著者
岡島 義 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.43-54, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)

本稿の目的は、社会不安障害(SAD)の維持要因である安全確保行動の役割と安全確保行動を治療ターゲットにすることの重要1生について概観し、SADの安全確保行動に対する治療技法を確立するための展望を行うことであった。本稿において、安全確保行動は、(1)認知理論の枠組みから否定的な信念の維持要因としての役割が強いこと、(2)機能的側面から適切な対処行動と区別する必要があること、(3)安全確保行動を治療ターゲットとした場合、従来のエクスポージャーよりも治療効果が高いことが述べられた。また、今後の課題と展望として、(1)安全確保行動に関する心理教育が重要であること、(2)SAD患者に安全確保行動を止めさせるとともに、他者から適切な評価を受けるためのスキルを身につけさせる必要があること、(3)安全確保行動に関する治療効果研究の実践が必要であること、が議論された。
著者
横光 健吾 入江 智也 斎藤 了 松岡 紘史 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.95-104, 2014-05-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、病的ギャンブリングに対する認知行動療法がどの程度有効であるかを検討するため、PGの診断を受けている参加者に対して実施され、かつ研究の質の高い治療効果研究を対象にメタアナリシスを実施することであった。論文検索にはPsycINFO、MEDLINE、PubMed、CiNii、医中誌を使用した(2012年2月時点)。また、各論文の引用文献による検索を行った。抽出された213件を対象に、適格基準と研究の質の検討を行った結果、4編の論文(7件の治療プログラム)がメタアナリシスの対象となった。その結果、認知行動療法は、治療終結期のギャンブル行動、ギャンブル費用、病的ギャンブリングの症状を減少させ、ギャンブル行動とギャンブル費用について、その効果が6ヵ月後においても維持されることが示された。今後の課題として、異質性と公表バイアスの結果から、今後の病的ギャンブリングに対する認知行動療法について、サンプルサイズの大きい研究の必要性が述べられた。
著者
宮野 秀市 貝谷 久宣 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.97-106, 2000-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、簡易型VRエクスポージャーを雷恐怖症に適用し、その効果を継時的に評価することであった。市販されている頭部搭載型ディスプレイとボディソニック装置を利用して、従来のVRエクスポージャーと比べて安価で操作が簡便な簡易型VRエクスポージャーシステムを構築した。症例は43歳の女性で、これまで17年間、雷恐怖に苦しんできたが、19セッションの介入の結果、質問紙で測定された雷に対する恐怖反応は顕著に低減し、雷によって日常生活が阻害されることもなくなった。2か月後、7か月後のフォローアップにおいても治療効果は維持されていた。本研究により、簡易型VRエクスポージャーが雷恐怖の治療に有効であることが示された。また、仮想環境における臨場感に影響を及ぼす刺激呈示法や臨場感と治療効果の関係について考察した。
著者
