著者
栗田 健一
出版者
九州大学大学院経済学会
雑誌
経済論究 (ISSN:04516230)
巻号頁・発行日
no.158, pp.1-6, 2017-07

生活保護のような公的扶助の受給者は,あたかも他の社会構成員から負の烙印を押されているかのように精神的負担を負う。このようなある個人や集団に対して形成される負の烙印のことをスティグマと呼ぶ。生活保護の文脈では,受給を申請するインセンティブを抑制する要因の一つとして広く考えられている。スティグマには不正受給を抑制する正の効果と正規の受給者にも心理的負担を強いるという負の効果がある。特に,近年では低補足率に関する研究も次第に増えており,それらの多くがスティグマの重要性を示唆している。本稿では,生活保護のスティグマの理論分析を行った代表的文献を紹介しつつ,スティグマに関する理論研究の現状と課題,そして今後の可能性を示す。The individuals which take-up welfare benefit have mental burden as if to be marked negatively by others. It is called "social stigma"that a mark or image of disgrace associated with a specific character, type and quality regarding to some individuals or groups. In the context of welfare, stigma is one of the most important factor,which limits the incentive of take-up welfare benefit. From the social view, welfare stigma has both positive and negative effects, the former is the effect of limiting welfare fraud and the latter is the effect of damaging even the needy mentally. Recently, studies about low take-up rate focusing stigma have gained lots of attention. In this paper, we review previous studies related public policy and stigma focusing on theoretical research.
著者
西部 忠 橋本 敬 小林 重人 栗田 健一 宮﨑 義久 廣田 裕之
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
Discussion Paper, Series B
巻号頁・発行日
vol.104, pp.1-79, 2012-05

私たちは2011年2月21日より25日まで,ブラジル・セアラ州フォルタレザ郊外パルメイラ地区にあるパルマス銀行を訪問して,その設立者,従業員,近隣小売業者などの関係者にインタビューを行い,同銀行の沿革や特徴,および,その近隣の経済社会への影響を調査した。本調査報告書の目的は,このインタビューの内容を参照可能な一次資料として記録し,公刊することにある。
著者
栗田 健 若林 雄介 山田 晴夫 堀内 雅彦
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
環境工学総合シンポジウム講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2007, no.17, pp.54-57, 2007-07-18
被引用文献数
1

It becomes more important to reduce the noise generated from Shinkansen train for further speed-up of Shinkansen. We developed the high-speed test train "FASTECH360" that has new equipment such as low-noise pantographs, "multi-segment slider", pantograph noise insulation plates and sound-absorbing panels for the noise from the lower area of car bodies. We investigated the noise distribution of "FASTECH360" by using a spiral microphone array, and we have taken countermeasures for the noise sources of "FASTECH360" based on the primary results of high-speed tests. Currently, the results show that the noise level of "FASTECH360" at the speed of 330km/h is approximately equal to that of the present commercial train at the speed of 275km/h (at a distance of 25m from the track).
