著者
荒谷 聡子
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

ヒトパピローマウィルス (HPV) の持続感染は妊娠を妨げ、若い女性の死因の上位である子宮頸がんの病因である。HPV ワクチンが開発され感染予防に効果を示す一方で、有害な副反応が報告されており、我々は同症候群をHANS と名付けた。HANS の病因・病態を明らかにするため、HPV ワクチンを用いて HANS モデルマウスを作製し、同マウスはHANS 様表現型として運動機能および脳の組織学的異常を示した。さらにワクチン作用機序および宿主反応メカニズムを明らかにするため、同マウスの脳、血液中の発現因子の変化を検討した。その結果 HANS 患者と同様に自己免疫疾患関連因子の活性化が示唆された。
著者
中島 利博 山野 嘉久 八木下 尚子 樋口 逸郎 赤津 裕康 川原 幸一 上 昌広 丸山 征郎 岡田 秀親 荒谷 聡子
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

われわれがリウマチ滑膜細胞より発見した小胞体関連E3ユビキチンリガーゼ シノビオリンは遺伝子改変動物を用いた研究により、少なくともマウスにおいては関節症発症の必要十分因子であることが証明されていた。また、関節リウマチの新薬である抗TNFα製剤の感受性を決定するバイオマーカーの可能性も示されている。一方で、シノビオリンの完全欠損マウスは胎生期において致死であることも明らかとなっていた。したがって、これまで成獣における同分子の生理機能の解析、並びに関節症における分子病態を明らかとすることが不可能であった。そこで、本研究事業により、同分子のコンディショナルノックアウトマウスを作製し、これらの点を明らかにすることを目的とした。その結果、シノビオリンのコンディショナルノックアウトマウスは胎生致死でのみならず、出生後に同遺伝子をノックアウトした場合でも致死であることを発見した。さらに、その過程で線維化・慢性炎症に非常に密接に関与することが示されている(論文準備中)。現在、その恒常性維持にシノビオリンが必要と考えられる関節などの臓器特異的なコンディショナルノックアウトマウスの解析を行っている。上記のようにシノビオリンの機能制御は関節リウマチのみならず、線維化・慢性炎症を基盤とする疾患の創薬標的であることは明白であろう。われわれの有するシノビオリン抑制剤がマウスにおける関節炎モデルに有効であることを証明した(論文投稿中)。さらに、本テーマは橋渡し研究として米国のユビキチンに特化した創薬系ベンチャー プロジェンラ社との創薬開発プロジェクトへと進展した。
著者
井谷 聡子
出版者
日本スポーツとジェンダー学会
雑誌
スポーツとジェンダー研究 (ISSN:13482157)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.105-117, 2016 (Released:2017-04-25)
参考文献数
24

To think about the “equity and justice” in the context of sports mega-event, in which power structures overlap and diverse political interests collide, requires complicated and vigorous theoretical and ethical discussions. It is inadequate to consider the issue of equity and justice based on one identity category, such as gender or sexuality, separated from other overriding identities and issues, such as the athletes’ nationality, race, ethnicity, socio-economic status and ability, sponsor’s and host city’s interests, the politics within sports organizations, the impact on the host city’s local communities, environmental destruction and so on. Therefore, it is, crucial to continue the critical engagement with the complicated matrix of power and politics of sports mega-events and to maintain the focus on the experiences of those who are oppressed and marginalized by the sports mega-event in order to take a step towards equity and justice in sport. In this paper, I utilize queer and post-colonial theories to examine the multifaceted power structures and the politics, and the issues oppression and exclusion that are often made invisible in sports mega-events.
著者
雨宮 俊彦 水谷 聡秀
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.139-166, 2006-03-25

