著者
和田 正信 三島 隆章 山田 崇史
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.229-239, 2006 (Released:2008-01-25)
参考文献数
37
被引用文献数
4 3

Repeated intense skeletal muscle contraction leads to a progressive loss of force-generating capacity. This decline in function is generally referred to as muscular fatigue. Since the work of Fletcher and Hopkins (1907), it has been known that fatigued muscles accumulate lactic acid. Intracellular acidosis due to lactic acid accumulation has been regarded as the most important cause of fatigue during intense exercise. Recent challenges to the traditional view, however, have suggested that lactic acid plays a role in muscle contraction distinct from that implied by earlier studies. This brief review presents (1) a short history of our understanding about lactic acid that explains the early acceptance of a causal relationship between lactic acid and fatigue, (2) evidence to show the temperature dependence of acidosis-induced changes and the beneficial effect of acidosis, and (3) a proposal that lactate production retards, not causes, acidosis. These findings require us to reevaluate our notions of lactic acid, acidosis and muscular fatigue.
著者
真鍋 匡利 山田 崇恭 泉井 一浩 西脇 眞二
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集A編 (ISSN:18848338)
巻号頁・発行日
vol.77, no.784, pp.2054-2066, 2011 (Released:2011-12-25)
参考文献数
35
被引用文献数
1 3

Topology optimization for structures has been applied to nonlinear structural problems, however conventional topology optimization methods for structures with geometrical nonlinearity encounter difficulties during nonlinear analysis using the FEM (Finite Element Method), due to the use of a mesh. In this study, we propose a new level set-based topology optimization method considering geometrical nonlinearity using a mesh-free/particle technique, for optimizing elastic structures that undergo large deformation. In the proposed method, the MPS (Moving Particle Semiimplicit) method, a particle method, is used for the response analysis, since it does not rely on a mesh for geometrically nonlinear analysis. In this paper, first, a topology optimization problem is formulated based on the level set method and a method for regularizing the optimization problem by the Tikhonov regularization method is explained. The reactiondiffusion equation that updates the level set function is then derived and an optimization algorithm, which uses the FEM to solve the equilibrium equations and the reaction-diffusion equation when updating the level set function, is constructed. Next, the particle interaction model and the treatment of geometrical nonlinearity in the MPS method are shown, and the implementation of combining the level set-based topology optimization and the MPS methods is explained. Finally, several numerical examples are provided to demonstrate the effectiveness of the proposed method of topology optimization for geometrically nonlinear problems.
著者
林 靖人 山田 崇 大島 正幸
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.2_20-2_28, 2020-06-30 (Released:2020-07-31)
参考文献数
17

信州大学と塩尻市は,2004年に地域ブランドに関する研究会を発足し,2005年より共同研究として地域ブランド戦略・アクションプランを構築・実践してきた.2015年からは新たに地域ブランド創造事業とコミュニティ・エンゲージド・ラーニングによる地方創生を推進している.この間,我が国は,人口増から人口減に転じ,地域・社会の様態,行政・企業・大学などの各主体を取り巻く環境・考え方も変化している.本稿では,15年以上に及ぶ取り組みを改めてふり返り,その取り組みが地域にもたらしたこと,将来の地域に向けて考えるべきことを考察する.
著者
牛根 靖裕 白須 裕之 山田 崇仁
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.9, pp.49-56, 2007-01-27
被引用文献数
5

オブジェクト指向分析/設計の成果物の一つに概念モデルがある。概念モデルは対象となる問題領域を理解するために、その問題領域に存在する主要な概念とその関係を表現する。本稿が対象とする問題領域は中国の唐代行政地理に関するものである。唐代の地理に関係する文献を理解するために、府州郡縣等の行政区及び、その設置、廃止、分割、合併、改名、所属の変更などの現象を捉えるための概念モデルを提出する。行政区の静的な情報のためにはクラス図を、行政区のライフサイクルを理解するためには状態遷移図を用いる。また、『新唐書』地理志、『元和郡縣圖志』などの文献ごとの概念モデルの違いについても議論する。Tang adminitrative geography concerns itself with the hierarchy of areas relating to the national government in the Tang dynasty. This hierarchical structure and the boundaries of the layers in them are subject to histrical records and occasional changes. The paper presents a conceptual model of its administrative geography. We use class diagrams for modeling static information of administrative areas and state machine diagrams for modeling behavioral state of their area boundaries, and also discuss difference of conceptual models in historical sources of its geography.
著者
太田 悠誠 野口 悠暉 松島 慶 山田 崇恭
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.20220014, 2022-10-19 (Released:2022-10-19)
参考文献数
18

