著者
伊藤 理史
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.35-51,128, 2014-02-28 (Released:2015-04-10)
参考文献数
34

This paper explains Japanese politics in the post-1955 system using the theory of mass politics (Kornhauser 1959). Since the prior theory of class politics does not adequately explain the Japanese situation in the post-1955 system, many scholars have focused on the theory of populism, which does not regard voters as an important aspect. In contrast, the theory of mass politics consists of two aspects that are connected by public opinion: available politicians and accessible voters. The former is synonymous with the concept of populism, and the latter concerns those who are socially and politically marginalized. This paper focuses on the breakthrough of the Toru Hashimoto camp in Osaka as a model case for Japanese politics in the post-1955 system. Voting behavior in the Osaka mayoral election of November 27, 2011, is analyzed using a social survey on political attitudes and civic participation in Osaka City. Path analysis is used to examine the model, which is based on the theory of mass politics. The results are as follows: (1) CFI and RMSEA values show the validity of the analytical model; (2) voters who are socially and politically marginalized voted for Hashimoto because of their distrust of public officials; (3) voters who are not socially and politically marginalized voted for Hashimoto because they favored the competitive principles of the market (neo-liberalism); and (4) there are no indirect effects of voters’ socio-economic status on voting behavior. Therefore, mass politics modified by both accessible and non-accessible voters is confirmed. Based on these results, a framework can be presented for analyzing Japanese politics in the post-1955system.
著者
伊藤 理史 イトウ タカシ Ito Takashi
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科 社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.1-15, 2016-03-31

2011年11月27日に実施された大阪市長・府知事選挙(2011年ダブル選挙)の結果、大阪市長に橋下徹が、大阪府知事に同じく橋下陣営の松井一郎が当選した。このような橋下陣営の躍進(橋下現象)は、現代日本における新しい政治現象の典型例とみなされている。しかし誰が橋下現象の担い手なのかという点については、必ずしも明らかではない。論壇やマス・メディアでは階層との関連が指摘されているが、いまだ適切な個票データと実証研究の蓄積は乏しい。そこで本稿では、階層政治論に注目して主にその有効性を検討した。自ら実施した「大阪府民の政治・市民参加と選挙に関する社会調査」の個票データを使い、多項ロジスティック回帰分析から2011年ダブル選挙における候補者選択と投票参加の規定要因を検討したところ、階層と投票行動の関連が両選挙でみられなかった。このことは候補者選択における階層間対立と投票参加における階層的不平等の不在を意味する。以上の分析結果より、現代日本における新しい政治現象の典型例としての橋下現象は、階層政治論から説明できないことが示された。橋下陣営の人気は、候補者選択における階層間対立と投票参加における階層的不平等を超えて多数派からの支持を獲得したことによって生じている。つまり本稿は、現代日本における新しい政治現象が生じた有権者側の要因について示唆を与えるものである。
著者
伊藤 理絵
出版者
白梅学園大学
巻号頁・発行日
2016-03-15

2015年度
著者
伊藤 理史
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.15-28, 2017 (Released:2018-06-13)
参考文献数
39

本稿の目的は、政治的疎外意識の長期的変化とその規定要因を、コーホート分析によって明らかにすることである。「政治的有効性感覚の低い状態」と定義される政治的疎外意識は、政治参加の減退をもたらす主要な要因として、様々な実証研究が蓄積されてきた。しかし日本における政治的疎外意識の長期的変化とその規定要因については、ほとんど研究されていない。そこで本稿では、「日本人の意識調査,1973~2008」の個票データの二次分析によって、政治的疎外意識の長期的変化の実態、規定要因としての世代効果と時代効果の大きさ、高齢世代と比較した若齢世代の政治的疎外意識の特徴を、明らかにする。線形要因分解と重回帰分析の結果、次の3点が明らかになった。(1)政治的疎外意識は、1973年から1998年にかけて上昇したが、1998年から2008年にかけて低下・停滞する。またその変化の傾向は、世代間で共通する。(2)1973年から1998年までの政治的疎外意識の上昇は、正の世代効果と正の時代効果から生じていたが、1998年から2008年までの政治的疎外意識の低下・停滞は、負の時代効果が正の世代効果を上回ることで生じていた。(3)団塊世代と比べて若齢世代では、政治的に疎外されていると感じやすい。以上の結果を踏まえた上で、世代効果は戦争・民主化体験の有無、時代効果は55年体制崩壊による政権交代可能性の上昇として解釈した。
著者
佐藤 秀樹 伊藤 理紗 小野 はるか 畑 琴音 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
Journal of Health Psychology Research (ISSN:21898790)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.101-109, 2023-02-01 (Released:2023-02-17)
参考文献数
37

