著者
松永 梓 大畑 光司 矢野 生子 橋本 周三 南 純恵 中 徹 坪山 直生
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.B3P1286, 2009

【目的】脳性麻痺者が有する変形の一つに脊柱側弯が挙げられる.脊柱側弯が脳性麻痺者に及ぼす影響として、座位、立位の不安定、摂食嚥下障害、呼吸障害、消化器系の障害、痛み、ROM制限等様々な障害が挙げられる.脊柱側弯の重症度を示す指標としてcobb角が用いられる.cobb角の測定にはX-p画像より測定する必要があるため、臨床的に容易に測定することはできない.したがって、脊柱の変形を容易に測定する方法を確立することの重要性は高いと考えられる.本研究の目的は、頚椎と骨盤との距離の短縮率を求め、その短縮率とcobb角との関係を検討することである.<BR>【対象】重症心身障害児・者施設に入所中の成人脳性麻痺者13名(男性8名、女性5名、平均年齢36.4±7.1歳)を対象とした.本研究に参加するにあたり、保護者の文書による同意を得て行った.<BR>【方法】第7頚椎棘突起から両側上後腸骨棘を結ぶ線の中心までの距離を頚椎―骨盤間距離とし、2点間を脊柱に沿って計測したものと、2点間の直線距離の2つの長さを求めた.2点間の直線距離を脊柱に沿って計測した距離で除したものを頚椎―骨盤間の短縮率とし、姿勢による差異を検討するため、側臥位と座位とでの短縮率を計測した.cobb角の値はCT画像より胸椎レベルと腰椎レベルに分けて測定し、その合計を代表値として求めた.統計処理として、姿勢の違いによる短縮率の差を対応のあるt検定を用いて比較した.また、それぞれの姿勢での短縮率とcobb角との関係をpearsonの相関係数を求めて調べ、有意水準を5%未満とした.<BR>【結果】頚椎―骨盤間距離の短縮率は側臥位と座位とで有意な差が認められなかった.側臥位と座位における短縮率とcobb角との間に有意な相関(側臥位:r=-0.57、p<0.05、座位:r=-0.68、p<0.01)が認められた.<BR>【考察】本研究の結果では、頚椎―骨盤間距離の短縮率は姿勢による違いがなかったことが示唆された.このことにより、側臥位、座位の姿勢の違いが頚椎―骨盤間距離の短縮率に大きな影響を与えないことが考えられる.頚椎―骨盤間距離の短縮率とcobb角との間には有意な相関が認められ、短縮率が脊柱の変形の程度を反映する測定方法としての妥当性を有することが示唆された.短縮率は第7頚椎棘突起から骨盤までの距離を測定したものであり、胸椎や腰椎など部分的な変形を明確にすることはできない.しかし、短縮率はメジャーのみで測定できる簡便な方法であり、臨床的に応用しやすく有用性が高いと考えられる.今後は、症例数を増やして信頼性の検討が求められる.
著者
上田中 徹
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.342, 2016 (Released:2016-04-01)
参考文献数
3

硫黄やリン,ヨウ素は容易に超原子価状態を形成することが知られている.なかでも超原子価ヨウ素は幅広く研究されており,シアノ化やアルキニル化,アリール化などに用いる求電子的官能基化剤として用いられている.一方で,超原子価硫黄化合物を基盤とした求電子的官能基化剤はこれまでほとんど報告がなく,未開拓分野であった.このような背景下,Alcarazoらは,超原子価ヨウ素反応剤と同じT字構造を有する超原子価硫黄化合物ジハロイミダゾリウムスルフランに着目し(図1(I)),新規求電子的官能基化剤の開発に成功したので,以下に紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Zhdankin V. V., Stang P. J., Chem. Rev., 108, 5299-5358 (2008).2) Arduengo A. J., Burgess E. M., J. Am. Chem. Soc., 99, 2376-2378 (1977).3) Talavera G. et al., J. Am. Chem. Soc., 137, 8704-8707 (2015).
著者
保本 孝利 中 徹 實延 靖 北川 雅巳 中村 晋一郎 岡田 和義 横山 大輔 速水 明香 谷山 貴宏 中嶋 正明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P3145, 2009