本研究では,自立性を満たす構造設計案を創出するためのトポロジー最適化法を提案する.まず,自立性を満たさない構造を検出するために,仮想的な物理モデルを導入する.次に,レベルセット法に基づくトポロジー最適化法を導入し,自立性を実現するための制約条件を仮想的な物理場によって表現する.自立性が求められる代表例として,音響クローキング設計問題を対象に最適化問題の定式化を行う.トポロジー導関数の考え方に基づく設計感度の表式を述べ,複数の数値解析例を示すことによって提案手法の妥当性及び有用性を示す.具体的には,提案する仮想的な物理場の特徴を説明し,自立性を満たさない構造が排除された音響クローキング構造の最適設計案を示す.
著者
山田 崇史
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.19-25, 2022 (Released:2022-08-20)
参考文献数
48

多くの理学療法士が筋力低下の改善に難渋するのはなぜだろうか? それは,「強度」という有効限界を超えるための壁が存在するためである.では,高齢者や患者に,どのようにしたら少しでも高い強度の運動を負荷できるだろうか? NMESは,その補助療法として有望なツールの1つである.しかしながら,筋力増強のためのNMESの至適条件については,基盤となる科学的根拠が不足しており,効果や適応が最大化されていないと言わざるを得ない.本稿では,主に基礎研究により得られた知見をもとに,筋力増強のためのNMESのポイントについて整理する.また,NMESを処方する上で,理解しておくべき筋力低下のメカニズムについて,細胞生理学的視点から概説するとともに,筋疾患に対するNMESトレーニングの作用について紹介し,筋力低下に対する安全で効果的なNMES処方の実現に向け,その可能性と課題について考えたい.
著者
木谷 哲 吉村 真奈 新保 宗史 山田 崇裕 本田 憲業
出版者
一般社団法人 日本放射線腫瘍学会
雑誌
The Journal of JASTRO (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.155-158, 2009-12-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
6

今回われわれは,疼痛緩和目的に,塩化ストロンチウム-89(Sr-89)を投与した後に大腿骨頸部病的骨折を受傷し,投与81日後に大腿骨頭置換術を施行した乳癌多発骨転移の症例を経験したので,報告する.手術施行にあたっては,事前に放射線量を推定し,Sr-89を含む骨からの被ばくを減らすため,十分な注意を払った.術前に推定した線量ならびに,線量計を用いて計測した線量は,ともに線量限度に比べ,低値であった.今回のわれわれの報告は,今後の同様の症例に対し,参考になる報告であると考えられる.
著者
古口 睦士 矢地 謙太郎 山田 崇恭 泉井 一浩 西脇 眞二
出版者
日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.20150002-20150002, 2015-01-30 (Released:2015-01-30)
参考文献数
24

