著者
萬屋 賢人 菅原 俊治
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.1-9, 2011-11-30

本論文では,視野範囲内の先行車が低速の際に車間距離をとる渋滞緩和車を導入し,エージェントシミュレーションにより,渋滞緩和への効果とその解析結果について述べる.高速道路の交通流は渋滞に至る過程で,渋滞が起こりうる交通密度に至っても,交通流の流量が増加し続けるメタ安定相を経る.メタ安定相は,流量が最大となる状態であり,渋滞の初期状態からメタ安定相へ戻すことができれば,渋滞の緩和や渋滞の発生を遅らせることができると考えられる.そこで渋滞緩和車を渋滞緩和エージェントとしてモデル化し,交通流のモデルである拡張 Nagel-Schreckenberg モデルに加えシミュレーションにより実験したところ,実際に渋滞状態からメタ安定相に移行できることを確認した.さらに詳細な解析の結果,渋滞緩和車を連続して配置することがメタ安定相への移行に重要であることが分かった.また渋滞緩和車を導入しない場合の平均速度と渋滞緩和車を導入したときの通常車両および渋滞緩和車の平均速度を比較したところ,渋滞緩和車となり速度を落としても,平均速度は向上することが分かった.
著者
中澤 桂介 阿部 雅樹 渡辺 大地 三上 浩司
雑誌
研究報告コンピュータグラフィックスとビジュアル情報学(CG) (ISSN:21888949)
巻号頁・発行日
vol.2017-CG-168, no.13, pp.1-6, 2017-11-01

「カタンの開拓者たち」 (以下 「カタン」 ) はボードゲームの一種である.カタンは,プレイヤー同士の交渉による資源交換が重要な意味を持ち,この際の駆け引きが大きな魅力と言える.現状でカタンのコンピュータ上での実装はいくつかあるが,これらの AI では交渉についてあまり考慮されておらず,人間同士の対戦に比べて面白さが損なわれている.これは,AI 側がプレイヤーの状況についての認識把握が不十分であることと,それを活かした駆け引きが行われないことが一因である.本研究は,既存の AI の特性に対し,AI 側がプレイヤーの状況を分析した上で,真偽を交えた情報を伝える機能を持たせるという手法を提案する.これにより,プレイヤーの認識を AI に有利なように誘導した上で交渉を行う事で,AI が既存実装よりも人間同士の対戦に近い行動を取る事を実現した.
著者
平山 久雄
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.42-68, 1966-06

We divide the labial and gutteral syllables with the medial /-i-/ of Ancient Chinese into three classes; (The phonemic interpretation is prof. Mineya’s. cf. Gengo Kenkyu 22/23 and 31) class A: syllables with the front vowel /a/ or /e/ and with /j/ as the palatalizing element of initials. class B: syllables with the front vowel /a/ or /e/ but without /j/. class C: syllables with the back vowel /ɑ/ or /ʌ/,There can be found in the fanch‘iehs of Ch‘iehyün a kind of selection between the resultant word and the upper ch‘ieh word concerning the classes to which they belong, i.e. the class of the resultant word A B C the class of the upper ch‘ieh words AorC BorC CAs these selections are quite precise, it is possible to use them as a criterion to decide the phonemic values of the rimes 蒸職 and 之 which remain yet unsettled. The results we have obtained are as follows; i) The rimes 蒸職 had the values of /-ieŋ, -iek, -iuek/ (class B) under the labial initials, the gutteral initials of hok’ou and the retroflex initials (正歯音二等), while under the remaining conditions they had the values of /-iʌŋ, -iʌk, -iuʌk/ as have been assumed before. ii) The rime 之 had the value of /-iʌɯ/ (the phoneme /ɯ/ is newly assumed to interpret this rime.), the phonetic value of which might be [-iěɩ] or [-iɩ].The reconstructions mentioned above are also supported by the study of fanch’iehs contained in the Tunhuang fragments of Maoshiyin (毛詩音), and by the regularity of correspondence to Archaic Chinese.
著者
安細 勉 松山 博明 小林 邦勝
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.75(2001-CSEC-014), pp.53-58, 2001-07-25

NP完全問題の一つである巡回セールスマン問題を公開鍵暗号に応用した巡回セールスマン暗号のアルゴリズムを提案する。初めに,ナップザック暗号や巡回セールスマン暗号で用いる秘密鍵について検討し,次に,秘密鍵から公開鍵を生成する変換法について考察する。また,暗号化の方法について検討し,最後に,組合せ理論に基づく暗号の安全性について考察する。
著者
大宮 明子
雑誌
十文字学園女子大学紀要 = Bulletin of Jumonji University (ISSN:24240591)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.119-131, 2021-03-28