The deterioration of workers’ mental health and the resulting decline in their work performance have become significant contemporary problems. This study examined the relationship between reinforcement sensitivity (i.e., the behavioral inhibition/activation systems), rumination, depression, and the decline in work performance among local government employees. All the regular and non-regular employees in a local government aged 20 years or older, working over 29 hours per week, responded to a self-administered, anonymous questionnaire survey. We analyzed the responses of 2,223 employees. The results of structural equation modeling indicated that depression was positively associated with a decline in work performance. Also, the behavioral inhibition system was positively associated with depression, partially mediated by rumination. In contrast, the behavioral activation system was negatively associated with depression, which was not mediated by rumination. These results are meaningful for developing a psychological model of depression related to local government employees’ work performance decline.
著者
伊藤 理絵
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.122-127, 2012-07-21 (Released:2017-07-21)

笑いに関する質問紙調査を通して、大学生および大学院生(以下、大学生)における笑いの性差について検討した。24の質問について、19歳〜25歳の大学生108名(男性50名,女性58名)の回答を分析、比較した。6男性の平均年齢は20.82歳(SD=1.38)、女性の平均年齢は20.43歳(SD=0.62)であった。その結果、女性は男性よりも、人をバカにする笑いを好ましく思っていなかった。また、女性は、笑うことは健康につながると思っており、「笑い」を色に例えると暖色系だと感じる傾向がみられた。一方、男性は、異性を笑わせたいと思う欲求が女性よりも強いという結果が示された。本調査は、大学生という発達段階の一部の対象者を取り上げた結果ではあるが、笑いやユーモアの研究を進めるにあたっては、対象者の男女構成比に配慮し、得られた結果についても性差の影響を考慮に入れる必要性が示唆された。
著者
伊藤 理絵
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.19-37, 2020 (Released:2021-04-19)

幼児期後期における嘲笑理解の発達について、他者感情理解、心の理論および道徳性の観点から検討するため、2つの実験を行った。実験1では、年少時に調査した年長児7名(男児3名,女児4名,平均年齢6歳4か月)に対し、感情理解課題、心の理論課題、笑いの攻撃性理解課題および絵画語い発達検査(PVT-R)の追跡調査を行った。実験2では、実験1の7名を含む年長児10名(男児6名,女児4名,平均年齢6歳4か月)を対象に、笑いの攻撃性比較課題を実施した。その結果、幼児期後期の嘲笑理解の発達には、語い年齢、他者の感情理解や心の理論、失敗を笑うことに対する道徳的判断および相手を失敗させる行為か否かを判断する故意性の理解が相互に関連している可能性が示唆された。嘲笑を含む笑いの攻撃性の理解には、高次の心の理論や道徳性の発達が絡んでいることから、本研究で用いた「笑いの攻撃性理解課題」と「笑いの攻撃性比較課題」について、笑われたことが原因でネガティブな感情になることを説明することや攻撃の意図を判断することは、高度な心の理論(AToM)の観点から検討していく必要があることが示唆された。
著者
伊藤 理史 三谷 はるよ イトウ タカシ ミタニ ハルヨ Ito Takashi Mitani Haruyo
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科 社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.93-107, 2013-03-31