笹川 智子 金井 嘉宏 陳 峻斐 嶋田 洋徳 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.285-295, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、児童期の行動抑制(behavioralinhibition:BI)傾向を測定するRetrospectiveSelf-ReportofInhibition(RSRI;Reznicketal.,1992)の日本語版を作成し、標準化することであった。都市部近郊に住む546名の大学生と38名の社会不安障害患者を対象に、自己記入式の質問紙調査を実施した。探索的因子分析の結果、原版と同様の2因子構造(「対人場面における行動抑制」と「非対人場面における行動抑制」)が確認された。また、内的整合性(α=.84)や再テスト信頼性(r=.87)の値も十分に高いことが示された。不安障害やうつ病の既往歴をもつと回答した調査対象者では有意に高いRSRI得点が報告され、児童期の行動抑制の自己評定と親評定は、中程度の相関関係にあった。このことから、RSRI日本語版は十分な信頼性と妥当性を有することが明らかにされた。
著者
金井 嘉宏 笹川 智子 陳 峻雲 嶋田 洋徳 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.97-110, 2007-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、他者のあいまいな行動に対する解釈バイアスの観点から社会不安障害と対人恐怖症を比較することであった。実験参加者を抽出するために、592名の大学生が他者からの否定的評価に対する社会的不安測定尺度(FNE)と対人恐怖症尺度(TKS)に回答することを求められた。カットオフ得点を満たした大学生40名が解釈バイアスについて調べるためのスピーチ課題を行った。FNE得点とTKS得点が高い群は14名、 FNE得点は高いがTKS得点が低い群は7名、 FNE得点は低いがTKS得点が高い群は3名、FNE得点とTKS得点が低い群は13名であった。スピーチ課題中、聞き手は予備調査によって抽出されたあいまいな行動を行った。その結果、社会不安障害傾向と対人恐怖症傾向がともに高い者は低い者に比べて、あいまいな行動を否定的に解釈していたが、社会不安障害と対人恐怖症に違いはみられなかった。
著者
佐藤 寛 高橋 史 松尾 雅 境泉 洋 嶋田 洋徳 陳峻 〓 貝谷 久宣 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.15-30, 2006-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究では、問題解決能力を測定する尺度であるSocial Problem-Solving Inventory-Revised(SPSI-R)日本語版を作成し、信頼性と妥当性の検討を行った。一般対象者(大学生863名、平均年齢20.6±2.8歳:成人210名、平均年齢43.4±14.1歳)のデータについて確認的因子分析を行った結果、SPSI-R日本語版は原版と同様に「ポジティブな問題志向」「ネガティブな問題志向」「合理的問題解決」「衝動的/不注意型問題解決」「回避型問題解決」の5因子構造であることが示された。また、SPSI-R日本語版には十分な内的整合性と併存的妥当性、および中程度の再検査安定性が認められた。さらに、臨床対象者(46名、平均年齢35.1±9.4歳)は一般対象者に比べてポジティブな問題志向が低く、ネガティブな問題志向が高く、全般的な問題解決能力が低い傾向にあることが示唆された。
著者
土井 理美 横光 健吾 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.45-55, 2014-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
4