著者
西部 忠 橋本 敬 小林 重人 栗田 健一 宮﨑 義久 廣田 裕之
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
Discussion Paper, Series B
巻号頁・発行日
vol.104, pp.1-79, 2012-05

私たちは2011年2月21日より25日まで,ブラジル・セアラ州フォルタレザ郊外パルメイラ地区にあるパルマス銀行を訪問して,その設立者,従業員,近隣小売業者などの関係者にインタビューを行い,同銀行の沿革や特徴,および,その近隣の経済社会への影響を調査した。本調査報告書の目的は,このインタビューの内容を参照可能な一次資料として記録し,公刊することにある。
著者
栗田 健一
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.115-128, 2006-06-08

本論文では,ギルド社会主義思想を別の形で摂取し,独自の経済観を構想したC.Hダグラスの研究をおこなった。ダグラスは,市場と国家とは違う領域に経済の調整を任せるという発想を持っていた。この研究では,中央政府と分権的生産者銀行が協調しながら,市場経済がもたらす不安定性を除去するという視点をダグラスが持っているということが明らかにされた。特に,彼の重要な概念である「有形信用」と「金融信用」に着目した。「有形信用」とは潜在的な生産力概念を示すものである。例えば,石炭の生産でまだ150トン生産できる可能性があれば,「有形信用」は,その余剰生産力を意味している。そして「金融信用」とはその余剰生産力を顕在化させるための貨幣であり,通常は銀行から供給される。だが,ダグラスはこの「金融信用」の供給を市場で活動する銀行や国家に任せるのではなく,労働者達のアソシエーションである分権的生産者銀行に任せるという発想を持っていた。この発想に彼のオリジナリティーがあり,市場や国家とは違う領域の重要性を持っていた点に,彼の思想の意義があるという主張をおこなった。
著者
村田 香 栗田 健
出版者
The Institutew of Noise Control Engineering of Japan
雑誌
騒音制御 (ISSN:03868761)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.337-342, 2003-10-01 (Released:2009-10-06)
参考文献数
5
被引用文献数
3
著者
栗田 健 若林 雄介 山田 晴夫 堀内 雅彦
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
環境工学総合シンポジウム講演論文集 2007.17 (ISSN:24242969)
巻号頁・発行日
pp.54-57, 2007-07-18 (Released:2017-06-19)

It becomes more important to reduce the noise generated from Shinkansen train for further speed-up of Shinkansen. We developed the high-speed test train "FASTECH360" that has new equipment such as low-noise pantographs, "multi-segment slider", pantograph noise insulation plates and sound-absorbing panels for the noise from the lower area of car bodies. We investigated the noise distribution of "FASTECH360" by using a spiral microphone array, and we have taken countermeasures for the noise sources of "FASTECH360" based on the primary results of high-speed tests. Currently, the results show that the noise level of "FASTECH360" at the speed of 330km/h is approximately equal to that of the present commercial train at the speed of 275km/h (at a distance of 25m from the track).
著者
宮本 直美 北川 知佳 栗田 健介 岩永 桃子 力富 直人 神津 玲 千住 秀明
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.D0483, 2006 (Released:2006-04-29)