本稿は、「大阪府民の政治・市民参加と選挙に関する社会調査」の調査記録である。調査の目的は、2011 年11 月27日に実施された大阪市長選挙・大阪府知事選挙における有権者の投票行動や政治意識の分析を通して、大阪府民の政治・市民参加の実態を明らかにすることである。調査方法は、大阪府下の20 ~ 79 歳の男女3,000 人を調査対象とした、層化三段無作為抽出法による郵送調査であり、最終的な有効回収数は962 人有効(回収率:32.1%)であった。本稿の構成は、次の通りである。まず第1 節では、調査の経緯について簡潔に記述し、第2 節では、調査の設計に関わる研究費の獲得と郵送調査の利点について記述した。続く第3 節では、調査票と依頼状の作成について、第4 節では、サンプリングと発送について、第5 節では、発送後の電話対応と督促状、データの回収数について、第6 節では、データ入力と職業コーディングについて、実際の作業内容を記述した。最後に第7 節では、データの基礎情報として、得られたデータとマクロデータと比較検討し、データの質について記述した。本稿で得られた結果は、たとえ小規模な研究助成にもとづいた大学院生主体の量的調査でも、ある程度の質と量の伴ったデータを入手できる可能性を示している。
著者
伊藤 理絵 本多 薫
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.83-89, 2010
参考文献数
11

The purpose of this study is to examine how background music (BGM) influences the retrieval processes of pictures in memory. In this study, 9 subjects (4 males, 5 females) looked at three different pictures. Each picture was shown with a different piece of music playing in the background. None of the subjects knew that they would be asked about the music later. As a result, although the music was not consciously heard, the music itself has a factor that becomes associated with memory. Therefore, retrieval processes in memory are promoted by music. This indicates that humans use information that may not even be consciously identified to unify their confusing environment.
著者
白井 真理子 伊藤 理絵
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.107-119, 2018 (Released:2018-12-27)

近年笑われることを極度に恐れる「笑われ恐怖症(gelotophobia)」という概念が報告されている。笑われ恐怖症を発症する背景には,感情が深く関わっていることが指摘されているにも関わらず,そもそも笑われることによりどのような感情が生じるのかについては,実証的に検討されていない。本研究の目的は,失敗を笑われるという不快な状況に至るまでに生じる感情について,探索的に検討することである。大学生25名(男性17名,女性8名,平均年齢19.92歳)を対象に,登場人物が転んで泣く(転倒条件)・転んで友人に見られて泣く(友人条件)・転んで友人に見られて笑われて泣く(笑われ条件)の3条件を提示し,質問紙により各条件で生じた感情について自由記述を求めた。すべての条件で報告された感情は,恥,痛み,悲しみ,怒り,驚きの5つであり,最も多く報告された感情は恥であった。本調査の結果より,失敗を笑われることに伴う感情は様々であったことから,笑われることで生じる感情の複雑さが示唆された。これまで笑われ恐怖症の核となる感情として,恥の感情が深く関わっていることが指摘されてきたが,今後は,恥以外の感情も含めて明らかにする必要がある。
著者
伊藤 理絵 内藤 俊史 本多 薫
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.114-118, 2009-07-11 (Released:2017-07-21)

本研究の目的は、幼児期に見られる攻撃的笑いについて、観察記録に基づき検討することである。年少児~年長児44名について分析したところ、幼児は、直接的に相手を支配・威圧したり、間接的に攻撃するために攻撃行動に伴う笑いを見せていた。また、仲間と共有する攻撃的笑いには、一つの笑いに親和的性質と攻撃的性質が含まれており、より見えにくい形の攻撃的笑いが見られた。
著者
伊藤 理絵
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.33-45, 2016 (Released:2016-12-20)

青年期における笑いに対する意識や態度の性差について多角的に検討するため、笑いに対する積極性尺度を作成し、ユーモア志向性および笑わせたい相手との関連から考察した。笑いに対する積極性尺度の作成にあたり、18 ~ 31 歳の大学生261 名(男性70 名,女性191 名; M = 19.37,SD =1.37)の回答を分析した結果、最終的な笑いに対する積極性尺度は第1因子から第4 因子の「笑いに対する好感」「笑わせ欲求」「笑いに対する自信」「お笑いへの親しみ」の4因子で構成された。性差を検討したところ、男性の方が「笑わせ欲求」の得点が高く、恋愛関係にある相手を笑わせることを女性よりも重視していることが確認された。一方、女性は男性よりも「笑いに対する好感」の得点が高かったことから、日常的に笑いがある生活をより重視し、コミュニケーションに笑いがあることを望むからこそ、笑わせてくれる相手やよく笑う他者を魅力的だと感じている可能性が示唆された。
著者
伊藤 理史
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.61-83, 2018-03-28 (Released:2021-12-01)
参考文献数
38

