著者
深尾 良夫 ゲラー ロバート 山田 功夫 武尾 実 島崎 邦彦
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1993

本計画は、世界最大の沈み込み帯である西太平洋域の地球内部構造を解明するために、(1)カムチャッカに新しい高性能地震観測点を建設し、(2)ミクロネシア観測点のバ-ジョンアップを行ない、(3)これまでに得られた記録から地震学的トモグラフィーを行ない従来より鮮明な地球内部イメージを得ること、が目的であった。以下に、成果の概要を報告する。(1)カメンソコエ観測点の建設平成5年度中は観測点建設のための様々な準備(観測システムの構成部品の入手・組立及び調整、相手側研究者との連絡、相手側研究者による観測壕の建設など)を行なった。平成6年度は、建設された観測壕に地震計システムを設置し運転を開始したが、機材の輸送トラブルにより地震計1成分の部品が足りず2成分観測で出発せざるをえなかった。平成7年度にようやく残り1成分も動きだし、現在は順調に稼働を続けている。データは光磁気ディスクの形で送られてきている。(2)ミクロネシア観測点のバ-ジョンアップ平成5年度、ミクロネシア連邦ポナペ観測点において別途予算で高性能地震観測を開始した。この間、ミクロネシアでは全島に光ケーブル電話回線を敷設する工事が進められた、その結果、平成6年度には電話事情が格段に改善され、日本からの電話呼出しによる地震計のシステムコントロールや準オンラインでの主要地震記録の取り込みが可能となった。平成7年度は、観測壕のかぶりを深くし引込用電柱を撤廃してケーブルを埋設化した。ポナペ観測点は計画期間中総じて順調に稼働し良好なデータを得ることができた。地震学的トモグラフィーによる地球内部解明全マントルP波トモグラフィー(平成5年度):Fukao et al.(1992)が行なったよりもデータ数を5倍にして全マントルトモグラフィーを行ない、特に西太平洋全域で「マントル遷移層によどむスラブ」のより鮮明なイメージを得た。一方、1994年のデジタル波形を用いて相関法によってP-PP波到達時刻差を測定し、全マントルP波トモグラフィーで分解能の高い地域ではモデルと測定とがよく一致すること、逆に分解能の低い地域では一致が悪いことを示した。表面波群速度測定(平成6年度):ポナペ島及び父島において西太平洋の最も古い海洋底(160Ma)と最も若い海洋底(`0Ma)のレイリー波群速度を測定し、従来実測された如何なる地域よりも早い群速度及び遅い群速度を得た。コア・マントル境界P波トモグラフィー(平成7年度):グローバルなP波及びPcP波到達時刻データを用いて、コア・マントル境界付近の水平不均質構造を求めた。特に、新しいモデルを提出するよりも用いたデータから確実に抽出できるイメージを明らかにすることに焦点を絞り、東南アジアと中南米の低速度異常と北極域の高速度異常を見いだした。
著者
清水 哲朗 加藤 博 山下 巌 斎藤 智裕 竹森 繁 中村 潔 穂苅 市郎 山田 明 島崎 邦彦 小田切 治世 坂本 隆 唐木 芳昭 田沢 賢次 藤巻 雅夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.753-757, 1990-03-01
被引用文献数
6

食道の小細胞型未分化癌に対し,温熱療法を併用した集学的治療を施行し,約9か月の生存を得られた症例を経験したので報告する.症例は75歳男性.昭和62年7月より嗄声,嚥下困難が出現,近医にて食道癌と診断され,11月16日当科入院となった.入院後の諸検査により,ImEiIuにわたる切除不能食道癌で,生検により小細胞型未分化癌と診断された.11月30日より放射線療法計47Gy,免疫・化学療法として,BLM計65mg,CDDP計150mg,5FU計4,500mg,VP-16計180mg,OK432計57.2KE,PSK99gを投与し,これらに局所温熱療法9回を加えた集学的治療により,症状はもちろん,食道造影上も,腫瘍陰影が消失した.しかし,昭和63年7月になり,多発性肝転移により再入院,8月6日死亡した.放射線・温熱併用療法の局所に対する効果は期待されるが,より有効な化学療法の検討が必要であると考えられた.
著者
原口 強 中田 高 島崎 邦彦 今泉 俊文 小島 圭二 石丸 恒存
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.306-314, 1998-08-10
参考文献数
3
被引用文献数
7 13