【目的】2005年日本呼吸器学会で発表された「特発性間質性肺炎の診断・治療ガイドライン」では、呼吸リハビリテーション(以下、呼吸リハ)は運動耐容能や呼吸困難感の改善などが期待されると示されている。また、間質性肺炎は進行性で予後不良であるため、臨床上呼吸リハが遂行困難な症例も多い。今回、間質性肺炎に対する呼吸リハの効果について検討することを目的に、当院において呼吸リハを施行した間質性肺炎患者について調査検討したので報告する。【方法】平成9年8月から平成17年7月までに、当院に入院し呼吸リハを施行した間質性肺炎患者37例、65エピソード(平均年齢68±10.8歳、男性25例、女性12例)を対象とした。呼吸リハプログラムの内容は、運動療法を中心に動作コントロール指導を併せて実施した。呼吸リハ前後での呼吸困難感(MRCスケール)、身体組成、肺機能、運動耐容能(6分間歩行テスト、シャトルウォーキングテスト)、下肢筋力、ADL(千住らのスコア)を評価し、呼吸リハ実施期間、完遂状況、ステロイド投与量を調査した。【結果】呼吸リハ完遂可能であった患者(完遂群)は34エピソード(52%)、呼吸リハが遂行困難であった患者(非完遂群)は31エピソード(48%)で基礎疾患の増悪が主な理由であった。呼吸リハの実施期間は中央値で53.5日であった。完遂群では、呼吸リハ前後での呼吸困難感、肺機能(VC、MVV)、下肢筋力(n=12)で有意な改善を認めたが、身体組成に変化はなかった。また6分間歩行距離で有意な改善を認めたが、シャトルウォーキングテスト(n=10)の歩行距離に有意差はなかった。ADLでは有意な改善を認めた。ステロイド治療は10エピソードで実施されており、実施期間中の増量はなかった。【考察】今回、呼吸リハが遂行困難であった患者は全体の48%であった。これは間質性肺炎が進行性で、病状のコントロールが困難であるという本疾患群の病態の特徴を反映した結果であると思われた。しかし、完遂群における呼吸リハ前後の比較では、呼吸困難感、6分間歩行テスト(歩行距離)、下肢筋力、ADLで改善を認めており、症状安定期にある間質性肺炎患者では、薬物療法(ステロイド治療)とともに呼吸リハが有効である可能性が示唆された。
著者
栗田 健 若林 雄介 水島 文夫 山崎 展博 山田 晴夫 原 正明
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
年次大会講演論文集 : JSME annual meeting
巻号頁・発行日
vol.2009, no.2, pp.253-254, 2009-09-12

To increase the speed of Shinkansen trains, it becomes more important to reduce the noise generated from Shinkansen cars. We developed the high-speed test trains "FASTECH360" that have new equipment such as low-noise pantographs, pantograph noise insulation plates and sound-absorbing panels for the noise from the lower area of car bodies. We conducted running tests using "FASTECH360" from June of 2005 to June of 2009. As a result, the noise level of "FASTECH360S"(runs only on Shinkansen line) at the speed of 360km/h is reduced by more than 4 dB compared to that of series E2-1000, present commercial trains, at the speed of 360 km/h (at a distance of 25 m from the track). We also performed the noise analysis of "FASTECH360S" at 360 km/h. Consequently, we estimated that pantograph noise contribution to the overall noise level was reduced by about 7dB compared to that of E2-1000 at 360 km/h and contribution of noise from the lower part of cars to the overall noise level was reduced by about 1dB as well.
