著者
杜 健 加藤 和生
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-9, 2020-07-31 (Released:2020-07-31)
参考文献数
34

It has been asked theoretically whether or not more Self-Concept Differentiation (SCD) leads to better psychological adjustment; empirical findings, however, have shown results inconsistent with theoretical hypotheses so far. We argued that previous studies have focused only on the differentiation of self, without acknowledging two types of people being possibly confounded. We hypothesized that the tendency of thinking in more abstract/organized vs. concrete/unorganized ways (as measured by Level of Personal Agency, LPA) would be one of the factors that could distinguish those two types. To examine this possibility, 320 Chinese college students were asked to complete a questionnaire including measures of SCD, LPA, and Subjective Well-Being (SWB). Findings demonstrated the expected significant interaction between LPA and SCD. In the low LPA group, high SCD students self-rated lower in SWB than low SCD students; in the high LPA group, however, high SCD students scored higher in SWB than low SCD students. Those findings suggested that to predict psychological adjustment, we need to take into account not only the extent of SCD, but also the organizing tendency of thinking.
著者
中尾 達馬 加藤 和生
出版者
九州大学大学院人間環境学研究院
雑誌
九州大学心理学研究 (ISSN:13453904)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.19-27, 2004

This study examined reliabilities and validities of adult attachment style scales for "the generalized other" (ECR-GO, RQ-GO). 378 college students participated in Study 1, and 77 college female students participated in Study 2. In Study l, we examined (1) reliability of ECR-GO by a coefficients and factor comparison between ECR-GO and ECR, (2)validity of ECR-GO by correlations between ECR-GO and three scales theoretically related to Self- and Others- views (e.g., Self-esteem scale; Rosenberg, 1965), (3) whether the patterns of the distribution of 4 attachment styles classified by RQ-GO differ by the types of attachment figures rated for (ECR-GO, RQ-GO). In Study 2, we examined 1 month test-retest reliabilities of ECR-GO and RQ-GO: By examining (1) correlations between Time 1 and Time 2 (for both scales) , and (2) a cross table of 4 attachment styles classified by RQ-GO on the 2 times. The results of the two studies demonstrated that ECR-GO and RQ-GO have good psychometric properties in reliabilities and validities.
著者
中尾 達馬 加藤 和生
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.281-292, 2006 (Released:2006-08-30)
参考文献数
23
被引用文献数
4 2

本研究では,従来の成人愛着研究が暗々裏に仮定してきた「成人愛着スタイルは成人の愛着行動パターンの違いを反映する」という理論的前提の妥当性を実証的に検討した.大学生378名に対して,成人愛着スタイル尺度と本研究で作成した成人愛着行動尺度を実施した結果,以下の2点が示された.すなわち,成人愛着行動を直接的愛着行動(安全欲求を直接的に表現する愛着行動)と間接的愛着行動(自他の適切な心理的距離の調整にとらわれるため,安全欲求を間接的に表現する愛着行動)の2種類に分類した場合に,成人は,(1)「親密性の回避」が低いほど直接的愛着行動をより行い,(2)「見捨てられ不安」が高いほど間接的愛着行動をより行う.また,これらの結果は,愛着スタイルの4分類を用いた分析においても確認できた.以上の結果から,本研究により,上記の理論的前提が妥当であることが実証された.
著者
小林 美緒 加藤 和生
出版者
日本青年心理学会
雑誌
青年心理学研究 (ISSN:09153349)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.77-95, 2021-03-27 (Released:2021-04-01)
参考文献数
13

This study was conducted to show how 4 types of amae-engagers (Types A: Adaptive, B: Suppressed, C: Hesitant and D: Confused, as identified by Amae-Type Scale (ATS), Kobayashi & Kato (2015)) would differ, in the theoretically predicted ways, on the various aspects of amae processes (amae-related behaviors/cognitions, emotions, and attitudes) in the 3 (pre-, in-, and post-) phases of amae interactions; therefore, so as to demonstrate ATSʼs theoretical validity. 305 college students responded to a questionnaire to self-rate on the theoretically identified various aspects of experiencing processes in the amae interaction which they actually had engaged in. The findings demonstrated that the 4 types differentially had experienced their own amae interaction, as theoretically expected. Implications of the findings and potentials of ATS and its perspective for future amae research were discussed.
著者
中尾 達馬 加藤 和生
出版者
九州大学大学院人間環境学研究院
雑誌
九州大学心理学研究 (ISSN:13453904)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.9-19, 2006

