著者
間辺 美樹 並木 美太郎 兼宗 進 間辺 美恵子 間辺 広樹
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.16-30, 2018-02-20

コンピュータやスマートフォンなどの電子機器の普及による若者の漢字離れが懸念されている.ところが,一般的な漢字学習法といえば,「繰り返し書く」など機械的反復練習から導かれる「暗記」に主眼が置かれていて,「意味の理解」を重視した漢字学習法についてはこれまで十分に議論されてこなかった.本研究では「漢字1字の意味の理解が熟語の理解につながり,熟語を介して形成される漢字ネットワークを拡大させていくことで,多くの漢字を理解できるようになる」という日本漢字能力検定1級取得者の漢字理解モデルに基づき,学習者に意味の理解の大切さを認識させる目的の漢字学習ソフト「熟語マニア」を開発した.選択肢として提示された複数の熟語の中から,意味を考えれば正しい漢字を選択できるクイズ形式のソフトである.高等学校において「熟語マニア」を用いた実験授業を行った結果,生徒の多くが意味を理解することの大切さを認識するようになった.
著者
長島 和平 本多 佑希 長 慎也 間辺 広樹 兼宗 進 並木 美太郎
雑誌
情報教育シンポジウム2016論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.137-140, 2016-08-15

次期指導要領では初等中等教育でのプログラミングの充実が検討されており,実習用のPCなどに事前のインストールなどの手間をかけずにさまざまなプログラミングを行える学習環境が望まれている.そこでWebブラウザから手軽に利用できるオンラインプログラミング学習環境Bit Arrowを提案する.Bit Arrowは代表的なWebブラウザで動作し,複数のプログラミング言語を切り替えて使用できる.現在はJavaScript,C,ドリトルに対応している.教員が授業用のIDを伝えることで,生徒は教室や自宅から利用できる.作成したプログラムは自動的にサーバに保存され,教員が状況を確認したり,課題を評価したりすることが可能である.本発表ではBit Arrowの概要を紹介し,高校と大学で行ったJavaScriptとCの授業を報告する.
著者
長瀧 寛之 中野 由章 野部 緑 兼宗 進
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.2-15, 2014-01-15

リレーショナルデータベースに対する問合せ処理を,ウェブブラウザ上から対話的に操作できるオンライン学習教材sAccessを開発した.特徴として,射影,選択,結合などリレーショナルデータベースの基本操作に1対1対応した操作体系や,それらの処理の前後のデータテーブルを画面上で確認しながら処理を進められる点があげられる.本論文では,主に高校の共通教科「情報」などの非情報系の学習者を対象とした情報教育において,データベース学習で必要になる要件を検討し,提案するsAccessの設計と実装について説明を行う.そのうえで,従来授業などでデータベース学習に用いられてきたツールとの比較を行うことで,sAccessの利点と課題について議論する.
著者
兼宗 進 中谷 多哉子 御手洗 理英 福井 眞吾 久野 靖
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.44, no.13, pp.58-71, 2003-10-15
参考文献数
21
被引用文献数
25

近年,教育課程の改訂により,小学校から高等学校までの初中等教育において情報教育の導入が進められている.筆者らは,「情報教育の中でプログラミングを体験することは計算機の動作原理を学ぶうえで効果的である」という考えから,初中等教育で活用可能なプログラミング言語である「ドリトル」を開発し,それを用いたプログラミング教育について研究を行ってきた.本稿では,中学校においてドリトルを用いて実施したプログラミング教育とその評価について報告する.行った授業では,プログラミング経験のない生徒を対象に,タートルグラフィックスとGUI部品を用いたプログラミングを扱った.また,アンケートと2回の定期試験の結果に基づき,オブジェクト指向を含むプログラミングの概念が生徒にどのように理解されるかを分析した.Recently, IT education curriculum at K12 (kindergarten and 12-year-education) schools are being started in Japan. Programming experiences will be useful for students to learn essence and principle of computers. However, we insist that the use of "modern" languages is indispensable to achieve the goal. In this paper we describe our experiences of using "Dolittle" object-oriented programming language in junior high school classes. Turtle graphics, figure objects, and GUI objects were taught in the class, and paper tests and enquiries were conducted for evaluation. As the result, majority of the students understood basic concepts of programming and object-orientation, and enjoyed the classes.
著者
兼宗 進
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.103-107, 2006
参考文献数
29
被引用文献数
2