著者
栗田 健 市薗 真理子 山崎 哲也 明田 真樹 石井 慎一郎 木元 貴之 小野 元揮 日野原 晃 岩本 仁 松野 映梨子 久保 多喜子 田仲 紗樹 吉岡 毅
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CbPI2254, 2011

【目的】<BR> 投球障害肘・肩の原因は投球フォームの不正や体幹・下肢の機能不全によるといった報告は多く、臨床上これらの問題を有する症例を多く経験する。しかしこれらは、肘・肩双方に関与している要素であり、両関節への病態プロセスは不明な点が多い。過去に手指、手部、前腕部の機能不全と投球障害肘や肩との関連が報告されており、また一般的に投球障害肘のおける手内筋機能の重要性が指摘されている。そこで今回、肘・肩関節より遠位部である手内筋の虫様筋および母指・小指対立筋の機能と投球障害肘および肩との関連を調査したので報告する。<BR>【方法】<BR> 対象は、投球障害肘もしくは肩の診断により当院リハビリテーション科に処方があった24症例とした。肘・肩障害単独例のみとし、他関節障害の合併や既往、神経障害および手術歴を有する症例は除外した。性別は全例男性で、投球障害肘群(以下肘群)13例の年齢は、平均15.1±2.8歳(11歳~21歳)、投球障害肩群(以下肩群)11例は、平均23.5±11.0歳(10歳~42歳)であった。評価項目は、虫様筋と母指・小指対立筋とし、共通肢位として座位にて肩関節屈曲90°位をとり、投球時の肢位を想定し肘伸展位・手関節背屈位を保持して行った。虫様筋は、徒手筋力検査(以下MMT)で3を参考とし、可能であれば可、指が屈曲するなど不十分な場合を機能不全とした。母指・小指対立筋も同様に、MMTで3を参考とし、指腹同士が接すれば可、IP関節屈曲するなど代償動作の出現や指の側面での接触は機能不全とした。また上記結果より肘・肩両群における機能不全の発生比率を算出し比較検討した。<BR>【説明と同意】<BR> 対象者に対し本研究の目的を説明し同意の得られた方のデータを対象とし、当院倫理規定に基づき個人が特定されないよう匿名化に配慮してデータを利用した。<BR>【結果】<BR> 虫様筋機能不全は、肘群で53.8%、肩群で18.2%、母指・小指対立筋機能不全は、肘群で61.5%、肩群で27.2%と両機能不全とも肘群における発生比率が有意に高かった。<BR>【考察】<BR>一般的なボールの把持は、ボール上部を支えるために第2・3指を使い、下部を支えるために第1・4・5指を使用している。手内筋である虫様筋は、第2・3指が指腹でボールを支えるために必要であり、また母指・小指対立筋は、ボールの下部より効率よく支持するために必要である。手内筋が、効率よく機能しボールを把持することが可能であれば、手外筋への負担が減少し、手・肘関節への影響も少なくなる。本研究では、肘群において有意に手内筋機能不全の発生率が高く、虫様筋、母指・小指対立筋の機能低下によるボール把持の影響は、隣接する肘関節が受けやすいことが示唆された。その為、投球障害肘の症例に対してリハビリテーションを行う場合には、従来から言われている投球フォームの改善のみではなく遠位からの影響を考慮して、虫様筋機能不全および母指・小指対立筋機能不全の確認と機能改善が重要と考えられた。しかし本研究だけでは手内筋機能不全が伴って投球動作を反復したために投球障害肘が発生するのか、肘にストレスがかかる投球動作を反復したために手内筋機能不全が発生したのかは断定できない。今後はこれらの要因との関係を分析し報告していきたい。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 投球障害肘・肩の身体機能の要因の中で投球障害肘は手内筋である虫様筋や母指・小指対立筋に機能不全を有する比率が多いことが分かった。本研究から投球障害肘を治療する際には、評価として手内筋機能に着目することが重要と考える。また今回設定した評価方法は簡便であり、障害予防の観点からも競技の指導者や本人により試みることで早期にリスクを発見できる可能性も示唆された。<BR>
著者
栗田 健 明田 真樹 森 基 大石 隆幸 高森 草平 小野 元揮 木元 貴之 岩本 仁 日野原 晃 田仲 紗樹 吉岡 毅 鈴木 真理子 山﨑 哲也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cb1390, 2012

