著者
松田 実 鈴木 則夫 長濱 康弘 翁 朋子 平川 圭子
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.141-155, 2006 (Released:2007-07-25)
参考文献数
31
被引用文献数
5 2

文字の読み書きは後天的な能力であるから,その障害機序を考える際には,文化によって異なる文字の特性をふまえた検討が必要であり,欧米語の認知心理学的研究の成果をそのままの形で日本語に持ち込むことは危険である。欧米語と日本語の違いとして,欧米語では読み書きの単位が単語であるのに対して日本語では文字レベルにあること,欧米語は音声言語が中心であるが日本語は文字中心の文化であり,日本人は漢字だけでなく仮名をも話す (聞く) こと,の 2点が重要である。音韻失読の自験 4例と文献例の検討から,仮名文字列音読の処理過程を考察し,仮名非語音読障害の機序として音韻表象の障害以外に,仮名 1文字レベルにおける文字音韻変換の脆弱性や系列的処理の困難さが存在する可能性を指摘した。また語義聾自験例の観察から,語義聾では低次の音韻表象から高次の音韻表象に到達する段階に障害があり,音韻表象が文字によって安定化するという仮説を述べた。
著者
松田 実樹 杉本 浩章 上山崎 悦代 篠田 道子 原沢 優子
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.167-176, 2015

本研究は、特別養護老人ホームでの終末期ケアにおける専門職間協働の現状と課題を明らかにし、特別養護老人ホームでの看取りのための専門職間協働のあり方を検討することを目的とした。 調査対象は、終末期ケアに携わる看護師、介護福祉士、社会福祉士(2 名)の計4 名とし、グループインタビューを行った。得られたデータは、内容分析を行いカテゴリー化した。 その結果、専門職間の役割を理解した上での支援、看取りケアに対する認識など10 のカテゴリーが生成された。 現状として、連携と協働を意識したチームケアの試みがされていたが、多職種で情報共有するための仕組みについては、専門価値に基づく思いまで共有するに至っていないことが挙げられた。利用者の状態が変化する中、チームで利用者を支える為には、ケアの背景にある専門職の思いをいかにして他職種に伝えていくかが課題となり、それらを共有、理解できるシステムつくりが求められることが示唆された。This study aims to reveal the current situation and issues of Inter Professional work in End-oflife Care at special nursing homes for the aged and consider the roles of inter professional work. The subjects of the study are four people including a nurse, a certified care worker, and social workers engaged in end of care, and a group interview was conducted with them. The data obtained was analyzed and then categorized. As a result, 10 categories including support based on understanding of the roles of the professionals and recognition about nursing care were generated. Although the interviewed professionals are currently attempting to provide teamwork-based care on the basis of partnership and cooperation, when it comes to information-sharing systems among various professionals, they fall short of sharing their thoughts based on their professional values. Therefore, there exists a need to consider how the thoughts of professionals, that form the basis of care to the aged, are conveyed to other professionals to support users as a team when the situations of the users are changing and that systems on Inter Professional work is required to facilitate such information exchange.
著者
松田 実
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3+4, pp.154-161, 2016 (Released:2017-03-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1

【要旨】発語失行(AOS)について筆者が重要と考える事項について考察した。AOSの責任病巣が中心前回であることは多くの証拠が物語っているが、基底核から放線冠にかけての皮質下病変でもAOSにほぼ一致する病像を観察することがある。AOSと運動障害性構音障害、とくに失調性構音障害との鑑別は意外と難しく、AOSの特徴として従来から重要視されていた構音の誤りの非一貫性はAOSの決定的な特徴とは言えない。変性疾患のAOSの特徴を述べ、進行性非流暢性失語の経験からも、AOSは非流暢性発話の重要な要因ではあるが、その他の言語学的要因も非流暢性に関与していることを述べた。
著者
松田 実
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.312-324, 2015-09-30 (Released:2016-10-01)
参考文献数
30
被引用文献数
5 5

通常のアルツハイマー型認知症 (AD) の言語症状は, AD の神経病理の分布を反映して健忘失語から超皮質性感覚失語に移行していくのが一般的である。言語障害を主症状とする AD の亜型があり, 原発性進行性失語 (PPA) の一型とされている logopenic progressive aphasia (LPA) 以外に (1) 喚語困難/ 漢字の健忘失書型, (2) 超皮質性感覚失語型, (3) 左側頭葉型 (意味性認知症様の AD) なども存在する。LPA を構成する各徴候の軽重も症例により多様であり, 一症候群を形成するといえるのかどうか疑問であるが, 変性疾患としての特異性は著明な言語性短期記憶障害にあるのではないかと考えられた。
著者
斉田 比左子 藤原 百合 山本 徹 松田 実 水田 秀子
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.230-239, 1994 (Released:2006-06-06)
参考文献数
15

