAPGの成功率改善を目的とした多目的遺伝的アルゴリズムの適用を提案する.また,多目的遺伝的アルゴリズムによる高い個体評価の表現能力を利用した,相補的なテスト結果の2個体を選択的に交叉する手法も提案する.評価実験として,プログラミングコンテストの問題80問を題材に提案手法の効果を確かめた結果,成功率の有意な向上を確認した.