本稿の目的は、個人レベルの失業と地域レベルの失業率の効果を理論的・実証的に区別した上で、両者が投票参加にそれぞれどのような影響を与えるのか、検討することである。失業と政治参加の関係については、欧米諸国における政治社会学の古典的な問題関心であると同時に、二〇〇〇年代後半に生じた世界規模の景気後退以後、再び注目を集め実証研究が蓄積されている。このような問題関心は、政治参加の平等性に関するものとして理解できるが、従来日本は政治参加の不平等が少ない国として認識されてきたこともあって、十分に検討されてこなかった。欧米諸国を対象とした近年の投票参加の実証研究によると、個人レベルの失業と地域レベルの失業率の効果は、それぞれ異なることが示唆されているため、両者を区別した上で議論・分析を行う。 第一回SSP調査から得られたデータに対してマルチレベル順序ロジスティック回帰分析を行った結果、次の二点が明らかになった。(一)個人レベルの失業には、投票参加からの退出をもたらす効果があり、失業者の「声」は政治へ反映されにくい傾向にある。(二)地域レベルの失業率には、その地域に居住する人々に対して、失業を社会問題として認知させ政治に動員させる効果がないため、当事(失業)者以外からも、失業やそれにともなう貧困の是正を求める「声」は上がらない傾向にある。以上の結果より、現代日本においても失業と投票参加の間には、一定の政治参加の不平等が存在することが確認された。
著者
伊藤 理絵 本多 薫
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.83-89, 2010-11-25 (Released:2017-07-28)
参考文献数
11

The purpose of this study is to examine how background music (BGM) influences the retrieval processes of pictures in memory. In this study, 9 subjects (4 males, 5 females) looked at three different pictures. Each picture was shown with a different piece of music playing in the background. None of the subjects knew that they would be asked about the music later. As a result, although the music was not consciously heard, the music itself has a factor that becomes associated with memory. Therefore, retrieval processes in memory are promoted by music. This indicates that humans use information that may not even be consciously identified to unify their confusing environment.
著者
伊藤 理史 永吉 希久子
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.203-222, 2020-05-31 (Released:2021-06-23)
参考文献数
38

本稿の目的は,なぜ生活保護厳格化が支持されるのかを,不正受給認識に着目した上で明らかにすることである.日本では,生活保護制度が「セイフティネット」として十分に機能していないにもかかわらず,生活保護厳格化への支持が高い.その理由として先行研究では,制度利用者との社会的・地理的近接性やメディア利用の効果が指摘されているが,どのようなメカニズムにより生活保護厳格化が支持されているのか明らかではない.そこで本稿では,制度利用者との社会的・地理的近接性およびメディア利用が不正受給認識に影響を与え,その認識が生活保護厳格化への支持につながるというメカニズムを想定し,2014 年に実施された全国対象・無作為抽出の社会調査である「国際化と政治に関する市民意識調査」を用いて,その分析枠組み(理論モデル)の有効性を明らかにする.ベイズ推定法によるマルチレベル構造方程式モデリングの結果,次の3 点が明らかになった.⑴近接性について,社会的近接性(本人・親族・友人の生活保護制度利用)は不正受給認識を低めるのに対して,地理的近接性(市区町村別の生活保護受給率)は不正受給認識を高める.⑵メディア利用について,新聞利用は不正受給認識を低めるのに対して,テレビ利用やインターネット利用は不正受給認識に影響しない.⑶不正受給認識は,自己利益を統制した上で生活保護厳格化への支持を高める.以上より,本稿で提示した理論モデルの有効性が示された.