音感素は、音素と形態素の間のレベルに位置する、音象徴における基本単位である。英語やスウェーデン語などにおいては、二子音、あるいは三子音からなる多くの音感素の例が報告されている(Hinton, Nichols and Ohala, 1994; Abelin, 1999)。日本語は、二子音、三子音からなる音のパターンを欠いているので、そのような音感素も存在しない。Hamano(1998)は、日本語における各子音と各母音を音感素に設定し、日本語におけるオノマトペを組織的に分析している。Hamanoの分析は大変興味深いが、音感素と感性的意味の選択は分析者の直感によっている。この予備的研究で我々は、こうした基本問題に関する経験的な証拠を提供し、これを日本語における音象徴全般の問題に関連づけることを試みる。1)60のオノマトペが用いられた。オノマトペはすべてCIVIC2V2形式で、意味は感情に関連するものだった。12人の被験者がこれらのオノマトペを24の形容詞対により評定した。形容詞対24次元空間における60のオノマトペ間の距離行列がMDSにより分析された。2次元解が採用された。第1次元は明るさと、第2次元は硬さと最も高い相関を示した。2)157の日本語の拍が用いられた。99名の被験者がこれらの拍の明るさを、100名の被験者がこれらの拍の硬さを評定した。67の拍の評定平均値がカテゴリー回帰分析によって分析された。従属変数は明るさと硬さであった。独立変数は子音と母音だった。重相関係数は、明るさと硬さともにほぼ1であった。拍への影響は、明るさと硬さともに子音の方が大きかった。
著者
水谷 聡秀 雨宮 俊彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.102-110, 2015-06-30 (Released:2015-08-22)
参考文献数
18
被引用文献数
5 2

いじめ被害経験は心身状態に長期的な影響を及ぼす。従来の研究は, 子どもの頃のいじめ被害経験が後年における自尊感情や特性不安, 抑鬱, 孤独などに影響を与えることを示している。本研究では, いじめの発生状況をとらえ, 小学校と中学校, 高等学校のうちどの時期のいじめ被害経験が大学生のWell-beingに影響を与えるか, また自尊感情を媒介したWell-beingへの影響があるのかを検討する。そこで, 自尊感情, 主観的幸福感, 特性怒り, 特性不安, 各時期にいじめられた頻度について尋ねる質問紙を用いて大学生に調査を実施した。その結果, いじめ経験の頻度は高等学校よりも小中学校で高かった。パス解析により, 中学校や高等学校の頃のいじめ被害経験が大学生のWell-beingに影響を及ぼしていることを明らかにした。また, いじめ被害経験がWell-beingに直接的にも, 自尊感情を介して間接的にも影響を与えていることを見出した。これらの結果はいじめ被害経験が長期的に心的状態に影響を及ぼすことを支持するものである。
著者
小坂谷 聡 上原 哲太郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.1444-1457, 2020-09-15

刑事手続きにおいてデジタル証拠が扱われる際に,しばしば提出されたデジタル証拠が警察や検察の手によって改ざんされたものではないのか問題となることから,我々は,ブロックチェーンを用いた証拠の改ざん防止システムについて提案する.提案システムでは,利用者・参加者に対してトークンを付与することにより一定のインセンティブとして有効かつ効果的に活用されることを想定しているが,そのためには,トークンを活用して価値ある一定の経済圏,すなわち,トークンエコノミーが構築されることが必要であると考えらえる.本論文では,提案システムに対するリスクについても検討し,実装によりその有効性を検証したうえで,提案システムによって構築すべきトークンエコノミーについて考察する.
著者
大谷 聡司 星野 聖
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.34, no.11, pp.67-70, 2010-03-01
被引用文献数
1

過去に開発されたエアギターシステムは,演奏者の左手に何らかの装置やセンサを持ち,ある場所が押された時に事前に割り当てられたコードの音を出すものばかりである.本研究では,左手に何も持たないエアギターシステムを提案する.ギターでの弾き語りのようなコード弾き奏法に関して,人間は音を聞かなくても左手の形を見ただけでどんなコードを押さえているのか見当がつく場合が多い.そこで,カメラを用いたエアギターシステムを提案する.左手の輪郭線,指の間のエッジを抽出した画像の特徴量を用いてギターのコード認識を行う.評価実験の結果,左手に何も持たなくても,76.3%の精度が出せるシステムが出来上がり,新しいアプリケーションの開発を行うことができた.
著者
荒谷 聡子 中島 利博
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

