著者
山崎 文雄 小檜山 雅之
出版者
千葉大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

研究代表者らは地震時の車両走行安定性に関して,数値解析とドライビングシミュレータを用いた走行実験を行い定量的な検討を行ってきている.その結果,地表面地震動の計測震度が6.0程度に達した場合,震動の影響で走行車線をはみ出す被験者が多く見られ,周囲の交通状況によっては他車との接触事故を起こす可能性があることが示された.そこで,気象庁などが導入を検討している地震動早期警報である緊急地震速報の高速道路ネットワークへの応用を目指し,運転者に地震動早期警報が与える影響をドライビングシミュレータを用いた走行実験で検討した.1995年兵庫県南部地震における地震データ,観測点位置などをもとに,現在運用が検討されている地震動早期警報をシミュレーションしたところ,最も震源に近傍なJR西明石観測点でP波検知を行い,「0次情報」が発信されたと仮定すれば,JR宝塚付近では主要動到達前に約5.9秒の余裕時間があることが分かった.したがって,JR宝塚観測点における兵庫県南部地震の地震記録を地表面地震動とし,早期地震情報を運転者に伝えるためのシステムの作動時間を考慮に入れ,主要動到達5秒前から3秒間の減速及び路肩への侵入を促す音声通報を地震動早期警報として運転者に提供した.地震動早期警報の有無で地震時の車両走行の様子を比較すると,早期警報を行わなかったときは走行車線をはみ出したり,車線内を蛇行して走行する被験者が多かったが,早期警報を与えると蛇行走行は見られなくなり,走行速度が120km/hのときは,警報開始時から300m程度車両が進むとほとんどの被験者が路肩に待避を始めていることが分かった、震動による道路変状を想定し,自車前方の障害物回避の対応状況を地震動早期警報の有無で比較した.その結果,地震動早期警報が行われない場合は回避困難な位置(11名中9名が障害物に衝突)にある障害物に対して,早期警報の効果で11名の被験者のうち9名が回避に成功した.
著者
村尾 修 山崎 文雄
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.67, no.555, pp.185-192, 2002-05-30 (Released:2017-02-04)
参考文献数
16
被引用文献数
15 10

A number of building damage surveys were carried out for different purposes after the 1995 Hyogoken-Nanbu Earthquake. The damage surveys by local governments intended its use for property tax reduction while the survey by the CPIJ & AIJ group aimed to get technical records. This paper presents building fragility curves based on the CPIJ & AIJ damage survey data for Nada Ward, Kobe City, and the detailed building inventory, structural type and construction period, provided by Kobe City Government. This paper also compares them with the fragility curves based on the local government's survey for property tax reduction to clarify the relationship between the two evaluations.
著者
原 香実 リュウ ウェン 山崎 文雄
出版者
社団法人 日本リモートセンシング学会
雑誌
日本リモートセンシング学会誌 (ISSN:02897911)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.338-347, 2016-09-20 (Released:2017-03-24)
参考文献数
25

Synthetic Aperture Radar (SAR) is a very useful tool for detecting surface changes and deformation caused by volcano activities because of its independence from weather and daylight conditions. A volcano in Kuchinoerabu Island, Kagoshima, Japan, erupted explosively and pyroclastic flows reached the coastal area on May 29, 2015. In this study, ALOS-2 PALSAR-2 data were used to analyze surface changes and deformations associated with the eruptive activity. The pyroclastic flows around the Shindake crater were observed by the differences of backscattering coefficients and the coherence values. Changed areas were extracted by a threshold value of the coherence, and were compared with a visual interpretation result conducted by the Geospatial Information Authority of Japan (GSI). The ground deformation due to the eruption was detected by the interferometric analysis, and its vertical component was estimated by combining the results from two InSAR pairs.
著者
山崎 文雄 松岡 昌志 丸山 喜久
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,高解像度光学センサ衛星とマイクロ波を用いる合成開口レーダー(SAR)を組み合わせた,被災地域の抽出手法を検討した.災害前には衛星光学センサ画像,衛星SAR画像,更には数値標高データ(DEM)が得られているものとし,災害後に衛星SAR画像が得られた場合,これらを全て用いて被災範囲と程度を抽出する.イタリア・ラクイラ地震,ハイチ地震,東日本大震災等の被災地域に対して実データに基づいて被害抽出を行い,現地調査データと比較して精度を検証した.
著者
山崎 文雄 副島 紀代 目黒 公郎 片山 恒雄
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.4, pp.171-179, 1994-08