The purpose of this study was twofold: (1) To investigate whether the pattern of frequency differences in attachment behaviors among 4 attachment styles are consistent across attachment figures, means, and strategies, and (2) to examine their differences in security needs that have been theoretically assumed. 211 college students were asked to respond to a questionnaire. Main findings were as follows, (1) Secure and Preoccupied engaged in attachment behaviors more frequently than Dismissing and Fearful-avoidant, regardless of the types of attachment figures (e.g., mother, romantic partner), means (e.g., mail, telephone), and strategies (proximity-maintenance, expressing own feelings more openly). (2) Secure, Preoccupied, and Fearful rated higher for security needs than Dismissing. Those findings were interpreted to demonstrate the validity of the implicitly held, but prevailing, hypothesis: Adult attachment styles do reflect the corresponding patterns of attachment behaviors.
著者
加藤 和生 丸野 俊一 田嶌 誠一 笠原 正洋 後藤 晶子 田代 勝良 大隈 紘子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

3年間を通して,以下の一連の研究を行った.(1)一般サンプル(大学生)を対象に,潜在的児童虐待被害の実態およびその心に及ぼす影響を検討した.その結果,多くの潜在化した被害者が存在すること明かとなった.(2)これまでに開発してきた「多重性児童虐待目録」の併存的妥当性を検討した.その結果,理論的に予想される方向の結果が得られ,妥当性が確認された.また「多重型児童虐待目録」を養護施設に措置された被虐待児に面接形式で実施し,臨床的妥当性の探索的検討を行った.本目録が,これらの子どもの体験した虐待経験を概ね測定していることが確認された.(3)F県3市の保育園に在園する幼児について,親による虐待の実態の大規模調査を保育士に実施した.その結果,約1.5%の潜在的被虐待児が存在することが明らかなった.また同時に,1-3歳児用・4-5歳児用の「幼児用児童虐待症状尺度」を開発した.(4)保育士の被虐待児の早期発見と対応に伴う問題点に関する質問紙調査を行い,その結果を質的に分析した.この結果をとおして,潜在化する被虐待児の早期発見と対応のための対策を考案する上で,今後の研究の手がかりを得た.(5)保育士による園内での児童虐待の実態を,大学生の回想報告の調査を行うことで明らかにした.(6)大規模な精神科医療機関に通院する患者における潜在的児童虐待被害の実態を調査した.(7)虐待通報が十分に行われていない理由として考えられる「虐待・しつけの認知」に関するズレを,13の職種の人たち(児童相談所職員,医師,検察官,保育士,教師,その他の職種,主婦,大学生など)について調査し,比較検討した.その結果,児童相談所の児童虐待に専門性をもつ人たちは,一般人(主婦,他の職種,大学生)よりも,虐待的行為をより非虐待的に見なしていることが明らかとなった.また他の職種の人の評定値は,これら2群の間にくることがわかった.
著者
加藤 和生 丸野 俊一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

2年間の研究を通して,次のような実績を得た:1.甘えタイプの理論化と尺度構成Kato(1995)の甘え過程モデルを展開しながら,甘えタイプのモデルを提案した.理論では,自己観と他者観のポジティブ・ネガティブの組み合わせにより,4つのタイプを区別した:甘え上手タイプ(A),甘え難いタイプ(B),気兼ねする甘え屋タイプ(C),混乱型甘え屋(D).これらのタイプを測定するために,甘えタイプ尺度を構成した.次に,自己観・他者観の測度の得点の違いから,理論的妥当性を検討した.2.甘えタイプによる甘え行動・交流での態度,認知過程,感情の違いの検討Kato(1995)の甘え過程モデルにもとづき,甘え態度,認知過程,情動体験を測定するための尺度を構成し,理論化した4つの甘えタイプによって甘え行動・交流の間で甘え態度,認知過程,情動体験にどのような違いがあるかを検討した.AタイプとBタイプは,多くの要因得点で対局をなしていた.C・Dタイプは,その中間に来ることがおおく,それらのタイプに特徴的な幾つかの要因得点では,独特の反応を示していた.3.甘え・甘えさせの素朴概念の分析従来の甘え研究者は限られた観察から甘え行動の一側面について議論することがおおく,甘え・甘えさせが実際にどういう行動や心理的過程を含んでいるかを分析していない.そこでそれらの素朴概念(自由記述)の内容分析をすることにより,一般の人が甘えや甘えさせることをどのように理解しているかを質的に分析した.4.大学生の愛着行動の質的分析甘えの研究意義を明らかにするために,類似概念と思われている愛着行動の分析を通して,逆に甘えの特徴を明らかにすることを試みた.そのために,Kato(1995)の甘え過程モデルの枠組みを用いながら,愛着行動の内容,動機,状況,および対象を自由記述の質的分析をとおして解明を試みた.
著者
丸野 俊一 加藤 和生 仮屋園 昭彦 藤田 豊 小林 敬一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