構造最適化は, 数値解析による性能評価と数学的な最適化手法により, 最大限の性能を有する構造を求める手法で, 寸法最適化, 形状最適化, トポロジー最適化に大別される. このうちトポロジー最適化は, 構造の形状だけなく形態の変更も可能な最も自由度の高い手法で, 大幅な性能向上が期待できる. 構造最適化は, 当初構造問題への適用に限られていたが, 近年では様々な物理問題に適用されてきている. 流体問題への適用は, 電磁波問題などと比較するとやや古く, ストークス流を対象に流体に作用する抗力の最小化を目的とし, その形状感度を導出することにより最適形状を得る手法や, 変動拘束された境界を含む領域において粘性流体を対象とした散逸エネルギー最小化の構造最適化の手法が提案されている. しかしながら, これらの手法は, 対象とする設計領域における物体と流体の境界を変動させることにより最適構造を得る, いわゆる形状最適化の手法であるため大幅な性能向上が期待できないうえ, 最適構造が初期構造に強く依存する欠点を持つ. これに対して, 流体問題へのトポロジー最適化の展開も報告されている. その報告の例としては, 設計領域全体を多孔質体と仮定し, 物体領域と流体領域の境界で流速が零になるように仮想的な外力を与えることで物体と流体を区別し, 散逸エネルギーを最小化する最適構造を得る手法が挙げられる. トポロジー最適化の基本的な考え方は, 固定設計領域を導入し, 物体の有無を示す特性関数により構造最適化の問題を材料分布問題に置き換えることである. このため, 構造の形状だけでなく形態の変化も可能となるが, 特性関数が設計領域内のいたるところで無限小の範囲で不連続になる可能性を持つ不適切な問題(ill-posed problem)となる. この問題を解決するためには, 大域的な意味において不連続な関数を連続な関数に置き換える設計変数の緩和を行う. この緩和方法には, 均質化法や密度法などが提案されているが, どちらの手法においても, 最適構造の境界が明確にならない, いわゆるグレースケールを許容する欠点を持つ. 他方, 新たな構造最適化の手法として, レベルセット法に基づく形状最適化が提案されている. この手法では, レベルセット関数と呼ばれるスカラー関数を用いて, 設計領域中の物体の有無をその符号で示し, 零等位面を境界として表現するため, グレースケールを含まない明瞭な境界を有した最適構造が得られる利点がある. しかしながら, この方法は基本的には形状最適化の考え方に基づいており, 新たに境界が生成されるような構造の形態の変化を許容しない. この問題を本質的に解決する手法として, レベルセット法による境界表現を行いながら, トポロジー導関数の考え方に基づき設計変数を更新することにより, 形態変更を可能とした新しいトポロジー最適化の手法が提案されている. そこで本研究ではこの形態変更を可能とした新しい最適化の手法に基づき, ナビエ・ストークス方程式を支配方程式とする内部流れにおいて, エネルギー損失の最小化を目的としたトポロジー最適化の手法を構築する. トポロジー最適化は, 状態場および感度解析のための随伴場の計算に, 何らかの数値解析法を必要とする. その代表的な数値解析法として有限体積法が挙げられる. 有限体積法は, 離散化した各要素内において保存則を満たすように定式化した数値解析手法で, 状態方程式に存在する対流項や拡散項をガウスの積分定理により領域積分から境界積分に変換でき, 数値積分においても中点公式を用いる. また, 非構造格子を扱える汎用性の高さという利点もあり, 流れ場の数値解析法として広く利用されている. そこで本研究では, 状態場と感度解析には有限体積法を用いた新しい方法を開発することにより, 明確な形状表現を可能にしながら大規模問題への展開可能な方法論を構築する. 随伴方程式は連続系に基づき導出し, 有限体積法により離散化して数値安定性に優れている半陰解法のSIMPLE法(Semi-Implicit Method for Pressure Linked Equation) を用いて解析している. また, 最適化の過程におけるレベルセット関数を更新には, 時間発展方程式の数値解析法として有限体積法を適用した方法を構築する. これにより, 時間発展方程式の離散化の過程で弱形式による複雑な展開は必要としないうえ, 時間項については数値安定性のよいオイラー陰解法を適用することにより, 時間発展方程式の計算効率は状態場および随伴場と同様に向上させることができる.
著者
大髙 理生 中島 健 吉田 晶子 鳥嶋 雅子 川崎 秀徳 山田 崇弘 和田 敬仁 小杉 眞司
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.84-93, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
22

