著者
上島 通浩 柴田 英治 酒井 潔 大野 浩之 石原 伸哉 山田 哲也 竹内 康浩 那須 民江
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.1021-1031, 2005 (Released:2014-08-06)
参考文献数
36

目的 2-エチル-1-ヘキサノール(以下,2E1H)は,我が国で室内空気汚染物質として注目されることがほとんどなかった揮発性有機化学物質(以下,VOC)である。本研究では,2E1H による著しい室内空気汚染がみられた大学建物において,濃度の推移,発生源,学生の自覚症状を調査した。方法 1998年に竣工した A ビルの VOC 濃度を2001年 3 月から2002年 9 月にかけて測定した。対照建物として,築後30年以上経過したBビルの VOC 濃度を2002年 9 月に調査した。空気中カルボニル化合物13種類はパッシブサンプラー捕集・高速液体クロマトグラフ法で,その他の VOC41 種類は活性炭管捕集・ガスクロマトグラフ-質量分析(GC-MS)法で測定した。2002年 8 月に床からの VOC 放散量を二重管式チャンバー法で,空気中フタル酸エステル濃度をろ過捕集・GC-MS 法で測定した。講義室内での自覚症状は,2002年 7 月に A ビル315名および B ビル275名の学生を対象として無記名質問票を用いて調査した。結果 2E1H だけで総揮発性有機化学物質濃度の暫定目標値(400 μg/m3)を超える場合があった A ビルの 2E1H 濃度は冬季に低く,夏季に高い傾向があったが,経年的な低下傾向はみられなかった。フタル酸エステル濃度には 2E1H 濃度との関連はなかった。2E1H 濃度は部屋によって大きく異なり,床からの 2E1H 放散量の多少に対応していた。床からの放散量が多かった部屋では床材がコンクリート下地に接していたが,放散量が少なかった部屋では接していなかった。講義室内での自覚症状に関して,2E1H 濃度が低かった B ビル在室学生に対する A ビル在室学生のオッズ比の有意な上昇は認められなかったが,鼻・のど・下気道の症状を有する学生は A ビルのみにみられた。結論 2E1H 発生の機序として,床材の裏打ち材中などの 2-エチル-1-ヘキシル基を持つ化合物とコンクリートとの接触による加水分解反応が推定された。両ビル間で学生の自覚症状に有意差はなかったが,標本が小さく検出力が十分でなかった可能性もあった。2E1H 発生源対策とともに,高感受性者に注目した量反応関係の調査が必要である。
著者
田中 治 西村 恒彦 山上 卓士 一条 祐輔 大内 宏之 大野 浩司 光本 保英 森 敬弘 吉川 敏一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.703-711, 2010-05-05
参考文献数
33

画像診断装置の性能向上および造影剤の進歩により,肝細胞癌の画像診断は近年飛躍的に進歩した.2008年1月に肝細胞特異性造影剤であるGod-EOB-DTPA(gadolinium ethoxybenzyl diethlenetriamine pentaacetic acid,ガドキセト酸ナトリウム;EOB・プリモビスト<sup>&reg;</sup>)が本邦で発売され,約2年が経過した.肝細胞機能評価のみならず,これまでの細胞外液性MRI造影剤の性能を併せ持っているために1回の検査で血流評価と肝細胞機能評価が同時に可能となり,肝細胞癌の診断,特に境界・前癌病変と癌との鑑別においてその有用性が期待される.<br>
著者
大野 浩一
出版者
一般社団法人日本リスク研究学会
雑誌
日本リスク研究学会誌 (ISSN:09155465)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.81-85, 2013 (Released:2014-05-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1

Regarding risk management for emergent water quality accidents, the author believes better risk governance is not achieved by mere total optimization of systems of law regarding water management but by the flexible coalition among respective optimized systems. A questionnaire survey on the perception for water supply suspension was conducted after the water quality accident by formaldehyde in May, 2012. As preliminary results, 43% of respondents did not want suspension of water supply even if the water did not satisfy the standard values. If the water for oral intake purpose could be ensured by other sources such as bottled water, 86% did not want the suspension. These results suggested public anxiety for adverse health effects by the water that exceeded the standard values even if the exceedance did not cause adverse health effects. Risk communication on meaning and effect of “exceeding the standard values” should be important to mitigate the anxiety.
著者
松浦 智之 大野 浩之 當仲 寛哲
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.352-360, 2017-10-15

