著者
山中 裕樹 源 利文 高原 輝彦 内井 喜美子 土居 秀幸
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.601-611, 2016 (Released:2016-12-28)
参考文献数
58
被引用文献数
19

大型水棲動物を対象とした環境DNA分析は、野外調査時には水を汲むだけで済むという簡便性から、広域的かつ長期的な生態学的調査や生物相調査への適用が期待されている。環境DNA分析は種の分布や生物量、そして種組成の解析にまで利用され始めているが、大型水棲生物を対象とした研究が行われるようになってからまだ日が浅く、野外調査などへの適用に当たっては当然知っておくべき基礎情報の中にも、環境DNAの水中での分解や拡散の過程など、未だ明らかとなっていないブラックボックスが残されているのが現状である。本稿ではこれまでの多くの野外適用例をレビューして、環境DNA分析の野外調査への適用の場面で想定される様々な疑問や課題について解説し、今後の展望を述べる。環境DNA分析から得られる結果は採捕や目視といった既存の調査で得られた知見との比較検討の上で適切に解釈する必要があり、この新たな手法が今後各方面からの評価と改善を繰り返して、一般的な調査手法として大きく発展することを期待したい。
著者
高原 輝彦 山中 裕樹 源 利文 土居 秀幸 内井 喜美子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.583-599, 2016 (Released:2016-12-28)
参考文献数
81
被引用文献数
4

要旨: 湖沼や河川、海洋沿岸域で採取した水試料に浮遊・存在するDNA(環境DNA)の分析により、水棲動物の生息状況(在・不在やバイオマスなど)を推定する生物モニタリング手法は、“環境DNA分析”と呼ばれる。これまでに、淡水域から海水域までの様々な環境において、環境DNA分析を用いた生物モニタリングが実施されており、目視や採捕などによる従来の調査法と比べて、低コスト・高パフォーマンスであることが報告されている。現在まで、環境DNAの分析に必要となる水試料の採取量や保存の仕方、水試料に含まれるDNAの回収・濃縮方法、DNAの抽出・精製方法、およびDNA情報の解析方法については、研究者ごとに様々な方法が採用されており、統一的なプロトコルはない。いくつかの研究では、水試料に含まれるDNAの濃縮方法やDNA抽出方法の違いが、得られるDNA濃度や検出率に及ぼす影響を比較・検討しており、その結果、野外環境条件や対象生物種によって、効果的なプロトコルに相違があることがわかってきた。そこで本稿では、著者らのこれまでの研究を含めた既報の論文における実験手法を概説し、環境DNA分析を用いた効率的な生物モニタリング手法の確立に向けて議論を展開する。本稿によって、環境DNA分析が広く認知されるとともに、本稿がこれから環境DNAの研究分野に参画する研究者の技術マニュアルとして活用されることを願う。さらに、環境DNA分析が、様々な局面での環境調査において、採捕や目視といった既存の手法と同様に、一般的に利用される生物モニタリング手法となることを期待している。
著者
原田 茜 吉田 俊也 Resco de Dios V. 野口 麻穂子 河原 輝彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.397-403, 2008 (Released:2009-01-23)
参考文献数
14
被引用文献数
4 4

北海道北部の森林では, ササ地を森林化させるために掻き起こし施業が広く行われてきた。施業から6∼8年が経過した樹冠下の掻き起こし地を対象に, 9種の高木性樹種を対象として樹高成長量と生存率を調べ, それらに影響する要因(植生間の競争・促進効果)を明らかにした。成長量と生存率が高かったのはキハダとナナカマド, ともに低かったのはアカエゾマツであった。多くの樹種の成長は, 周囲の広葉樹または稚樹以外の下層植生の量から促進効果を受けていた。ただし, シラカンバについては, 施業後3∼5年目の時点では促進効果が認められていたものの, 今回の結果では競争効果に転じていた。一方, 生存率については, 多くの樹種について周囲の針葉樹による負の影響のみが認められた。密度または生存率の低かった多くの樹種に対して, 周囲のシラカンバやササの回復が負の要因として働いていないことから, 多様な樹種の定着を図るうえで, 除伐や下刈りの実行は, 少なくともこの段階では有効ではないと考えられた。
著者
原田 茜 吉田 俊也 Resco de Dios V. 野口 麻穂子 河原 輝彦
出版者
日本森林学会
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.397-403, 2008 (Released:2011-04-05)

北海道北部の森林では、ササ地を森林化させるために掻き起こし施業が広く行われてきた。施業から6〜8年が経過した樹冠下の掻き起こし地を対象に、9種の高木性樹種を対象として樹高成長量と生存率を調べ、それらに影響する要因(植生間の競争・促進効果)を明らかにした。成長量と生存率が高かったのはキハダとナナカマド、ともに低かったのはアカエゾマツであった。多くの樹種の成長は、周囲の広葉樹または稚樹以外の下層植生の量から促進効果を受けていた。ただし、シラカンバについては、施業後3〜5年目の時点では促進効果が認められていたものの、今回の結果では競争効果に転じていた。一方、生存率については、多くの樹種について周囲の針葉樹による負の影響のみが認められた。密度または生存率の低かった多くの樹種に対して、周囲のシラカンバやササの回復が負の要因として働いていないことから、多様な樹種の定着を図るうえで、除伐や下刈りの実行は、少なくともこの段階では有効ではないと考えられた。
著者
原田 茜 吉田 俊也 Resco de Dios Victor 野口 麻穂子 河原 輝彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 = Journal of the Japanese Forest Society (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.397-403, 2008-12-01
参考文献数
14
被引用文献数
4