カナダは2 言語教育が進んでおり、その取り組みは、2020年度から小学校5 年生から英語教科化が始まった日本における英語教育に対して一定の示唆を与えると思われる。10州と3 つの準州から成るカナダは連邦レベルでは英語とフランス語が公用語とされているが、2 つの州と1 つの準州及び首都オタワ付近以外の地域では、カナダ国民は日常生活でフランス語を使う機会は非常に少ない。学齢期においては、公用語がフランス語であるケベック州では英語が、公用語が英語であるその他の州ではフランス語が、必修科目となっている。本稿は現在のカナダの英語圏において、第二言語としての英語及びフランス語の学びがどのようになされているのか、それらの学びにおいてどのような課題があるのかを述べた。 まず第二言語としての英語の学びにおいては、母語または家庭で話される言語が英語でない子どもたちが対象となるが、英語圏のオンタリオ州教育省は指針の中で、学校や家庭において母語をサポートし続けることが英語の学びに繋がることを述べている。 また第二言語としてのフランス語の学びにおいては、コアフレンチ及びイマージョン教育プログラムが設定され、子どもや保護者の希望によってプログラムを選択することができる。イマージョン教育の開始年齢やどの科目をフランス語で学ぶかについて、同一州内でも地区により異なる。その具体例をいくつか挙げるとともに、バイリンガルになるために有効とされるイマージョンプログラムに参加しても、継続し続けることは難しいという現状を示した。また、学齢期に英仏のバイリンガルであっても、卒業後もバイリンガルであり続けることの困難さも明らかになった。 このようなカナダでの二言語教育の取り組みから、日本における英語教育に対してどのような示唆を得ることができるか、について論じた。
著者
横山 嘉子 藤原 しのぶ 岩崎 有希 白石 弘美 加納 和孝
出版者
聖徳大学
雑誌
研究紀要 = Bulletin of Seitoku University, Bulletin of Seitoku University Junior College (ISSN:21876843)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.77-83, 2019

要旨 【目的】本研究では牛乳清中のLPS/TLR 4シグナル抑制分子の検索を目的とした。【方法】TLR 4/CD14/MD2-HEK293 細胞及びRAW264.7 細胞を用い、LPS/TLR 4シグナルに対する乳清の阻害効果を調べた。【結果】乳清溶液では、LPS/TLR 4シグナルを介した、TLR 4/CD14/MD2-HEK293 細胞でのSEAP 発現、及びRAW 264.7 細胞接着の阻害が確認された。さらに、Superdex 75 10/300 GL クロマトグラフィーにより、LPS 刺激で誘導されるTLR 4/CD14/MD2-HEK293 細胞のSEAP 発現、及びRAW264.7 細胞からのTRAP 陽性多核巨細胞の形成を抑制する、proteinase K 感受性の分子量約7,000 の画分が得られた。【結論】乳清中に、従来報告のない分子量約7,000のLPS/TLR 4シグナル抑制分子の存在を見出した。
著者
松井 彩奈 西元 康世 公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 千里金蘭大学 看護学部
巻号頁・発行日
vol.14, pp.163-170,

子どもの入院に家族が付き添う場合は多く,その家族に対する看護の必要性は,家族看護実践の課題のひとつである.子どもの入院に付き添う家族ついての研究は,親の思い,付き添い環境の実態について述べられているものは多数あるが,その負担を系統的に分類したものはみられない.本研究の目的は,子どもの入院に付き添う親はどのような負担を感じているかを整理し,現状を明らかにすることである.さらに得られた知見から,具体的な家族支援について検討する.医中誌Webのデータベースを用いた文献検索を実施した.「入院」「小児」「家族」「付き添い」「親」「負担」の用語を用いて論理積で検索を行った.結果,17本の文献が該当した.家族が実際感じている負担の内容を分析するために,対象者が家族ではないものなどを除外し,最終的に該当した論文13本を分析対象とした.対象文献をベレルソンの手法を用いて内容分析を実施した.対象文献より,子どもの入院に伴う負担に関する不安や苦痛,希望が表現された文脈を抽出してデータ化し,文脈単位とした.文献より,子どもの入院に付き添う親の負担について述べられた文脈を抽出した結果,163文脈単位が抽出された.それらをサブカテゴリ(記録単位)化し,それぞれ類似した内容ごとにまとめ,【子どもの療養環境への不満】【子どもが療養生活環境にいることに伴う親の身体的苦痛】【家庭,他の家族員に関する心配,苦痛】【看護職者への不満】【子どもが療養生活環境にいることに伴う親の精神的苦痛】【入院そのものに対する不安】【子どもの病気に対する不安】【看護職者以外の医療従事者に対する不満】【経済的な負担】【社会的活動に対する不安】という10のカテゴリが形成された.最も多かったのは【子どもの療養生活環境への不満】のカテゴリで全体の32%を占めた.次に多かったものが,【子どもが療養生活環境にいることに伴う身体的苦痛】のカテゴリで17%を占めていた.子どもの入院時,付き添う家族の基本的欲求が制限されており,看護職として積極的に看護介入していく必要性が考えられた.特に,負担として多く挙がっていた付き添い環境,付き添いに伴う家族の精神的負担,子どもの病気の受容などの負担に対して,看護職は親がこのような負担をもちながら付き添う現状を理解し,早急な改善を目指す必要があるだろう.また,治療に関する説明だけではなく話の傾聴や親の頑張りを認めるような関わりが必要であることが考えられた.
著者
竹田 正幸 篠原 歩
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.763-769, 2002-07-15

テキストデータを圧縮したままパターン照合を行う「圧縮テキスト上でのパターン照合」が新しい研究課題として脚光を浴びるようになった.本稿では,この課題に関する最新の研究成果について,理論と実用の両面から解説する.
著者
御子柴 清志 Kiyoshi Mikoshiba
雑誌
経営政策論集 = Business management review (ISSN:13474634)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.109-126, 2005-02-01

人的サービスに依存する度合の大きいホスピタリティ産業にあっては、従業員の満足度が会社業績に直結する。従業員を内部顧客として捉え、従業員の満足度を向上させるために従業員満足度調査の導入を提唱したい。