著者
小林 忠雄
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.393-415, 1990-03-30

The purpose of this paper is to grasp the color culture mainly of the urban environment in Japan from the viewpoints of the history and folklore, and discusses what sort of materials should be aimed at as the subjects.Firstly, the ranking system of colors of the clothes and the symbolism in the ancient and middle ages in Japan are outlined. Then, the actual states of colors of dresses, props., theatesr, etc. used for “Izumo Kagura”, a folk art currently performed in mountain villages in Izumo-city, Shimane Prefecture are shown. Since this is an art using a myth as its theme, a question is proposed that the symbolism of color in the ancient and middle ages may lie behind.Further, from “Comprehensive folk vocabulary in Japan” compiled by Yanagita Kunio and other folklorists, the words that show four colors, white, black, red and blue are extracted and the symbolisms of the folk natures are described. Combinations of colors such as white and black, white and red, white, black and red, etc. are shown as the basic subjects of color symbolism in the folklore in Japan, referring the examples of Akamata/Kuromata ceremonies in Yaeyama Islands, Okinawa Prefecture.Finally, the words of 783 popular songs often sung by the Japanese are studied to check what sort of color image they have. The result shows that words representing the colors are used frequently in the order of white, red, blue, seven colors and black. In it, color preference and folk symbolism unique to Japanese are included. It is emphasized that the historical study on the color sense of the Japanese is important as one of the subjects of methodology of the folklore study.
著者
高野 秀之 タカノ ヒデユキ Hideyuki Takano
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.47-73, 2010-10-25

本稿は、ソシュールの一般言語学理論を再考することを通じて、言語研究の歴史における、その評価の妥当性を問い直すものである。 言語研究の歴史において、ソシュールはさまざまな批判にさらされてきたが、その中には、ソシュールの思想や学説への不理解や誤った歴史認識に基づいたものもある。そうした誤解を払拭するために、ソシュールの思想や学説を可能な限り忠実に再現した後、ソシュールに向けられた批判の型を『一般言語学講義』の成立事情に基づくもの、ソシュールの言語理論自体に関するもの、歴史認識にかかわるものの3 種類に分類し、それぞれを検証することを通じて正当な評価を下すことを試みる。 筆者は、人間の知的活動としての理論構築というものが、対立や批判からのみもたらされるとは考えない。それは、既存の理論や学説と相互に関連し合いながら、視点の位置と適用範囲の変遷によって刷新されてゆくものである。その視点と適用範囲とが時間の経過とともに増加・累積し、洗練されてゆく過程が言語研究の対象であるとするソシュールは、批判の対象ではない。それは、言語研究の対象と方法とを示しながら、それを自らの手で一冊の本にまとめることを躊躇したこと、ただ一点においてのみであると考える。
著者
高野 秀之 タカノ ヒデユキ Hideyuki Takano
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.3-38, 2012-10-26

本稿の目的は、生成文法の基本原理を検証し、その理論的な基盤となる言語観を探求することにある。しかし、取り上げられる基本原理と、それぞれを基に記述される言語現象は、質・量ともに、決して十分なものとは言えない。したがって、この取り組みは、生成文法の全容解明ではなく、この理論がどのように言語の本質を捉えようとしているのかを追体験し、そこに想定されている言語観を合理的に導き出そうとする入門研究である。生成文法は、経験科学の方法で言語の本質を解明しようとする言語理論で、観察可能な言語資料から導き出された事実に基づいて仮説をたてる。実証研究の過程において、期待された解が得られなかったとしても、仮説を簡単に放棄したりはしない。その結果は、理論構築に至る過程が厳正であったために導き出されたものとして受け入れ、仮説の修正を繰り返し、より洗練された理論を目指す。問題の棚上げという対応が批判の対象になることもあるが、現在、生成文法は言語の本質解明に最も近い言語理論の一つであると言えよう。巻末の資料は、生成文法の基本原理が英語の疑問文を生成する過程を説明するのに効果的であると主張し、研究の公共性を担保している。

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著者
原 ますみ
出版者
文教大学女子短期大学部家政科
雑誌
家政研究
巻号頁・発行日
vol.15, pp.28-33, 1983-01-01
著者
春日 遥 池田 宥一郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.1764-1778, 2021-11-15

これまでSiriやAlexaなどのコミュニケーションを主体とするエージェントが家庭に導入されてきた.一方で,家庭においてヒトとより長い間コミュニケーションをとってきた存在として,伴侶動物があげられる.代表的な伴侶動物であるイヌでは,エージェントが会話により飼い主の関心を独占する場合,飼い主の反応の観察から新奇物であるエージェントへの警戒を和らげるというポジティブな反応や,嫉妬行動を誘発するというネガティブな反応が誘発されると考えられる.嫉妬行動は対象の形状にも依存することから,どのような形状のコミュニケーション・エージェントであれば家庭において飼い主ともイヌとも良い関係性を構築できうるか調査する必要がある.本研究ではプリミティブな形状のスマートスピーカ(Google Home),大小の2台のヒト型ロボット(NAOとPepper),イヌ型スマートスピーカの4条件を用意し,飼い主-エージェントの2者間の調査と飼い主がエージェントにポジティブに接するときのイヌの行動観察という3者間の調査を行った.32人のイヌの飼い主の印象評価の結果,ヒト型ロボットが好まれ,イヌ型スピーカはGoogle Homeよりも印象が悪かった.一方で,2名のイヌの訓練士が評価した21匹のイヌの行動分析の結果,飼い主-エージェント間のやりとりの観察後にイヌ型スピーカに対しては臀部の臭いを嗅ぐなど後部の接触を行った個体の割合が他のエージェントよりも有意に高かった.この結果は,イヌの飼い主が好ましいと感じるエージェントとイヌが関心を持つあるいは接触がしやすいエージェントの形状が異なる場合があるということを示唆していた.
著者
永江 貴子
出版者
拓殖大学言語文化研究所
雑誌
拓殖大学語学研究 = Takushoku language studies (ISSN:13488384)
巻号頁・発行日
vol.143, pp.25-41, 2020-10-30