電文体発話を呈した左中前頭回後部の小出血の1例を報告した。典型的な電文体発話は我が国の Broca 失語ではまれといわれている。本症例は54歳,右利き男性で,発症時はBroca失語に相当する状態を呈し,その回復過程で,自発話のみに選択的に電文体発話が明確となった。特に,発話意欲の亢進した自発話に著明であった。書字には,電文体は認められなかった。理解力や喚語力は保たれ,文法処理能力も良好であった。本症例では,迅速かつ効率よく多くの情報を伝えようとする場合には助詞が省略され,その背景には文を構成し発話する過程で助詞の使用に関する何らかの機能不全が推察された。本症例は,文の構成に関与するといわれる左中前頭回後部に限局病変を有したことから同部位が文の構成過程に関与する可能性を示唆する1症例と考えられた。
著者
田中 良太 吉田 治 松田 実 福島 久喜 花岡 建夫 呉屋 朝幸 関 恒明
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.1222-1225, 1997-06-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
15

注入法による豊胸術後乳癌の1例を経験したので報告する.症例は52歳女性, 23年前に注入法による両側豊胸術を受けた.左乳房および左腋窩部腫瘤を触知し増大してきたため当院外来を受診した.造影MRIにて左乳房に腫瘤像が描出され,腫瘤辺縁に輪状濃染像が認められたため乳癌を疑った.腫瘤摘出生検を施行し病理学的に浸潤癌との診断が得られたので定型的乳房切除術を施行した.組織学的には充実腺管癌,鎖骨下リンパ節転移陽性と診断された. 造影MRIが注入異物と乳癌との識別に有用であった.
著者
松田 実
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.139-147, 2007 (Released:2008-07-01)
参考文献数
22
被引用文献数
5 4

純粋語唖10 症例の病巣検討,および前方病巣をもつその他の失語症例の症状と病巣との対応から,失構音の責任病巣は中心前回のなかでも上下方向では中部から下部にかけて,前後方向では中心前回の後方部であると推測された。島やBroca 領域は失構音とは無関係であった。Broca 領域損傷の言語症状は軽症ではあるが,病初期には全例が無言あるいは寡黙になることが重要な所見である。超皮質性運動失語では文の構成障害や自由発話での語や呼び出し·選択の障害があり,こうした障害はBroca 失語においても認められる。したがって,非流暢性発話の要因を失構音や発話衝動の低下のみに求めるのは単純化のしすぎであり,重要な病態機序を見逃す原因になることを指摘した。
著者
松田 実 姉川 孝 原 健二
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.239-246, 1992 (Released:2006-06-23)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

経過中に再帰性発話 (RU) がreal word RU (RWRU) からnon-meaningful RU (NMRU) に移行した特異な症例を報告した。症例は73歳の右利き女性。脳梗塞で右片麻痺と全失語を呈した。初期には,「あんた」という発語を繰り返したが発語量は多くなかった。 50病日頃より発語量が多くなるとともに,発語パターンは「あんた」が徐々に減少し,「ツツツ……」「夕夕夕……」「ツツターン」「ツターン」「タンターン」という何種類かの発語を認める時期を経過して,「タンターン」「タンタン」に収束した。 CT, MRIでは基底核,放線冠と頭頂後頭領域の皮質皮質下に梗塞巣を認めたが,SPECTではより広範な左半球ほぼ全域にわたる血流低下が認められた。著しく機能低下した左半球の音声学的システムが右半球発語であるRWRUを修正した結果, RWRUからNMRUへの移行が生じたと考え,RUの成立機序や責任病巣についての私見を述べた。
著者
松田 実
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.227-235, 2016-06-30 (Released:2017-07-03)
参考文献数
37
被引用文献数
1

前頭葉障害による発話障害を, 3 つの水準に分けて考察した。発話運動面の障害である発語失行 (AOS) では, 従来から重要視されていた構音の誤りの非一貫性では, 他の構音障害と区別できない可能性がある。神経行動学的水準と思われる発話開始困難や発話衝動の低下については, 補足運動野よりも白質障害に注目すべきかもしれない。言語学的な水準の障害として自由発話での喚語や表現選択の問題以外に, 文の構成障害があることを取り上げ, 自験の進行性非流暢性失語例の文作成の障害像を提示した。
著者
小谷 広子 阪下 裕子 林 和加子 吉田 君子 松田 実 植松 邦夫
出版者
特定非営利活動法人日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.226-230, 1980-04-25
被引用文献数
1