北海道北部の森林では, ササ地を森林化させるために掻き起こし施業が広く行われてきた。施業から6∼8年が経過した樹冠下の掻き起こし地を対象に, 9種の高木性樹種を対象として樹高成長量と生存率を調べ, それらに影響する要因(植生間の競争・促進効果)を明らかにした。成長量と生存率が高かったのはキハダとナナカマド, ともに低かったのはアカエゾマツであった。多くの樹種の成長は, 周囲の広葉樹または稚樹以外の下層植生の量から促進効果を受けていた。ただし, シラカンバについては, 施業後3∼5年目の時点では促進効果が認められていたものの, 今回の結果では競争効果に転じていた。一方, 生存率については, 多くの樹種について周囲の針葉樹による負の影響のみが認められた。密度または生存率の低かった多くの樹種に対して, 周囲のシラカンバやササの回復が負の要因として働いていないことから, 多様な樹種の定着を図るうえで, 除伐や下刈りの実行は, 少なくともこの段階では有効ではないと考えられた。
著者
菊池 早希子 柏原 輝彦 高橋 嘉夫
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.171-184, 2017-12-25 (Released:2017-12-25)
参考文献数
100

Adsorption chemistry of Fe(III) oxyhydroxides is one of the important topics because of their considerable impacts on trace element geochemistry in the surface environment. Although inorganic Fe(III) oxyhydroxides have been used as an absorbent for laboratory studies, there is a growing recognition that biogenic iron oxyhydroxides (BIOS) are dominant in the environment. The microbial organic materials in BIOS can dramatically change mineralogical and adsorptive characteristics of Fe(III) oxyhydroxides, but the details and their differences from inorganic Fe(III) oxyhydroxides have not been specified well. In this review, we introduce our recent findings of BIOS especially focusing on their crystal structure, mineral transformation during early diagenesis, and trace element adsorption. The microbe-mineral interactions in BIOS (i) change the mineral structure of ferrihydrite, (ii) limit the ratio of BIOS reduced under anoxic condition, and (iii) enhance adsorption of cesium cation whereas inhibit anion adsorption of selenate and selenite ions compared to inorganic Fe(III) oxyhydroxides. These results will provide new insight into the geochemical role of BIOS and also contribute to other scientific fields such as environmental engineering, environmental microbiology, and ore geology.
著者
関野 進 吉田 耕一 原 輝彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.50, pp.41-47, 2000-05-31
参考文献数
3

システム内部にモデルの特徴点に関する情報と、距離画像から得られた特徴点に関する情報とが与えられているときに、位置姿勢パラメータをどのように決定するかが問題となる。位置姿勢パラメータの推定手法に関する従来法の一つであるGongzhuの手法では、位置姿勢パラメータの導出にHough空間における投票を行うが、任意パラメータに対して、微小刻みで値を変化させ、すべての解について投票といったことをするため、位置姿勢パラメータの精度と推定時間は、任意パラメータの刻み幅に依存する。精度は、この刻み幅が小さい程高くなるが、投票時間は逆に増えてしまうという問題点がある。本報告では、Gongzhuの手法に解析的な手法を用いた改良を加え、位置姿勢パラメータの推定時間と精度の向上の確認を行った。We have been developing object shape recognition systems using range images. These are images composed of scene images whose pixel contains information on the distance from the camera. A range image can be obtained, for example, by capturing the reflection of laser lines from an object through a CCD camera and employing triangulation. We can use this information to realize a recognition system which can distinguish an object, whose 3D shape is specified by CAD data, from a cluttered scene containing many unknown objects. We developed arranged method based on Gongzhu's method.
著者
河原 輝彦
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.317-322, 1978-09-25

葉や枝が枯れ林床に落ちてきたとき, それらが生きていたときにくらべてどの程度の重量減少があるかを調べた。(1)6樹種で葉重量の季節変化を調べた結果では, 夏にもっとも重く, 落葉直前にもっとも軽くなっていた。その重量は夏の葉より15〜25%減少していた。この重量減少のうちおよそ半分は雨水による物質の溶脱のために, 残り半分は樹体内への物質の移動によるものと思われた。(2)落枝の重量減少をケヤキ, ブナ, スギ, アカマツ, カラマツ, ヒノキの6樹種で調べた。カラマツの落枝は生き枝にくらべて重量減少はほとんどなかったが, 他の5樹種の落枝では生き枝にくらべて最大で40〜50%の重量減少がみられた。