著者
川上 正憲 中村 敬 中山 和彦
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.359-366, 2015

アトピー性皮膚炎に身体醜形障害を併存する1例を報告した.神経質性格を基盤にしたアトピー性皮膚炎の患者が,皮膚症状に対する「とらわれの精神病理構造」を認める場合,外来森田療法は有用である.治療者は,彼女の語り,および彼女の実存を主体的,実存的に我がものとして引き受け,「生の欲望」の涵養を行った(実存的交わり:ヤスパース).また,本症例は皮膚科医師に「顔の皮膚症状は良くなっている」と言われているにもかかわらず,「自分としては良くなっているとは思えない.納得できない」という「皮膚科医師の客観的判断と,本人の主観的判断の不一致」を認めた.こうした認知様式は,身体醜形障害に由来するもので「妄想的心性」もしくは「外見の欠陥に対するとらわれ」と呼ばれる.こうした認知様式が彼女のドクターショッピング行動を引き起こしていたことを指摘した.
著者
川上 正浩 カワカミ マサヒロ Masahiro KAWAKAMI
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.5, pp.15-26, 2015-01-31

Coltheart, Davelaar, Jonasson, & Besner(1977)の研究以来、多くの研究が単語認知に及ぼすneighborhoodsizeの効果を検討してきている。こうした研究を遂行するためのデータベースとして川上(2000a)は、客観的な基準として、Macintosh 版岩波広辞苑第四版(新村出記念財団,1995)を設定し、この辞書に登録されている漢字二字熟語の類似語数をデータベース化している。本研究は、音韻的な特性も重視した実験を実施できるよう、あらためて4拍漢字二字熟語の類似語The process of recognizing printed words has been studied for many years. Recent visual word recognition research suggests that the identification of a word is affected by its similarity to other words. Coltheart, Davelaar, Jonasson, and Besner(1977)defined the neighbor of a word( or any letter string )as any word that can be generated by replacing a single letter from the base string. Many studies have shown that neighborhood size affects visual word recognition. For selecting Japanese stimuli for experiments investigating effects of neighbors, objective database for number of neighbors are needed. This study presents tables of the numbers of orthographic and phonological neighbors for Japanese 4 moraic 2-kanji compounds words. Orthographic neighbors for Japanese 4 moraic 2- kanji compounds words are the words that can be constructed by changing single kanji of the target item preserving kanji positions. Defining orthographic neighbors, the pronunciation of the word was ignored. On the other hand, phonological neighbors for Japanese 4 moraic 2-kanji compounds words are the words that can be constructed by changing single mora of the pronunciation of target item preserving mora positions. Here, defining phonological neighbors, the orthographic script of the word was ignored. Based on the database of Amano & Kondo(2000), the number of orthographic and phonological neighbors were counted. This article reports the number of orthographic and phonological neighbors of Japanese 4 moraic 2-kanji compounds words with frequency of more than 3,000 based on Amano & Kondo(2000). For lack of space, the table was divided into two parts, and this article shows the second part of the result. The first part of the results appears in the previous article. The tables may be employed to provide normative data for experimental studies in word recognition using Japanese 4 moraic 2-kanji compounds words.
著者
川上 正道
出版者
政治経済学・経済史学会
雑誌
土地制度史学 (ISSN:04933567)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.29-39, 1963-10-20

われわれは当面,日本資本主義の再生産構造を解明することを課題としている.これに応えるためには,マルクスの再生産論を正しく把握しておくことが,理論的な基礎として必要であるが,その実証的な資料という点では,政府推計の国民所得および産業連関表を重視すべきであろう.ところで,これらの政府の統計は,主観的な効用価値説にもとづいて作成されているから,客観的な労働価値説の立場からこれを正しく再編成したうえで利用しなければならない.つまり,マルクスの再生産論に立脚して,国民所得と産業連関表を正しく位置づけ,それを基準として政府推計の国民所得および産業連関表の歪曲された性格をとらえておく必要がある.われわれは,以下に,マルクスの拡大再生産表式を手がかりとして,この点を明確にしようとするものである.
著者
鎌田 由紀子 川端 輝江 長谷川 恭子 佐藤 敏子 生井 一之 川上 正舒
出版者
女子栄養大学
雑誌
女子栄養大学紀要 (ISSN:02860511)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.49-54, 2003-12-01
被引用文献数
1

