著者
パーヴェル イリーイン 山田 晴通
出版者
日本地図学会
雑誌
地図 (ISSN:00094897)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.13-41, 1995-06-30 (Released:2011-07-19)

ボリシェヴィキ革命から1991年12月の消滅に至る旧ソ連について, 人名が付けられた都市地名の改称の流れを, 長老都市地理学者が検討する. 特に注目される改称の波には,(a)政治的・軍事的指導者を讃えた1920年代・1930年代,(b)スターリン色を払拭し, 自国の作家・作曲家・詩人を讃え, 社会主義圏諸国との友好関係を持ち上げた1950年代,(c)共産主義時代の好ましくない痕跡を消し去ろうとする1980年代後半から現在に至る時期のものがある.
著者
山田 晴通
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.67-84, 1986-02-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
136
被引用文献数
5 3

It is often argued how important and crucial roles communication media play in the social phenomena of the modern world. Nowadays, communication media seem to have become one of the most attractive research topics for researchers of any social science. However, it is not the case with human or social geographers. Quite a few geographers refer to keywords like communication, information flow, and télématique, but only few are positively trying to build up “Geography of Information.” “Geography of Information” is yet to come. In the present stage, no standard method nor common direction is established for it. One of the factors which prevent the development of “Geography of Information” is lack of sufficient amount communication media studies in geography, which would provide fundamental knowledge upon the spatial distribution of information. Up to now, geographers have produced not a few research papers upon communication media, but these works arescattered over varied sub-fields of geography. They have been done under different research interests, and have only limited relations with each other. This review article describes the present stage of communication media studies in geography, and tries to search a way to establish common property and common direction for them. In this review, some foci are set upon such subjects as nodal or functional region studies using telecommunication flow data, diffusion studies of broadcasting stations as innovations, and several approaches to newspaper industry. Almost 30 research papers are referred, and more than 50 of them are in English or French.
著者
スクワイア シーラ・J 山田 晴
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.269-275, 1993 (Released:2017-04-27)
参考文献数
31

本稿は,湖水地方(Lake District)におけるビアトリクス・ポターゆかりの観光旅行について考察する。主として定性的な調査の結果に依拠しながら,田舎や,イングランドの農村生活についての諸価値が広まる過程で,ポターがどのように利用されるのかを論じる。こうした諸価値は,イングランドらしさをめぐる諸概念や,田舎と都会の対立関係と結びついている。ビアトリクス・ポター(1866〜1943)は,最大級の評価を受けているイングランドの児童文学作家である。国際的にも成功した彼女の絶大な人気は,今日では彼女の著書(その大半が今日も版を重ねている)の売り上げだけでなく,様々な商品や観光旅行,宣伝活動などにも反映されている。こうしたビアトリクス・ポター関連産業の存在は,彼女の作品が評価され続ける理由をめぐって,いろいろと問題を提起する。ヴィクトリア朝末期の人であったポターは,ピーターラビット(1902),ティギーおばさん(1905),あひるのジマイマ(1908),といったキャラクターを生み出し,第一次世界大戦以前に名声を確立した。しかし,今日,彼女の作品は,それが生み出された文脈とは異なる多様な文脈で読まれている。そのため,作品は異なった意味をもつようになっている。文化研究(Cultural studies)の業績は,テキストと読者,生産者と消費者の関係を論じてきた(Jackson, 1989; Gregory and Walford, 1989; Burgess, 1990)。とりわけバージェス(Burgess, 1990)は,ジョンソン(Johnson, 1986)に依拠しながら,意味の変成に焦点を当て,メディアのテキストは多様な読み方が可能な象徴体系の一部であると論じている。同様の議論は,地理学者がこれまでほとんど無視してきた児童文学の解釈や,観光旅行の解釈についても展開できる。本稿は,観光客となった読者が,ビアトリクス・ポターのテキストや彼女にインスピレーションを与えた湖水地方の舞台だてから,どんな意味を汲み上げているのかを論じる。文学観光旅行,つまり著作や作家との関連で有名な場所への旅は,様々な文脈から注目されてきた(Lowenthal and Prince, 1965; Newby, 1981; Butler, 1985, 1986; Curtis, 1985; Pocock, 1982, 1987; Squire 1988, 1990; Ousby, 1990)。しかし,アーリ(Urry, 1990)やヒューズ(Hughes, 1991)が指摘するように,観光旅行については解釈論的分析がほとんど無視されていることもあって,文学観光旅行の研究はまだまだ遅れている。観光旅行の展開とともに,経済的な利益を求めて,風景は新たに意味づけられる。こうした意味を,訪問する観光客がどう解釈するかについて,定性的な研究はほとんどない。湖水地方におけるビアトリクス・ポターゆかりの観光旅行は,こうした観光的意味の生産と消費の研究に,格好の舞台を提供してくれるのである。
著者
テイラー ピーター・J 山田 晴通
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.197-220, 1992-10-28 (Released:2017-04-27)
参考文献数
49
被引用文献数
1

