著者
土屋 明
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.295, 1962 (Released:2014-08-29)

皮表脂質は脂腺排泄管から排出されたものと角質層から由来したものとで成立ち,皮表に一種の薄い脂質の膜を形成しているものであるが,この皮表脂膜は皮膚柔軟性の保持,体温放射,乾燥化,細菌侵襲等に対する防禦能としての機能を有し,皮膚生理に重要な役割を演じているものであり,古くからその性状機能等が諸家によつて研究され論じられてきている.近年この皮脂に対して発汗が重大な影響を与えるものとして注目される様になつた.即ち皮表脂膜は脂質と汗のemulsionによつて形成されており,前記の皮膚表面に於ける種々の機能はこのsurface filmがemulsionであるという性状に依つて明解に説明しうると主張されたり,又一方これに対し実験的にこのemulsion説を追求し少なからず疑義を表明している者もあり,未だに皮表脂質と汗の関係に就いては結論的なものが見出されず現状に至つている.私は単位時間内に新たに排出された皮脂をオスミウム酸濾紙により観察し,これによつて皮脂腺の排出程度を推量し,皮脂腺機能の諸問題のうち,その2,3について検討し,更に位相差顕微鏡を用いてsurface filmの性状を観察,検討を加え見るべき知見を得たので諸家の報告と比較検討しつつ独自の見解について報告する.
著者
三浦 香苗 渋谷 美枝子 土屋 明子
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. I, 教育科学編 (ISSN:13427407)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.29-44, 1996-02-29
被引用文献数
3