本研究の目的は、Acceptance and Commitment Therapy(Hayes et al.,1999)の文脈で用いられる「価値」の概念を多面的に測定することが可能であるPersonal Values Questionnaire II(PVQ-II;Blackledge et al.,2010)の因子構造、内的整合性、妥当性を検討し、PVQ-IIがより活用されるよう精緻化を行うことであった。大学生、大学院生、一般成人388名を対象に項目分析、探索的因子分析を実施した結果、1項目が削除され、PVQ-IIは8項目3因子構造であることが示された。また内的整合性、妥当性ともに十分な値が示された。そして、413名を対象に確認的因子分析を実施した。その結果、第1因子と第3因子の相関を仮定した3因子構造モデルの適合度は十分な値を示していた。その結果、PVQ-IIの標準化に関するデータを追加し、わが国でもPVQ-IIの利用が可能であることが明らかとなった。今後は、PVQ-IIをわが国においても普及させていくために、わが国におけるPVQ-IIの特異性を明らかにしていく必要がある。
著者
前田 基成 坂野 雄二 東條 光彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.158-170, 1987-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は,治療セッショソをおって継時的に評定されたセルフ・エフィカシーの変動と,視線恐怖反応の消去にともなう行動変容との関係を明らかにし,知覚されたセルフ・エフィカシーが行動変容の先行要因としてどのように機能しているかを明らかにすることである。学校場面において,極度の視線恐怖反応を示す14歳の少年に対し,系統的脱感作法を適用した。約10ヵ月にわたる治療的介入は,主観的・認知的(SUD,セルフ・エフィカシー),心理生理的(心拍数),行動的(日常生活における恐怖をともなわない行動遂行,行動の自己評定)測度のいずれにおいても顕著な改善をもたらした。各治療セッショソ後に実施された次セッショソまでの1週間を見通したセルフ・エフィカシーの評定と,1週間後に確認された行動変容の関係を詳細に分析したところ,セルフ・エフィカシーの変動が恐怖反応の消去と密接に関係していることが明らかにされた。すなわち,クライエソトがセルフ・エフィカシーを強く認知すればするほど,視線恐怖時の不安反応は弱くなることが観察された。同時に,その逆の現象も認められた。その結果,知覚されたセルフ・エフィカシーが,行動変容の先行要因として機能していることが示唆された。
著者
石川 信一 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.125-136, 2004-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本論文の目的は、児童期の不安障害のレビューを行い、児童における不安障害に対する認知行動療法の効果について検討を行うことであった。第1に、児童期の不安障害は、全般性不安障害/過剰不安障害、社会恐怖、分離不安障害、パニック障害、特定の恐怖症、強迫性障害の6つに分類されることが示された。第2に、児童期の不安障害の有病率は10%弱であること、不安障害の各症状は併発率が高いことが示された。第3に、不安症状をもつ児童は学校や他の社会的状況において不適応を示すこと、不安障害を示す成人の多くは児童期から不安症状をもつことがわかった。不安障害の児童に対する認知行動療法の展望の結果、個別介入、集団介入、早期介入、両親を含めた介入の効果が無作為化比較試験によって証明された。最後に、本邦において、効果的な治療法を構築するために、不安障害の児童に対する治療法の研究が必要であることが指摘された。
著者
石川 信一 美和 健太郎 笹川 智子 佐藤 寛 岡安 孝弘 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.17-31, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、日本語版Social Phobia and Anxiety Inventory for Children(SPAI-C;Beidel et al.,1995)を開発することであった。本研究の対象者は小学生859名(男子434名、女子425名)であった。因子分析の結果、SPAI-Cは「対人交流場面」「パフォーマンス」「身体症状」の3因子構造であることがわかった。再検査信頼性、およびCronbachのα係数から、本尺度は十分な信頼i生をもつことがわかった。妥当性分析の結果、本尺度はスペンス児童用不安尺度(Spence,1997)と日本語版State-TraitAnxietyInventoryforChildren(曽我,1983)と中程度の正の相関関係にあることがわかった。多変量分散分析の結果、女子が男子よりも社会不安の症状を多く報告することが明らかにされた。最後に、日本の児童の社会不安症状の特徴とSPAI-Cの有用性について議論がなされた。
著者
本谷 亮 松岡 紘史 小林 理奈 森若 文雄 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.13-20, 2011-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、緊張型頭痛患者を対象として、痛みの臨床症状と心理的要因である痛みに対する認知的要因・感情的要因が、緊張型頭痛患者の抱える生活支障度の身体的側面、社会的側面、精神的側面をそれぞれどの程度予測しているか明らかにすることであった。成人の緊張型頭痛患者73名を対象に質問紙調査を行い、重回帰分析を用いて、緊張型頭痛の生活支障度の各側面に対する予測要因を検討した。その結果、生活支障度の中でも身体的側面に関する生活支障度に対しては痛みの臨床症状が予測しているが、社会的側面や精神的側面に関する生活支障度に対しては、痛みに対する破局的思考や逃避・回避行動といった痛みに対する認知的要因・感情的要因が強く予測していることが明らかとなった。キーワード:緊張型頭痛頭痛症状痛みに対する破局的思考逃避・回避行動生活支障度
著者
金井 嘉宏 笹川 智子 陳 峻雲 嶋田 洋徳 坂野 雄二
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.97-110, 2007-09-30
被引用文献数
1