【目的】 先行研究で投球障害肘群は肩群に比べ手内筋の筋力低下を有していることが分かった。このことは手内筋が効率よく機能せずに、手外筋を有意に働かせてボールを把持することで、手・肘関節への影響が大きくなることが示唆された。しかし手内筋機能不全が投球動作の繰り返しで生じたものか、もともと機能不全が存在したことにより投球障害肘の原因となったのかは不明であった。そこで今回我々は手内筋機能不全が多く認められた投球障害肘群において、投球による影響がない非投球側の評価を行い、両側に機能不全を有する割合について調査したので以下に報告する。【方法】 対象は、投球障害肘の診断により当院リハビリテーション科に処方があった20例とした。対象は肘単独例のみとし、他関節障害の合併や既往、神経障害および手術歴を有する症例は除外した。性別は全例男性で、年齢は、平均16.4±5.1歳(11歳~34歳)であった。観察項目は、両側の1.手内筋プラス肢位(虫様筋・骨間筋)と2. 母指・小指対立筋の二項目とした。共通肢位として座位にて肩関節屈曲90°位をとり、投球時の肢位を想定し肘伸展位・手関節背屈位を保持して行った。1.手内筋プラス肢位(虫様筋・骨間筋)は、徒手筋力検査(以下MMT)で3を参考とし、可能であれば可、指が屈曲するなど不十分な場合を機能不全とした。2.母指・小指対立筋も同様に、MMTで3を参考とし、指腹同士が接すれば可、IP関節屈曲するなど代償動作の出現や指の側面での接触は機能不全とした。なお統計学的評価には、二項検定を用い、P値0.05未満を有意差ありと判断した。【説明と同意】 対象者に対し本研究の目的を説明し同意の得られた方のデータを対象とし、当院倫理規定に基づき個人が特定されないよう匿名化に配慮してデータを利用した。【結果】 投球障害肘の投球側虫様筋・骨間筋機能不全は、65.0%、に発生しており、そのうち健側にも認められたものが76.9%であった(統計学的有意差なし)。投球側母指・小指対立筋機能不全は、65.0%に発生しており、そのうち健側にも認められたものは53.8%であった(統計学的有意差なし)。一方、非投球側での機能障害をみると、両側に発生している比率が、虫様筋・骨間筋機能不全例では90.9%、母指・小指対立筋機能不全例では100%であった(統計学的有意差あり)。【考察】 我々は第46回日本理学療法学術大会において手内筋機能低下が投球障害肩より投球障害肘に多く認められることを報告している。しかし手内筋機能不全が伴って投球動作を反復したために投球障害肘が発生するのか、肘にストレスがかかる投球動作を反復したために手内筋機能不全が発生したのかは過去の報告では分からなかった。そこで今回投球していない非投球側の機能と比較することで投球による影響なのか、もともとの機能不全であるのかを検討した。今回の結果より、各観察項目での投球側・非投球側の両側に手内筋の機能不全を有する割合は多い傾向があったが、統計学的有意差はなかった。一方、非投球側に機能不全がみられた症例は、投球側の機能不全も有す症例が多く、統計的有意差もあることが分かった。このことより手内筋の機能不全は、投球の影響によって後発的に生じるのではなく、もともと機能不全を有したものが、投球動作を繰り返したことにより投球障害肘を発症している可能性が高いと考えられた。そのため投球障害肘の発生予防や障害を有した場合のリハビリテーションの中で虫様筋・骨間筋機能不全および母指・小指対立筋機能不全の評価と機能改善が重要であると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 投球障害肘の身体機能の要因の中で手内筋である虫様筋・骨間筋や母指・小指対立筋に機能不全を有することが多いということが分かった。本研究から投球障害肘を治療する際には、評価として手内筋機能に着目することが重要と考える。また今回設定した評価方法は簡便であり、障害予防の観点からも競技の指導者や本人により試みることで早期にリスクを発見できる可能性も示唆された。
著者
栗田 健 高木 峰子 木元 貴之 小野 元揮 吉田 典史 中西 理沙子 山﨑 哲也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101721, 2013

【はじめに、目的】われわれは過去に投球障害肘患者(以下肘群)と投球障害肩患者(以下肩群)において手内筋である母指・小指対立筋(以下対立筋群)の機能不全について検討をしたところ,肘群が肩群より有意に機能不全を認めた.さらに対立筋群機能不全を多く認めた肘群において, 非投球側に対立筋群の機能不全がある場合,投球側にも機能不全を認めた.また,この対立筋群の機能不全は,筋や骨などの成長が関与している可能性が考えられた.そのため,今回は年齢により対立筋群に機能不全の差が認められるのかどうかを検討したので報告する.【方法】対象は投球障害で当院を受診した45名の投球側45手とし,他関節の障害の合併や既往,神経障害および手術歴を有する症例は除外した.性別は全例男性で,年齢によりA群10歳~12歳,B群13歳~15歳,C群16歳~18歳の3群に分けた.評価項目は,投球時のボールリリースの肢位を想定した対立筋群テストとし,座位にて肩関節屈曲90°位にて肘伸展位・手関節背屈位を保持して指腹同士が接するか否かを観察した.徒手筋力検査法の3を基準とし,指腹同士が接すれば可,IP関節屈曲するなど代償動作の出現や指の側面での接触は機能不全とした.