糖尿病による動脈硬化発症リスクとして, 食後高脂血症が注目されているが, それを検出する方法は確立されていない。食後高脂血症を検出し評価するには, 汎用可能で日常食に近い食事内容を統一した負荷試験食が必要である。日本糖尿病学会テストミール開発ワーキンググルーブは洋食風の朝食型試験食 (テストミール) を開発した。本研究はこのテストミールを用い2型糖尿病における食後高脂血症・食後高血糖を評価し, 食後高脂血症を規定する可能性のある他因子の検討を行った。(1)テストミールは, バター8g, はちみつ15gを塗ったトースト (60g), 砂糖8g入りヨーグルト, 野菜100g入りスープ, 半熟卵1個を用い, エネルギー及び栄養量は総エネルギー474kcal, 脂質18.3g (34.7%), S : M : P=48 : 38 : 14であった。(2)患者群におけるGTTとMTTの比較検討において, 血糖, IRIがMTT, GTTともに食前値に比べ2時間値が有意に上昇し, またGTT, MTTの2時間値が正の相関を示し, 食後高血糖の評価を今回のテストミールが代用可能である事が示唆された。TG, RLP-choはMTTで2時間値が有意に上昇した。(3)患者群は, HOMARと空腹時TG, 食後TG, 空腹時RLP-choにおして有意な正の相関がみられたことから, RLP-choはインスリン抵抗性の指標となりうる事が示唆された。(4)食出摂取と食後血中脂質の関連検討では, 砂糖類摂取 (kcal/day) とTG, RLP-choの各時点との間に正の相関がみられ, 食事のTG, RLP-choの増加に伴って, 食事内容を変えていく事は有効であると思われた。以上の結果から, 軽症2型糖尿病患者において食後高血糖だけでなく, 食後高脂血症の評価は重要であり, 本テストミールは食後高血糖・食後向脂血症, 両者の評価をする事が可能である事が判明した。
著者
川上 正浩
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.55-65, 2011-01

本研究では、野菜・果物等の具体的な対象に対して、一般的な大学生が具体的にどのような色のイメージとの連合を持っているのかについて質問紙調査によって明らかにすることを目的とした。まず、"赤"、"橙"、"黄色"、"黄緑"、"緑"、"紫"、"茶色"の7色を基本色とし、野菜・果物等の名称が42個選択された。また、先述の7色を基本色とし、35色の色見本を作成した。調査対象者の課題は、質問紙に記載された野菜・果物等の名称からイメージする色を色見本から選択し、該当する番号を回答欄に記入することであった。大学生201名を対象とした調査の結果が報告され、たとえば"トマト"に対しては、76%の調査対象者が本調査の色番号3番の色と対応するイメージを持っていることが示された。本研究の結果は、概念と色との連合に対する解釈に際し、客観的な指標を与えるデータベースとして活用されることが期待される。
著者
NGUYEN V. Chuyen 川上 正舒 黒木 昌寿
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究において、カロテノイドの一種であるアスタキサンチンは酸化反応および白内障の進行を効果旨的に抑制するという結果を得ていることから、他の食餌性抗酸化剤の併用による糖尿病合併症の抑制効:果について明らかにすることとした。即ち、アスタキサンチンとアスコルビン酸、α-トコフェロール、トコトリエノールの各抗酸化剤の併用による効果について検討した。その結果、アスタキサンチンとトコフェロールあるいはトコトリエノールを併用した場合では、対照群に比し酸化抑制が観察された。また、酸化ストレスの指標となる尿中8-OHdGの低値も観察された。一方、アスタキサンチンに高濃度のアスコルビン酸を併用した場合では、腎臓中の過酸化脂質生成量が多く、過剰なアスコルビン酸の摂取は、生体内における過酸化反応を促進する可能性があることが明らかとなった。また、アスタキサンチンには、体内におけるα-トコフェロールの消費を抑制し、体内に蓄積させる作用があることも示された。さらに、アスタキサンチンと水溶性抗酸化剤のフラバンジェノールの併用による糖尿病の進行抑制効果を検討した。その結果、糖尿病ラットにおいて、肝臓、腎臓および血清において、アスタキサンチンとフラバンジェノールを併用した場合では、対照群に比べて脂質過酸化反応および白内障の抑制がみられた。また、尿中8-OHdGも低値を示したことから、これらの抗酸化剤の併用は、酸化ストレスの抑制により、生体組織中の過酸化脂質の生成および蓄積を有効に抑制しうることが示唆された。さらに、血清中の中性脂肪値についても、アスタキサンチンとフラバンジェノールの併用により低くなる傾向が示され、糖尿病における脂質代謝異常を改善させる可能性が示唆された。これらの結果から、アスタキサンチンとフラバンジェノールの併用は、糖尿病による生体内の過酸化反応を有効に抑制し、糖尿病およびその合併症の予防・進行抑制に効果を示すことが期待された。今後、糖尿病の予防法と治療法の開発が大きな課題となると考えられ、本研究の成果がその一助となることを期待する。なお、病院での臨床試験は2007年中に行う予定である。
著者
川上 正浩
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要. 心理発達科学 (ISSN:13461729)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.343-358, 2001-12-27