小学校で学習する"算数"は,中学校では"数学"と教科名がかわり,より論理的で抽象的な内容になる。さらに,中学校で学習する数学は高校の数学へ,大学や専門機関で学ぶ数学という学問へと,より高度で複雑になり発展・深化していく。算数は,数学への入口としての教科であり,論理的思考・抽象的思考を学ぶものであると位置づけられる。学習指導要領によれば,算数科の目標は,「数量や図形についての基礎的な知識と技能を身に付け,日常の事象について見通しをもち筋道を立てて考える能力を育てるとともに,数理的な処理のよさが分かり,進んで生活に生かそうとする態度を育てる」(文部省,1989a p.38)である。中学校数学科の目標の設定についての部分では,「小学校算数の性格を受け継ぎ,心身の発達に応じて,算数の目標を更に十分に達成させるとともに,小学校のときよりも一層論理的,抽象的に思考することができ,数学的な理解を深め,数学的な考察や処理についての能力を一層高めるようにする」と,算数と関連させて数学の目標を位置づけ,数学科の目標は「数量,図形などに関する基礎的な概念や原理・法則の理解を深め,数学的な表現や処理の仕方を習得し,事象を数理的に考察する能力を高めるとともに数学的な見方や考え方のよさを知り,それらを進んで活用する態度を育てる」(文部省,1989c p.9)という算数科ときわめて類似したものである。平成元年に学習指導要領が改訂され,円周率などの複雑な計算については電卓使用を教科書に明記するなど,算数においても大幅な変更が行われた。算数科改善の具体的事項の4項目の1つとして「中学校との指導の一貫性を一層図る」(文部省,1989b p.2)が挙げられ,これまで6年生の比例・反比例で未知数にxyを使用していたものが,4年生で文字を使用して数量関係を式に表すことがとり入れられた。この学習指導要領は,小学校では平成4年度,中学校では5年度より施行されている。算数と数学の学習内容の関連について,小学校教員と中学校教員の認識を調べた結果(三浦 1994a)によれば,中学校数学の授業を理解する前提として,小学校教員は22項目の算数の基礎的知識・技能のほとんど全ての習得を期待していたのに対し,中学校教員はより限られた項目に対しては習得を重視していたものの,習得していなくとも中学校数学の授業に支障がないとする項目もみられ(渋谷・三浦,1994),小学校教員と中学校教員の算数の達成重要度認識がかなり異なったものであることが示された。このような点を踏まえ,中学校数学とのつながりという観点から,最低限必要な算数の基礎的学習内容を特定し,小学校卒業時およびその後の学習内容の達成状況を調べることが,本研究の第1の目的である。先行研究では,小学校卒業時には,算数の基礎的学習内容である四則演算計算は平均約83%,文章題は平均約64%の児童に習得されていることが確認されている(渋谷・三浦,1995a)。今回,中学生にも同様の内容の調査を行うことで,中学入学後もこれらの算数の基礎的な学力が定着しているか,また,その後の学力の向上がどのような問題にみられるかを検討する。第2に,既に行なった調査内容に,図形や関数等の内容を加えた,より広い領域の学習内容の「算数の基礎的学力診断テスト」を作成し,領域間の達成度の関連を検討する。我々は,小学生向け算数学力診断テスト作成のための調査を行ない,四則演算計算・文章題について,小学校卒業時の習得状況および誤答傾向,四則演算計算と文章題の関連について,以下の点を明らかにしている。(1)文章題解決においては主に立式過程で誤りが生じ,計算過程以降の誤りは1割以下と少ない。文章題解決においては,数量関係を把握して式に表すことが,誤りを生じさせ易い困難な過程である。(2)計算力が高いほど文章題の正答率が高く,計算力の高さによって,誤って立式する演算の種類が異なり,文章題解決過程で生じる誤りの種類には質的差異がみられる(渋谷ほか,1995)。今回の調査では,図形に関する知識などを問う図形問題をとり入れるが,計算力や数量関係の把握を必要としない図形問題は,計算力・文章題とどのように関連しているのかを検討する。さらに,数学の学習者である中学生自身が,算数の学習内容をどの程度中学校数学を理解する前提として必要と認識しているのかを調べることが第3の目的である。これについては,数学の学習内容を全て修了した時点の認識として中学卒業時の3年生,算数の学習内容についての記憶が比較的多いと思われる中学1年生に,小学校算数の学習内容である具体的な個々の問題について,"この問題ができることは,中学校の数学の授業についていくために必要かを尋ね,その差異を検討する。第4の目的は,学習内容の達成重要認識と達成度との関連を検討することである。算数で学習した個々の知識が数学の授業において必要だと認識するかどうかは,個々の知識を習得しているかどうかで異なるであろうか。算数のある問題を解ける生徒は,"この知識があったため数学のある部分が容易に理解できた"と考えるのか,あるいは"この種の知識がなくとも支障がなかった"と考えるのだろうか。逆に,ある算数の問題が解けない場合に,数学の学習においてその問題を解けることが必要と思わないのか,あるいは,"この問題が解ければ数学も容易に理解できるのに"と達成重要度認識が高いのだろうか。この点についても,第3の目的で検討する,算数の学習内容のどの部分が中学校数学の理解に必要と認識されているか,と関連させて検討する。
著者
土屋 明仁 宮寺 庸造 夜久 竹夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.41, pp.19-24, 2001-05-04
被引用文献数
1

URLの登録/再利用を行う際の問題として, URLは階層構造をなす分類項目に一意に類別されるが複数の内容を含むURLの類別が困難, URL相互の関連が欠落するなどがあげられる. 本研究では多変最解析の手法を用いて上記の問題点の解決を試みた. 開発にはクロスプラットフォーム, ネットワーク型のソフトウェア開発が比較的容易に行えるJAVA言語と, WWWブラウザにはNetscapeナビゲータを用いた. 新しいURLナビゲータではキーワードによるURLの意味付けが可能で, またURL相互の関連性が提示される. 利用者の思考状態に対応して動的に変化するURL集合を操作することによって, 思考活動に対して自然でURL相互の関連に基づいたウェブコンテンツの参照を支援できると考えられ, これまでにないURL資産の運用が実現できる可能性がある.
著者
丸山 慧 土屋 明宏 吉田 敏弘 山根 貴和 上岡 孝志 落岩 克哉
出版者
マツダ株式会社
雑誌
マツダ技報 (ISSN:02880601)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.105-110, 2021 (Released:2022-02-08)
参考文献数
10

