著者
佐川 英治 小宮 秀陵 河上 麻由子 小尾 孝夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本年度はまず6月に第3回の国内研究会を開き、研究分担者の河上麻由子『古代日中関係史』、研究協力者の河内春人『倭の五王』(ともに中公新書)の合評会をおこなうとともに、ビザンツ史の井上浩一大阪市立大学名誉教授を講師に招き「古代帝国の相続人―東西比較のために―」のテーマで講演していただき、ビザンツ史における古代末期論の意義ならびにローマ帝国と古代中国の比較に関する西洋史側からの視点について貴重な示唆を得た。続いて、9月に第4回の国内研究会を開き、小宮秀陵「6世紀中葉新羅の領土拡大と信仰」、河上麻由子「南北朝時代の王権と仏教」、小尾孝夫「六朝建康の仏教受容と寺院空間―梁代建康の全盛とその歴史的背景―」、佐川英治「漢帝国以後の多元的世界」の報告をおこない、これらの成果をもって10月にパリで開催された“Beliefs and Cultural Flows of East Asia in the Late Antiquity and Medieval Period” (College of France)に参加した。この会議は我々の知る限り、「東アジアの古代末期」をテーマに掲げた初めての国際学会であり、この会議において我々は、5~6世紀の東アジアの歴史的展開ならびにその意義を考えていくうえで、信仰とくに仏教の国際的な広がりや社会への浸透が重要な意味をもつことを明らかにした。また佐川英治は古代末期の議論を組み込んだ東部ユーラシアの視野からする新しい中国史の概説書『中国と東部ユーラシアの歴史』(杉山清彦・小野寺史郎と共著、放送大学出版会)を出版した。その他、研究代表者と分担者は、国内外での論文執筆や学会報告を通じて積極的に研究を推進し、その成果を広める活動をおこなった。
著者
伊藤 敏雄 安部 聡一郎 川合 安 窪添 慶文 佐川 英治 佐藤 智水 關尾 史郎 中村 圭爾 福原 啓郎 葭森 健介
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

魏晋南北朝史に関する石刻史料の主要な出土地である洛陽・南京・西安・太原・大同・安陽などで現地調査を実施し、基本的石刻史料のデータ・ベースを作成した。基本問題のうち、貴族制については、貴族制形成期の史料が後世の貴族制の影響を受けていることを強調し、北朝・南朝の貴族制の実態を明らかにした。官僚制については、北魏後期の官僚の昇進がシステム的であったことなどを明らかにした。民族問題については、民族問題に関連する新出石刻史料を紹介するとともに、六鎮の乱の民族的背景などを明らかにした。
著者
宮宅 潔 佐川 英治 丸橋 充拓 佐藤 達郎 鷹取 祐司 藤井 律之 陳 偉 金 秉駿 ギーレ エノ
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究はまず(1)中国古代史における民族の問題-「漢民族」はいかにして形成されたのか、中国王朝はさまざまな帰属意識を持つ人間集団をいかにして統合したのか、新たな民族集団の流入が王朝にいかなる影響を与えたのか、など-について共同研究者間で討議したうえで、それら民族問題と軍事の相関関係について各自の研究課題を設定し、定期的に研究発表を行った。その過程で(2)中間年度に韓国・ソウル大学で国際シンポジウムを共催した。そこでの討議をふまえてさらに議論を重ね、(3)参加者全員の寄稿を得て成果報告書『多民族社会の軍事統治 出土史料が語る中国古代』を京都大学学術出版会から刊行するに至った。
著者
佐川 英治
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

北魏の正史『魏書』は孝文帝の時代を北魏史の頂点とする歴史観で書かれている。しかし、本研究ではこの歴史像がある目的をもった一面的な歴史像であることを明らかにしてきた。本年度はこれを受けて北魏の建国から洛陽遷都までの百年間をその都であった平城に焦点を当て見直す研究をおこなった。すなわち、平城の北には、平城の規模をはるかに上回る広大な禁苑「鹿苑」が広がっていた。実はこの鹿苑は広大な放牧地であって、そこには無数の牛羊馬が放牧され、毎年春に陰山方面へ放牧に出かけ、秋に返る習慣があった。皇帝もしばしばこのルートにしたがって行幸し、春と秋には遊牧の祭祀をおこなった。当時、陰山は自然が豊かで多くの動物が暮らす場所であった。北魏は征服戦争で得た人民を平城周辺に移住させ、彼らに土地と耕牛を給する「計口受田」といわれる方法で国力を充実させていくが、それを可能としたのは陰山から毎年大量に供給される豊かな動物資源であった。ここに平城の地政学上の利点とそれまでの五胡十六国が持ち得なかった北魏の国力の源泉がある。しかし、やがて動物は減少し、皇帝は行幸や狩りをしなくなり、平城周辺では牛不足が深刻となる。これにしたがって鹿苑も放牧地から宴遊をおこなう中国的な禁苑へと姿を変えていった。『水経注』には孝文帝の時代、陰山から樹木が消えていたことが記されており、過放牧や森林の伐採がその原因と考えられる。この結果、孝文帝は平城を放棄し洛陽へ遷都するとともに、漢化政策をおこなって新しい権力基盤を求めざるを得なくなった。本研究では以上のことを明らかにすることで、孝文帝の漢化政策や洛陽遷都を北魏の発展の上に位置づける従来の見方に対して、環境の危機の上に位置づける新しい歴史像を提起した。また、洛陽遷都後の北魏史については造像銘を用いた研究の可能性に注目し、その成果を書評の形で示した。
著者
小尾 孝夫 永田 拓治 岡田 和一郎 村井 恭子 佐川 英治 渡邉 将智 戸川 貴行 会田 大輔 岡部 毅史 齊藤 茂雄
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

従来、魏晋南北朝の政治史は、多くの場合、正史の影響を強く受け、各王朝史の枠組みのなかで論じられてきた。本研究では、こうしたかつての枠組みではなく、より大きな歴史的な視野での東部ユーラシア史のなかでその政治史を論じ直すことを目指した。そうしたなかで、各時代において、戦争、移民、交易、文化交流などが各王朝の政治に与えた影響を具体的に検証するとともに、一見国内的な政治事件に見える事件の背後に王朝の枠を超えた多元的な世界の影響のあることを確認してきた。また、魏晋南北朝通史の新しい時期区分についても提案した。
著者
佐川 英治
出版者
東洋史研究会
雑誌
東洋史研究 (ISSN:03869059)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.37-64, 2005-06
著者
中村 圭爾 陳 力 佐川 英治 小尾 孝夫 永田 拓治 室山 留美子 王 小蒙 胡 阿祥 魏 斌 高 大倫 毛 陽光
出版者
相愛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

魏晋南北朝時代、長安、洛陽、建康等の主要な首都の周辺地域では、「都城圏」社会と呼ぶことが可能な、独特の社会が出現した。この地域では、首都の政治体制を機能させ、大量の人口を維持するため、各地と首都を連絡する交通網が整備され、生産と流通が発展した。また、首都の先進的な意識、文化や好尚が伝わり、他の地域とは異なる独特の地域性が生まれた。この「都城圏」社会の存在は、魏晋南北朝時代の都市が歴史上に果たした役割を考える上で、非常に重要な意味を持っている。