ソフトウェアは,より高度な要求,あるいは時代とともに変化する要求に応えるべく,絶え間なくバージョンアップを繰り返している.しかし,多くのソフトウェアは,今自分の置かれた環境において求められる性能や機能を満たすことばかり偏重し,ほかの環境や将来の環境における互換性をあまり考慮していない.そこで筆者らは,UNIX系OSが最低限満たすべきとした仕様をまとめた国際規格であるPOSIX(Portable Operating System Interface)に着目した.POSIXは現状で多くのUNIX系OSが準拠している上に,1988年の初出以来,その仕様はほとんど維持されている.このような性質を持つ規格に極力準拠しながらプログラミングすることで,ソフトウェアは高い互換性と長い持続性を得られる可能性がある.そして,筆者らはこのようにしてPOSIXの仕様に極力準拠しながらプログラミングをする指針を具体的にまとめ,POSIX中心主義と名付けた.本稿では,POSIX中心主義としてまとめたプログラミング指針を提案するとともに,現在行っている互換性と長期持続性の検証について報告する.
著者
臼井 三平 加藤 和也 中山 能力 今野 一宏 森 重文 齋藤 秀司 並河 良典 藤木 明 大野 浩司 佐竹 郁夫
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

混合版多変数SL (2)軌道定理を証明した。混合版ボレル・セールコンパクト化、混合版SL (2)-軌道の空間、混合対数的ホッジ構造の分類空間を構成し、これらの成す基本図式を得た。これにより混合版の対数的ホッジ構造の基礎理論がほぼできあがった。以上の結果とホッジ予想や鏡対称性などとの関連も注目されるようになってきた。
著者
大野 浩之 鈴木 茂哉 福島 登志夫 松田 浩 久保 浩一
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.195-196, 1993-09-27

複数の計算機が,ネットワークを介して情報を交換しあいながらなんらかの処理を行なう場合には,各計算機が正確な時刻情報を保持し同期していることが前提となることが多い.インターネット上でこの前提条件を完全に満たすのは困難であるが,時刻をよりよい精度で保時するための試みは以前からつづけられており,近年ではNTP(Network Time ProtocoI,RFC1305で規定)を用いた時刻同期が主流となりつつある.そこで,このNTPプロトコルを利用し,UTC(協定世界時)に同期した時刻情報をインターネットに供給することを目的として,セシウム原子時計を時刻源とする時刻情報供給システムを設計し実装した.本報告では,このシステム(NTP stratum 1サーバと呼ぶ)について述べる.
著者
大野 浩之
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.2, pp.1-8, 2011-03-03

非常時における情報通信のあり方を研究対象としている著者にとってとても興味深く,かつ急速に普及しつつある技術や製品に "ZigBee","OSC(Open Sound Control)","Arduino" がある.本報告では,これらを適切に組み合わせたプロトタイピングを ProtoZOA アプローチと呼び,この方法を用いることで,大学の研究室等の小規模な組織における情報共有環境がこれまでとは異なる形態で構築可能になることを指摘する.本報告では、すでに製作したいくつかの実装について述べ,そのうちのいくつかは非常時情報通信への応用が可能であることを示す.Some of new technologies and new products which are recently available widely with a low price are very interesting for us who are studying the emergency communication systems. They are ZigBee, "OSC"(Open Sound Control), "Arduino". We call the new approach "ProtoZOA", which used them. Using ProtoZOA, By using ProtoZOA Approach, construction of the informationsharing environment in a small-scale organization is attained with a different form from the former based on WiFi and TCP/IP. In this report, many implementations based on the ZOA approach are reported, and we noticed some of them are available for the emergency communications.
著者
眞柄 泰基 大野 浩一 亀井 翼
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、札幌市の水道水源である豊平川流域で発生する自然由来の有害無機物質の水道・下水道という都市水循環システムにおけるフローを定量的に把握し、リスク管理限界を明らかにすることを目的とした。豊平川上流部の河川調査により、ヒ素、ホウ素の河川への負荷量のほとんどを定山渓の温泉水(平均濃度:ヒ素3mg/L、ホウ素37mg/L)が占めており、温泉から直接河川に流入するヒ素及びホウ素の平均負荷量は、それぞれ一日21kg、245kgであることが明らかになった。ヒ素の形態別分析により、温泉水中のヒ素はその90%以上が毒性の強い3価の無機ヒ素であった。温泉流入後の河川水中のヒ素は、3価が約22%であった。豊平川を水源としている浄水場の調査より、凝集沈殿-中間塩素処理-砂ろ過においては、原水中で5価の状態であるヒ素しか除去できず、また原水の濁度を指標としたような凝集剤注入量では溶解性5価ヒ素除去には不十分であることが明らかとなった。一方ホウ素は全く除去されず浄水場でのリスク低減は望めない。水道原水として浄水処理システムに取りこまれるヒ素量は一日約7kg強であり、処理により汚泥に移行する量が6kg近いことが把握できた。水道水由来の下水に流入するヒ素量は一日平均1.6kgと試算されたが、実際の下水中のヒ素量は一日約5kgであることが明らかとなり、下水の詳細な調査により、このヒ素量の増加はヒ素を含んでいる地下水が下水管に浸透したことによる可能性が高いことが明らかになった。また、ヒ素を含んだ定山渓温泉街の排水を受け入れている下水処理場の汚泥由来のヒ素量は、札幌市全体の下水汚泥由来のヒ素量の約75%も占めており、ヒ素含有量の低い他の処理場の汚泥と混合され焼却処理されていることから汚泥の有効利用を困難にしていると言える。
著者
清川 清 倉田 義則 大野 浩之
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.24, no.15, pp.55-60, 2000-02-21
参考文献数
10
被引用文献数
1