線維筋痛症 (FM) は全身性の強い慢性疼痛を主訴とする疾患である。発症原因は不明であり、根本的な治療法の確立されていない。我々は FM における小胞体ストレス分解、ミトコンドリア機能に注目してきた。本研究では神経特異的シノビオリン欠損マウス、FMの病態モデルマウスを作製また患者よりリンパ球を分離し、これらを用いて個体内での病因・病態解析を目的としている。臨床において FM 様の病態を引き起こすことが示唆されているワクチンを用いてモデルマウスの作製を試みたところ、尾の緊張および運動協調性低下を示すマウスが得られた。また FM 様の症状に視床下部の機能が関与していることが示唆された。
著者
関 めぐみ 三上 純 井谷 惠子 井谷 聡子
出版者
日本スポーツとジェンダー学会
雑誌
スポーツとジェンダー研究 (ISSN:13482157)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.21-31, 2019 (Released:2019-09-06)
参考文献数
18

This is one of the first studies to explore the experiences and expressions of discrimination, violence and exclusion based on genders, sexualities and the bodies in Physical education (PE) in Japan. Through this research, we hope to gain insight into the gender and sexual politics of Japanese PE. The study was administered in three Japanese universities in 2017. Based on 979 survey responses, we present a preliminary analysis of students reported the experiences of discrimination and exclusion. We conducted the quantitative and qualitative content analysis of 410 (41.9%) survey responses, which answered the open-ended question about negative experience in PE. By using quantitative content analysis software (KH coder), we extracted seven clusters: 1) being scolded for a mistake, 2) being a nuisance to a partner or a team, 3) forced to perform (play) sport or do exercise, 4) swimming, 5) running, 6) class (teaching) methods, and 7) methods of evaluation. The main factors that caused the negative experience are codified to: classmates (category 1), oneself (category 2), teachers (category 3, 6, 7) and exercise characteristics (category 4, 5). When analyzed the result by gender, “normative woman” (cis-gendered, heterosexual) tends to be ashamed that they are not good at sports and their self-respect becomes wounded. On the other hand, “normative man” (cis-gendered, heterosexual) tends to remember the negative experience as those moments when they were blamed by their classmates. The persons of “non-normative” gender/sexuality (transgender and/or non-heterosexual) tend to have more negative experiences based on heterosexism and binary gender system. Our findings suggest that the evaluation criteria set by the curriculum and/or teacher need to be changed. Because the criteria made students’ achievement (or the lack thereof) visible, it leads to the bodily hierarchy. This hierarchy push students who are not athletic into a lower position and marginalize them in the classroom.
著者
加賀 勝 細谷 聡
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.25-30, 1994-03-30 (Released:2012-11-27)
参考文献数
18

The purpose of this study was to clear mechanical characteristics of the Japanese bow, and find the energy transfer efficiency. The exeperiments were made by five classes of bows, arrows and strings heights. The potential energy(PE)was calculated on every bows.And the kinetic energy (KE)was calculated from shooting experiment according to arrows and strings heights.Then, the energy transfer efficiency was obtained on KE/PE X 100.The results were as follows:1, Relation between the drawing length and the drawing force shows a inverted S curve. This characteristic is constant regardless of the bow's strength and strings height.2, The potential energy is increased by the drawing length. The general tendency that the strong bow has high potential energy was evident.3, The minimum of the energy transfer efficiency lies on 15cm of the strings height in the experiment according to five classes strings height.4, In this study, the energy transfer efficiency is increased until 29g of the mass of arrow. And more than that, the energy transfer efficiency was decreased. It seems that there is a matching point of bow and arrow.
著者
吉村 元 今井 幸弘 別府 美奈子 尾原 信行 小林 潤也 葛谷 聡 山上 宏 川本 未知 幸原 伸夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.713-720, 2008 (Released:2008-12-01)
参考文献数
29
被引用文献数
4 7