遺伝性腫瘍診療では,診断後発端者に血縁者への情報共有を推奨するが,困難な場合がある.欧米では受診勧奨の研究があるが,本邦の実態は不明である.2020年より遺伝性乳癌卵巣癌(hereditary breast and ovarian cancer;HBOC)は遺伝学的検査が保険収載され,血縁者への対応も求められる.本研究はHBOC患者血縁者への情報共有と受診勧奨の施設での課題抽出を目的とし,乳房悪性腫瘍の治療実績国内上位100施設を対象に質問紙調査を行った.初回調査で回答を得た44施設(44%)のうち5例以上のHBOC診断数の31施設を対象とし29施設(94%)から二次調査回答を得た.26施設(90%)で血縁者のリスク説明は実施だが,発端者家系に特化した資料配布は17施設(59%)で未実施であった.課題は,「未発症血縁者のサーベイランスが保険適用外」「血縁者と疎遠な関係性」であった.受診勧奨支援は施設間差を認め,その解決には多角的な検討が必要と考えられた.
著者
小夜 結利花 山田 崇恭
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
pp.23-00082, (Released:2023-10-23)
参考文献数
21

This paper presents a conceptual design approach for planar link mechanisms by utilizing continuum topology optimization based on micropolar continuum theory. To effectively simulate the behavior of link mechanisms as continuum elasticity, we introduce a mathematical model utilizing micropolar elasticity. Although topology optimization is commonly used for single mechanical components, extending it to mechanisms with multiple interconnected parts presents inherent challenges. To address these challenges, we model the link mechanism using micropolar elasticity, leveraging its bendiness-related material property, which can apply to topology optimization. Subsequently, we formulate a topology optimization problem to generate link mechanisms using our proposed model. The optimized structure achieves the desired motion and deformation characteristics like traditional linkages with proper degrees of freedom while minimizing the objective function that considers both output motion error and link compliance. The design variables of the topology optimization problem are defined using the Solid Isotropic Material with Penalization (SIMP) method, which is further updated using a gradient-based optimizer. The governing equations of linear micropolar elasticity are solved using the Finite Element Method (FEM). The effectiveness and validity of our proposed method are evaluated through numerical examples, which conclusively demonstrate its ability to synthesize the number, dimensions, and structure of link mechanisms.
著者
山田 崇史
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.136-140, 2020-06-01 (Released:2020-06-01)
参考文献数
27

医療技術の進歩による救命救急率の増大に伴い, 近年, 集中治療室 (ICU) に入室する患者数は増加の一途を辿っている。一方, ICU関連筋力低下 (ICUAW) と呼ばれる全身性の急激な筋力低下を呈するICU入室患者の数が増加し, 深刻な問題となっている。ICUAWは, 重症疾患ミオパチー (CIM) とポリニューロパチーに大別され, 敗血症, 人工呼吸管理の長期化, 不活動, ステロイド投与など, 様々な要因が関与する複雑な病態を有している。これまで, CIM患者では, 筋量の減少に加え, 単位断面積当たりの張力 (固有張力) の著しい低下が生じ, そのメカニズムには, 1) 細胞膜の興奮性低下とそれに伴う筋小胞体からのCa2+放出量低下, 2) クロスブリッジの張力産生能力の低下が関与すること, また, それらの要因として, 炎症性因子や不活動性因子により誘引される酸化ストレスが重要な役割を果たすことが示されている。
著者
舘林 大介 檜森 弘一 芦田 雪 山田 崇史
出版者
日本基礎理学療法学会
雑誌
日本基礎理学療法学雑誌 (ISSN:21860742)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.39-47, 2019-12-10 (Released:2019-12-14)

