著者
新井 紀子 影浦 峡 菅原 真悟 松崎 拓也 犬塚 美輪 尾崎 幸謙 登藤 直弥 藤田 彬
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

科目や分野によらない汎用的な読解力を短時間かつ高い精度で推定するリーディングスキルテストについて引き続き研究開発を続けている。リーディングスキルテストβ版については、そのアイデア等を論文や口頭発表、書籍等で公開した上で、一般社団法人「教育のための科学研究所」に移転し、リーディングスキルテストとして社会実装された。令和元年度末までで(リーディングスキルテストβ版と合わせて)のべ20万人以上が本テストを受検した。これまでの知見を2冊の書籍として出版した。少ないサンプルで問題の難易度を推定する方法や、より少ない問題数で高い精度で汎用的読解力を推定する方法等について、テスト理論の観点から尾崎・登藤らが検討を行った。板橋区および戸田市と連携し、汎用的読解力を児童・生徒に身に着けさせるための授業や学習支援についての検討を行っている。特に板橋区においては、「読み解く力の育成」として、板橋第一中学校に入学する小学校を含めた「学びのエリア」を指定し、その中で、学年進行に応じて、どのような汎用的読解力をどのような授業や支援で身に着けさせるかについての検討を行っている。板橋区と連携して行った研究授業および研究会は計5回である。加えて、検定教科書に関する計量国語学的観点からの分析を進め、小学校と中学校の教科書において記述方法にこれまで発見されていなかった量的なギャップがあることを発見し、査読付き論文および国際会議プロシーディングスで発表した。
著者
佐々木 掌子 尾崎 幸謙
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.251-265, 2007
被引用文献数
1

本研究は,新たなジェンダー・アイデンティティ尺度を作成し,その信頼性・妥当性を検討することを目的とした。これまでの尺度ではジェンダー・アイデンティティを具体的な性役割や性指向などで測定してきたが,本尺度はEriksonのアイデンティティ理論に則り,ある性別へのアイデンティティ感覚を構成概念とした。対象は大学生である(女性205名,男性207名)。4因子を想定して尺度作成をし,2因子モデル,4因子モデル,高次因子モデルの適合度指標を比較したところ,高次因子モデルがもっとも適合度がよかった。採択されたのは,高次の2因子の下位に各々2つの因子が配されるモデルであった。また,妥当性の検討のために,性役割,性別受容,自尊心といった尺度との相関や,性同一性障害をもつ者(男性から女性への移行者male to female “MTF” 120名,女性から男性への移行者female to male “FTM” 155名)との比較が行われ,妥当性が確認された。
著者
佐々木 掌子 尾崎 幸謙
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.251-265, 2007 (Released:2007-07-07)
参考文献数
59
被引用文献数
3 1

本研究は,新たなジェンダー・アイデンティティ尺度を作成し,その信頼性・妥当性を検討することを目的とした。これまでの尺度ではジェンダー・アイデンティティを具体的な性役割や性指向などで測定してきたが,本尺度はEriksonのアイデンティティ理論に則り,ある性別へのアイデンティティ感覚を構成概念とした。対象は大学生である(女性205名,男性207名)。4因子を想定して尺度作成をし,2因子モデル,4因子モデル,高次因子モデルの適合度指標を比較したところ,高次因子モデルがもっとも適合度がよかった。採択されたのは,高次の2因子の下位に各々2つの因子が配されるモデルであった。また,妥当性の検討のために,性役割,性別受容,自尊心といった尺度との相関や,性同一性障害をもつ者(男性から女性への移行者male to female “MTF” 120名,女性から男性への移行者female to male “FTM” 155名)との比較が行われ,妥当性が確認された。
著者
尾崎 幸謙 鈴木 貴士
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.39-52, 2019 (Released:2020-03-31)
参考文献数
23
被引用文献数
3