自動車の防錆品質の適正化のためには,部品ごとの腐食環境を定量化し,それぞれの環境に応じた防錆処理を施す必要がある。しかしながら,車両の構成部品は何万点にも及ぶことから,実車での腐食環境計測には膨大な時間,コストを要する。そこで,防錆開発の効率化のために部品ごとの腐食環境を予測する上で最も重要な因子である走行中の部品ごとの被水量に着目し,被水シミュレーションの開発に取り組んだ。流体解析手法としてMoving Particle Simulation(MPS)法を活用することでタイヤからの水跳ね挙動を再現し,更に車両周りの気流速度データとの連成解析を行うことで,極めて高精度な被水量の予測技術を確立した。
著者
土屋 明彦
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.94-98, 2009-01

昭和の伝統を発する追進農場から「開かれた学校」を目指す平成の組織改革に至る。愛知県立農業大学校は、農商務省愛知種馬所(明治43年)、愛知県種畜場(大正13年)を経て、昭和9年に追進農場として創設されました。現在でも正門は愛知種馬所を残す馬頭道と称する道路に面し、樹齢100年余の松並木の中に、当時の近代建築の追進館講堂(昭和10年)、追進資料室(昭和16年)が建っています。追進館といえば、朝の連続ドラマ(NHK)「純情きらら」の撮影が行われ、追進館に入ると主演の「宮崎あおい」ふんする桜子がピアノを弾く様子や、当時の追進農場で学ぶ学生の様子がセピア色に浮かんでくるようです。以来、農業後継者の育成を目的とした追進営農大学校となり、昭和59年に農業改良普及員等の農業技術指導者の養成を目的とした農業技術大学校を加え、今日の総面積38.99haの愛知県立農業大学校となりました。平成15年には中央教育棟が建設されました。現在、教育部農学科(岡崎キャンパス)、同研究科(長久手キャンパス)、研修部の2部2科制で構成され、「若者に夢と希望を抱かせる学園」、「開かれた農業大学校」を目指しています。平成20年度は、多岐の社会情勢からより魅力ある学校とするため学校教育法に基づく「専修学校」となり、それにより卒業者には「専門士」の資格が与えられるとともに、4年制大学への編入が可能となりました。
著者
土屋 明広
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.4_47-4_49, 2015-04-01 (Released:2015-08-07)
参考文献数
12
著者
土屋 明広 TSUCHIYA Akihiro
出版者
岩手大学教育学部
雑誌
岩手大学教育学部研究年報 (ISSN:03677370)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.9-28, 2008