なお統計学的解析には多重比較検定を用い,3群間に対し各々カイ二乗検定を行い,Bonferroniの不等式を用いて有意水準5%未満として有意差を求めた.【倫理的配慮、説明と同意】対象者に対し本研究の目的を説明し同意の得られた方のデータを対象とし,当院倫理規定に基づき個人が特定されないよう匿名化にてデータを使用した.【結果】各群の人数は,A群9名,B群17名,C群19名であった.また,機能不全の発生率はA群33.3%,B群52.9%,C群47.3%であり,各群間のカイ二乗検定では,A群×B群(p=0.34)A群×C群(p=0.48)B群×C群(p=0.738)となり,すべての群間において有意差は認められなかった.【考察】一般的なボールの把持は,ボール上部を支えるために示指・中指を使い,下部を支えるために母指・環指・小指を使用している.手内筋である母指・小指対立筋は,ボールを下部より効率よく支持するために必要である.ボールの把持を手外筋群によって行うと,手関節の動きの制限や筋の起始部である上腕骨内側上顆に負担がかかることが示唆される.過去の報告から投球障害における母指・小指対立筋機能不全は投球障害肘群に多く認めることが分かっている.しかし手指の対立動作は骨の成長による影響や運動発達による影響など,年齢による影響がある可能性もあり,機能不全発生の機序までは断定できなかった.本研究の結果から,対立筋群の機能不全は年齢間差が無いことから,年齢を重ねることで機能不全が改善する可能性は否定的な結果であった.また同様に年齢を重ねることで対立筋群の機能不全が増えるわけでもなく,どの年代においても一定の割合で発生している事がわかった。この事から対立筋群の機能不全は骨の成長による影響や運動発達など成長による影響ではなく,癖や元々の巧緻性の低下などその他の要素によって発生していることが示唆された.以上により手内筋による正しい対立機能を用いたボールの把持できなければ投球動作を繰り返す中で肘の障害が発生する可能性が示唆された.その為、投球障害肘の症例に対してリハビリテーションを行う場合には,従来から言われている投球フォームの改善のみではなく遠位からの影響を考慮して,母指・小指対立筋機能不全の確認と機能改善が重要と考えられた.また障害予防の点においても,投球動作を覚える段階で手指対立機能の獲得とボールの持ち方などの指導が必要であることも示唆される.【理学療法学研究としての意義】本研究では対立筋群の機能不全は年齢による影響はないと示唆された.また過去の研究より投球障害肘の身体機能の中で手内筋である母指・小指対立筋に機能不全を多く有することが分かっている.投球障害を治療する際には、対立筋群の機能に着目することが重要と考える.また今回設定した評価方法は簡便であり,障害予防の観点からも競技の指導者や本人により試みることで早期にリスクを発見できる可能性も示唆された.
著者
栗田 健 高木 峰子 木元 貴之 小野 元揮 吉田 典史 中西 理沙子 山﨑 哲也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101721, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】われわれは過去に投球障害肘患者(以下肘群)と投球障害肩患者(以下肩群)において手内筋である母指・小指対立筋(以下対立筋群)の機能不全について検討をしたところ,肘群が肩群より有意に機能不全を認めた.さらに対立筋群機能不全を多く認めた肘群において, 非投球側に対立筋群の機能不全がある場合,投球側にも機能不全を認めた.また,この対立筋群の機能不全は,筋や骨などの成長が関与している可能性が考えられた.そのため,今回は年齢により対立筋群に機能不全の差が認められるのかどうかを検討したので報告する.【方法】対象は投球障害で当院を受診した45名の投球側45手とし,他関節の障害の合併や既往,神経障害および手術歴を有する症例は除外した.性別は全例男性で,年齢によりA群10歳~12歳,B群13歳~15歳,C群16歳~18歳の3群に分けた.評価項目は,投球時のボールリリースの肢位を想定した対立筋群テストとし,座位にて肩関節屈曲90°位にて肘伸展位・手関節背屈位を保持して指腹同士が接するか否かを観察した.徒手筋力検査法の3を基準とし,指腹同士が接すれば可,IP関節屈曲するなど代償動作の出現や指の側面での接触は機能不全とした.なお統計学的解析には多重比較検定を用い,3群間に対し各々カイ二乗検定を行い,Bonferroniの不等式を用いて有意水準5%未満として有意差を求めた.【倫理的配慮、説明と同意】対象者に対し本研究の目的を説明し同意の得られた方のデータを対象とし,当院倫理規定に基づき個人が特定されないよう匿名化にてデータを使用した.【結果】各群の人数は,A群9名,B群17名,C群19名であった.