Results of an analysis of survey data which includes data from inappropriate respondents (respondents who do not devote an appropriate amount of attentional resources when answering questions or whose answers for two questions are contradictory) are untrustworthy. To address this problem, an instructional manipulation check or directed questions scale can be used to identify such respondents. However, survey companies are not willing to use such tools for ethical reasons. In the present study, using eleven machine learning models and six exploratory variables, a prediction model which can judge whether a respondent is inappropriate is developed. The model shows that two explanatory variables, the maximum number of consecutive items on a scale to which a respondent answered with the same response option and response time, are effective for the prediction. The model can reduce the percentage of inappropriate respondents in the analyzed data, which leads to an improvement in the trustworthiness of the analysis results.
著者
敷島 千鶴 安藤 寿康 山形 伸二 尾崎 幸謙 高橋 雄介 野中 浩一
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.2_105-2_126, 2008-11-30 (Released:2009-01-05)
参考文献数
45

観測された形質の分散を、「遺伝」「共有環境」「非共有環境」という3つの潜在変数の寄与に分割して推定させる行動遺伝学の方法論を用いて、権威主義的伝統主義の形成に関わる要因について検討した。4111名(12~26歳の男性双生児1279名、女性双生児1889名、および双生児の父親83名、母親860名)から権威主義的伝統主義尺度の回答を得た。一卵性双生児912組、二卵性双生児630組を対象とした双生児モデルによる分析は、権威主義的伝統主義の分散を遺伝33%、非共有環境67%で説明し、双生児親子モデルによる分析においても、結果は同等であった。これより、権威主義的伝統主義の家族内伝達を媒介するのは専ら遺伝であり、文化伝達ではないことが示された。権威主義の形成を親の養育、あるいはその家の社会背景によって説明するこれまでの理論には異議が唱えられる。遺伝を説明変数に含めた、より精緻な伝達モデルの有用性が提起される。
著者
豊田 秀樹 福中 公輔 尾崎 幸謙 川端 一光
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.416-423, 2007-10-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
15
被引用文献数
2

This research develops a new method for analyzing relation for factors which combines graphical modeling (GM) and factor analysis. In this method, estimation of the inverse of the variance-covariance matrix is done in the framework of factor analysis, and then the data-model fit is investigated using GM. The partial correlation coefficients of the estimated model are calculated, and the estimation of parameters is repeated until discovery of the worst fit index. In order to confirm the effectiveness of this method, three correlation matrices were analyzed as a real data study. In first and second case, intelligence models of Harman and Turstone were restructured using this method. In third case, EQ model was structured using it. The results show that this method can be apply GM for latent variables and a good assistant to set up path models for factors.
著者
尾崎 幸謙
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.89.17004, (Released:2018-03-10)
参考文献数
10

Short-version questionnaires are often used in psychological research dealing with constructs, because the number of questions that the respondent must answer can be reduced. However, because such questionnaires do not include all of the items of the original scale, it is questionable whether the results have sufficient validity. In this research, a separate-version questionnaire was introduced, which can reduce the number of items in the same way as a short-version questionnaire, but is expected to have a higher degree of validity. A statistical comparison was performed between a short-version questionnaire and the introduced separate-version questionnaire, both by simulation and using real data, where the analysis model was a confirmatory factor analysis. The simulation considered the situation where the data used in a scale development study were different for the short-version and separate-version questionnaires. The results showed that the separate-version questionnaire had smaller biases than the short-version questionnaire, which indicates the usefulness of the separate-version questionnaires.
著者
佐々木 掌子 山形 伸二 敷島 千鶴 尾崎 幸謙 安藤 寿康
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.330-338, 2009 (Released:2012-03-20)
参考文献数
50
被引用文献数
4 2

