著者
花田 伸一
出版者
九州地区国立大学間の連携事業に係る企画委員会リポジトリ部会
雑誌
九州地区国立大学教育系・文系研究論文集 = The Joint Journal of the National Universities in Kyushu. Education and Humanities (ISSN:18828728)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.No.1, 2022-03-31

日本においては主に1990年代後半から地方創生や観光促進等の文脈とも深く関わりつつ、他国とは異なる独特な形での「地域アート」(ある地域名を冠した美術のイベント)が展開されており、佐賀県内においても同様の動きが複数見られる。本稿ではこれまでまとまった形での記録がほぼ残されていない佐賀県内における地域アートについて、特に2000年以降の事例に関する情報をできる限り整理した上で概観を試みる。 具体的には、佐賀市内の事例として、美術グループ「VAROC」(2004-12年)の活動、佐賀大学生が商店街と共同で取り組んだ『アートコンプレックス』(2008)および『呉福万博』(2009-12年)、『コミニカ展』(2011、12年)について、有田町内の事例として、『庭園陶彫展 CERAMIC SCULPUTURE IN GARDEN』(2005年)、『有田現代アートガーデンプレイス』(2006-13年)、『Media Butterfly in Arita』(2014、15年)について、それぞれ入手しえた資料をもとに情報を整理し、概観する。
著者
李 康穎 Batjargal Biligsaikhan 前田 亮
雑誌
じんもんこん2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.125-130, 2017-12-02

篆文は今でも広く使用されている古代の書体である.しかしその字形は抽象性が高いため,専門的な知識を持たない人にとって篆文字形を読むのは非常に難しい.また,現存の篆文の記載に使用する文献資源が極めて少ない状況であり,利用できる篆文の画像データも不足しているため,篆文に基づくOCR システムもほとんど存在しない.本研究は小篆の篆文書体を研究対象とし,白川静の漢字研究の成果に基づく「白川フォント」中の小篆書体の文字と「説文解字フォント」中の白川フォントと対応する文字をGenerative Adversarial Network に基づくzi2zi モデルの入力データとして利用し,生成された画像の変形処理を行う.処理した後の画像ファイルを訓練データとして使用し,文字認識の実験を行った.本論文では,生成した画像を手書き篆文の認識モデルの訓練データとして用いる手法を提案し,今後の手書き篆文文字の検索支援の実現に向けた基礎を構築することを目指す.
著者
高 継芬
出版者
九州看護福祉大学
雑誌
九州看護福祉大学紀要 = The Journal of Kyushu University of Nursing and Social Welfare
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.35-45, 2017-03

上代、東国出身の防人やその家族が詠んだ歌が防人歌である。父母・妻子・恋人との別離の悲しみや望郷・旅情などが素朴に歌われていて、読む人の心を打つ歌が多い。《万葉集》中に収められた防人および防人の家族たちの歌〈東歌(あずまうた)〉とともに,古代東国の民衆の歌として貴重な作品群である。 中国にも『詩経』や『唐詩選』の中に万葉集の防人歌と似ている歌がある。小雅の「采薇」は詩経の中でも最も美しい詩とされているが、「出車」、 と並んで従来の解釈では、これは という遊牧民の侵入によって、西周が衰亡したことを嘆いた歌とされてきた。まさしく防人の歌である。 中国・唐代の玄宗皇帝の治世(8世紀)は盛唐と呼ばれて国力も充実し、その支配は東北辺境の幽州(まだ中華の中心ではなかった現在の北京一帯)から西北のタクラマカン砂漠周辺にまで及んでいた。「辺塞詩」とはこれら都から遠く離れた「辺塞」での異民族との戦いを舞台にした「防人歌」のことで、家族や友人との別れ、過酷な自然、望郷、出征の悲しみなどが歌われている。 国が違っても、同じ人間であり、その気持ちを日本の「防人歌」のような歌に託したかった心情は同じなのではないだろうか。このような観点から今後、日本の「防人歌」と紀元前に中国を治めた古代王朝「周」の時代の「詩経」及び漢詩や文選との比較研究を行いたいと考えている。その研究を行うためにも「防人」という語の由来について考察する必要があり、本稿は「防人」という語、中国の防人、日本の防人について論じる。
著者
平川 南
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.118, pp.253-281, 2004-02-27

中世の幕府は、なぜ鎌倉の地に設置されたのか。おそらくは、鎌倉の地を経由する海上ルートは、中世以前に長い時間をかけて確立されてきたものと想定されるであろう。小稿の目的は、この歴史的ルートを検証することにある。最近発見された、三浦半島の付け根に位置する長柄・桜山古墳は、三浦半島から房総半島に至る四〜五世紀の前期古墳の分布ルートを鮮やかに証明したといえる。また、八〜九世紀には、道教的色彩の強い墨書人面土器が、伊豆半島の付け根の箱根田遺跡そして相模湾を経て房総半島の〝香取の海〟一帯の遺跡群で最も広範に分布し、さらに北上して陸奥国磐城地方から陸奥国府・多賀城の地に至っている。また古代末期の史料によれば、国司交替に際しても、相模―上総に至る海上ルートが公的に認められていたことがわかる。このルートは『日本書紀』『古事記』にみえるヤマトタケルの〝東征〟伝承コースと符合する。これは古東海道ルートといわれるものである。上記の事例の検討によって、ヤマトから東国への政治・軍事・経済そして文化などの伝来は、古墳時代以来伊豆半島・三浦半島・房総半島の付け根と海上を通る最短距離ルートを活用していたことが明らかになったといえる。この西から東への交流・物流の海上ルートの中継拠点が鎌倉の地である。中世の鎌倉幕府は、そうした海上ルートの中継拠点に設置され、西へ東へ存分に活動したと考えられる。
著者
藤原 巧未 長尾 和彦
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.501-502, 2019-02-28

日本の学生の学力低下問題の原因の一つとして授業中の居眠りがある。授業中に居眠りをする原因として、ゲームやSNS等の利用による夜更かしや、授業内容が単調でつまらないこと等が挙げられる。一方、米国のローレンス・バークレー国立研究所によると、人間の思考力はCO2濃度が2,500ppmを上回ると急激に低下すると確認された。このことから、居眠りの原因の一つとして室内CO2濃度の影響が関係するのではないかと推測した。そこで、本研究は、教室内の気温、湿度、CO2濃度、授業中に居眠りをしている学生の数を計測し、それらの関係の調査を行った。
著者
二宮 洸太 中村 聡史
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:21888752)
巻号頁・発行日
vol.2021-MUS-130, no.33, pp.1-8, 2021-03-09

音楽ライブに参加する観客は演奏に合わせてサイリウムを振る,ヘッドバンギングをするなど,アーティストや他の観客との一体感や非日常感を楽しんでいる.また,ライブの模様を,インターネットを通じて配信する配信ライブも多く行われているが,自宅でひとりで鑑賞することが多く,アーティストや他のファンとのかかわりや一体感が希薄化する問題がある.そこで,配信ライブ中の視聴者間の一体感を向上させることを目的に,ライブ中に行われるヘッドバンギングを媒介として,その動作を検知し,タイミングを視聴者間で共有するシステムを提案する.本研究ではポケットに入れたスマートフォンのセンサデータを使い,ヘッドバンギングの予備動作からヘッドバンギングの推定に関する検討を行った.具体的には,ヘッドバンギング中のセンサデータに関するデータセット構築を行い,機械学習により,予備動作からヘッドバンギングの推定を行った.その結果,93.5% の精度で推定を行うことができた.