中国語の“给”は受益者を導くと規定され,この“给”に関する先行研究が多数報告されてきた。近年,この“给”が用いられる受益者を導く位置で,“帮”を用いる例が散見される。この“帮”の振る舞いを注視すると,従来の「助ける」という意味からやや離れた例が散見される。本稿では,この“帮”が有する意味的特徴に着目し,ポライトネスを示す例,近年におけるこの例の拡がり,更に従来の意味からやや逸脱した例を提示し,ポライトネスを意図する場面で何故多く観察されるのかに関し,そのメカニズムを述べる。
著者
小豆川 裕子
出版者
常葉大学経営学部
雑誌
常葉大学経営学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF BUSINESS ADMINISTRATION TOKOHA UNIVERSITY (ISSN:21883718)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1・2, pp.131-147, 2018-02-28

テレワークは、勤務先の場所を離れ、「情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用し、時間や場所を有効に活用ができる柔軟な働き方」である。日本では第二次安倍政権以降、民間企業のみならず中央官庁・自治体なども加わり、多くの組織でその取組が本格化している。 テレワークは、ICT の徹底活用による生産性の向上、時差を超えたグローバル事業の展開、そして少子高齢社会を迎え、男女関わらず、出産・育児・介護などさまざまなライフイベント・ライフスタイルへの柔軟な対応、さらに災害やパンデミックなど非常時のBCP 対応が可能となるなど、さまざまな期待が寄せられている。 本稿では、テレワークの現在の普及状況や政府が推進するテレワーク施策の取組を踏まえ、中小企業の経営課題とテレワークの導入効果に関する整理を行い、持続可能な個人・企業・社会に向けた企業システムのフレームワークの提案を行っている。 さらに、2017 年に実施した「働き方改革」に関するアンケート調査等をもとに、中小企業の取組み実態や意識の傾向を分析した。最後に地方自治体におけるテレワーク関連施策を概観しながら、中小企業の経営課題解決におけるテレワークの意義・有効性について検討を行った。 中小企業の働き方改革の取組、テレワークの導入は進んでいないが、在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務において「プラスの効果」の実感は高く、意識改革や業務プロセスの革新によって、優秀な人材の確保・維持や組織の活性化につながるものと考えられる。 現在、日本のさまざまな地方自治体において、中小企業の経営をめぐるテレワーク関連施策が講じられている。各種補助事業、情報提供やコンサルティング支援を効果的に活用することにより、着実な成長につながることが期待される。
著者
山﨑 朗
出版者
中央大学経済学研究会
雑誌
経済学論纂 (ISSN:04534778)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3-4, pp.375-395, 2017-03-01
著者
青木 幸聖 穴田 一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.990-995, 2020-04-15

近年,完全情報ゲームであるチェス,オセロ,将棋といったゲームでは人間のトッププレイヤと同等の実力を持つ人工知能(AI)が実現されている.一方,不完全情報ゲームにおいては,ポーカーでは人間のトッププレイヤと同等の実力を持つAIが実現されているが,麻雀では実現されていない.なぜなら,本研究が対象とする「麻雀」は完全情報ゲームであるチェスや将棋と異なり,対戦相手の所持している手が見えないため,相手の状態や状況の予測が難しいうえ,同じ不完全情報ゲームであるポーカーより考えられる戦局が多岐にわたるゲームだからである.そのようななか,近年トッププレイヤに近い強さを持つといわれる水上ら(2013, 2014)による麻雀AIが発表されている.しかしこのAIは役を考慮した鳴きができないという問題点がある.一方,原田らは「Complete Hand Extraction(CHE)」で構築できる可能性の高い役を考慮した着手を実現した.そこで本研究では,役構築を考慮可能な原田らの手法「CHE」を用いて,役構築を考慮した鳴きが可能な麻雀AIを構築し,CHEと対戦させることによりその有効性を確認した.
著者
村岡 啓一
出版者
白鴎大学法学部
雑誌
白鴎法学 = Hakuoh hougaku : Hakuoh review of law and politics (ISSN:13488473)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.1-21, 2020-12-10

モンロー・フリードマンの倫理観および倫理研究に与えたユダヤ教の影響( The Influence of Judaism on Monroe Freedman’s Understanding and Study of Ethics.)ジェーン・B・タイガー
著者
森山 拓也 Takuya Moriyama
出版者
同志社大学
巻号頁・発行日
2020-03-21

本研究は、トルコで40年以上にわたり続く反原発運動の特徴や戦略を分析するとともに、環境運動がトルコの民主化過程において果たした役割を考察したものである。社会運動研究の枠組みを採用し、運動参加者の用いる表現など文化的側面にも注目して、運動のフレーミング戦略を分析した。反原発運動は自らを「自由と民主主義を求める運動」としてフレーミングし、運動スタイルの祝祭性や創造性を通じて、運動過程においても民主的空間を予示的政治として実現させていることを明らかにした。