This study investigated the possible effects of genetic and environmental gender differences in effect on individual differences by using the Bem Sex Role Inventory (BSRI) with twins. A sex/gender-limitation analysis, a behavior genetics methodology was used to the following: (a) effects of gender-specific genes, (b) gender differences in quantitative genetic effects, (c) effects of gender-specific shared environment, (d) gender differences of quantitative shared environment, and (e) gender differences of quantitative nonshared environment. Participants were adolescent and adult twins, including 111 identical male pairs, 241 identical female pairs, 36 fraternal male pairs, 65 fraternal female pairs, and 58 opposite-gender pairs. The results indicated that although masculinity and femininity were explained by genetic factors to some extent, there were no significant gender differences in the genetic factors. Moreover, because our data did not support a model which explained gender differences in the effects of specific common environment factors, no evidence was found to support the prenatal hormonal hypothesis or the existence of parenting which encouraged children's gender role personality.
著者
前田 忠彦 朴 堯星 吉川 徹 尾崎 幸謙
出版者
統計数理研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2019年度は,「日本人の国民性調査」に関連して次の内容を実施した。(1a)2018年度に実施した「日本人の国民性 第14次全国調査」についてのデータクリーニング、および関連する調査地点データ等の整備、(1b)同調査の基礎集計の吟味と主な時系列的な知見の整理、(1c)先に整理が進んだ過去のデータに基づく共同分析の実施と成果発表,(2)過去(第13次全国調査まで)の調査データに付帯するメタデータ情報の整理と共同利用研究のためのデータ整備、(3)オンラインパネルに対するウェブ調査の方法論の検討、等。(1a)に関しては調査報告書の発行とウェブ上での公表を予定していたが,データ整備の遅延により2020年度に先送りした。(1b)について,継続調査の中で長期にわたって利用されてきた調査項目の多くでは,(変化自体が観察されにくくなっていることを含めて)これまでの動きと同質の傾向性が見られる一方,2013年度実施の第13次全国調査で見られた「東日本大震災後」に特有の意識,たとえば自然災害に対する不安や,日本人の良い性質などについての項目で若干の「揺り戻し」とみられる動きが観察されること,などが分かってきている。(2)1953年に第1次調査が行われて以来の,2018年まで14回にわたる全国調査について,,今後の共同利用(のためのデータ公開)に向けて,メタデータおよび個票データの整備を進めた。すなわち調査データそのもの,コード表,調査地点情報の3点の整備を行った。また複数時点間で微妙に異なるコーディング法等をハーモナイズする方針などを検討した。(3)については確率標本に対する面接調査とオンラインパネルに対するウェブ調査の比較検証の前に,ウェブ調査の信頼性を揺るがす可能性がある,いわゆる手抜き回答の検出法等に関する成果発表を行った。
著者
新井紀子# 菅原真悟# 尾崎幸謙# 犬塚美輪 新井庭子# 分寺杏介# 野口裕之 登藤直弥
雑誌
日本教育心理学会第59回総会
巻号頁・発行日
2017-09-27