Wikipediaは,市販の百科事典を凌駕する巨大な百科事典である。従来の百科辞典と比較して,(1)300万に迫る項目が解説されている,(2)200種類を超える世界中のさまざまな言語の辞典が作られている,(3)日々改定が行われており時代に即した新規項目が充実している,(4)世界中のボランティアの手によって編集が行われていることが,大きな特徴である。本稿では,Wikipediaの概要を紹介し,レファレンスサービスでの利用の可能性について述べた後,関連するいくつかのプロジェクトとWikipediaの課題を解説する。
著者
辰己 丈夫 兼宗進 久野 靖
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.123(2005-CE-082), pp.77-84, 2005-12-10

筆者の一人である辰己は2001年のCE研究会で「情報教育の音楽化」という題名で発表を行ない、情報教育の中で楽譜処理を利用できることを指摘した。一方、兼宗・久野は、タートルグラフィクスを土台にオブジェクト指向を取り入れた教育用プログラミング言語「ドリトル」を開発していた。ドリトルには以前より音楽演奏機能が追加されていたが、本格的な教育への応用は行っていなかった。これを利用したプログラミング教育を実践してみたいという辰己とドリトルを開発している兼宗・久野の3名が、ドリトルの演奏機能に大幅な演奏機能の拡充を行なった。本発表では、「情報教育の音楽化」の概要、ドリトルにどのような拡充が行なわれたのかなどについて説明をするとともに、教材例・授業例の提示などを行なう。
著者
兼宗 進
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.78-83, 2004-02-01 (Released:2017-05-25)
参考文献数
21
被引用文献数
2

WWW(World Wide Web)上の文書を検索する検索エンジンは,インターネットを利用する上で不可欠な存在である。検索エンジンは従来の情報検索技術を基礎としながら,独自の発展を遂げてきた。しかし,内部の検索アルゴリズムが十分に公開されていないことから,検索エンジンは,中の見えないブラックボックスとして手探りの使い方をされることが多い。そこで本稿では,検索エンジンの検索アルゴリズムを構成する「適切なページの収集手法」「ノイズや漏れのない検索を高速に行う手法」「適切にランキングして表示する手法」について解説する。
著者
兼宗 進 御手洗 理英 中谷 多哉子 福井 眞吾 久野 靖
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.42, no.SIG11(PRO12), pp.78-90, 2001-11-15

情報社会の急速な発展にともない,初中等教育の中で情報の比重が高まっている.計算機の働きを最も効果的に学ぶ手段の1 つはプログラミングを体験することであるが,教育現場ではBasic やLogoといった数世代前の言語が使われることが多く,現代のソフトウェアシステムの理解につながらないという問題が存在する.本稿では,初中等教育での利用が可能なプログラミング言語「ドリトル」およびその実行系の設計と実装について述べる.ドリトルはオブジェクト指向言語であり,あらかじめ用意された各種のオブジェクトを活用した教育を可能とする一方,Self 言語と同様のプロトタイプ方式の採用により,クラスや継承などの高度な抽象概念の理解を不要にしている.その他,変数や命令語などの識別子と記号が日本語文字で統一されている,メソッドを属性と統合的に扱えるといった特徴を持つ.処理系はJava2 で書かれたインタプリタとして実装し,教育現場のさまざまな環境で動作できるようにした.
著者
長瀧 寛之 野部 緑 中野 由章 兼宗 進
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS)
巻号頁・発行日
vol.2012-IS-121, no.4, pp.1-8, 2012-09-03

