著者
冨田 一 崔 光石 中田 健司 本山 建雄
出版者
独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.27-36, 2008 (Released:2013-07-02)
参考文献数
34
被引用文献数
1

既に100/200Vから220/380Vに昇圧された韓国と我が国との電気火災および感電事故を比較して,将来、我が国が低圧の配電電圧として230/400Vが採用された場合に想定される電気安全上の課題について留意点を抽出した.昇圧の進展と電気火災発生件数には相関性が見られ,電気火災の主因である短絡は,その発生過程の究明と防止対策が電気火災防止にとって重要になる.昇圧化後にも老朽設備を使用し続けると,電気火災が発生し易くなるので特に注意が必要である.昇圧の進展と感電死傷者数には相関性が見られない.この要因には,有効な接地方式の選定や漏電遮断器の普及が感電事故の抑制に寄与したことが考えられる.昇圧による電気事故を防止するには,配電方式や対地電圧に応じた適切な接地方式の選定や接地技術の開発,電気設備,漏電遮断器の安全性向上などのハード面の安全対策に加えて,電気安全関連法令の遵守,定期点検の徹底,老朽設備を適切に運用するためにメンテナンス体制の整備などのソフト面での安全管理体制の確立も重要である.
著者
宮田 和周 中田 健太郎 柴田 正輝 長田 充弘 永野 裕二 大藤 茂 中山 健太朗 安里 開士 中谷 大輔 小平 将大
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.239-254, 2023-04-01 (Released:2023-03-31)
参考文献数
100

長崎半島東海岸に露出する上部白亜系“北浦層”を長崎北浦層と改定した.本層は下部の赤崎ノ鼻砂岩泥岩部層と上部の座頭浜礫質砂岩泥岩部層に二分でき,両部層は断層で接する.赤崎ノ鼻砂岩泥岩部層から産した2種のアンモナイト類(Polyptychoceras obataiとcf. Phylloceras sp.)と1種のイノセラムス類(Platyceramus japonicus),座頭浜礫質砂岩泥岩部層から産したハドロサウルス上科の鳥脚類恐竜の大腿骨化石を記載した.赤崎ノ鼻砂岩泥岩部層の軟体動物化石と砕屑性ジルコンのU-Pb年代から,長崎北浦層の時代は後期サントニアン期以降であり,おそらくカンパニアン期におよぶ.座頭浜礫質砂岩泥岩部層は岩相から長崎半島西海岸の三ツ瀬層の下部(中期カンパニアン期)に対比できる.長崎北浦層の層序は西九州の上部白亜系姫浦層群の下半部に関連すると考えられる.
著者
福田 紗恵子 高本 考一 浦川 将 石黒 幸治 中田 健史 堀 悦郎 小野 武年 西条 寿夫
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第27回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.67, 2011 (Released:2011-12-22)