企画主旨登藤直弥 本自主企画シンポジウムで取り上げるリーディングスキルテスト(Reading Skill Tests,RST)においては,いわゆる国語の文章読解問題のように,「文意が正しく読み取れるか」などといった大まかな能力が測定されているわけではない。RSTではより細かな認知能力,具体的には,「文の中における係り受け構造が正しく理解できるか」だとか「文間での照応関係が正しく認識できるか」などといった,より基礎的な読解能力が測定されるように設計されている。 このRSTに関しては,一昨年度よりその開発を始め,現在では,様々な学校・企業・自治体の協力を得て,データの収集や分析を進めているところである。その結果,以下に記載されているように,RST,さらには,「読解」という行為に関する様々な知見が蓄積されてきた。 そこで,本自主企画シンポジウムでは,RSTの開発を始めた経緯,RSTの仕様,RSTの教育測定学的性質,そして,RSTを用いて行われたいくつかの研究の結果について,以下に示す通り,計6名の先生方から話題提供をしていただく。基盤となる読解力を測る新井紀子 21世紀の知識基盤社会においては,人生を通じて必要となる知識やスキルが確立されたカリキュラムの枠組みだけでは十分には獲得できず,人が生涯にわたり学び・学習の活動を続けていく「生涯学習」が必要となる。その形態が,アナログかデジタルか,直接か遠隔かに関わらず,学習コンテンツの多くが書記言語の「読解」を前提として構成されている。そのため,知識基盤社会においては,書記言語の運用能力の如何が,労働市場での価値を大きく左右する。一方,学習者間で看過できない読解力の差が生じていることは動かしがたい事実である。読解力が知識基盤社会を生き抜くための核心的スキルであるならば,すべての学習者がそれを一定程度身に着ける教育プログラムがあることが,格差の少ない民主的な社会の形成の上で強く望まれる。 我々は,近年の深い言語処理の研究成果と対比させつつ,従来の読解の認知プロセスモデルを精緻化した上で,項目応答理論と認知診断モデルを用いた適応型テストを用いることにより,従来の学習到達度テストや読解力調査では測定することのできなかった読解に関わる認知プロセスにかかわる能力(認知能力)を高い精度で診断することを目的とするRSTの研究開発に着手した。その成果について発表を行う。RSTの各問題タイプの目的と作問方法菅原真悟 RSTでは6つの問題タイプを設定し,それぞれ異なる能力を測ることを目的としている。各問題タイプの概要は,以下の通りである。(1)「係り受け認識(DEP:Dependency Analysis)」:係り受け関係を正しく認識できているかを測る。(2)「照応解決(ANA:Anaphora Resolution)」:指示照応やゼロ照応を理解できているかを測る。(3)「同義文判定(PARA:Paraphrasing)」:2つの文を比較し,それらが同義かあるか否かを理解できるかを測る。(4)「推論(INF:Logical Inference)」:提示された文から論理推論することで,新しい知識を獲得できるかを測る。(5)「イメージ同定(REP:Representation)」:提示された文を読んで,それがどのようなことを表しているかイメージできるかを測る。(6)「具体例認識(INST:Instantiation)」:概念または用語の定義を読み,それがどのような状況に当てはまるか,具体的に認識できるかを測る。 各問題は,主に中学校及び高等学校で用いられている検定済教科書に載っている文を基に作問している。なお,RSTで教科書等に掲載された文を使用するにあたっては,各著作権者と協議のうえ,著作権許諾契約を結び実施している。本発表では,各問題タイプが,どのような目的で作問されているかを,具体例をあげて説明する。RSTの信頼性と妥当性および質問紙調査項目との相関尾崎幸謙・登藤直弥 本発表では,1)RSTの信頼性と妥当性,2)質問紙調査項目との相関について報告する。 RSTの各項目が適切に読解にかかわる認知能力を測定していることを調べるために,まず項目特性図を描き,その形状によって適切な項目であるか否かを判断した。通常の項目特性図は,合計得点のグループごとの各選択肢の選択割合を示したものである。しかし,現在のRSTは,受験者に対してランダムに項目提示を行っているため,受験者によって解いた問題が異なる。そのため,受験者に対する評価は項目応答理論を用いて行った。項目応答理論における受験者特性値θをすべての受験者について求め,これを合計得点の代わりとして項目特性図を描いた。 その結果,いくつかの問題については,問題文や選択肢の修正の必要があることが分かった。なお,RSTでは修正の必要の有無の判断・修正・再データ収集のループを回して実施し,適切な項目内容となるためのフローを作っている。 また,RSTの信頼性と妥当性については,項目特性図によってスクリーニングされた適切な項目のみを使って問題タイプ毎に検討を行った。具体的には,信頼性であれば,たとえばω係数(McDonald,1999)を用いて検討を行い,妥当性であれば,受験者特性値θ間の相関係数や「各受験者特性値や正答率と年齢との関係」などを用いて検討を行った。その結果,現状では,全ての問題タイプにおいて,十分な信頼性と妥当性が示唆される結果が得られている。なお,問題タイプ毎に,項目応答理論を適用する際の前提が満たされているかどうかについても確認を行ったが,この点についても,適用するにあたっての前提は満たされているであろうことが示唆されている。 さらに,信頼性と妥当性が確認された項目群を用いて,質問紙調査項目との相関を求めた。なお,これらの分析についても問題タイプ毎に行っている。この質問紙調査項目には,読書習慣,読書の好き嫌い,得意な科目などについて尋ねるものが含まれている。したがって,読解力という漠然とした構成概念ではなく,読解力を構成するより細かな認知能力について,読書習慣等に関する質問紙調査項目との相関を調べることができた。なぜ読むのが難しいのか:眼球運動の特徴から犬塚美輪 RSTの実施結果からは,教科書という基本的な学習リソースにおいて文理解が困難な学習者が少なくないことが示されたと言える。こうした困難の要因の一つは,教科書の文章の構造の複雑さにあると推測できる。一方で,学習者が十分な読解スキルを有していないことも要因であろう。読解スキル育成のためには,優れた(あるいは困難を持つ)読み手の特徴に基づいた介入案の検討が必要であるが,青年期の読み手の読解プロセスについては基礎的データが十分ではない。 そこで,本発表では,大学生を対象に,原文と構造を明確化した修正文における読解プロセスを検討する。予備的な研究からは,原文と修正文で読解時間は大きく異ならないものの,修正文では低成績者の理解を底上げすることが示唆された。本発表では,眼球運動のデータを用いて,原文と修正文で学習者の読解プロセスがどのように異なるか,そこからどのような教育的提言が可能かを論じる。小・中ギャップにつながる教科書テキストの特徴新井庭子・分寺杏介 教科書の文章は正しく読めることが前提とされてきたが,RSTの実施結果からは,学習者が正しく教科書を読めていない実態が示された。本発表では,学習者の読みを困難にしている教科書の具体的な特徴について検討を行った結果を報告する。 近年,教育現場でいわゆる小・中ギャップ,すなわち,小学校から中学校への進学において,新たな環境での学習や生活に対応できず不登校等に繋がる状況が問題視されている(中央教育審議会初等中等教育分科会,2012)。小・中ギャップは学習者の学習面と生活面から検討が進められており,学習面では,担任制の相違や授業形態の違いなどの指導法の面からの研究はあるが(中央教育審議会初等中等教育分科会,2012;伊藤,2014),学習者が抱える困難がどのようなものか,例えば教科書を読んで理解し知識を獲得できているか等を具体的に分析した研究は少ない。 そこで,小学校と中学校の理科教科書を題材として,そこにどのような量的・質的なギャップがあるかを分析した。また,読みを困難にするテキストのパラメータを予測し,小・中教科書テキストの間にそのパラメータで表現できるギャップがあることを示した上で, RSTの結果を用いてそのギャップが実際に人にとっての困難につながるかどうかを確認した。 「人にとってのテキストの難しさ」を扱う関連研究で伝統的に採用されてきたパラメータのうち,単語親密度・係り受けの数・距離の平均・ツリー構造の深さを採用し,特に係り受けの複雑さについて小・中間で明確な差があることを確認した。その他にも,これまでの研究では考慮されていなかった新規パラメータとして定義表現の数・分類表現の数について,小・中間で大きなギャップがあることを示した。
著者
東海林 和雄 中村 亮介 尾崎 幸謙
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.123-140, 2020 (Released:2021-04-21)
参考文献数
23

