著者
赤阪 麻由 サトウ タツヤ
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.55-74, 2015

本研究では,病者の生を厚く記述するライフ・エスノグラフィの手法を用いて,慢性疾患病者とその関係者が集う場における場の意味を明らかにすることを目的とした。慢性疾患の具体例として炎症性腸疾患に注目し,当該疾患の病者でもある筆者が立ち上げた場を本研究のフィールドとする。研究1では,参加者にとっての場の意味として【同病者同士ならではの話ができる】【「患者/関係者」という枠組みを超えて自分としていられる】【主体的な活動のきっかけ】【自己充足的な場】があり,それらの意味をつなぐ独特の文化として【自由に気兼ねなく本音で話せる雰囲気】【それぞれが主役】【形にとらわれない】が共有されていると特徴づけられることが示された。研究2では,場と共にある「研究者」「実践者」「当事者」を中心とした多重なポジションをもつ筆者の実践の在り方を筆者の視点から記述した。これら2つの視点からの記述を通して,この場が筆者を含め,集う人にとって「そのままの自分」としていられる場であることが示唆された。本研究は,フィールドにおいて多重なポジションを持つ筆者が自らの実践を発信していくにあたって,単なる「自分語り」ではなく公共性を保ちつつ,さらに筆者自身の存在を捨象せずに記述する新たな方法論的枠組みを構築する試みである。
著者
佐藤 潤一 サトウ ジュンイチ Jun'ichi SATOH
雑誌
大阪産業大学論集. 人文・社会科学編
巻号頁・発行日
vol.12, pp.129-172, 2011-06

From 1990's, theories of Japanese Constitutional Law had been radically changed. The constitutional law is discussed by many books and articles of the political theory, history of law, and the philosophical theory. Constitutional theory is influenced by these theories. In this lecture note, I try to reconsider the theories of constitution interpretation, especially the historical aspects and comparative study about the constitutional theory of common law countries, e.g., U.K., Australia, Canada, New Zealand and South Africa.
著者
佐藤 郁夫 サトウ イクオ Ikuo Sato
雑誌
経済と経営
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.251-280, 1998-09-30
著者
佐藤 正弘 サトウ マサヒロ SATO MASAHIRO
出版者
西南学院大学学術研究所
雑誌
西南学院大学商学論集 (ISSN:02863324)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.335-351, 2016-03

インターネットが普及し始めた1990年代後半以降、我が国においても「コントロール革命」が起き、消費者の情報コントロール力が増大している。Shapiro(1999)によれば、コントロール革命とは、情報のコントロール力が政府、企業、そしてメディアから個人である消費者に移行したことを意味する。たしかにインターネットが普及する以前は、情報のコントロール力を握っていたのは政府、企業、そしてメディアであり、我々消費者たちは彼らが発信する情報を一方的に受信するだけの受け身の存在であった。しかし、インターネットの登場により、我々消費者も能動的に情報を発信することが可能となり、以前のようにただ情報を受信するだけの存在ではなくなってきた。例えば、近年では製品・サービスに不具合などがあった場合、消費者はtwitterやFacebookなどのSNS上で簡単にその情報を発信することが可能である。最近では、カップ焼きそば「ぺヤング」の中にゴキブリが混入していたことをtwitter上にアップした消費者のツイートが拡散したことによって、製造元のまるか食品が「ぺヤング」の販売中止を決定した。このように、消費者がインターネット上に発する情報が、企業の売上や経営などに多大な影響を与える時代、それがコントロール革命によってもたらされた現代の情報化社会である。そして、日本でコントロール革命が起きていることを知らしめた最初の事件は、1999年に起きた東芝クレーマー事件である。この事件によって、企業は消費者の苦情対応の重要性を痛感させられたのである。従来であれば、消費者が製品・サービスに不満を持って企業に苦情を言い、その対応が悪かったとしても、その情報は消費者の周囲の人々にしか拡散することはなかった。しかし、コントロール革命後の社会では、インターネットを通じてこれらの情報が簡単に日本中あるいは世界中に拡散してしまうようになった。そこで、企業は従来よりも苦情対応に細心の注意を払う必要に迫られ、苦情マネジメントの重要性が高まっている。しかし、苦情マネジメントに関する先行研究を振り返ってみても、苦情行動や苦情対応に対する研究は存在するものの、東芝クレーマー事件のような情報化社会を視野に入れた苦情マネジメントモデルは存在しないのが現状である。そこで、本稿の目的は、近年このように重要性が高まっている苦情マネジメントについて、2種類のVoice行動を考慮した新たなモデルを提案し、情報化社会の苦情マネジメント研究に貢献することである。本稿では、まず2章にて日本でのコントロール革命の契機と言われる東芝クレーマー事件について、その概観を整理し、インターネットの特性についても言及する。その後、2章では、東芝クレーマー事件、小林製薬、スターバックス・コーヒー、そして米マクドナルドの事例をもとに、2つのVoiceを考慮した苦情マネジメントモデルを提案する。最後に、4章では、本稿のまとめと今後の課題について述べることにする。
著者
春日 秀朗 宇都宮 博 サトウ タツヤ
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.121-132, 2014 (Released:2016-06-20)
参考文献数
36

本研究は,親から感じた期待が子どものどのような感情や行動を引き出し,それらが大学生の現在の自己抑制型行動特性と生活満足感にどのような影響を与えるのか検討することを目的とした。対象は大学生367名であった。質問紙調査により大学入学以前に親から感じた期待と期待に対して抱いた感情,行った行動を尋ね,自己抑制型行動特性及び生活満足感への影響を検討した。その結果,期待の認知形態により反応様式や生活満足感に差異が生じることが明らかになった。「人間性」・「進路」・「よい子期待」のいずれの期待も高く認知していた期待高群の大学生は,いずれの期待も感じなかった,もしくは人間性期待のみを感じていた大学生よりも負担感が高かったが,進路・よい子期待のみを感じていた大学生よりも期待に対して肯定的な反応をとっており,生活満足感も高かった。また自己抑制型行動特性から生活満足感への影響に関して,期待高群においては正の影響がみられた。これらのことから,期待が子どもに対しネガティブな影響を与えるのは,期待内容や程度とともに,子どもが期待をどのように認知しているのかが重要であることが明らかになった。期待高群において自己抑制型行動特性が生活満足感へ正の影響を与えていたことから,自らが望んで期待に応えた場合,自己抑制的な自身の性格を肯定的にとらえていることが示唆された。
著者
岡部 晋典 佐藤 翔 オカベ ユキノリ サトウ ショウ
出版者
情報メディア学会
雑誌
情報メディア学会研究大会発表資料(予稿集)
巻号頁・発行日
no.8, pp.19-22, 2009-06-27

近年,図書館情報学における大きな潮流にオープンアクセス運動がある.この運動を積極的に支援している財団がOpen Society Institute(開かれた社会財団)である.本稿では,OSIおよび彼らが中心となり宣言したBudapest Open Access Initiative(BOAI)の思想的背景を概観し,その思想が現在のオープンアクセス運動に如何に受容されているかを分析した.情報メディア学会 第8回研究大会 2009年6月27日(土) 会場:科学技術振興機構 東京本部