【目的】有痛性の筋硬結部は、トリガーポイント(TP)と呼ばれ、慢性痛を呈する筋・筋膜性疼痛症候群や、他疾患によって二次的に生じた筋緊張による痛みの原因部位であり、これらTPへの圧迫刺激は、筋骨格系疼痛の鎮痛治療に効果があることが報告されている。一方、前頭葉の前方に位置する前背内側前頭前野は、慢性疼痛患者の自発痛により活動が増大し、痛みや精神的ストレスに対する反応形成および交感神経活動に関与することなどが報告されている。さらに、交感神経活動は、慢性痛の増悪に関与している。本研究では、TP圧迫刺激による鎮痛の神経機構を明らかにするため、慢性頸部痛を有する被験者の頸部TPに徒手圧迫刺激を加え、前背内側前頭前野および自律神経機能に及ぼす影響を解析した。【方法】慢性頸部痛を訴える成人女性19名(24.1±0.6歳)を対象とし、1) TP圧迫群、および2) 近傍の 非トリガーポイント(Non-TP)圧迫群の2群にランダムに割り付けた。圧迫刺激は、被験者を安静仰臥位にし、圧センサーを装着した実験者の母指および示指を用いて圧迫刺激を加えた。圧迫刺激の強度は、あらかじめ圧痛閾値と最大圧痛刺激強度を測定し、各被験者の平均値を用いた。課題プロトコルは、圧迫前休息30秒、圧迫刺激30秒およびそれに続く休息90秒を1サイクルとし、合計4サイクル行った。これら課題中に、近赤外分光法により前部前頭前野の酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb)濃度変化を測定した。自律神経活動は、心電図RR間隔の周波数データから、低周波成分(LF)および高周波成分(HF)を算出し、LF/HF比を交感神経活動、HFを副交感神経活動の指標とした。痛み評価は、測定前後で視覚的アナログスケールを用いて主観的痛みスコアを記録した。なお、本研究は富山大学の倫理委員会に承認を得ており、被験者に対して研究の内容と施行法を説明し同意を得た後、実験を遂行した。【結果】TP圧迫群では、Non-TP圧迫群と比較して主観的痛みスコアが有意に改善した。Non-TP圧迫群では、1) 前背内側前頭前野領域Oxy-Hb濃度が上昇、2) 副交感神経活動の指標となるHFが低下し、交感神経活動の指標となるLF/HF比が上昇した。これに対し、TP圧迫群では、1) 前背内側前頭前野領域Oxy-Hb濃度が低下、2) HFが上昇し、LF/HF比が低下した。さらに、圧迫による前部前頭前野領域Oxy-Hb濃度変化とLF/HF比との間に有意な正相関が認められ、Oxy-Hb濃度が減少した被験者ほど交感神経活動は低下した。また、圧迫による主観的痛みスコアの変化とLF/HF比との間には有意な正相関が認められ、痛みが軽減した被験者ほど交感神経活動は低下した。【考察】本研究では、TP圧迫により前背内側前頭前野領域のOxy-Hb濃度が低下した。また、Oxy-Hb濃度が低下した被験者ほど、交感神経活動も低下した。先行研究において、Oxy-Hb濃度低下は、その領域のニューロン活動の抑制を示唆することから、TP圧迫は前背内側前頭前野領域の神経活動を抑制したことが示唆される。また、前背内側頭前野領域は脳幹の下位自律神経中枢に出力し、交感神経系を調節していることが示唆されている。これらのことから、TP圧迫が同領域の活動を抑制し、それに伴い交感神経活動も抑制されたことが示唆される。さらに、本研究では交感神経活動が低下した被験者ほど疼痛が軽減した。交感神経は骨格筋を直接的に神経支配しており、過度の交感神経活動は筋緊張を高めることにより慢性痛を増悪させることが示唆されている。これらのことから、TP圧迫時に前背内側前頭前野の活動が抑制されることにより、交感神経活動が抑制され、疼痛軽減をもたらすことが示唆される。一方、前背内側前頭前野領域は慢性痛の認知的側面にも関与していることが示唆されている。以上から、TP圧迫は、前背内側前頭前野の活動を抑制し、この脳活動の抑制は、慢性痛の増悪に関与する交感神経活動を抑制するとともに、痛み認知を抑制すると考えられる。【まとめ】TP圧迫刺激により主観的痛みスコアの改善、前背内側前頭前野領域のOxy-Hb濃度低下、および交感神経活動指標であるLF/HF比の低下を認めた。さらに、主観的痛みスコアの改善と自律神経機能、ならびに自律神経機能と前背内側前頭前野領域の活動は相関していた。これらのことから、TP圧迫刺激は、前背内側前頭前野領域の活動を抑制し、同領域を介して慢性痛の増悪因子である交感神経活動が抑制され、同時に痛み認知過程を抑制することにより、鎮痛効果を有することが示唆される。
著者
崔 光石・本山 健雄・富田 一 中田 健司
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.39-44, 2007-02-15 (Released:2016-11-30)
参考文献数
18