The purpose of this study is construction of the prediction model to discriminate incorrect accounting information. Two features of this research are to adopt methods of detecting auditing practices and to target for analysis that the accounting information which the sales are overestimated. Specifically, unlike in previous research, we approach to detect fraudulent means without uniform accounting phenomena for each fraudulent means. Furthermore, we applied accounting distortions and discomfort auditors feel as explanatory variables. This discomfort is measured by Mahalanobis distance. In the results of this analysis, the prediction model of machine learning that is adopted practical methods that detect incorrect accounting shows a high probability of fraud.
著者
尾崎 幸謙 豊田 秀樹
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.97-104, 2005-06-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
10

The purpose of this research is to provide a two-way analysis of variance (ANOVA) model for a latent factor. Typical psychological studies measure mental states with questionnaires and analyze the variance of the measures into the portions attributable to various sources. This type of research, when conducted under regular ANOVA designs, uses total score as the dependent measures. However, this method is based on the unrealistic presumption that every item on the questionnaire has the same factor loading on the attribute being measured. In this research, we incorporated factor analysis model, and used a latent factor instead of total score as the dependent measure, thereby applying ANOVA under a more realistic assumption. Structural Equation Modeling (SEM) was used to express statistical models. This paper also examined a relation between music and mood, which is a quite popular area of research in psychology of music. To study the possible effects of tonality and key-signature on mood, music was chosen to represent tonality and key-signature conditions.
著者
石橋 敬介 伴 正隆 尾崎 幸謙
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.89-97, 2020 (Released:2021-04-21)
参考文献数
23
被引用文献数
2

