著者
田中 徹 石塚 昌宏 小倉 俊一郎 井上 克司
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.29-34, 2011 (Released:2014-02-07)
参考文献数
18

5-アミノレブリン酸(ALA)は天然のアミノ酸で広く動植物に含まれ,クロロフィルやヘムの前駆体として重要な役割を果たしている.ALAは通常の食品にも含まれ食品を通じて摂取しており,我々人間の体内でもALAは1日700mg程度生成,消費されていると考えているが,これを上回る量のALAを外生投与するとヘムの前段に当たるプロトポフリリンIX(PPIX)が蓄積する.特にがん細胞においてはPEP-T1などのALA取り込みが亢進しており,また,解糖系にエネルギー生産を依存するためヘムの要求量が低く,その結果,正常組織よりPPIXの蓄積が高い.ALA自身は蛍光を示さないが,代謝物であるPPIXは蛍光物質であり,PPIXの光増感性を利用した光動力学的治療(PDT)や診断(PDD)が盛んに研究され,海外では皮膚がんの治療や脳腫瘍の術中診断などではすでに実用化している.ALAを用いたPDT,PDDはALAやPPIXが内在物であるため,他の増感剤と比較して代謝,排出が早く,光毒性の問題がほとんど起こらない.光毒性の問題がないALA-PDT,PDDは,泌尿器科領域はもちろん,多くの分野でがんの診断,治療に用いられるものと期待されている.
著者
臼田 春樹 和田 孝一郎 岡本 貴行 田中 徹也 新林 友美
出版者
島根大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

腸粘膜バリアの慢性的な低下(leaky gut syndrome: LGS)は全身疾患の発症に深く関与することが示唆されている。しかし、ヒトに使用可能で適切にLGSを評価する方法は確立していない。本研究では、軽度、中等度、重度のLGSを呈するマウスモデルを確立し、これらを用いてLGSの新規診断指標(試薬K)を確立した。また、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とクローン病を誘発したマウスでは、発症初期の段階でLGSが生じることが試薬Kによって判明した。特にクローン病の小腸ではLGS状態と炎症の両方に関連する内因性因子の発現が増加しており、LGSがクローン病の発症に関与する可能性が示唆された。

8 0 0 0 OA バナナの澱粉

著者
野呂 哲 葛西 麻紀子 山田 綾子 大中 徹 加藤 陽治
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.105, pp.75-79, 2011-03-23

生産地別のバナナ可食部の追熟に伴う澱粉の変化を調べた。単糖・オリゴ糖と細胞壁・澱粉の含有量から、台湾産は貯蔵8日目では過熟状態、エクアドル産は8日目では未熟、15日目では過熟、フィリピン産は8日目では未熟、15日目では適熟であると示された。すなわち熟成速度は台湾産が最も早く、エグアドル、フィリピンの順であった。 熟成過程におけるバナナ澱粉粒の変化を走査型電子顕微鏡観察および散乱式粒度分布測定装置により分析した。形状は長粒型で、追熟0日目では表面が滑らかな状態であったが、3日目では層のような溝ができ、5日目では層状になった。粒子径は追熟0日目で粒度分布3~88μm、平均径29.699μm、3日目で粒度分布3~77μm、平均径23.213μm、5日目で粒度分布2.5~22μm、平均径8.651μm であった。熟成に伴い、澱粉粒の表面形状が変化し、微細化することがわかった。
著者
隈本 邦彦 上口 義雄 郡 伸子 櫻井 祐太 定池 祐季 佐藤 秀美 田中 徹 三宅 武寿 山﨑 学 山本 俊介 西村 裕一
出版者
北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.3-18, 2008-09-15

We tried to fill the communication gap between experts and ordinary citizens regarding the method of preventing a tsunami disaster by organizing two events. The events involved discussions between a tsunami researcher and the inhabitants of two places of the Pacific coast of East Hokkaido where the damage that could be caused by a possible future tsunami was estimated. Contents in the event were deliberately designed to be useful for interactive communications. As a result of the evaluation by the participant questionnaire following the events, a interactive communication between the tsunami researcher and the inhabitants was arranged, and we were able to provide the inhabitants with information that they wished to know about the prevention of tsunami disaster.
著者
葭田 隆治 福田 泰久 渡邊 繁幸 田中 徹
出版者
一般社団法人 植物化学調節学会
雑誌
植物化学調節学会 研究発表記録集 (ISSN:09191887)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.70, 2003-10-10 (Released:2018-02-15)