問題の所在─「多文化共生」における「在日朝鮮人」 日本社会で「多文化共生」という言葉が聞かれるようになって久しい。その言葉の増加は、近年のグローバル化と労働市場の再編によって「ニュー・カマー」と呼ばれる外国人労働者が日本国内に多数呼び込まれ1)、各地にマイノリティ・グループが出現、定住するようになったことと強く相関していると考えられる。こうした新たなマイノリティ・グループの登場に促されるように国・地方自治体やNPO などは日本語教室や相談窓口の開設といった様々な社会的受入れ体制の整備に取り組み始めている2)。 しかし、他方で「共生」概念には疑問も向けられるようになってきた。その疑問とは、この概念が定住外国籍者をとり巻く劣悪な労働・居住環境、民族的な差別を不可視化させるものとして機能しているのではないか、「共生」概念には「国籍」「国民」「民族」などの指標によって当人を固定するカテゴリー化権力が潜み込んでおり、そのため、定住外国籍者は日本国籍者と彼岸と此岸の布置関係上に位置づけられ、日本社会に多年に亘って居住したとしても社会の構成員とはみなされないことになっているのではないか、さらには、日本社会は定住外国籍者に対して「ゲスト」としての不平等な取扱いに甘んじるか、それとも、「帰化」=「日本人に同化」3)するかという二者択一を迫っているのではないか、といったものである。 翻って考えてみるに、日本社会には戦後一貫して多くの定住外国籍者が存在してきた。そのなかで、近年まで最も大きかったエスニック・グループが「在日朝鮮人」である4)。本稿では「在日朝鮮人(以下、在日)」5)を、植民地政策に起因して日本に定住することとなった、朝鮮半島をルーツとする朝鮮籍者、韓国籍者、そして日本国籍者を含む広義の概念として使用するが6)、彼/ 女らの生活は世代を経るに従って帰国を前提としていた生活スタイル(「祖国志向」)から、日本社会に定住することを前提とした生活スタイル(「在日志向」)に移り変わってきたと言われている7)。それは定住を余儀なくされているという側面があることを前提としつつも、各種の運動を経て社会保障の適用や公立学校への就学、特別永住制度の設立などによって法的不平等が限定的ではあるが解消されてきたこと、それと同時に彼/ 女らの生活基盤が日本社会のなかに確立してきたこと、さらに祖地との距離感が生じたことなどの複合的な結果であると考えられる。このことから、現在の在日は「一時的に日本に滞在する朝鮮人」ではなく、日本社会を構成する一員であるとも位置づけられている8)。 しかし、以上のような定住化の一方で、日本人は在日を意識的、あるいは無意識的に彼岸に位置づけることで、両者の不連続性を維持させてきたように思われるのである。例を挙げれば、宋連玉は「見知らぬ日本人」から「反日分子」との言葉を投げつけられたことがあると述懐して、次のように述べている。「私たちが批判するのは、マイノリティにマジョリティに対する異見を発言させない社会の構造そのものである。というのも、民族差別の経験を通じて作り出された私たちのトラウマは、日本人との連帯を通じて差別の構造そのものを変えない限り、けっして癒えないということを、私たち自身が誰よりもよく知っているからである。つまり、脱植民地主義化を実現するしかないことを、身をもって知っているからである。」9) 宋連玉は、一方で日本がいまだマジョリティ主導の「植民地主義」社会であることを指弾しながらも、他方で、その社会差別構造の変革は在日と日本人との「連帯」なしにはあり得ないと指摘している。つまりこれまで、在日が様々な差別撤廃運動を行なってきたにもかかわらず、マイノリティとマジョリティとの断絶状態が継続される限り、社会構造の変革は生じ得ないと考えられているのである。それでは、このような言葉を投掛けられたマジョリティである我々日本人はいかなる応答をすることが可能なのであろうか。 本稿は、以上のような問題意識を背景として朝鮮人学校を手掛かりに、在日のエスニック・アイデンティティ志向と、その現状について、ある朝鮮人学校教師の「語り」を経由しながら検討し、日本社会におけるエスニック・アイデンティティ構築の自由度を高めるような法制度について構想するための足掛りを築くことを目的とするものである。以下、まずエスニック・アイデンティティの社会的構築性について法と関連づけながら試論的に述べる(Ⅰ)。次に朝鮮人学校に関する歴史と法的位置づけを確認する(Ⅱ)。そして、聞取データに基づいて朝鮮人学校が直面している課題について法の二律背反的な作用に着目して論じ(Ⅲ)、最後に検討を行う(Ⅳ)。
著者
土屋 明 新家 富雄
出版者
Japan Society for Marine Surveys and Technology
雑誌
海洋調査技術 (ISSN:09152997)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1_45-1_54, 1990