【目的】スパズムが生じた筋に対して圧迫によるストレッチ(PS)を加えると,スパズムが緩和することはよく経験するところである.しかし PSを施行する際の有効な施行時間についてはあまり明らかではない.そこで今回,筋スパズム緩和に有効なPS施行時間について,筋硬度,筋組織酸素飽和度(StO<SUB>2</SUB>)などの諸点から比較検討したので報告する.<BR><BR>【方法】対象は立ち仕事の多い健常成人男性6名(29.0±4.2歳)とし,就業後に同一施術者が被検者の腓腹筋中央部に対してPSを腹臥位にて行った.PS時間は10,20,30,60秒とし,各施行は異なる日に行った.各施行の直前,直後,一時間後に,筋硬度,StO<SUB>2</SUB>,組織内ヘモグロビン量(Total Hb)を測定した.筋硬度はASKER社製・DUROMETERを,StO<SUB>2</SUB>およびTotal Hbは近赤外線分光器(オメガウェーブ社製,BOM-L1TR)を用いた.併せて,足関節の背屈のROMを用手計測,筋疲労度(MF)を主観的評価VASにて調べた.統計処理にはフリードマン検定を使用し有意水準5%とした.なお,全ての被験者には本研究の趣旨を説明し,同意を得た上で実施した.<BR><BR>【結果】筋硬度については10,20秒では変化がなく,30秒では,直後で減少(p<0.05)し,一時間後は直前の状態に戻った.60秒の場合は,直後で減少(p<0.01)し,一時間後は直前よりも減少傾向(直前や直後との間に有意差が無い状態)にあった.StO<SUB>2</SUB>は全ての施行時間で直後に増加傾向にあるが有意差は無く,一時間後は直前の状態に戻った.Total Hbは全ての施行時間で変化は無かった.ROMは直後で増加傾向にあるが有意差は無く,一時間後では直前の状態に戻る傾向にあった.MFは全ての施行時間で直後のみ減少(10,20,60秒:p<0.01,30秒:p<0.05)した.<BR><BR>【考察】筋スパズム緩和に有効なPS施行時間としては,筋の柔軟性を短期的に向上させるには30秒間が必要であること,60秒間では施行直後に筋の柔軟性を持続させる可能性があることが今回の研究により示唆された.また,結果は以下についても示唆している.1-筋の柔軟性の変化は血流動態のみで規定されない.2-下腿三頭筋へのPSは短期的に足関節背屈の可動域を増加させる可能性はあるが,持続効果は無い.3-PSは刺激時間に関係なく施行直後に心的なリラクセーションを与える.
著者
本田 喬 青崎 正彦 田中 徹 内田 達郎 堀川 良史 石塚 尚子 内山 通子 大木 勝義 田中 直秀 上塚 芳郎 岩出 和徳 金子 昇 木全 心一 関口 守衛 広沢 弘七郎
出版者
The Japanese Society on Thrombosis and Hemostasis
雑誌
血液と脈管 (ISSN:03869717)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.609-614, 1987-12-01 (Released:2010-08-05)
参考文献数
7

We administered tissue-type plasminogen activator (t-PA) intravenously to 10 patients with acute myocardial infarction (AMI) within 6 hours after onset of symptoms, and then examined the state of reperfusion by coronary arteriography (CAG) and observed changes in blood coagulation and fibrinolytic activity to evaluate their effects. AK-124 (by Asahi Chemical Industry and Kowa Co., Ltd. in collaboration), a t-PA produced by tissue culture of normal human lung cells, was given in dosage of 48, 000-576, 000 A. K. units by intravenous infusion over 30-45 minutes. In 7 patients who received t-PA reflow or improved flow was detected on CAG. In t-PA treated patients, euglobulin lysis activity clearly increased, euglobulin lysis time clearly shortened, and D-dimer increased. Levels of circulating fibrinogen and α2-plasmin inhibitor decreased after treatment with t-PA by an average of 12%, 14% of baseline values respectively, but plasminogen showed no detectable change. A hematoma at the site of the catheter insertion was observed in one patient. These observations suggest that t-PA has a higher specificity for fibrin bound plasminogen than for plasminogen and prduces coronary thrombolysis without causing systemic fibrinolysis at least with the present dosage.
著者
有馬 雄祐 大岡 龍三 菊本 英紀 山中 徹
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.61-68, 2014-01-01 (Released:2014-03-18)
参考文献数
21
被引用文献数
1

地球温暖化など気候変動が進んでおり,建築は気候から多大な影響を受ける.気候に適した設計を行うために,気温や日射などの気象要素から成る標準気象データを用いた熱負荷計算が行われる.現在は,各地域の過去の観測値を基にして作成された標準気象データを使用することが一般的である.しかし,建築物は長期にわたり使用され,その間に気候は変動する.そのため,将来の気候へ適応した,長期的な省エネを実現する建築設計のためには気候変動を考慮した熱負荷計算が必要である.そこで本研究では,GCMの予測する気象データを領域気象モデルによって力学的ダウンスケーリングを行い未来の標準気象データの作成する.
著者
渡邉 俊平 片山 統裕 辛島 彰洋 田中 徹 虫明 元 中尾 光之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス
巻号頁・発行日
vol.113, no.314, pp.13-18, 2013-11-15

