著者
佐藤 聖徳 サトウ キヨノリ Kiyonori SATO
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 = Shizuoka University of Art and Culture bulletin
巻号頁・発行日
vol.4, pp.153-162, 2004-03-31

デザイン基礎教育にとって、デッサン力習得がなによりも重要であることは言うまでもない事実である。しかし、デザインを専門課程とする高等教育に至るまでの間に、デッサン練習に関する系統立てた指導法が、これまでとても少なかった現実がある。義務教育期間の美術授業や高等学校美術では、受験指導体勢のカリキュラム等の都合で美術が軽視されがちになり、それぞれの現場の判断で、短時間の指導をされた程度であることが実情である。本論は、1970年代に10年近くに渡り、同じような問題を感じて問題提起をされた、カリフォルニア大学のべティーエドワード教授の理論を実践し、それに対して新たな提案を加えて、学生達と共に進めているデッサン指導に関する研究経過報告である。It goes without saying that acquiring drawing skill is the most important factor in basic design education. However, the reality is that the use of systematic instruction methods for drawing training has been very limited until students embark on specialized higher education in design studies. The situation is that, because of our current education curriculum, etc., that is based upon entrance exam guidance, there is a tendency for art classes in our elementary, junior high and high schools to be treated lightly and, depending on the various judgments of schools, for only short-term instruction to be provided. Out of a similar sense about the issue, Professor Betty Edwards of the California State University developed a theory on drawing instruction during a period of close to ten years in the 1970s. This essay reports on the research which we conducted with our students - and which incorporated our own propositions - into the practical application of Professor Edwards' theory.
著者
佐藤 伸郎 サトウ ノブロウ Sato Noburo
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科 社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.143-161, 2016-03-31

森敦が提起した境界論を考察する。かつて龍樹は空を考察し、その実践方法として結跏趺坐を提起した。また、石津照璽は、第三領域を考察し、その実践方法として絶体絶命の生命的危機を提起した。宮澤賢治は、第四次を考察し、その実践方法として農業従事を提起した。筆者はこれまで石津照璽の第三領域、宮澤賢治の第四次を龍樹の空の読み替えと捉え、研究をおこなってきた。森の用語でいえば、空は現実である。現実は流動し、言語はそれを固定化させる。ここに本来の存在と認識に矛盾が生じる。ひとは存在として流動するものなのに、認識するにはそれを固定化するほかはない。森の境界論は、言語によって固定化された現実を、言語によって流動化させる方法である。森は、この方法によって、ほんとうの自己に到達しようと試みたのである。
著者
片岡 純 カタオカ ジュン Kataoka Jun 佐藤 禮子 サトウ レイコ Sato Reiko
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.1-8, 2009-12
被引用文献数
1