The Scottish Geographical Magazine is an internationally circulating journal published three tirnes a year. The annual subscription is £27.00 and those intending to submit items for publication in English should send these to the Editor, Dr A S Mather, Department of Geography, University of Aberdeen, St Mary's, Old Aberdeen AB9 2UF, Scotland U. K.
著者
栗田 健 若林 雄介 山田 晴夫 堀内 雅彦
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
環境工学総合シンポジウム講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2007, no.17, pp.54-57, 2007-07-18
被引用文献数
1

It becomes more important to reduce the noise generated from Shinkansen train for further speed-up of Shinkansen. We developed the high-speed test train "FASTECH360" that has new equipment such as low-noise pantographs, "multi-segment slider", pantograph noise insulation plates and sound-absorbing panels for the noise from the lower area of car bodies. We investigated the noise distribution of "FASTECH360" by using a spiral microphone array, and we have taken countermeasures for the noise sources of "FASTECH360" based on the primary results of high-speed tests. Currently, the results show that the noise level of "FASTECH360" at the speed of 330km/h is approximately equal to that of the present commercial train at the speed of 275km/h (at a distance of 25m from the track).
著者
山田 晴通
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.9, pp.545-559, 2005-08-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
10

コミュニティ放送は,既存放送制度に対抗する,「コミュニティ」のための放送として,各国で制度化されてきた.コミュニティ放送局が対象とする「コミュニティ」概念の実態的な有効性を,オーストラリアの地方都市アーミデールの事例で検討した.アーミデールでは,大学に基盤を持つ「ラジオ」局としてRUNEが1970年から存在し,その後の制度変更によってHPON(大出力ナローキャスティング)のTUNE! FMとなり,現在に至っている.1970年代半ばに「公共放送」(コミュニティ放送の前身)が注目されると, RUNEを母体に,新たに2ARMが組織され,放送が始まった.やがて, RUNEから独立した2ARMは,安定的に運営された時期を経て,近年では補助金の削減などから経営困難に直面している. 2ARMは,本来,地域社会と同義の「地理的コミュニティ」に根ざすラジオ局として想定されながら, RUNE~TUNE! FMとの競合関係の中で,十分な地域的存立基盤を確保できなかった.一方, RUNE~TUNE! FMは,通常は商業的に利用されるHPONを,非営利目的に活用している.アーミデールの小規模ラジオ局は,地域事情を反映し,役割の棲み分けを行っており,その実態は,「コミュニティ」をめぐるオーストラリアの放送制度の想定に忠実に沿ったかたちとはなっていない.
著者
松村 美代 戸部 隆雄 山田 晴彦 松村 美代
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

高濃度酸素負荷によりマウス網膜の視細胞が脱落し、網膜の菲薄化がみられる事がこれまでの実験により分かった。そこで我々はこの網膜視細胞の脱落がアポトーシスによるものである事を証明し、そしてどういう経路によりアポトーシスが引き起こされているのかを研究している。マウスを酸素濃度75%に調節したBOXにいれ、高濃度酸素に1週間から3週間暴露した。各時点において眼球を摘出し網膜のみを単離した。また眼球の凍結薄切切片を作成した。単離した網膜からDNAを抽出し免疫電気泳動を行うとDNAの断片化が明かとなった。また凍結薄切切片を用いてTUNEL染色を行うと高濃度酸素負荷により網膜外層にTUNEL陽性細胞が著明に増加しているのがみられた。これらのことから網膜視細胞が高濃度酸素によりアポトーシスに陥っている事が分かった。また種々のアポトーシス関連蛋白の発現をm-RNAを抽出してRT-PCRを施行し検討してみた。Caspase3のm-RNAは高濃度酸素負荷により増加し、Baxも増加を認めた。一方Bcl-2は高濃度酸素負荷1週で増加するが、2週で減少した。これら2つは拮抗する蛋白であるのでこれらが網膜視細胞のアポトーシスの制御に関わっていると考えられる。アポトーシス関連酵素のノックアウトマウスであるFas, FasLノックアウトマウスを用いて同様に高濃度酸素暴露し同様にTUNEL染色を施行した。Fas, Fas-Lのいずれのノックアウトマウスも暴露前はコントロールと同様でアポトーシスは抑制されなかったのでFas, Fas-Lはこのアポトーシスに直接関与していないことが考えられた。これらのことから視細胞のアポトーシスはcaspase dependentでBax, Bcl-2の経路が関与している事が考えられた。
著者
山田 晴通
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100196, 2012 (Released:2013-03-08)