本研究の目的は、他者のあいまいな行動に対する解釈バイアスの観点から社会不安障害と対人恐怖症を比較することであった。実験参加者を抽出するために、592名の大学生が他者からの否定的評価に対する社会的不安測定尺度(FNE)と対人恐怖症尺度(TKS)に回答することを求められた。カットオフ得点を満たした大学生40名が解釈バイアスについて調べるためのスピーチ課題を行った。FNE得点とTKS得点が高い群は14名、 FNE得点は高いがTKS得点が低い群は7名、 FNE得点は低いがTKS得点が高い群は3名、FNE得点とTKS得点が低い群は13名であった。スピーチ課題中、聞き手は予備調査によって抽出されたあいまいな行動を行った。その結果、社会不安障害傾向と対人恐怖症傾向がともに高い者は低い者に比べて、あいまいな行動を否定的に解釈していたが、社会不安障害と対人恐怖症に違いはみられなかった。
著者
入江 智也 河村 麻果 青木 俊太郎 横光 健吾 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-12, 2019-01-31 (Released:2019-06-08)
参考文献数
28

本研究は、大学生の精神的健康に対する集団アクセプタンス&コミットメント・セラピー(G-ACT)の効果の検討を目的として行われた。大学生17名のうち9名(男性4名、女性5名)をG-ACT群、8名(男性1名、女性7名)を通常介入群に割り付けた。G-ACTはアクセプタンスとマインドフルネスに関わるワーク、コミットメントと行動変容に関わるワークを含む全6セッションから構成された。通常介入は学生相談サービスの利用であった。測定は、G-ACT実施前、実施後、実施1カ月後時点で実施した。線形混合モデルによる解析の結果、G-ACT群は通常介入群と比較して、実施後時点において不快気分の改善、および行動の活性化が、実施1カ月後時点において不快気分の改善および心理的柔軟性の向上が認められた。価値の明確化および回避行動は、G-ACT群と通常介入群の変化量の差異は認められなかった。以上の結果を踏まえ、大学生に対してG-ACTを実施するうえでの留意点について考察を行った。
著者
岩野 卓 樋町 美華 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.52-63, 2012-08-20 (Released:2013-09-06)
参考文献数
55
被引用文献数
2

Psychological wellbeing (PWB) is known to be critical for promoting mental health. However, to date, the exact features resulting in PWB have not been identified. Therefore, the effects of factors promoting PWB suggested in previous studies were compared. Workers (n=447) that were covered different types of work such as medical, industrial, and educational staff, responded to the Psychological Well-Being Scale, the Automatic Thoughts Questionnaire-Revised, Positive and Negative Affect Schedule, Stress Coping Inventory, and the Job Content Questionnaire. Result of the multiple regression analyses and path analyses indicated that positive and negative automatic thoughts that comprised positive thinking and negative thoughts about the self, as well as the decision latitude had significant effects on PWB. Therefore, it is concluded that automatic thoughts and decision latitude are critical for promoting PWB.
著者
古川 洋和 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.889-895, 2008-10-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
14

本研究の目的は,自律訓練法(AT)によるリラクセーション効果の妨害要因である不安感受性の操作が,ATによるリラクセーション効果に及ぼす影響を明らかにすることであった.健常大学生を対象に,(1)不安感受性が高く,AT指導前に不安感受性の緩和を目的とした認知行動プログラムが行われる介入群(10名),(2)不安感受性が高く,AT指導前に不安感受性に対する介入は行われないH統制群(5名),(3)不安感受性が低いL統制群(40名),の3群についてATによるリラクセーション効果の差異を検討した結果,H統制群は,ATによるリラクセーション効果が得られないことが明らかにされた.本研究の結果から,不安感受性の高い者においても,AT実施前に不安感受性を緩和することで,ATによるリラクセーション効果を促進できることが示され,不安障害の治療にATを用いる際は,不安感受性を緩和させてからATを指導する必要性が指摘された.
著者
鈴木 伸一 嶋田 洋徳 三浦 正江 片柳 弘司 右馬埜 力也 坂野 雄二
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.22-29, 1997 (Released:2014-07-03)
参考文献数
16
被引用文献数
7