本研究の目的は,外来治療期から寛解期において,悪性リンパ腫患者が病気を克服するための統御力を獲得するプロセスを明らかにすることである。悪性リンパ腫に対する外来治療を終えた通院患者で研究参加に同意の得られた20名を対象に,面接法と参加観察法により資料を収集し,エスノグラフィーの手法を用い分析を行った。悪性リンパ腫患者の統御力獲得は,【[血液のがんではもう駄目だ]の思いが《治せるがんなら治すしかない》思いへ転換する】,【悪性リンパ腫を治すための予定治療を何が何でも完遂させる】,【がん治療を受けながら地域での生活の正常な営みを目指す】,【つきまとう不安を押しのける】,【《人に頼ったって駄目,自分で頑張るしかない》の思いと《支えてくれる人のためにも頑張ろう》の思いが共在する】【命・健康の大切さを肝に銘じて希求する有り様で生きる】,【治療後に残るダメージを軽減して通常生活を取り戻す】,【《自分なら乗り越えられる》思いを獲得する】など9つの局面からなるプロセスであることが明らかになった。患者が悪性リンパ腫罹患を契機として統御力獲得に至るには,①病気克服の意志決定,②主体的療養態度の形成,③出来事の影響を軽減できた自己の能力に対する肯定的評価,④コントロール感覚の獲得,の4つの課題を達成する必要がある。患者の統御力獲得を促進するためには,これらの4つの課題の達成を支援する看護援助が必要である。The purpose of this study was to describe the process by which malignant lymphoma patients in an ambulatory setting acquired mastery to overcome their illness. Twenty outpatients, who finished the treatment for malignant lymphoma in an ambulatory setting, participated in this study. Data were collected by a semi-structured interview and the participant observation, and analyzed using ethnography. Mastery was acquired through nine aspects. The nine aspects were: [Deciding to cure the malignant lymphoma by their own power, if it can be cured], [Completing the schedule of treatment for curing a malignant lymphoma by any means], [Aiming at living a normal life in the community, while undergoing cancer treatment], [Pushing aside the anxiety of hanging around me], [Living by how to desire, as remembering the importance of health and life], [Recovering a normal life by reducing damage after the treatment], [Permitting the anxiety of recurrence and ambiguity], [Acquiring the confidence of "I can overcome difficulties with my own power in the future"], e.t.c. In ordered for malignant lymphoma patients to acquire mastery, it is indispensable to satisfy four tasks. Four tasks are, (1) decision making to overcome the illness, (2) making a positive attitude, (3) fostering the self-efficacy as a result of coping with a problem, and (4) gaining a sense of control. Therefore it is important to provide nursing interventions that assist malignant lymphoma patients to satisfy these tasks on their own.
著者
研 攻一 佐藤 由紀 トギ コウイチ サトウ ユキ TOGI Kohichi SATO Yuki
出版者
羽陽学園短期大学
雑誌
羽陽学園短期大学紀要 (ISSN:02873656)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.23-36, 2014-02

遊びの中で造形能力を育てる保育のあり方について検討した。風船を使ったダルマ作りの技術を、お化け屋敷で使う生首や火の玉作りに応用していく際の、子どもたちの遊びの質や、行動の自発性やイメージの拡大と深化の程度について検討した。その結果、次のことが得られた。(1)風船を使った基本的な技術の習得場面のダルマ作りでは、子どもたちは遊び条件を満たさずに、保育者主導の保育が展開された。その際には、行動の自発性やイメージの拡大は余り見られなかった。(2)ダルマ作りの応用場面の生首と火の玉作りでは、遊びの条件を満たし、子どもたちが自発的に意見やイメージの交換を図り、集団で新しい工夫をしてお化け屋敷で必要なものを作りだした。(3)具体的な目標(生首や火の玉)が遊びの中で設定されると、子どもたちの自発性やイメージの拡大が促進されることが見られた。
著者
金丸 友 中村 伸枝 荒木 暁子 中村 美和 佐藤 奈保 小川 純子 遠藤 数江 村上 寛子 Kanamaru Tomo Nakamura Nobue Araki Akiko Nakamura Miwa Sato Naho Ogawa Junko Endo Kazue Murakami Hiroko カナマル トモ ナカムラ ノブエ アラキ アキコ ナカムラ ミワ サトウ ナホ オガワ ジュンコ エンドウ カズエ ムラカミ ヒロコ
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.63-70, 2005-06-30
被引用文献数
2