今日の大学教育の現場において、何らかの自習課題、宿題等を与えた場合に、学生がまずインターネット上の検索サイトを利用して情報を求めようとするのは、既にいわば常道となっている。また、Yahoo!知恵袋に課題をそのまま質問として投じるようなことさえ起こっている。そして、そうした検索の結果としてヒットする可能性が高く、レポートの作成に参考される事の多いサイトのひとつがウィキペディア、特にその日本語版である。<BR> そもそもウィキペディアは、ネットにアクセスできる者であれば、誰もが加筆編集に参加できることが最大の特徴であり、一定の権威のある専門家が項目を執筆するような在来型の百科事典とは性格が大きく異なっている。このため、ウィキペディアの個別の記事の内容について、その正確さや、イデオロギー的中立性などが厳しく批判されることも、しばしば生じている。<BR>  こうした状況は、より多くの学術研究者、専門性を持ったアカデミシャンがウィキペディアに参加していくことで、改善されていく事が期待できるが、現実には、アカデミズムに身を置く研究者にとって積極的にウィキペディアに関わるメリットはほぼ皆無の状況にあり、ウィキペディアに参加する研究者を増やしていくことは容易ではない。土木学会(2010)の例のように、学会の活動の一環として、一定の品質管理がなされた記事の作成・編集を行なう取り組みが仕掛けられなければ、ある学問分野に関係するウィキペディアの記事が数多くの専門家の手で量産されるといった状況は成立し得ない。<BR> 例えば、大学レベルの地理教育において学生が学ぶべき内容が、関連するウィキペディアの記事に反映されていれば、学生の自習用の教材としてそれを用いる事が可能になり、より効率的に学生の自修を促せるようになるものと期待できる。そのためには、定評ある教科書等からキーワードを拾ったり、実際に地理学教育に携わっている大学教員からシラバスで重視している概念を集め、その記事を新たに作成したり、既存に記事に加筆して強化したりする取り組みを、学会が関わる形で展開する必要がある。また実際に、少しでも多くの大学における地理学関係の授業において、ウィキペディアの記事を教材として実際に使用し、その経験がフィードバックされるようにしていくことも重要である。
著者
山田 晴通
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100039, 2015 (Released:2015-10-05)

水岡不二雄一橋大学名誉教授は、一橋大学教授であった2011年夏に、Third Global Conference on Economic Geography 2011(韓国ソウル)において「The resignation obliterated: The Japan Association of Economic Geographers and Toshio Nohara, a prominent critical economic geographer」 と題した報告をされた。発表者=山田はこの集会に参加しておらず、この発表があったという事実も2015年春に初めて知った。この報告は、要旨がインターネット上で公開されている(Mizuoka, 2011)。 しかし、少なくともこの要旨を見る限りでは、水岡報告は、Wikipediaにおけるルールなど、事実関係についての誤解に基づいた、不適切な憶測を含むものであり、読み手に、山田個人についての社会的評価を含め、諸々の誤解を生じさせる虞れが大きいものである。 また、英文で綴られたこの要旨の内容は、Wikipedia日本語版において、2010年にごく短期間だけ編集を行なった「経済地狸学会」(強調は引用者)という利用者が、日本語で書き込んだ内容と酷似した箇所を含んでいる。この利用者は、当時、記事「経済地理学」のノートページに山田の編集を批判する、やはり誤った認識に基づくコメントを書き込んだ後、それに応答して問題点を指摘した山田の、問いかけを含むコメントには答えないまま、その後はいっさい活動していない。(2015年7月13日現在) もし、水岡教授が「経済地狸学会」を名乗った利用者と同一人物であるなら、なぜ、Wikipediaの中で起こった問題について、Wikipedia内での対話を拒み、適切なコミュニケーションを通した解決を図らず、山田からの指摘に応答もしないまま、Wikipedia外の、また、山田が参加するはずがない海外の集会において、山田が既にWikipediaにおいて指摘した問題点について何らの自己批判も反省もないまま、英語で発表をされたのか、真意をご説明いただきたい。このような発表の仕方は、山田との建設的な議論を求める真摯な姿勢を示すものではないように思われる。 逆に、もし、水岡教授が「経済地狸学会」を名乗った利用者と同一人物ではないのなら、水岡教授は、2011年のご自身の報告と、2010年時点の「経済地狸学会」の書き込みの類似性について、具体的な説明、あるいは、釈明をすべきである。著作権者である「経済地狸学会」が水岡教授を著作権侵害で訴える可能性が限りなくゼロに近いとしても、ネット上で別人の名義で公開されている記述と酷似した内容のコメントを、自らの名義で発表したことは、研究者としての倫理性に疑念を生じさせる遺憾な事態である。   山田が、日本地理学会の場において公開状という形で水岡教授への質問を公にするのは、本学会が水岡教授と山田が共に所属する数少ない学会のひとつだからである。水岡教授は、従来から論争においては正々堂々と、婉曲な表現などは用いず、論難すべき対象に対しては厳しい直接的な言葉を用いられてきた方である。この公開状にも、真摯に対応され、建設的な議論が展開することを期待する。
著者
山田 晴通
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