子どもの発達に応じた創造的ディスカッション(CDC)技能を育む学習/教育環境作りに関する3年間の研究成果は次の通りである: 1)"CDC技能を育む学習/教育環境作りの基本型は対話中心(「子ども主体の話し合い・学び合う」)の授業実践にある"という前提の基に、対話を中心とした授業実践作りに向けての「学びの共同体」作りを行い、現場教師の実践力の向上を図るアクションリサーチを展開した。3年間に渡る追跡研究の中から、身体化された実践知を客観的に可視化し、支援する教師成長過程モデルを構築し、その妥当性を検証した。 2)子どものCDC技能はどのように発達していくのかに関する発達段階モデルを、「態度」「技能」「価値」の諸側面を考慮しながら構築し、その促進を図る為には、どのような学習/教育環境作りが不可欠であるかについての縦断的な追跡研究を行った。 3)対話を中心とした授業実践を行う為には、教師は「新たな授業観」(授業とは子どもと協同構成するもの)のもとに「子どもの視点を取り入れた事前指導案作り」を行い、実践の中では「最適な心理的距離」(自分の感情に振り回されない、遂行上の責任性)の取り方に注意し、3つの位相(授業前、授業中、授業後)での省察的思考に熟達化していくことが不可欠であることを実証した。 4)子どものCDC技能の育成には、"対話を支える談話的風土作り"(グランドルール作り)が教科を超えて必要であるが、創造的・批判的思考が広まる/深まるような対話が生まれる為には、具体的な授業実践の文脈の中でグランドルールの重要性を認識する/体験するような教師からの働きかけが不可欠である。 5)教師の"対話を中心とした授業実践力"の向上と、子ども達の創造的・批判的なCDC技能の向上との間には、車の両輪のごとく、切るに切れない双方向性の関係があり、一つのシステムとして機能する。
著者
丸野 俊一 藤田 敦 藤田 豊 安永 悟 南 博文 加藤 和生
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

3ヶ年間の成果の概要をまとめる以下のようになる。1. 新たなMK式議論尺度の開発: これまでディスカション状況に積極的に参加し、創造的な問題解決行動を遂行していく上で不可欠なスキルや態度やモニタリング能力などを測定すす客観的な尺度がなかたので、新たに3つのコンポーネント(議論スキルの側面,モニタリングの側面,態度・価値の側面)から成り立つMK式議論尺度を開発した。また外部基準尺度を用いてその信頼性や妥当性を検証した結果、信頼性、妥当性は極めて高く、尺度の標準化へ向けての確信が得られた。2. 議論過程のモデル化: ディスカッション過程がどのように展開していくかについて、特にモニタリングに焦点を定め、モニタリングについて3位相モデル(pre-monitoring,monitoring in action,post-monitoring)を提案し、各位相ではどのような側面や内容が思考吟味の対象になるか、またそこで必要とされる思考特性とはどのようなものかについてのモデル構成を行った。3. モニタリング訓練効果: 自己反省的思考、前提の問い直し、常識への疑いなどを吟味することが創造的思考を育む上で不可欠であるという仮説の基に、複眼的思考を育成するようなモニタリング訓練を行い、議論スキルた議論に取り組む姿勢や態度の変容過程を検証した。4.「話し合い」活動に対する素朴認識: 大学生や小学生を対象に、「話し合い」活動に対する取り組みの姿勢や、話し合い活動の意義や価値に対する素朴認識を検討した。特に、教育現場では「話し合い活動」がどのように行われているのか、また子供たちはどのようにその意義や問題点を認識しているかについて体系的な調査研究を行い、対話型授業を効果的に展開していくための教授プログラムや教授環境設計の指針を示した。5. LTD学習法の実践: LTD学習法の手続き的知識やスクリプトを精緻化し、教育現場でその実践を繰り返し、LTD学習法が対人関係技法の開発や創造的・批判的思考の促進や他者への共感的理解の促進などに効果的であることを実証した。
著者
角田 真一 佐藤 裕隆 加藤 和生 野中 晃 大平 政喜 笹本 和好 上田 純郎
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.168-171, 2001-08
被引用文献数
3 1

浄水ケーキを主な原料とした土壌改良資材を作成し, 砂質土壌の物理・化学性, および緑化用植物の生育に及ぼす影響について調査した。浄水ケーキを主原料とした改良資材の砂質土壌に対する施用は, 従来より改良材として使用されている赤土+バーク堆肥と比べ, 難効性有効水分量, 液相率を高める傾向があり, また, 化学性に対しては肥料添加により無機成分含有量および, 肥料の保持機能を高める効果が認められた。茨城県波崎町の砂質土壌地帯において, 数種類の緑化用植物を植栽し, 試作した改良資材の施用効果について調査した。その結果, 試作した改良資材の施用は, 従来の改良材に比べ供試したほとんどの植物種の生育を高めた。また, 処理から約2年経過後, 従来の改良材に比べ肥料が充分に保持されていることから, 生育増進の主な原因が土壌の化学性の改善によるものと考察した。