5-ALAを植物体に外部から処理した場合、プロトポルフィリンIX (PP IX)が蓄積し、光エネルギーにより一重項酸素を生成する。一方、一重項酸素はAsA-GSH回路により消去されるが、一重項酸素濃度が高くなるとグルタチオンの合成が促進され、合成されたグルタチオンにより様々な生長制御が同時に調節され、最終的に活性酸素の定常濃度が保たれることにより生長促進が起きると予想される。本研究では、5-ALA処理により、植物体の生長量に深く関わる過酸化水素含量の動態がどのように変化するかについて明らかにし、併せて植物体に5-ALAと外生的にH_2O_2処理をした後、2種類の抗酸化物質を散布することで、生長がどのように変化するかについてそれぞれ調査した。
著者
萩原 早保 早田 典央 久米 愛美 水谷 真康 若山 浩子 多田 智美 中 徹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ba0963, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 異常筋緊張を伴う脳性まひ児・者(以下CP)は、呼吸機能に問題を抱える場合も多く、呼吸筋や胸郭の運動性を保障するための姿勢選択が必要となる。これまで重症児では伏臥位が推奨されているが、呼吸運動の側面からの研究は少ない。そこで我々は主要な呼吸筋である横隔膜に着目し、先に健常成人の測定結果を第45回日本理学療法学術大会で報告した。今回はそれを発展させ、CPの横隔膜の動きについて姿勢や重症度、運動能力との関連性を明らかにする目的で調査を行った。【方法】 対象は30人のCPで、身長143.0±16.3cm、体重33.0±15.5kg、年齢17.6±4.52歳、男:女=23:7名、痙直型:アテトーゼ型=19:11名、四肢麻痺:両麻痺=22:8名、Gross Motor Function Classification System(以下GMFCS)1: 2: 3: 4: 5=5:3:1:7:14名であった。仰臥位、左下側臥位、伏臥位、右下側臥位、座位で安静呼吸時の右横隔膜移動距離(以下DD)を、超音波診断装置(Medison社製Pico)にて、4.5MHz Convex型Probeによる肋弓下走査法にて横隔膜を同定してMモードでDDを三回測定し、平均値を基礎データとした。運動能力指標としてPediatric Evaluation of Disability Inventory(以下、PEDI)・Gross Motor Function Measure(以下GMFM)を、形態的指標として胸郭変形・側弯・股関節脱臼・Wind-Swept Deformityの有無を調査した。統計処理はMan-Whitney検定、Friedman検定と Scheffe多重比較、Spearman順位相関を用いて行い、有意水準5%で検討した。【倫理的配慮、説明と同意】 倫理審査委員会の承認の下、対象者と保護者には十分な説明を行い、文書による同意を得た。【結果】 対象者全員では姿勢によるDDの差は無かったが、GMFCS1~3(9名)および4~5(21名)ごとに姿勢によるDDの差を比較すると、GMFCS1~3では差が無かったがGMFCS4~5のDDは右下側臥位が左下側臥に比べて大きかった(p<0.05)。また、姿勢別のDD (mm)をGMFCS1~3・4~5の順で示すと、仰臥位12.9±4.2・14.1±5.0、左下側臥位13.3±4.6・12.4±5.0、伏臥位10.5±3.8・16.3±4.5、右下側臥位12.5±4.8・15.2±4.7、座位12.2±4.5・14.6±3.3であり、伏臥位にて1~3より4~5でDDが大きかった(p<0.01)。Wind Swept Deformity、股関節脱臼の有無でDDに差はなかったが、側弯と胸郭扁平では伏臥位にて変形が無い方でDDが大きかった(順にp<0.05, p<0.01)。DDとの間にGMFCSが伏臥位で正の相関r=0.66を(p<0.01)、GMFM・PEDI (セルフケア・移動・社会的機能)が伏臥位で全て負の相関を認めた(順にr=-0.66・-0.67・-0.60・-0.60,全てp<0.01)。【考察】 GMFCS 4~5の重症児のDDにおいて右下側臥位が左下側臥位よりも大きかったが、右下側臥位は他の姿勢と差が無いため、左下側臥位でのDDが他の姿勢に比して小さい傾向にあると考えられる。重症児では体幹筋の支持性が不十分であり、左下側臥位では重力により左方向に流れるように偏倚した肝臓に引かれて右横隔膜の位置が低位化することが考えられる。加えて、重症児故の胸郭可動性の低さや呼吸筋力の弱さも相まって、結果としてDDが少なくなると考えられる。また、GMFCS4~5の児では伏臥位のDDがGMFCS1~3より大きかったが、過去に測定した健常成人男性の安静呼吸時のDDでは姿勢による差が殆ど無く15~20mmであり、GMFCS4~5の伏臥位のDDの平均値16mmはCP全対象者の中では最大である点から、重症児での伏臥位は努力性の呼吸となっている可能性が推察できる。しかし、文献が示す推奨から伏臥位が横隔膜の動きを引き出す姿勢であることも否定できない。側弯や胸郭変形があると伏臥位のDDが小さくなることは、伏臥位で胸郭前面が床に設置する、脊柱のアライメントが床に対して凹面となることから通常でも生じる胸郭・腹部の運動制限が脊柱や胸郭の変形により助長された結果であると考えられる。【理学療法学研究としての意義】 重症CPの呼吸管理には姿勢や胸郭・脊柱可動性への配慮が必要であるが、伏臥位は横隔膜運動を引きだすと同時に努力性呼吸を誘発する可能性も考えられ、より慎重な姿勢選択やその検討が今後必要であることを示唆した点で意義深い。
著者
田中 徹 清水 勇夫 大﨑 大輔 山下 淳 矢木 一範
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.96, no.6, pp.209-211, 2023-06-20 (Released:2023-06-30)
参考文献数
8