また,機能不全の発生率はA群33.3%,B群52.9%,C群47.3%であり,各群間のカイ二乗検定では,A群×B群(p=0.34)A群×C群(p=0.48)B群×C群(p=0.738)となり,すべての群間において有意差は認められなかった.【考察】一般的なボールの把持は,ボール上部を支えるために示指・中指を使い,下部を支えるために母指・環指・小指を使用している.手内筋である母指・小指対立筋は,ボールを下部より効率よく支持するために必要である.ボールの把持を手外筋群によって行うと,手関節の動きの制限や筋の起始部である上腕骨内側上顆に負担がかかることが示唆される.過去の報告から投球障害における母指・小指対立筋機能不全は投球障害肘群に多く認めることが分かっている.しかし手指の対立動作は骨の成長による影響や運動発達による影響など,年齢による影響がある可能性もあり,機能不全発生の機序までは断定できなかった.本研究の結果から,対立筋群の機能不全は年齢間差が無いことから,年齢を重ねることで機能不全が改善する可能性は否定的な結果であった.また同様に年齢を重ねることで対立筋群の機能不全が増えるわけでもなく,どの年代においても一定の割合で発生している事がわかった。この事から対立筋群の機能不全は骨の成長による影響や運動発達など成長による影響ではなく,癖や元々の巧緻性の低下などその他の要素によって発生していることが示唆された.以上により手内筋による正しい対立機能を用いたボールの把持できなければ投球動作を繰り返す中で肘の障害が発生する可能性が示唆された.その為、投球障害肘の症例に対してリハビリテーションを行う場合には,従来から言われている投球フォームの改善のみではなく遠位からの影響を考慮して,母指・小指対立筋機能不全の確認と機能改善が重要と考えられた.また障害予防の点においても,投球動作を覚える段階で手指対立機能の獲得とボールの持ち方などの指導が必要であることも示唆される.【理学療法学研究としての意義】本研究では対立筋群の機能不全は年齢による影響はないと示唆された.また過去の研究より投球障害肘の身体機能の中で手内筋である母指・小指対立筋に機能不全を多く有することが分かっている.投球障害を治療する際には、対立筋群の機能に着目することが重要と考える.また今回設定した評価方法は簡便であり,障害予防の観点からも競技の指導者や本人により試みることで早期にリスクを発見できる可能性も示唆された.
著者
栗田 健 小野 元揮 木元 貴之 岩本 仁 日野原 晃 田仲 紗樹 吉岡 毅 鈴木 真理子 山﨑 哲也 明田 真樹 森 基 大石 隆幸 高森 草平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Cb1390, 2012 (Released:2012-08-10)

【目的】 先行研究で投球障害肘群は肩群に比べ手内筋の筋力低下を有していることが分かった。このことは手内筋が効率よく機能せずに、手外筋を有意に働かせてボールを把持することで、手・肘関節への影響が大きくなることが示唆された。しかし手内筋機能不全が投球動作の繰り返しで生じたものか、もともと機能不全が存在したことにより投球障害肘の原因となったのかは不明であった。そこで今回我々は手内筋機能不全が多く認められた投球障害肘群において、投球による影響がない非投球側の評価を行い、両側に機能不全を有する割合について調査したので以下に報告する。【方法】 対象は、投球障害肘の診断により当院リハビリテーション科に処方があった20例とした。対象は肘単独例のみとし、他関節障害の合併や既往、神経障害および手術歴を有する症例は除外した。性別は全例男性で、年齢は、平均16.4±5.1歳(11歳~34歳)であった。観察項目は、両側の1.手内筋プラス肢位(虫様筋・骨間筋)と2. 母指・小指対立筋の二項目とした。共通肢位として座位にて肩関節屈曲90°位をとり、投球時の肢位を想定し肘伸展位・手関節背屈位を保持して行った。1.手内筋プラス肢位(虫様筋・骨間筋)は、徒手筋力検査(以下MMT)で3を参考とし、可能であれば可、指が屈曲するなど不十分な場合を機能不全とした。2.母指・小指対立筋も同様に、MMTで3を参考とし、指腹同士が接すれば可、IP関節屈曲するなど代償動作の出現や指の側面での接触は機能不全とした。なお統計学的評価には、二項検定を用い、P値0.05未満を有意差ありと判断した。【説明と同意】 対象者に対し本研究の目的を説明し同意の得られた方のデータを対象とし、当院倫理規定に基づき個人が特定されないよう匿名化に配慮してデータを利用した。【結果】 投球障害肘の投球側虫様筋・骨間筋機能不全は、65.0%、に発生しており、そのうち健側にも認められたものが76.9%であった(統計学的有意差なし)。投球側母指・小指対立筋機能不全は、65.0%に発生しており、そのうち健側にも認められたものは53.8%であった(統計学的有意差なし)。一方、非投球側での機能障害をみると、両側に発生している比率が、虫様筋・骨間筋機能不全例では90.9%、母指・小指対立筋機能不全例では100%であった(統計学的有意差あり)。