情報システムにおいてデータベースは重要な役割を占めているにもかかわらず,高校教科 「情報」 など一般情報教育においては,演習実施への敷居が高いなどの理由で,データベースが学習トピックとしてほとんど取り上げられていないのが現状である.本研究では,一般情報教育においてデータベース学習を容易に行える環境を提供することを目的に,コンピュータにおけるデータ操作の基本を体験的に行える学習用 Web ツールを提案する.本ツールは実際の一般情報教育の現場において授業実践を行い,そのフィードバックをもとにツールの改良を続けている.本稿では本ツールの概要とその工夫点を説明し,データベース学習活動への有用性について議論する.
著者
紅林 秀治 兼宗 進 鎌田 敏之
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

コンピュータがプログラムで動作し, 様々な機器の動作を制御していることを体験的に学習することで, 科学的にコンピュータを科学的に理解する能力が身に付けることができることが可能になるか調査した。そのために, 独自の教材用自律型ロボットを開発し, 中学生に対する授業実践を行った。その結果, 自動制御機器や家電等, 日常利用している自動化されている機器の仕組みを類推できる能力が身に付いていることがわかった。類推の背景には, コンピュータ, 電気回路, アクチュエータ, センサー等が連動していているシステムを構成していることや, 入力に対してその情報を処理して出力している関係を理解するなど, コンピュータの役割や仕組みを科学的に理解する視点が生まれてくることがわかった
著者
飯坂 正樹 五十嵐 智生 兼宗 進 中村 めぐみ 内田 卓
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.d92-d105, 2023-10-15

日本におけるIT人材の不足と国際競争力の低下はIT教育の遅れに起因している.この課題を受けて学校におけるプログラミング・情報教育の必修化がなされたが,プログラミング能力の客観的評価・可視化が困難であることから教育現場では適切な指導を行うことが難しい.そこで本稿では子どもたちのプログラミング能力の定着度実地検証を行った結果から,プログラミング教育の量や質の差によるプログラミング能力定着度の違いについて述べるとともに,今後学校や大学,プログラミングスクール等で効果的な指導を行う上での汎用的かつ有用な情報を提供する.
著者
白井 詩沙香 上田 真由美 小野 淳 兼宗 進 竹村 治雄 長瀧 寛之 西田 知博 村上 正行
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究では,高等学校の共通教科「情報」および大学の一般情報教育において,主体的・対話的で深い学びを実現するために,体験的な学びを通して情報の科学的な理解を促進する教材と授業内外の学習活動を効果的に活用した授業モデル,ならびに多様な学びを対象とした自己調整学習支援環境を設計・開発し,その効果を検証することを目的とする。この目的を達成するために,(1)共通必履修科目「情報I」を対象に,体験的な実習教材および反転授業を取り入れた授業モデルの開発と評価,(2)新学習指導要領を踏まえた大学の一般情報教育の授業設計,(3) 多様な学習活動データに基づく自己調整学習支援環境の開発と評価に取り組む。
著者
西田知博(大阪学院大)井戸坂幸男(松阪市立飯南中)兼宗進(一橋大)久野靖
雑誌
情報教育シンポジウム2008論文集
巻号頁・発行日
vol.2008, no.6, pp.179-186, 2008-08-12

「コンピュータサイエンスアンプラグド」は.理解が難しいと思われている情報科学を体験的に学ぶことができる教育方法である.その実践では,ゲームなどの「体験」を通じ,生徒たちが情報科学を興味深く,意欲を持って学習できていることが検証されている.本稿では,CSアンプラグドの構造を分析し.その特長を明らかにするとともに,その分析に基づきデザインパターンテンプレート「CSアンプラグドパターン」を提案する.本パターンは教育方法を新たに考案したり,既存の教育方法を改良する際に,CSアンプラグドに見られる利点を持たせるための指針や評価方法として効果的であることが期待される.さらに,独白教材「伝言ゲーム」の紹介とCSアンプラグドパターンを用いた検証を行い,提案したデザインパターンテンプレートの有用性を評価する.
著者
本多 佑希 兼宗 進
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.583-584, 2019-02-28