日焼け止めやメイクアップ化粧料において,マイクロプラスチックビーズは,感触改良剤として広く使用されている。しかし近年は,マイクロプラスチック(MP)の環境流出による海洋汚染が国際的な問題として注目されており,MPビーズの代替原料が求められている。そこでわれわれは,この問題を解決すべく,環境に優しい素材としてシリカに着目し,感触特性に優れる球状シリカを開発した。そして,この感触特性に優れたシリカ粒子に対してベヘニルアルコールとジステアリルジモニウムクロリドを併用した複合多層処理を施すことで,MPビーズに近い「柔らかさ」をもつ,表面処理球状シリカの開発に成功した。
著者
中 徹
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.131-133, 1999-03-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1
著者
田中 徹 福島 誉史 木野 久志 富田 浩史 清山 浩司 菅野 江里子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

網膜上の設置位置毎に機能最適化された複数個の三次元積層人工網膜チップをフレキシブル基板上に高密度集積し、広視野角の視覚再建を実現する眼球内完全埋植・低侵襲フレキシブル人工網膜を作製するための技術開発に成功した。人の網膜の持つ光電変換・視覚情報処理・神経活動電位発生の機能を全て実現する2層積層の三次元積層人工網膜チップを設計・試作し、動作させることに成功した。この三次元積層人工網膜チップを中心窩及びその周辺部に複数個配置することにより、40°以上の視野角を実現でき、患者は自身の角膜や水晶体、眼球運動を利用しながら文字や物体を高精度かつ低負担で認識することが可能になる。
著者
田中 徹 長谷川 博
出版者
日経BP
雑誌
日経ニューメディア = Nikkei new media (ISSN:02885026)
巻号頁・発行日
no.1713, pp.7-8, 2020-07-13

動画配信サービス「Paravi」を運営するプレミアム・プラットフォーム・ジャパン(PPJ)が新体制に移行した。2020年6月11日に田中徹氏が新たに代表取締役社長に就任し、経営の舵取りを担うことになった。PPJには東京放送ホールディングス、日本経済新聞社、テレビ…
著者
萩原 早保 岩瀬 吉法 齋藤 裕子 中島 隆文 半田 真大 山田 浩希 中 徹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.H4P3263, 2010