On this paper, we describe the result in a basic study for a technical developing classification of coastal bottom material by using of acoustic reflection method. As the item of classification of bottom material, we selected, especially, such physical properties as grain size distribution and volume concentration (porosity) of particles in soft-mudsediment. Newly physical parameter <I>CPC</I> (cumulative weight percentage of particle volume concentration) is defined.<br> The other hand, we have derived a new conception of acoustic propagation, sound velocity and attenuation, for a model of N-phase suspension. In the conception, the volume ratio of N-phase particles classified by grain size in modefied suspension is particularly introduced.<br> The applicability of the conception for the soft-mud sediment was verified through both numerical simulations and laboratory experiments measuring physical properties, sound speed and attenuation at several frequencies.<br> A center frequency <I>f</I> of sound speed dispersion has a good response with the mediam grain size φ<SUB><I>m</I></SUB> (φ<SUB><I>m</I></SUB>=-log<SUB>2</SUB> 2 <I>a<SUB>m</SUB></I>; <I>a<SUB>m</SUB></I> is radius of particle in milli-meter) in the <I>CPC</I> curve. Then, the regressive formulation is<br> φ<SUB><I>m</I></SUB>=1.62 <I>F</I>+3.99±0.244<br> where <I>F</I>≡log<SUB>10</SUB> <I>f</I>; <I>f</I> in kHz.<br> A maximum V<SUB>m</SUB> of sound velocity at higher frequency range, eg. several hunderd kilo-hertz to several hundred mega-hertz, etc., is corresponding to the maximum of <I>CPC</I> curve at each volume concentration <I>C<SUB>p</SUB></I>. The theoretical formulation is<br> <I>C<SUB>p</SUB></I>=<I>CPC</I>={1.125 (<I>V<SUB>m</SUB></I>-1)}<SUP>1/2</SUP><br> where <I>V<SUB>m</SUB></I>=|<I>V<SUB>s</SUB></I>/<I>V<SUB>l</SUB></I>|<SUB>max</SUB>.<br> By using these formulas, φ<I><SUB>m</SUB></I> and <I>C<SUB>p</SUB></I> can be predicted from measured <I>F</I> and <I>V<SUB>m</SUB></I>.
著者
宮川 洋一 山崎 浩二 名越 利幸 渡瀬 典子 ホール ジェームズ 土屋 明広 田中 吉兵衛 立花 正男 山本 奬 今野 日出晴 川口 明子 田代 高章 藤井 知弘 長澤 由喜子 遠藤 孝夫 MIYAGAWA Yoichi YAMAZAKI Kouji NAGOSHI Toshiyuki WATASE Noriko James M HALL TSUCHIYA Akihiro TANAKA Kichibei TACHIBANA Masao YAMAMOTO Susumu KONNO Hideharu KAWAGUCHI Akiko TASHIRO Takaaki FUJII Tomohiro NAGASAWA Yukiko ENDOU Takao
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
no.14, pp.219-230, 2015

本研究の目的は,4年次後期に必修となった教職実践演習における模擬授業のあり方を検討し,評価基準を策定することにある。そのうえで,ICTを活用して,組織的に評価を行うシステムを構築し,試験的運用を行うことである。「教職実践演習」は,「教育職員免許法施行規則の一部を改正する省令」により,平成22年(2010)年度入学生から導入される教員免許必修科目であり,学生が最終的に身につけた資質能力を,大学が自らの養成教員像や到達目標に照らして最終的に確認することを目的としている。中教審による「今後の教員養成・免許制度の在り方について(答申)」(2006)によると,教職実践演習の授業内容は,①使命感や責任感,教育的愛情に関する事項,②社会性や対人関係能力に関する事項,③幼児児童生徒理解や学級経営に関する事項,④教科・保育内容等の指導力に関する事項を含めること,が適当であるとされている。そして,教職実践演習の実施にあたっての留意事項として,授業の方法は演習を中心とすること,役割演技(ロールプレーイング),事例研究,現地調査(フィールドワーク),模擬授業等も積極的に取り入れることが望ましいこと等が示されており1),極めて実践的・実務的色彩の強い内容となっている。
著者
後藤 哲雄 穐澤 崇 渡邊 匡彦 土屋 明子 嶋崎 明香
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.93-103, 2005-11-25
被引用文献数
1 25

ミヤコカブリダニ(ミヤコ)の個体数は, 1990年以降に日本各地で急激に増加し, 関東以西の慣行防除果樹園ではそれまでの優占種であったケナガカブリダニ(ケナガ)と置き換わってきている.一方, 北日本への分布の拡大傾向は小さい.このような種の置換と分布拡大の要因を明らかにする一環として, 本報告ではミヤコの休眠性の有無と2種の耐寒性を報告する.ミヤコは, 短日条件と長日条件の産卵前期間が同じであり, 休眠性はなかった.2種間およびケナガの休眠と非休眠個体間の過冷却点(supercooling point)に有意差はなく, -21.9〜-23.3℃であった.ケナガ・休眠雌は, -5℃で7日以上生存した(>50%)が, ミヤコとケナガ・非休眠雌は5日以内に70〜85%が死亡した.このことからミヤコの北進が遅いのは耐寒性がわずかに弱いことも一因であると考えられた.一方, いずれの種においても生残した雌は20℃長日条件下で2個体を除いて産卵し, 産下卵の大半がふ化した.従って, 低温ストレスは産卵数やふ化率への影響が少なく, ミヤコも冬季の低温条件下で生き残ることができる地域では, 定着が可能であると考えられた.