世界中の低圧配電電圧は,北米や日本などのように約100 V をおもな配電電圧としている国と約200 V を採用しているその他の国の二つに大別される.200 V 配電は,許容電流が同一の電線を使用した場合,100 V 配電に比べ供給電力が高く使用銅量が削減できること,配電時の電力損失が低いことなどのメリットがあり,ヨーロッパ,アジアを中心として多くの国において採用され国際的な配電方式になりつつある.これらのことから,わが国においても低圧配電電圧の200 V 昇圧化が検討されてきたところである.ここでは,日本が将来,200 V 配電方式を採用する場合を想定して,予想される電気安全上の課題を,昇圧が完了している韓国の状況との比較により詳しく紹介する.
著者
中田 健司
出版者
一般社団法人 電気設備学会
雑誌
電気設備学会誌 (ISSN:09100350)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.141-144, 2002-02-10 (Released:2015-03-10)
参考文献数
9
著者
佐藤 健司 小原 秀一 塚口 功 安井 浩一 中田 健 玉井 正彦 小林 芳夫 小塚 隆弘
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.239-244, 1977-03-01 (Released:2013-05-24)
参考文献数
16

正常な房室大血管関係をもつ両房室弁交叉症(criss-cross heart)の1例を報告する.心室中隔欠損,左肺動脈低形成,動脈管開存を合併していた.特徴ある心血管造影所見を呈し,右下側に形態学的左室,左上側に形態学的右室があり,心室中隔は上下の心室間にほぼ水平方向の陰影欠損として認められ,大動脈は右前方に,肺動脈は左後方に位置し,見かけ上は{S,L,D}であるが心房心室関係および心室大血管関係はいずれも正常で,両房室弁を流れる血流が交叉する両房室弁交叉症となっていた.形態発生学的にbulboventricular loopが心臓長軸を中心にして心基部に向って時計方向に,さらに心臓前後軸の回りに後方からみて時計方向に異常回転した結果と考えられ,Andersonの命名法によれぽ,Solitusconcordant(l-rotated)-normalと表現できる.
著者
中尾 敏彦 ガメール アブシイ 大沢 健司 中田 健 森好 政晴 河田 啓一郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.791-794, 1997-09-25
参考文献数
10

乳牛の難産および胎盤停滞例 (異常例) の胎子娩出後の子宮修復における内因性のPGF_<2α>の関与の有無を明らかにするとともに, 活性持続型のPGF_<2α>類似体であるフェンプロスタレンの投与が子宮修復と繁殖成績の向上に有効かどうかを明らかにするために試験を行なった. 異常例では分娩正常例に比べ血中PGF_<2α>代謝産物 (PGFM) 濃度の著しい上昇が認められたが, 高濃度の持続期間は短かった. 異常例ではPGFMの高濃度持続日数と子宮修復日数との間に明らかな相関は認められなかったが, 正常例では, PGFM高濃度持続期間が長いもののほうが短いものよりも子宮修復日数が短かった (P<0.01). フェンプロスタレンを異常例では胎子娩出後7-10日, 分娩後子宮内膜炎例では14-28日に投与することにより, 子宮修復と卵巣機能の回復が促され, 繁殖成績が向上することがわかった. このように, 異常例においては短期間に大量のPGF_<2α>が分泌されるものの, これは子宮修復にはあまり関与しておらず, 外因性のPGF_<2α>の投与がこれらの例の子宮修復の促進と繁殖成績の向上に有効であることが示唆された.
著者
勝間田 明男 中田 健嗣 藤田 健一 田中 昌之 西宮 隆仁 小林 昭夫 吉田 康宏
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