【目的】<BR> 重症心身障害児(者)の安全で合理的な呼吸援助は重要な課題である.その方法論の確立のためには,正常な胸郭の呼吸運動の実態把握が必要となる.今回,呼吸運動の実態を肋骨と横隔膜の動きの側面から明らかにすることを目的として,様々な姿勢における肋骨と横隔膜の動きについて,超音波診断装置を用いて調べたので,その結果を報告する.<BR><BR>【方法】<BR> 被験者は健常成人男性10人(身長170.0±5.41cm,体重62.1±5.38kg,年齢21.0±0.30歳)とした.仰臥位,座位,左下側臥位,右下側臥位,伏臥位の各姿勢にて,それぞれ安静および努力性呼吸を行い,肋骨と横隔膜の動きを同時に二台の超音波診断装置にて測定した.肋骨は右第2,3,7,8肋骨それぞれについて胸郭前部・側部・後部を,横隔膜は左右横隔膜について測定した.肋骨はリニアプローブにて胸郭上から,横隔膜はコンベックスプローブにて肋骨弓下から走査し,各々数回の呼吸の後に,吸気開始から5秒間測定した.<BR><BR>【説明と同意】<BR> 被験者には,測定の意義・内容について十分な説明を行い,同意を得た上で測定した.<BR><BR>【結果】<BR> 肋骨の動きは,胸郭前部では全ての姿勢において第2肋骨よりも第3肋骨の移動距離が長いが,胸郭側部では殆どの姿勢において第3肋骨よりも第2肋骨の移動距離が長い(努力性呼吸).胸郭側部の全姿勢および胸郭前部の殆どの姿勢において第8肋骨よりも第7肋骨の移動距離が長いが,胸郭後部では殆どの姿勢で第7肋骨より第8の移動距離が長い(努力性呼吸). 第7,8肋骨とも胸郭前面での移動距離は両側臥位が最も長く,仰臥位で最も短かった(努力性呼吸).第7肋骨の胸郭側面での肋骨移動距離は伏臥位・左下側臥位で長く,仰臥位で最も短い(努力性呼吸).安静呼吸では,第7肋骨の胸郭側部でのみ姿勢によって差があり,座位が最も長かった.<BR> 横隔膜の位置と動きは,両側臥位では横隔膜の収縮時・弛緩時の位置に左右差があり,下側の横隔膜が頭側に,上側の横隔膜が尾側に位置していた(安静・努力性呼吸とも).また,横隔膜の移動距離でみると,両側臥位においては上側に比べて下側の方が長かった(安静・努力性呼吸とも). しかし,仰臥位と座位では,横隔膜の収縮時・弛緩時の位置,移動距離ともに明確な左右差はなかった(安静・努力性呼吸とも).また,横隔膜の移動距離は仰臥位と側臥位において仰臥位と側臥位で良好であった(努力性呼吸).<BR>肋骨と横隔膜の移動距離の相関は,左下側臥位に多く見られ,右第2・3肋骨の胸郭後部および右第7・8肋骨の胸郭側部と右横隔膜の移動距離に正の相関がみられた(努力性呼吸).<BR><BR>【考察】<BR> 仰臥位における努力性呼吸での横隔膜の移動距離は50.5±14.9mmであり,Kantarciらの結果(2004)とほぼ一致している.測定方法の級内相関では,肋骨・横隔膜とも0.9レベルであり,今回の測定結果には妥当性と再現性があることを示している.<BR> 肋骨の動きの部位による差は,肋骨が背側部で関節を形成する弓状の形態であること,頭側では胸郭前部に鎖骨が位置し,尾側では胸郭前部・側部に腹筋群が位置していることによるものであると考えられる.姿勢による差は,接地面の変化により籠状の胸郭が代償的に応答して動くことによるものであると考えられる.<BR> 横隔膜の動きの姿勢による変化については,腹腔臓器,とりわけ横隔膜の右下に位置する肝臓の影響が考えられること,接地面の変化によって腹腔が代償的に応答して動くことによるものであると考えられる.<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 本測定結果は,「姿勢によって肋骨と横隔膜の動きは異なる様相を示す」ということを示唆したが,それらの臨床的意義は以下のようである.1.肋骨については,胸郭前部と胸郭側部では,呼吸援助の際の徒手操作の方向性に変化を与える必要がある.2.肋骨の動きは側臥位と伏臥位が比較的良好で,座位と仰臥位は前者と比べると動きは少ない.3.横隔膜については,横隔膜移動距離が良好な姿勢は両側臥位もしくは仰臥位であり,座位は前者と比べると少ない.4.肋骨と横隔膜の運動性を考慮すると,側臥位は呼吸にとってベターな姿勢である.5.左下側臥位では,右肋骨の動きから右横隔膜の動きが,腹部の動きから右肋骨の動きが推定出来る.これらは重症心身障害児(者)をはじめとする各種呼吸器疾患患者に対する,より安全で合理的な呼吸援助方法の実施にとって意義があると考える.
著者
山辺 信一 田中 徹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1388-1394, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9
被引用文献数
7

隣接基関与の有機反応で生ずるフェノニウムイオン中間体の構造を理論的に調べた。STO-3G基底の非経験的分子軌道計算により構造の最適化を行なった。アリール基のパラ位に六つの置換基Xを付けた場合,XC6H4+…2H4の点線部分の橋かけ結合の強さが規期的に変化した。XC6H4X+→C2H4の逆電荷移動(back CT)が大きくなれば,その結合が強化される。メチル基がエチレン側に付くと,構造変化が大きい。古典open型と非古典橋かけ型の境界的な構造が得られた。