- 著者
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宮島 宏
松原 聰
宮脇 律郎
- 出版者
- 一般社団法人日本鉱物科学会
- 雑誌
- 日本鉱物科学会年会講演要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2007, pp.201, 2007
新潟県糸魚川地方の海岸や姫川・小滝川河床から、粗粒なcorundumが転石として発見される(宮島ら, 1999 二鉱学会演旨)。今回、小滝川と青海海岸産のcorundumを含む試料から稀産雲母とSrを含む特異な組成を持つ雲母が発見されたので報告する。◆プライスワーク雲母 (Preiswerkite)PreiswerkiteはKeusen and Peters (1980)によりスイスの超苦鉄質複合岩体のrodingiteから発見され、 NaMg<SUB>2</SUB>Al[Al<SUB>2</SUB>Si<SUB>2</SUB>O<SUB>10</SUB>](OH)<SUB>2</SUB>という組成を持つ。産出例は比較的少なく、本邦では本報告が初産となる。本報告のpreiswerkiteは、糸魚川市小滝川で織田宗男氏が採集した礫に含まれていた。礫には径5~15mmの丸みを帯びた灰紫色ガラス光沢のcorundum, diasporeの集合体が多数存在し、preiswerkiteはその粒間を充填する淡黄色真珠光沢を呈する直径3mmの半自形結晶の集合体をなす。EDSによる分析値(wt. %)は、SiO<SUB>2</SUB> 30.75, TiO<SUB>2</SUB> 0.34, Al<SUB>2</SUB>O<SUB>3</SUB> 29.62, FeO 3.64, MgO 18.22, Na<SUB>2</SUB>O 4.74, K<SUB>2</SUB>O 0.95, Total 88.26となり、実験式は(Na<SUB>20.7</SUB>, K<SUB>0.1</SUB>) <SUB>Σ0.8</SUB> (Mg<SUB>2.0</SUB>, Fe<SUB>0.3</SUB>) <SUB>Σ2.3</SUB>Al<SUB>0.8</SUB> [Al<SUB>1.8</SUB>Si<SUB>2.2</SUB>O<SUB>10</SUB>](OH) <SUB>2</SUB>となる。◆Srに富む雲母 (Sr-rich mica)Sr-rich micaは、糸魚川市青海海岸で小林浩之氏が採集した白地に青色部分が不規則な脈として存在する礫に含まれていた。白色部分は緻密なcelsianと劈開明瞭なmargarite, paragonite, Sr-rich micaからなり、少量のslawsonite, calciteを含む。青色部分は緻密なcorundum, diasporeからなる。margariteとparagoniteからは5 wt.%程度のSrOが検出され、Srに富む部分ではSrO = 15 wt.%を超え、0.75 <I>pfu</I>に達する。実験式は、(Sr<SUB>0.75</SUB>, Na<SUB>0.15</SUB>, Ca<SUB>0.05</SUB>) <SUB>Σ0.95</SUB>Al<SUB>1.98</SUB>[Al<SUB>1.98</SUB>Si<SUB>2.05</SUB>O<SUB>10</SUB>](OH) <SUB>2</SUB>となり、margariteのSr置換体に相当する。CaとBaを主成分とする雲母は知られているが、Srを主成分とする雲母は知られておらず、公表された分析値でSrを含む例はない。糸魚川地方の蛇紋岩メランジュ中の構造岩塊からは多種のSr鉱物が発見されているが、このような特異な組成の雲母もその一例である。