水岡不二雄一橋大学名誉教授は、一橋大学教授であった2011年夏に、Third Global Conference on Economic Geography 2011(韓国ソウル)において「The resignation obliterated: The Japan Association of Economic Geographers and Toshio Nohara, a prominent critical economic geographer」 と題した報告をされた。発表者=山田はこの集会に参加しておらず、この発表があったという事実も2015年春に初めて知った。この報告は、要旨がインターネット上で公開されている(Mizuoka, 2011)。 しかし、少なくともこの要旨を見る限りでは、水岡報告は、Wikipediaにおけるルールなど、事実関係についての誤解に基づいた、不適切な憶測を含むものであり、読み手に、山田個人についての社会的評価を含め、諸々の誤解を生じさせる虞れが大きいものである。 また、英文で綴られたこの要旨の内容は、Wikipedia日本語版において、2010年にごく短期間だけ編集を行なった「経済地<b>狸</b>学会」(強調は引用者)という利用者が、日本語で書き込んだ内容と酷似した箇所を含んでいる。この利用者は、当時、記事「経済地理学」のノートページに山田の編集を批判する、やはり誤った認識に基づくコメントを書き込んだ後、それに応答して問題点を指摘した山田の、問いかけを含むコメントには答えないまま、その後はいっさい活動していない。(2015年7月13日現在) もし、水岡教授が「経済地<b>狸</b>学会」を名乗った利用者と同一人物であるなら、なぜ、Wikipediaの中で起こった問題について、Wikipedia内での対話を拒み、適切なコミュニケーションを通した解決を図らず、山田からの指摘に応答もしないまま、Wikipedia外の、また、山田が参加するはずがない海外の集会において、山田が既にWikipediaにおいて指摘した問題点について何らの自己批判も反省もないまま、英語で発表をされたのか、真意をご説明いただきたい。このような発表の仕方は、山田との建設的な議論を求める真摯な姿勢を示すものではないように思われる。 逆に、もし、水岡教授が「経済地<b>狸</b>学会」を名乗った利用者と同一人物ではないのなら、水岡教授は、2011年のご自身の報告と、2010年時点の「経済地<b>狸</b>学会」の書き込みの類似性について、具体的な説明、あるいは、釈明をすべきである。著作権者である「経済地<b>狸</b>学会」が水岡教授を著作権侵害で訴える可能性が限りなくゼロに近いとしても、ネット上で別人の名義で公開されている記述と酷似した内容のコメントを、自らの名義で発表したことは、研究者としての倫理性に疑念を生じさせる遺憾な事態である。 &nbsp; 山田が、日本地理学会の場において公開状という形で水岡教授への質問を公にするのは、本学会が水岡教授と山田が共に所属する数少ない学会のひとつだからである。水岡教授は、従来から論争においては正々堂々と、婉曲な表現などは用いず、論難すべき対象に対しては厳しい直接的な言葉を用いられてきた方である。この公開状にも、真摯に対応され、建設的な議論が展開することを期待する。 <br>
著者
山田 晴美 久住 眞理 吉田 浩子 大東 俊一 青木 清
出版者
The Japan Society of Health Sciences of Mind and Body
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.26-36, 2013

【目的】東日本大震災の災害支援活動を行った保健師の心身の状態について,心身健康科学の視点から解析し,派遣時のサポートについて考察することを目的とした.<br>【方法】X県から被災地に派遣された保健師32人を対象に,心身の健康状況,派遣中及び派遣後の職業性ストレス,メンタルへルス対策の状況について調査を行った.<br>【結果】質問紙回答者 (n= 26) の約6割が派遣中に睡眠の問題や緊張感を,約7割が派遣終了後に心身の不調を感じたと回答した.派遣された保健師にとって,ストレスの要因は「被災の話を聴く」「被災者のストレスを受け止める」ことであった.派遣時期や労働環境もストレス反応に影響を及ぼしていた.<br>【結論】支援者である保健師は,災害支援活動中の二次受傷が自らの健康に影響を及ぼす可能性があることを自覚し,セルフケアを行うことが大切であった.通常業務時以上に,仲間・上司等との語りやサポート体制が必要とされることがわかった.