The depressed protein synthetic response, a phenomenon termed as anabolic resistance, has been shown to be involved in muscle wasting induced by cancer cachexia. Moreover, a positive relationship between protein synthetic rate and intracellular glutamine (GLN) concentration has been found in skeletal muscles. We here investigated the effects of neuromuscular electrical stimulation (ES) and GLN administration on muscle wasting and GLN metabolism in colon 26 (C-26) tumor bearing mice. CD2F1 mice were divided into 8 groups; control (CNT), CNT+ES, CNT+GLN, CNT+ES+GLN, C-26, C-26+ES, C-26+GLN, C-26+ES+GLN. Cancer cachexia was induced by a subcutaneous injection of C-26 cells and was developed for four weeks. ES was performed to the left plantar flexor muscles every other day and GLN (1 g/kg) was daily intraperitoneally administered starting one day following C-26 injection. Tumor-free body mass and fast-twitch gastrocnemius (Gas) muscle weight were lower in the C-26 group than in the CNT group (-19% and -17%, respectively). Niether ES training nor GLN administration, alone or in combination, ameliorated the loss of Gas muscle weight in the C-26 mice. ES training in combination with GLN administration inhibited the increased GLN synthetase (GS) expression in the C-26 muscles. Thus, it is unlikely that GLN plays a critical role in muscle protein metabolism and thereby can be targeted as a tentative treatment of cancer cachexia.
著者
芦田 雪 檜森 弘一 舘林 大介 山田 遼太郎 小笠原 理紀 山田 崇史
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.I-95_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】伸張性収縮(Ecc)は他の収縮様式に比べ,効果的に筋肥大を誘引すると考えられている.ただし,その根拠となる報告の多くは,ヒトの随意運動を対象としており,収縮様式の違いによる運動単位の動員パターンの差異が,筋肥大効果に影響を及ぼす可能性を否定できない.一方,実験動物の骨格筋では,最大上刺激の神経-筋電気刺激(ES)を負荷することで,すべての筋線維が動員される.さらにESでは,刺激頻度により負荷量を調節することが可能である.そこで本研究では,刺激頻度の異なるESを用いて,収縮様式の違いが筋肥大効果に及ぼす影響を詳細に検討することを目的とした.【方法】Wistar系雄性ラットを等尺性収縮(Iso)群とEcc群に分け,さらにそれらを刺激頻度10 Hz(Iso-10,Ecc-10),30 Hz(Iso-30,Ecc-30),100 Hz(Iso-100,Ecc-100)の計6群に分けた.実験1では,ESトレーニングが筋量に及ぼす影響を検討するために,各群(n=5)のラット左後肢の下腿三頭筋に表面電極を貼付し,ES(2 s on/4 s off,5回×4セット)を2日に1回,3週間負荷した.なお,Iso群は足関節底背屈0°で,Ecc群は足関節を20°/sで背屈させながらESを負荷した.右後肢は,非ES側とした.実験2では,単回のESが筋タンパク質合成経路である mTORC1系に及ぼす影響を検討するために,各群(n=6)に実験1と同じ刺激条件のESを1回のみ負荷した.その6時間後に腓腹筋を採取し,mTORC1系の構成体であるp70S6KおよびrpS6のリン酸化レベルを測定した.【結果】すべての刺激頻度において,ESによる発揮トルク及び力積はIso群に比べEcc群で高値を示した.体重で補正した腓腹筋の筋重量(MW/BW)は,Ecc-30,Iso-100,Ecc-100群において,非ES側と比較しES側で増大するとともに,Ecc-30およびIso-100群に比べEcc-100群で高値を示した.p70S6Kのリン酸化レベルは,30 Hzおよび100 Hzの刺激頻度において,Iso群と比較しEcc群で高値を示した.また,全ての個体における発揮トルク及び力積と,MW/BWの変化率,p70S6KおよびrpS6のリン酸化レベルとの間には高い相関関係が認められた.【考察】本研究の結果,EccはIsoに比べ,筋に対して強い物理的ストレスが負荷されるため,タンパク合成経路であるmTORC1系がより活性化し,高い筋肥大効果が得られることが示された.また,この考えは,刺激頻度を変化させ,負荷強度の異なる群を複数設けたことにより,より明白に示された.【結論】筋肥大効果は,収縮様式の違いではなく,筋への物理的な負荷強度および負荷量により規定される.【倫理的配慮,説明と同意】本研究におけるすべての実験は,札幌医科大学動物実験委員会の承認を受け(承認番号:15-083)施設が定める規則に則り遂行した.