ブラウザ上でプログラムの編集・実行が可能なDNCLの学習環境「どんくり」を開発した.どんくりはブラウザ上で動作するため,PCやタブレットのブラウザからアクセスするだけで,手軽にプログラミングの学習が可能である.どんくりでは,DNCLの仕様に配列や関数の宣言など一部機能を拡張している.また,アルゴリズムの学習を目的とした機能として,プログラムを実行した際のプロファイリング情報を確認する機能や,配列操作を簡易化する関数を用意している.本稿では,どんくりの設計と実装について報告する.
著者
島袋 舞子 本多 佑希 兼宗 進
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.21-30, 2020-10-29

新学習指導要領で高等学校の共通教科「情報」では,情報Iにおいて人工知能(AI)やWeb APIなどの外部のプログラムとの連携を含めたプログラミングが扱われる.我々はその題材として,スマートスピーカーに着目した.スマートスピーカーのアプリケーションを開発することで,音声認識のAIやWeb APIを体験することができる.そこで,Webブラウザ上で動作するプログラム開発支援環境を開発した.本論文では,開発したプログラム開発支援環境の概要と,高等学校で行った授業を報告する.生徒へのアンケート結果と教員へのインタビューにより,高校生がスマートスピーカー専用のアプリを開発できることと,スマートスピーカーのアプリ開発をとおして生徒がスマートスピーカーの仕組みやWeb APIについて学ぶことが可能であることを確認した.
著者
兼宗 進
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン (ISSN:21860661)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.92-99, 2019-09-01 (Released:2019-09-01)
参考文献数
22

2020 年度から始まる新しい教育課程では,小学校から高等学校までの12 年間の教育課程の中で,プログラミングを教科に位置付けた情報教育が行われる予定である.小学校ではプログラミングを体験し,中学校では計測・制御と双方向コンテンツのプログラミングを学び,高等学校ではアルゴリズムを含めたプログラミングを学ぶ.本稿では,有識者会議等の議論で得た知見を含め,学校教育におけるプログラミング教育を概観し,筆者が進めているプログラミング教育の研究を紹介する.
著者
岸本 有生 本多 佑希 漆原 宏丞 兼宗 進
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.159-163, 2021-08-21

高等学校の新学習指導要領では,目的に応じた適切なデータ収集や整理,整形について理解し技能を身につけるデータ活用の分野が注目されている.実現のために ICT の活用が期待されているが,その環境はあまり整備されていない.そこで本研究では,身近なスマートフォンの内蔵センサを利用したデータ分析の授業を提案する.実際に工学部の大学 2,3 年生に対して,オンデマンドの動画配信により授業を行った.さらに,高校生に対しても,同様の授業内容が適用できるかを対面授業にて調べた.
著者
兼宗 進
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.176-180, 2020-04-01 (Released:2020-04-01)

プログラミングの基礎的な考え方を解説する。言語はPythonを使用し,Google Colaboratoryによるブラウザでの実習を紹介した。制御構造の説明にはフローチャートを使用し,プログラムの例を示しながら意味を説明した。プログラミングの学習過程で初心者がつまずきやすい制御構造の入れ子構造,配列やリスト,関数の定義についても例を示しながら解説を行った。
著者
中谷 多哉子 兼宗 進 御手洗 理英 福井 眞吾 久野 靖
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.1610-1624, 2002-06-15

初中等教育での情報教育の準備が進められている.オブジェクトストームとは,コンピュータへの興味を持たせつつ,楽しませながら,オブジェクト指向プログラミングを介してコンピュータの基本的な原理を理解させる情報教育コンセプトである.ドリトルは,オブジェクトストームに基づいて開発された日本語オブジェクト指向プログラミング言語である.ドリトルは,オブジェクトの効果的な見せ方の1つとして,タートルグラフィックスを含む図形環境を提供しており,簡潔で分かりやすい文法を持っている.本稿では,中高校生を対象に行った実験授業の成果を示すとともに,オブジェクトストームの概念を紹介し,ドリトルの教育効果と可能性について議論する.