【考察】 我々は第46回日本理学療法学術大会において手内筋機能低下が投球障害肩より投球障害肘に多く認められることを報告している。しかし手内筋機能不全が伴って投球動作を反復したために投球障害肘が発生するのか、肘にストレスがかかる投球動作を反復したために手内筋機能不全が発生したのかは過去の報告では分からなかった。そこで今回投球していない非投球側の機能と比較することで投球による影響なのか、もともとの機能不全であるのかを検討した。今回の結果より、各観察項目での投球側・非投球側の両側に手内筋の機能不全を有する割合は多い傾向があったが、統計学的有意差はなかった。一方、非投球側に機能不全がみられた症例は、投球側の機能不全も有す症例が多く、統計的有意差もあることが分かった。このことより手内筋の機能不全は、投球の影響によって後発的に生じるのではなく、もともと機能不全を有したものが、投球動作を繰り返したことにより投球障害肘を発症している可能性が高いと考えられた。そのため投球障害肘の発生予防や障害を有した場合のリハビリテーションの中で虫様筋・骨間筋機能不全および母指・小指対立筋機能不全の評価と機能改善が重要であると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 投球障害肘の身体機能の要因の中で手内筋である虫様筋・骨間筋や母指・小指対立筋に機能不全を有することが多いということが分かった。本研究から投球障害肘を治療する際には、評価として手内筋機能に着目することが重要と考える。また今回設定した評価方法は簡便であり、障害予防の観点からも競技の指導者や本人により試みることで早期にリスクを発見できる可能性も示唆された。
著者
山崎 展博 北川 敏樹 宇田 東樹 栗田 健 若林 雄介 西浦 敬信
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.851, pp.17-00146-17-00146, 2017 (Released:2017-07-25)
参考文献数
16
被引用文献数
4

A method has been developed for predicting the aerodynamic noise from the bogie of a high-speed train using a two-dimensional microphone array in a low-noise wind tunnel. First, the mean velocity distribution of flow was simulated precisely in the low-noise wind tunnel. Next, aerodynamic noise generated by the bogie, hereinafter referred to as aerodynamic bogie noise, was estimated from the noise source distribution measured with the two-dimensional microphone array. Finally, based on the experimental results, the predicted noise generated from the lower part of the car (i.e. the total of the aerodynamic noise estimated through the proposed method and the rolling and machinery noise estimated in a previous study) was compared with the measurement data obtained near the track in the field test. It was found that the predicted sound pressure level showed good agreement with those measured in the field test. This suggests that the proposed method is appropriate to estimate the aerodynamic bogie noise quantitatively. It was also shown that the contribution of the aerodynamic bogie noise to the total noise generated from the lower part of the car is greater than that of rolling and machinery noise, especially below 500 Hz.