本研究の目的は、日常的に経験する心理的ストレス反応を測定することが可能であり、かつ簡便に用いることができる尺度を作成し、その信頼性と妥当性を検討することであった。まず、新しい心理的ストレス反応尺度 (SRS-18) が作成された。調査対象は、3,841名 (高校生1,316名、大学生1,206名、一般成人1,329名) であった。因子分析の結果、3因子が抽出された。それぞれの因子は、「抑うつ・不安」、「不機嫌・怒り」、「無気力」と命名された。各因子の項目数は、それぞれ6項目であった。尺度の信頼性は、α係数、再検査法、折半法によって検討され、いずれも高い信頼性係数が得られた。次に、SRS-18の妥当性が検討された。内容的妥当性、および、高ストレス群と低ストレス群、健常群と臨床群における弁別的妥当性について検討され、いずれもSRS-18が高い妥当性を備えていることが示された。本研究の結果から、SRS-18は、高い信頼性と妥当性を備えた尺度であることが明らかにされた。最後に、ストレスマネジメントの観点から、臨床場面や日常場面におけるSRS-18の有用性が討議された。
著者
岡安孝弘 嶋田 洋徳 坂野 雄二
出版者
早稲田大学人間科学学術院
雑誌
人間科学研究 = Waseda journal of human sciences (ISSN:09160396)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.23-29, 1992
被引用文献数
3

The purpose of this study was to develope the stress response scale for junior high school students, as a part of researches explaining school maladjustment. 670 junior high school students were required to estimate their recent moods, thoughts, and physical states for each of 68 items. Except for 68 students missing to fulfill all items, the data of 602 students were adopted for following analyses. As a result of factor analysis, four main factors -"irritated-angry affect", "physical response", "depressive-anxious feeling", and "cognition-thought of helplessness"- were extracted, ar-coefficients were enough high to support the high reliability of each factor. Furthermore, the results of analyses of variance on grade and gender revealed that the upper class students showed higher stress responses in "depressive-anxious affect" and "cognition-thought of helplessness", and that girls did in all factors except for "irritated-angry affect". For screening the students who tend to fall into school malajustments, further studies to examine the validity of this scale should be required.
著者
陳 峻文 貝谷 久宣 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.57-68, 2000-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究では、患者がエクスポージャーを実施する際の困難点を検討した上で患者教育を行い、患者教育がエクスポージャーの実施に及ぼす影響を検討することを目的とした。予備調査によって患者がエクスポージャーを実施する際に感じる困難点を明らかにした上で、研究1では、患者教育前後の患者の自己効力感の変化を検討した。その結果、患者教育前に比べ、患者教育後には、エクスポージャーを実施できるというセルフ・エフィカシーや、自らエクスポージャーを実行する意欲が高くなることがわかった。研究2では、エクスポージャー実施に及ぼす患者教育の効果を検討した結果、患者教育あり群は患者教育なし群よりも症状をコントロールできるというセルフ・エフィカシー、エクスポージャーが実施できるというセルフ・エフィカシーが有意に高く、エクスポージャー後の状態不安とSDSの得点が低下することがわかった。最後に、エクスポージャー実施に先立つ患者教育の意義が議論された。
著者
前田 香 関口 真有 堀内 聡 Justin W. Weeks 坂野 雄二
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.113-120, 2015-03-31 (Released:2015-05-29)
参考文献数
17
被引用文献数
5 6

他者からの肯定的評価への恐れは,社交不安症の認知的特徴である。本研究の目的はFear of Positive Evaluation Scale(FPES)日本語版の信頼性と妥当性を検討することであった。対象者は324名の大学生であった。確認的因子分析の結果,原版と同様に8項目1因子構造が確認された。また,内的整合性と5週間の再検査信頼性は原版と同様に高いことが示された。妥当性を確認するために,他者からの否定的評価への恐れ,および対人交流への不安との関連性を検討した。その結果,予測された関連性が確認された。第一に,対人交流への不安,他者からの否定的評価への恐れとの間に正の相関が認められた。第二に,他者からの否定的評価への恐れを統制した場合に対人交流への不安を予測した。したがって,FPES日本語版の信頼性と妥当性が確認され,その有用性が議論された。