従来, 複合現実環境を提示するために実環境像と仮想環境像を合成する場合, ビデオ透過型ディスプレイでは実環境の低解像度化や提示遅れが避けられず, 光学透過型ディスプレイでは仮想環境が半透過となり正しく隠蔽関係が表現できないという問題があった.本稿では, 仮想環境の各画素に対応する実環境の光線を任意に遮蔽するために透過型の液晶パネルを用いることにより, 実物体と仮想物体の自在な隠蔽関係の提示を可能とする新しい光学透過型ディスプレイを提案する.
著者
大野 浩之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.88, pp.63-66, 1998-09-25

分散システム運用技術シンポジウム'98では「Intranetの現状と将来」というタイトルでパネルディスカッションを行い,1998年5月開催の研究会では「イントラネットに明日はあるか」というタイトルで会場の参加者とディスカッションを行った.これらのディスカッションを通してさまざまな問題点が明らかになったが,イントラネットの問題点を体系化したいという著者の意図とはほど遠い状態にある.そこで今回も続編を実施する.今回は話の発散を防ぐために話題を「イントラネットは大規模災害を乗り越えられるか」にしぼりたい.そこで本稿では,大規模災害時にイントラネットをどうやって維持管理し復旧させるかという視点から,著者の研究室での実践例を報告し,ディスカッションの下敷とする.In the Distributed system Management Symposium '98 and DSM bi-monthly research group meetnigs at May, 1998, discussion sessions were held. On these sessions, we discussed about tips and techniques for our intranet management. However, the discussion ended without actual conclusions because we didn't have enought discussion time. Therefore, we have planed another discussion again at the research group meeting. This time, we would like to discuss about how we are prevent our intranet from disasters such as earthquakes, floods and fires. So, we introduce ohno laboratory's computer networks and our emergency plans for disasters. This is for the purpose of providing baseline of the discussion. The actual discussion at this research group meeting should be succeeded with new good ideas for all intranet system administrators who are fighting with disasters.
著者
大野 浩之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.36, pp.19-24, 1998-05-15
被引用文献数
1

分散システム運用技術シンポジウム'98で行われたパネルディスカッション「Intranetの現状と将来」では,壇上の7名のパネラを含む会場の参加者は,イントラネットが抱える問題点を明らかにしていったが,時間制限のために,十分な議論がされたとは言いがたかった.しかし,今後も継続して議論する必要があるという認識が参加者間に芽生えたので,今回の研究会において再度パネルディスカッションを開催し,議論を続けることになった.本稿は,今回のパネルディスカッションの参考資料である.すなわち本稿では,著者が考えるモバイルコンピューティングとイントラネットとの関係,著者の研究室での実践例,今後の展望などが述べられているが,あくまで今回のパネルディスカッションの議論のきっかけを提供することを意図して執筆されている.実際のパネルディスカッションの内容は,本稿をきっかけにして著者の予想をこえた内容になることが期待されている.A panel discussion was held at the last session of the Distributed System Management Symposium '98. All attendees of the session had made discussion about how to manage their intranet better than now. However, the discussion ended without any conclusions because of the limitation of the discussion time. Therefore, we planed another discussion based session at this symposium. This paper has been prepared for the discussion. We introduced the relationship between mobile computing and the intranet, implementation at our laboratory, and future study. They are just introduced for the purpose of providing baseline of the discussion. The actual discussion at this symposium should be succeeded with new conclusion for all intranet system administrators.