都市社会の電力依存の高まりとともに,停電によって都市社会が受ける障害の形態も変化しつつある.1991年の台風19号の際には,全国で700万件もの停電が発生し,構造的被害よりも停電によるライフラインの機能損失・機能的被害波及が大きな問題となった.停電による都市生活への影響は,その地域に住む人々の生活様式や産業形態によって大きく異なり,しかも季節・天候などの自然条件と,停電の発生時刻・継続時間などの影響を強く受ける.これは地域別の電力需要特性が,上記のような様々な要因で決定されるためである.したがって本研究では,都市停電の定量的影響度評価への第1ステップとして,電力需要特性から都市部の地域特性の評価を試みた.東京23区を例としてとりあげ,電力需要と地域特性のデータベースを構築するとともに,電力需要から見た都市部の地域特性評価と分類を行った.その結果,都市の電力需要量は地域や時刻,季節などにより様々に変化するが,配電エリア別に見るとその電力消費曲線の特徴により,住宅・オフィス・工場・店舗/飲食店がそれぞれ卓越する,4通りの地域に分類できることがわかった.そしてどのエリアの電力需要も,この4つの構成要素の重ね合わせとして表現できると仮定し,各構成要素の1件当たりの電力需要曲線を回帰分析によって求めた.さらに地域特性と電力需要特性を関連づけるために,寄与率という概念を用いて,そのエリア全体の電力需要量に占める各構成要素の電力需要の割合を求めた.その結果を地図上に示すと,電力需要から求められた,住宅地・オフィス街・工場地帯・繁華街,またこれらの混合地域が,実際とよく一致し,電力の寄与率を用いて地域特性を評価できることが示された.
著者
村尾 修 山崎 文雄
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.65, no.527, pp.189-196, 2000-01-30 (Released:2017-02-03)
参考文献数
24
被引用文献数
37 46

This paper presents fragility curves for buildings based on damage data due to the 1995 Hyogoken-Nanbu Earthquake. The fragility curves in terms of the structural type and construction period were constructed using the building damage data of Nada Ward surveyed by Kobe City for the purpose of property tax reduction. It was also demonstrated that the number of damaged buildings in Nada Ward estimated by the fragility curves fits the actual damage by the earthquake. The fragility curves thus obtained may be useful for damage assessments of buildings in Japan.
著者
山口 直也 山崎 文雄 若松 加寿江
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
地震工学研究発表会講演論文集 (ISSN:18848435)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1237-1240, 1997 (Released:2010-06-04)
参考文献数
7
被引用文献数
8

1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震による西宮市の建物被害を, 固定資産課税データを用いて分析した. その結果, 建物被害は木造が他の構造に比べて被害程度が非常に大きく, どの構造においても建築年代が古くなるほど被害の程度が大きくなっており, 震度7の帯にあたる地域の建物の全壊率は高いことが確かめられた. また, デルタ地域では扇状地や後背湿地に比べて木造建物の被害率が低くなるなど, 建物被害には表層地盤が大きく関係していることが認められた.
著者
清水 善久 小金丸 健一 末冨 岩雄 山崎 文雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.689, pp.289-300, 2001-10-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
16

1999年9月21日に台湾中部で発生した集集地震の際に, 台北市で新SIセンサーによる高密度観測記録が得られた. 最大地点でのSI値は30cm/sに近く, 最大と最小で約3倍という観測地盤条件による違いが見られた. そのメカニズムを明らかにするために, 常時微動の単点観測およびアレー観測を実施した. そして, 地下構造と関連した地域性があり台北市は6つの地域に分類でき, 周期1秒付近での増幅が大きい地域で大きなSI値が観測されることを明らかにした. また, 地盤の卓越周期や平均S波速度とSI値増幅度の間に良い相関が見られることを示した.
著者
目黒 公郎 芳賀 保則 山崎 文雄 片山 恒雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.556, pp.197-207, 1997-01-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
21
被引用文献数
9 4

本報では, 避難行動の新しい解析手法として, バーチャルリアリティ (VR) を応用した解析システムを開発し, これを用いた避難行動解析を行った. すなわち, 同じ構造を持つ実際の迷路とVR迷路を用いた避難行動実験を行い, 両者の結果を比較・検討することにより, VRによる疑似避難体験が実際の避難行動において訓練効果として現われること, VRを用いて避難時の行動特性を再現し得ることを確認した.避難訓練のマンネリ化による参加者の減少と意識の低下, 危険性のある訓練の実施が難しいことなどを考えると, 防災教育や避難訓練等へのVRの利用価値は高い. さらに, 実際に建設する前の計画や設計段階で, 対象となる施設や構造物の安全性を評価できるなどの点で, VR避難解析システムは大きな可能性を持つ.
著者
山崎 文雄 大保 直人 黒田 修一 片山 恒雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.519, pp.211-222, 1995-07-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
25