We propose a model that consider the stage of purchase decision making by dividing it into deciding whether to purchase and deciding how many products to purchase. For this purpose, we used a hurdle model that combines a binomial logit model and a Poisson regression model. The hurdle model is suitable for analyzing zero-inflated data. In our analysis, we incorporated marketing variables in each model and compared which stage the marketing variables affect more. We compare several models using WAIC and show that the proposed model is superior. Results from the proposed model can be used for sales promotion activities targeted at individual consumers.
著者
尾崎 幸謙 鈴木 貴士
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.39-52, 2019
被引用文献数
3

<p>Results of an analysis of survey data which includes data from inappropriate respondents (respondents who do not devote an appropriate amount of attentional resources when answering questions or whose answers for two questions are contradictory) are untrustworthy. To address this problem, an instructional manipulation check or directed questions scale can be used to identify such respondents. However, survey companies are not willing to use such tools for ethical reasons. In the present study, using eleven machine learning models and six exploratory variables, a prediction model which can judge whether a respondent is inappropriate is developed. The model shows that two explanatory variables, the maximum number of consecutive items on a scale to which a respondent answered with the same response option and response time, are effective for the prediction. The model can reduce the percentage of inappropriate respondents in the analyzed data, which leads to an improvement in the trustworthiness of the analysis results.</p>
著者
尾崎 幸謙
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.61-70, 2018

<p>Short-version questionnaires are often used in psychological research dealing with constructs, because the number of questions that the respondent must answer can be reduced. However, because such questionnaires do not include all of the items of the original scale, it is questionable whether the results have sufficient validity. In this research, a separate-version questionnaire was introduced, which can reduce the number of items in the same way as a short-version questionnaire, but is expected to have a higher degree of validity. A statistical comparison was performed between a short-version questionnaire and the introduced separate-version questionnaire, both by simulation and using real data, where the analysis model was a confirmatory factor analysis. The simulation considered the situation where the data used in a scale development study were different for the short-version and separate-version questionnaires. The results showed that the separate-version questionnaire had smaller biases than the short-version questionnaire, which indicates the usefulness of the separate-version questionnaires.</p>
著者
尾崎 幸謙
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.61-70, 2018 (Released:2018-04-25)
参考文献数
10

Short-version questionnaires are often used in psychological research dealing with constructs, because the number of questions that the respondent must answer can be reduced. However, because such questionnaires do not include all of the items of the original scale, it is questionable whether the results have sufficient validity. In this research, a separate-version questionnaire was introduced, which can reduce the number of items in the same way as a short-version questionnaire, but is expected to have a higher degree of validity. A statistical comparison was performed between a short-version questionnaire and the introduced separate-version questionnaire, both by simulation and using real data, where the analysis model was a confirmatory factor analysis. The simulation considered the situation where the data used in a scale development study were different for the short-version and separate-version questionnaires. The results showed that the separate-version questionnaire had smaller biases than the short-version questionnaire, which indicates the usefulness of the separate-version questionnaires.
著者
尾崎 幸謙
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究
巻号頁・発行日
2018

<p>Short-version questionnaires are often used in psychological research dealing with constructs, because the number of questions that the respondent must answer can be reduced. However, because such questionnaires do not include all of the items of the original scale, it is questionable whether the results have sufficient validity. In this research, a separate-version questionnaire was introduced, which can reduce the number of items in the same way as a short-version questionnaire, but is expected to have a higher degree of validity. A statistical comparison was performed between a short-version questionnaire and the introduced separate-version questionnaire, both by simulation and using real data, where the analysis model was a confirmatory factor analysis. The simulation considered the situation where the data used in a scale development study were different for the short-version and separate-version questionnaires. The results showed that the separate-version questionnaire had smaller biases than the short-version questionnaire, which indicates the usefulness of the separate-version questionnaires.</p>