本研究は,慢性疾患をもつ学童・思春期患者の自己管理およびそのとらえ方の特徴と影響要因を明らかにし,看護援助に有用な枠組みを構築することを目的とし,Patersonのmeta-studyの方法を用いて26文献を分析した。その結果以下のことが導かれた。慢性疾患の学童・思春期患者の自己管理のとらえ方には,「本人の望む生活」と「疾患の理解・適切な療養行動」のギャップの大きさが影響していた。ギャップが大きな患者は,生活と療養行動の両者を大切なものと考え葛藤を感じており,ギャップが小さい患者は肯定的・葛藤のないとらえ方であり,ギャップが不明瞭な患者は受け身・不確かにとらえており,「疾患の理解・適切な療養行動」を受け入れられない患者は,否定的にとらえていた。葛藤を感じている患者は,親や友達からのサポートを得て「主体的・問題解決」の自己管理を行っており,療養行動を適切に行いながら本人らしい生活を送っていた。肯定的・葛藤のない患者のうち親や友達からのサポートを得ている患者は,時間の経過により自己管理に慣れ療養行動を適切に行っていたが,親や友達からのサポートが不足していると,「受け身・逃避・否認」の自己管理となり,不適切な療養行動によって症状が悪化したり生活に不満をもっていた。受け身・不確か,または否定的にとらえていた患者は,親や友達からのサポートが不足しており,「受け身・逃避・否認」の自己管理となり,不適切な療養行動によって症状が悪化したり生活に不満をもっていた。「本人の望む生活」と「疾患の理解・適切な療養行動」のギャップの大きさと,親・友達からのサポートをアセスメントし,看護援助を行っていく重要性が示唆された。The purpose of this study was to investigate the characteristics of self-care and associated perceptions among Japanese school-aged children and adolescents with chronic conditions and influencing factors, and to develop a framework for effective intervention, analyzing 26 articles using meta-study. The following results were obtained: 1) Perceptions of school-aged children and adolescents with chronic conditions were affected by size of the gap between 'The daily life desired by the child' and 'Performing self-care properly'. Children displaying a large gap experienced conflict, those with a small gap were no conflict, and those with an unclear gap were passive and uncertain. Children denying 'Performing self-care properly' were negative. 2) Children who got support from parents and friends could live as they wished, continuing self-care properly with or without conflict. 3) Children with an unclear gap and children denying 'Performing self-care properly' were unable to get support from parents and friends, and were unsatisfied with their life and displayed poor self-care. Assessments of size of the gap between 'The daily life desired by the child' and 'Performing self-care properly', and support from parents and friends appear important.
著者
佐藤 宗子 サトウ モトコ Sato Motoko
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.438-431, 2008-03

これまで戦後の「少女」向け翻訳・再話叢書を検討してきた中からは、行動的な少女造型が浮かび上がってきていた。今回は、その先にどのような結末が予定されているのかをあわせて念頭に置き、戦前の『少女倶楽部』に連載された、佐藤紅緑の「緑の天使」を中心に検討することとした。ディケンズ『オリヴァー・トゥイスト』を原作とするこの翻案に登場する三人の少女、雛子の創造およびお玉(玉子)と雪子の改変された造型を分析することを通して、少女の行動力がハッピー・エンドへの改変をも導いたこと、同時に大団円ではいずれも結婚が報告されていることの意味を考察した。行動する少女の行く末として結婚が予定されることに関しては、戦後の「講談社マスコット文庫」などにも言及し、時代性の中での翻訳者・再話者の意識のあり方について、その可能性と限界とを指摘した。
著者
佐藤 宗子 サトウ モトコ Sato Motoko
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.510-503, 2013-03

一九六四年から刊行が開始された小学館「少年少女世界の名作文学」は、先行して一九五〇年代に刊行された創元社と講談社の二つの「地域割り」叢書の形式を受け継ぐ形式をとるものであった。しかし、先行二叢書とは内容と外観の双方で、かなり異なる様相となっている。そこで「地域割り」の巻数の割り当て方、収録作品の傾向、訳出の方法等の特徴を検証し、その後、とくに本体にはめ込まれた表紙絵に焦点化しながら、視覚的情報の盛り込まれ方にも目を向けた。その中で、一般文学からの作品収録が多い半面、いわゆる「和文和訳」の方式が多用されることがもたらす弊害が生じていること、表紙を飾るカラーの泰西画群が形成する別種の「教養」が想定されていることなどを明らかにした。また、こうした形態の叢書の出現が、経済成長を背景にして、児童文学が産業として発展していく中で見られる点にも着目した。