EPSを裏込めに用いたコンクリート擁壁と近接する重力式コンクリート擁壁において, 地震観測が行われている. 本文では, この地震観測システムを紹介するとともに, 得られた記録について整理し解析を行った. 記録から, EPS部は低振動数で盛土部とほぼ同様の震動性状を示し, アンカーには張力がほとんど作用していないことが明らかになった. また, 擁壁-EPS-盛土から成る系をFEMでモデル化し, 地震応答解析を行った. これらの観測および解析結果に基づいて, EPS擁壁の滑動および転倒に対する安定性を検討した. その結果, 現行の擁壁の安定計算法をEPS擁壁に適用すると, 安全率が極端に小さくなるという矛盾が指摘された.
著者
鳥澤 一晃 松岡 昌志 堀江 啓 井ノ口 宗成 山崎 文雄
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.5_98-5_118, 2021 (Released:2021-11-30)
参考文献数
52

本研究では,2016年熊本地震の熊本県益城町および宇城市における罹災証明データを統合し,推定地震動分布と組み合わせて,構造別・建築年代別の建物被害関数を構築した.相関係数はすべての分類で0.9前後の強い正の相関を示し,広範囲の地震動で熊本地震の実被害率を説明可能である高精度な被害関数が得られた.木造建物を対象として,既往の被害関数と比較を行ない,被害関数構築に使われた被害調査データの違いや地震が発生した地域の違いなどに基づき,予測結果の傾向の違いやその要因を考察して,本研究で構築した建物被害関数の妥当性について検証した.
著者
丸山 喜久 山崎 文雄 用害 比呂之 土屋 良之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.582-594, 2006 (Released:2006-07-20)
参考文献数
20

高速道路で重大事故や大規模災害等が発生した場合,その負傷者が重傷である可能性が高く,ドクターヘリを活用することにより高い救命効果が期待できる.一方,ヘリコプターの離着陸に伴うダウンウォッシュと呼ばれる吹き下ろし風が原因となり,対向車線の走行車両が二次的な事故を起こしてしまうことが懸念されている.そこで,本研究では,建設中の第二東海自動車道(第二東名)においてドクターヘリのダウンウォッシュ風速の観測を行った.さらに,実車を用いた走行実験と数値解析により,ドクターヘリのダウンウォッシュが車両の走行安定性に与える影響について評価した.
著者
佐藤 忠信 山崎 文雄 睦好 宏史 東畑 郁生
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.507, pp.291-303, 1995

1993年8月8日にマグニチュード8.1の地震に襲われたグアム島の現地震害調査を行った. また断層の破壊過程から地盤加速度を予測した. グアム島の地盤は全般的に良好で, 液状化や崖崩れの発生は一部地域に限定され, 道路や橋梁の被害も軽微であった. しかし, 一部の鉄筋コンクリート建物や発電所が被害を受けた. このため島内の電力供給は2,3日間停止し, 上水道も揚水できなくなった. グアム島は頻繁に台風に襲われるため, 家屋の構造, ライフラインのバックアップ, 緊急対応などの面で備えがよく, 地震による影響を小さくした.
著者
横山 秀史 永田 茂 山崎 文雄 片山 恒雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.450, pp.181-187, 1992-07-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
20

緊急時の人間行動を定量化するための指標として, 動線のフラクタル次元を用いることを提案し, 迷路を用いた被験者実験の結果と, 過去の火災事例に適用して有用性を検討した. その結果, フラクタル次元が, 脱出時間, 歩行距離, 行動範囲などで評価できない人間行動の複雑さの度合を定量的に表していることがわかった.
著者
長谷川 弘忠 山崎 文雄 松岡 昌志 関本 泉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
地震工学研究発表会講演論文集
巻号頁・発行日
no.25, pp.1097-1100, 1999

兵庫県南部地震による建物の被害状況について, 地震後の空撮映像を利用した複数人による目視被害判読を行い, 判読者の違いが建物被害抽出結果に与える影響について検討を行った. 空撮映像はハイビジョンカメラにより上空から斜め下方を撮影したものを使用した. 結果の評価には, 建物1棟ごとの被災度調査データと, 被害地上写真を利用した. この結果, 被害の有無については, 個人差および判読時間の影響を受けず, 概ね同程度の抽出が可能であることが解った. ただし倒壊建物の抽出を行う場合には, 判読者の個人差の影響が顕著であり, 空撮映像上での倒壊判読基準の統一が必要であることが明らかとなった.