本研究では,脳への電極埋め込み手術中に観測される細胞外電位信号と電極の位置情報を統合し,脳内の構造と状態の時間的変化を可視化する手法(脳内LFPマッピング)を提案する.この手法では,コンピュータ制御された電動マニピュレータで位置決めされたシリコン製多点リニア電極で細胞外電位信号を記録し,各記録点の多細胞活動及び局所フィールド電位の時空間ダイナミクスを解析する.その結果を時間及び空間を軸とする平面上にマッピングする.本手法をウレタン麻酔下のマウスの大脳に提案法を適用することにより,ニューロン活動,海馬θ波,γ波,シャープ波およびシャープ波リップルの時空間的パターンを視覚化する.これにより,本手法が脳内の構造と状態の時間変化を把握するために有用であることを示す.
著者
笹木 悠一郎 鈴木 拓志 岩上 卓磨 谷 卓治 長沼 秀樹 木野 久志 HYTTINEN JARI KELLOMAKI MINNA 田中 徹
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.Supplement, pp.O-253-O-254, 2014 (Released:2014-10-04)

In this study, we have developed a chip-surface stimulus electrode array for fully-implantable subretinal prosthesis chip. To realize visual restoration with high resolution, stimulus electrodes should be miniaturized and arrayed with high density. When we miniaturize them, however, their electrochemical impedances become higher and their amount of charge injection become smaller. Additionally, as the number of electrodes increases, it becomes difficult to make electrical connection to each pixel of the retinal prosthesis chip and each electrode by electrical wiring. To overcome these problems, we have developed the stimulus electrodes that have low electrochemical impedances and large charge injection capacities, and established a fabrication process of chip-surface stimulus electrode array. We fabricated the stimulus electrodes made of extremely porous platinum which had large-surface-area compared with conventional Pt. We also fabricated the chip-surface stimulus electrodes array on the subretinal prosthesis chip which surface was rough and covered with insulator film.
著者
山口 千美 小川 由英 諸角 誠人 田中 徹 北川 龍一
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.311-318, 1987 (Released:2010-07-23)
参考文献数
27

ラットの実験的蓚酸カルシウム尿路結石症を用いて, クエン酸回路中間体のリンゴ酸, コハク酸およびそれらのナトリウム塩, 重炭酸ナトリウムの結石形成抑制におよぼす影響を比較検討した. リンゴ酸ナトリウム群, コハク酸ナトリウム群, 重炭酸ナトリウム群では, 尿中クエン酸排泄および尿中クエン酸濃度は増加したが, リンゴ酸群, コハク酸群では寧ろ減少した. リンゴ酸ナトリウム群, コハク酸ナトリウム群では, 著しい結石形成抑制作用を認めたが, 重炭酸ナトリウム群ではそれ程強くなかった. リンゴ酸群, コハク酸群では抑制作用は殆ど認められなかった. これらの物質の投与による尿中蓚酸, カルシウム, マグネシウムの各群間比較による有意差は認められなかった. 以上より, リンゴ酸ナトリウム, コハク酸ナトリウム投与により蓚酸結石形成は抑制され, その作用は尿中クエン酸濃度の増加が関与することが示唆された.
著者
諸角 誠人 小川 由英 田中 徹 山口 千美 北川 龍一
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.1025-1031, 1987-06-20
被引用文献数
2

尿中蓚酸の大部分はグリシンおよびアスコルビン酸からの内因性由来とされている.これに対し,グリコール酸やグリオキシル酸は,尿中蓚酸にとって重要な前駆体とはされていない.そこでウィスター系雄性ラットを用い,上記のグリシン,アスコルビン酸,蓚酸,グリコール酸およびグリオキシル酸をそれぞれ3%の濃度で食餌に添加したものを投与する5群と無添加のものを投与する対照群との計6群に分け,どの物質が過蓚酸尿症とそれに伴う尿路結石症を誘発するか実験を行なった.実験食開始より4週目ではグリシン投与群,アスコルビン酸投与群,蓚酸投与群および対照群において尿路結石症を認めなかった.しかし,グリコール酸投与群およびグリオキシル酸投与群において尿路結石症の作製に成功した.結石は赤外線分析にて蓚酸カルシウムより成っていることが同定された.蓚酸投与群,グリコール酸投与群およびグリオキシル酸投与群において尿中蓚酸濃度および1日排推量は他群に比し有意に上昇し,逆に尿中カルシウム濃度および1日排推量は他群に比し有意に低下した.3%グリコール酸添加食または3%グリオキシル酸添加食により,ラットに過蓚酸尿症が起こり,その結果蓚酸カルシウム結石症が発症し得た.一方,3%蓚酸添加食では尿路結石症を認めず,3%グリシン添加食および3%アスコルビン酸添加食では過蓚酸尿症も尿路結石症も認められなかった.