症例は76歳男性である.インフルエンザA型感染症発症直後に高度の意識障害を呈し,その後急激にDICやショック,多臓器不全も合併した.インフルエンザ脳症(IAE)と診断し,オセルタミビル投与,ステロイドパルス療法を施行するも効果無く,発症から24時間強で死亡した.剖検では大脳に著明な浮腫とアメーバ様グリアのびまん性増加をみとめたが,炎症細胞浸潤は無かった.また,インフルエンザウイルスA・H3香港型が剖検肺から分離され,保存血清中のIL-6は35,800pg/mlと著明高値であった.本症例の臨床経過,検査所見,病理所見は小児IAE典型例と同様であり,成人でも小児と共通した病態機序でIAEをきたしうる.
著者
富山 一 田邊 潔 茶谷 聡 小林 伸治 藤谷 雄二 古山 昭子 佐藤 圭 伏見 暁洋 近藤 美則 菅田 誠治 森野 悠 早崎 将光 小熊 宏之 井手 玲子 日下 博幸 高見 昭憲
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.105-117, 2017-07-10 (Released:2017-09-14)
参考文献数
18

詳細な野焼き頻度分布についての知見を得るために、つくば市において巡回と定点カメラによる観測によって野焼き件数の分布を調査した。2015年秋季 (9~10月) に毎日巡回して燃焼物別の日別野焼き件数を調査し、降雨前に野焼き件数が多くなることが確認されたほか、野焼き件数の57%を占めた稲作残渣は稲の収穫時期から一定期間後に籾殻、稲わらの順で焼却されることが確認された。秋季の巡回調査に続き2016年8月まで4日に1度ほどの頻度で巡回し、月別野焼き件数を比較すると9~11月に多く、1~8月に少ないことが確認された。2016年1~12月にかけて行った筑波山山頂に設置した定点カメラからの観測では、1月、10月~12月に野焼き件数が多く、2~9月に少ないことが確認され、1日の中では午前10~11時および午後2~3時に野焼きが行われやすいことが確認された。2015年秋季の調査結果にもとづいて稲の収穫時期と気象条件から稲作残渣の年間野焼き発生量に対する日別野焼き発生量比を推計する回帰モデルを構築した。回帰係数から、降雨前に野焼き件数が増えること、強風により野焼き件数が減ることが定量的に確認された。構築されたモデルに都道府県別の稲収穫時期と気象データを適用して、従前研究では推計できなかった都道府県別の大気汚染物質排出量の日変動を、2013、2014年の稲収穫時期と気象データを適用して各年の野焼き発生量比の日変動をそれぞれ推計した。
著者
吉武 啓 政岡 適 佐藤 信輔 中島 淳 紙谷 聡志 湯川 淳一 小島 弘昭
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.145-150, 2001-11-15 (Released:2009-05-22)
参考文献数
15
被引用文献数
1 4

福岡市能古島でヤシオオオサゾウムシの発生を確認した。調査の結果,本種は現地において数年前から継続的に発生してきたと考えられた。ヤシの幹内温度は安定していたが,常に外気温よりも高いわけではなかった。また,低温処理実験によって突発的な寒波による短期間の低温では死滅しないということが示唆されたことから,寄主であるヤシ類さえ存在すれば,本種は従来の分布域より北方まで侵入・定着できる可能性が高いと考えられた。日本国内において,本種はこれまでに年平均気温15.8℃以上の地域で発生しているので,同一の温度帯に含まれ,しかも本種にとって好適な寄主植物であるカナリーヤシが植栽されている地域へは,今後,十分に侵入可能であると推測された。