国立情報学研究所で電子化したコンテンツを使用している。
著者
川上 正浩
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大學教育學部紀要. 教育心理学科 (ISSN:03874796)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.187-220, 1996-12

国立情報学研究所で電子化したコンテンツを使用している。
著者
永田 裕保 山本 照子 岩崎 万喜子 反橋 由佳 田中 栄二 川上 正良 高田 健治 作田 守
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:0021454X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.598-605, 1994-10
被引用文献数
19

1978年4月から1992年3月までの過去15年間に大阪大学歯学部附属病院矯正科で治療を開始した, 口唇裂口蓋裂を除く矯正患者4, 628名(男子1, 622名, 女子3, 006名)を対象とし, 統計的観察を行い以下の結果を得た.1.大部分の患者は半径20 km以内から来院しており, 大阪府下居住者であった.2.男女比は男子 : 女子=1 : 1.9であり年度による大きな変動はなかったが, 9歳以降年齢が高くなるにつれて女子の割合が上昇した.3.治療開始時の年齢は7∿12歳が大半を占めた.近年13歳以上の割合が増加を示した.咬合発育段階では, IIIB期が最も多かった.4.各種不正咬合の分布状態は, 男子では反対咬合の割合が最も高かった.一方, 女子では, 叢生の割合が最も高かった.男女ともに年々反対咬合の割合が低下し, 叢生の割合が上昇した.5.Angle分類については, 男女ともにAngle I級が最も多く, 骨格性分類では, 男子で骨格性3級, 女子で骨格性1級が最も多かった.咬合発育段階別の骨格性分類では, 骨格性2級はIIC期からIIIA期にかけて増加を示し, 骨格性3級はIIC期とIVC期に多かった.IIIC期からIVC期におけるAngleの分類と骨格性分類との関係について, 男女ともAngle I級では骨格性1級, Angle II級では骨格性2級, Angle III級では骨格性3級が多く認められた.
著者
川上 正浩
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

漢字二字熟語の認知過程に,その類似語(当該単語と一文字だけが異なる単語)が影響を及ぼすことが示されているが,漢字二字熟語においては,その類似語との間に形態的類似のみならず,意味的類似をも想定することができる.漢字二字熟語の類似語間の意味類似性の高低が,漢字二字熟語の類似語間で認められる促進的効果に影響を及ぼすか否かを検討するためには,当該漢字二字熟語の類似語間での意味類似性に関するデータベースが必須となる.本研究では,こうした類似語を対にして被験者に呈示し,その意味類似性に関して被験者の主観的評定を求めることにより,類似語間の意味類似性データベースを作成した.天野・近藤(2000)のデータベースから,JIS一種に含まれる2,965字のうちの二文字によって構成され,かつ普通名詞であると見なされている漢字二字熟語を頻度順に上位1,000番まで抽出し,これを基本語彙と見なした.これらを,まず前漢字を共有する熟語群に分類した.こうした熟語群は前漢字を共有する類似語群ということになる.同様の処理を後漢字の共有に注目しても行った.これらの熟語群内で,熟語二個のすべての組合せ(熟語対)が作成され,その結果2,530組の熟語対が作成された.これらを23種類のリストに分割し,質問紙調査の形式で類似性についての主観的評価を求めた.被験者として大学生1,133名(男子387名,女子745名,不明1名)が調査に参加した.被験者の平均年齢は19.5歳(SD=2.4)であった.各漢字二字熟語について,その類似語間での平均意味類似性評定値が算出された.この結果は報告書としてまとめ,また第3回日本認知心理学会において発表した.今後こうしたneighbor間の意味的類似性が,実際に当該漢字二字熟語の処理過程に影響を及ぼしているのかどうかを,実験的に検討することが望まれる.