1998年7月にパプアニューギニアにおいて発生したMw 7.0の地震の後に10mを超える津波が沿岸に押し寄せ、この津波により2,200名を超える犠牲者が出ている(Tappin et al., 2008).この津波は,地震の規模に比べて高すぎること,津波の発生が地震の発生よりも10分ほど遅れているとみられること,海底地形において地すべりを起こしたとみられる場所が確認されていることなどから,海底地すべりが発生源であるとみられている(例えば,Tappin et al., 1999; Synolakis et al., 2002).通常の地震による津波の場合には,地震計で記録される地震波が警戒の最初のトリガとなることが多い.しかし,この1998年のパプアニューギニアのような事例が発生した場合には,地震波から予測される規模の津波には備えるものの,それを超える規模の津波への警戒は通常なされない.もし,海底地すべりが地震計で捉えられるならば,この種の津波に備えることが可能となる.以前の調査(勝間田・他, 2016)に,調査対象の観測点の追加,理論波形の再検討を行ったので報告する. 海底地すべりが発生した地点から900km離れた場所にPMG観測点がある.PMG観測点の地震データをIRISより入手し,0.2秒から50秒までの様々な帯域のフィルターを施して特異な信号有無を確認したが,直前のMw 7.0の地震の後続波の振幅を超える特別な相は確認されなかった.PMG観測点において,海底地すべりに対応した相が確認できないことはSynolakis et al.(2002)によって既に指摘されている.東京大学地震研究所の海半球観測研究センターにPMGよりも更に地すべり地点に近いJAY観測点(約150km)のデータがアーカイブされている.JAY観測点のデータについても確認したが,顕著は相は確認されなかった. Watts et al. (2003)の津波発生源モデルによると,この規模の津波を発生させることができる地すべりは長さ4.5km,幅5km,厚さ760m(半楕円体)の規模のものであった.それが傾斜角12度の下で特性時間32秒の地すべりを起こしたとされる.地すべりが進行している時にはそれまで摩擦力で支えられていた地塊が加速度運動をしていると考えられる.それ以前に地塊を支えていた力が減ずるのでその分の地面に加わる力が変化したと考えられる.その力を,密度(2.15×103kg/m3)×体積(9 km3)×加速度(0.36m/s2)として見積もると7×1012Nとなる.この程度の力が作用したと仮定した場合の理論波形をTakeo (1985)により計算した.震源時間関数として数十秒程度の継続時間のものをいくつか仮定してみた.その結果,理論波形は直前の地震の後続波に比べて同程度以下の振幅にしかならず,理論波形からみても地すべりにる地震波は検知可能レベル未満であると見積もられた(図).海底地すべりによる津波の検知には,沖合い津波計のような別の手段が望まれる.謝辞IRIS及び東京大学地震研究所海半球観測研究センターに保管されていた地震記録を用いた.理論地震波形の計算にTakeo (1985)を用いた.
著者
古家後 雅典 中田 健 角田 修男 森好 政晴 澤向 豊
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.1121-1124, 2008-10-25
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

日本のサラブレッド種雄馬(n=16)の精子形態を繁殖シーズン中に調査した.奇形精子の頭部と尾部,細胞質小滴付着精子,種雄馬ごとに観察した全標本の内メデュサ細胞が認められた標本の割合は,それぞれ3.9±2.1%,11.5±5.9%,2.4±2.6%,20.1%であった.精子頭部の面積,長径,短径,縦横率の値は,それぞれ12.54±1.34μm^2,5.93±0.40μm,2.69±0.21μm,0.46±0.05であった.メデュサ細胞を除いたすべての観察項目で,種雄馬間に有意な差が認められた(P<0.05).
著者
冨田 一 崔 光石 中田 健司 本山 建雄
出版者
National Institute of Occupational Safety and Health
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.27-36, 2008
被引用文献数
1

既に100/200Vから220/380Vに昇圧された韓国と我が国との電気火災および感電事故を比較して,将来、我が国が低圧の配電電圧として230/400Vが採用された場合に想定される電気安全上の課題について留意点を抽出した.昇圧の進展と電気火災発生件数には相関性が見られ,電気火災の主因である短絡は,その発生過程の究明と防止対策が電気火災防止にとって重要になる.昇圧化後にも老朽設備を使用し続けると,電気火災が発生し易くなるので特に注意が必要である.昇圧の進展と感電死傷者数には相関性が見られない.この要因には,有効な接地方式の選定や漏電遮断器の普及が感電事故の抑制に寄与したことが考えられる.昇圧による電気事故を防止するには,配電方式や対地電圧に応じた適切な接地方式の選定や接地技術の開発,電気設備,漏電遮断器の安全性向上などのハード面の安全対策に加えて,電気安全関連法令の遵守,定期点検の徹底,老朽設備を適切に運用するためにメンテナンス体制の整備などのソフト面での安全管理体制の確立も重要である.