未固結堆積物を定方位で連続的に採取する方法として独自に考案・開発した地層抜き取り装置と, 建設現場ですでに確立している鋼矢板打ち込み工法を組み合わせた定方位連続地層採取方法を提唱する.本方法の原理は, 2つに分割したサンプラーを2段階に分けて地層中に差し込んで地盤中で閉合した断面を完成させ, それを同時に地盤から引き抜くことにより, その間に挟まれた地層を定方位で採取する方法である.本方法は, 活断層調査の現状における様々な問題点を克服するために開発されたもので, 2つの事例(糸魚川-静岡構造線活断層系・神城断層と東京都旧江戸川)を示す.糸魚川-静岡構造線活断層系・神城断層では幅35cm, 厚さ12cm, 深さ約11mの連続する定方位地層断面を2本採取し, 急傾斜する地層を切る小断層がとらえられた.東京都旧江戸川では水深5mの川底から深さ約9mにわたって完新世の軟弱な未固結堆積層を幅30cmの地層断面として採取し, 縦ずれ量約25cmの連続する正断層状の地割れを含む地層断面を採取した.これらの採取結果から本方法が, 軟弱な未固結堆積物の定方位連続地層採取方法として広範に有効であることが明らかとなった.
著者
岡村 真 島崎 邦彦 中田 高 千田 昇 宮武 隆 前杢 英明 堤 浩之 中村 俊夫 山口 智香 小川 光明
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.40, pp.65-74, 1992-12-15
被引用文献数
6

別府湾北西部の海底には3 kmから5 kmの長さを持つ5本の正断層が分布する。この分布の様子は, 別府-島原地溝にみられる陸上の活断層分布と類似しているが, 連続する部分は認められない。今回, 長さ2 km以上の断層セグメントを命名した。活動度はいずれもB級 (1-0.1 mm/y) である。地溝状の, 相対する南落ちと北落ちの正断層とは, 東北東-西南西の線により二分される。伊予灘の中央構造線断層系においても地溝状の形態が認められ, 別府湾まで連続するかどうか興味ある問題である。断層の活動度は, 年代が解っている反射層の変位量から求めることができる。しかし, 個々の地震の発生時や変位量を求めるためには, 断層両側のコア試料の対比が必要となる。我々は当初, 豊岡沖断層の両側で海底ポーリングを行い, 海底下20 mまでの試料をえた。しかし, ポーリングによる海底堆積物採取は, 時間と費用がかさみ, 多くの断層に対して, また継続的に行うことがむずかしい。このため以後は, ピストンコアリングにより堆積物の採取を行っている。現在, 海底下20 m以上の連続試料を一日で数本得ることができるようになった。亀川沖西断層では, 過去6000年間に3回の地震発生が認められ, その変位量と時間間隔との間には規則性がある。断層変位の分布は対称で, 断層の両端の近傍で最大となる。
著者
尾形 良彦 種村 正美 遠田 晋次 庄 建倉 鶴岡 弘 田村 義保 佐藤 整尚 川崎 能典 島崎 邦彦 間瀬 茂 柴田 里程 ANDREA Llenos SEBASTIAN Hainzl JEFFREY J. DAVID Vere-Jones
出版者
統計数理研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

ETAS(epidemic type aftershock sequence)などの統計的点過程モデルで各地の地震活動の確率的予測を行う同時に,モデルを物差しにして静穏化・活発化などの地震活動異常を検出できる解析手法を確立した.地震活動予測からの逸脱による地震活動異常の空間パタンから,断層内の非地震性すべりによる地殻のストレス変化との因果関係を実証研究した.このような地震活動の異常性が殻歪変化のセンサーとして有用である.さらに地震活動異常とGPSによる地殻変動データとの整合性を確かめ,大地震の前駆的なすべり現象の解明に迫った.