A case of mesothelioma of the peritoneum with asbestosis of the lung was reported. Cytological examination of the peritoneal effusion was performed in this case, which was histologically diagnosed to have malignant mesothelioma. Characteristic findings of malignant cells are as follows: Tumor ceils appeared singly or as groups consisting of a few〜 many cells. Some of these cells were overlapping each other. The cytoplasm was abundant and its perinuclear area was staind lightly pale or sometimes appeared to be eosinophilic, with a gradual transition to a deep stain at the periphery. Cytoplasmic rims were distinct and sometimes blister-like protrusions appeared after application of the Giemsa' stain. Nuclei were round or oval and mainly central in location. Their borders were smooth. The chromatin content was increased and chromatin was finely granular with occasional prominent clumps of chromatin. There could be seen 1〜4 small nucleoli and, sometimes, 1〜2 large irregular-shaped nucleoli. Single tumor cells were large and often multinucleated. Mitoses occured in a small number of tumor cells. Thick strand-like, dark clumping or finely granular PAS-positive substances were irregularly distributed in the cytoplasm, sometimes the whole of the cytoplasm was stained as a ring. Vacuolated cytoplasm gave a negative reaction to staining. Vacuolated cytoplasm and a part of the cytoplasmic border were stained positive by alcian blue staining.
著者
松田 実 宝来 威 菊井 正紀 楠 洋子
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.1016-1024, 1995 (Released:2011-11-08)
参考文献数
15

大阪肺癌集検研究班では, 1981年より胸部X線撮影と喀痰細胞診による肺癌検診を実施しているが, 1990年までの10年間に, 喀痰細胞診でDあるいはEと判定された症例の, 精検および追跡調査の結果について報告する. 喀痰を提出した高危険群所属者は, 男女合計16,992人で, 有効喀痰は16,795人が提出した. 要精検者は402例, 原発性肺癌患者は28例であり, したがって陽性反応適中率は6.97%となった. 要精検者のうち判定D群は53例で, 発見された肺癌患者は14例, 陽性反応適中率は26.42%であった. 一方, 判定E群は14例で, 発見された肺癌患者は9例, 陽性反応適中率は64.29%であった. 臨床病期1期肺癌の比率は, 判定D群14例中12例85.7%と, 判定E群6例中2例33.3%よりかなり高かった. また, 判定D群14例中10例は喀痰細胞診単独発見例であり, すべて臨床病期1期であった. 肺癌または喉頭癌以外の判定D群37例, 判定E群3例を追跡し, 5年以上追跡しえた判定D群の16例, 判定E群の2例からは肺癌を発見しえず, Eと判定した2例はfalse positiveと考えられた
著者
松田 実 曽根 啓子 南雲 サチ子 岸上 義彦 辻 直子 建石 龍平
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.989-995, 1994 (Released:2011-11-08)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

組織学的に甲状腺癌が確認された112例に対する穿刺吸引細胞診の成績は, 陽性94例 (83.9%) であった. これに対し, 触診, 超音波検査, X線検査の診断率は, それぞれ67.9%, 58.6%, 50.0%であり, 穿刺吸引細胞診の成績が最も優れていた. 特に乳頭癌の陽性率は87.1%で, ほかの診断法に比しはるかに優れており, 触診, 超音波検査, X線検査のいずれもが癌の所見を示さず, 穿刺吸引細胞診のみが陽性であった症例が10.9%にみられた.穿刺吸引細胞診が疑陽性あるいは陰性であった症例について標本の再検討を行い, 組織所見と対比した結果, 乳頭癌で細胞判定に問題があったと考えられる症例は4例あり, 1例は核内細胞質封入体と変性空胞との鑑別に困難を感じた例であり, ほかは乳頭癌の特徴的な細胞所見が認められなかった. 組織所見に問題があったと考えられる症例は5例あり, 乳頭癌が濾胞腺腫とともに存在した例, follicular valiantを示した例があり, また腫瘍組織の石灰化の著明な例が3例みられた.濾胞癌の陽性率は25%と低く, 穿刺吸引細胞診による濾胞腺腫との鑑別はきわめて困難であ
著者
秋山 文紀 寺島 清隆 松田 実
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1977, no.1, pp.61-65, 1977

4種のジクロロシクロヘキサン,すなわち,かtrans-1,2-体,cis-1,2-体,trans-体,およびcis-1,4-体を塩化アンチモソ(V)と反応させたところ,cis-1,2-体では原料は消失するが,異性体は生成せず,他の3種の異性体では異性化が起こることを見いだした。このさいの異性化率は1,4-ジグロロ体の反応の方がtrans-1,2-体の反応より高いことがわかった。異性化で得られる異性体のうち1,3-ジクロロ体と1,4-ジクロロ体の合計中のcis-1,3-体,cis-1,3-体,cis-1,4-体,およびcis-1,4-体の分率は出発物質や反応時間に依存しないが,反応温度および溶媒には依存することがわかった。異性化の機構としてはクロロニウムイナン中間体を経る機構よりカルボニウムイオソを経る機構の方が妥当と考えだ,以上の異性化の結果をシクロヘキセンの塩化アソチモン(V)による塩素化で副生する1,3-および1,4-ジクロロ体の分布と比較した。
著者
趙 敏廷 谷口 敏代 原野 かおり 松田 実樹 谷川 和昭
出版者
日本介護福祉学会
雑誌
介護福祉学 (ISSN:13408178)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.152-158, 2013-10-01

[目的]本研究は,日本介護福祉学会が創設20年という節目を迎えたことを踏まえ,これまでの介護福祉学の研究傾向について振り返り,これからの介護福祉学に求められる学問研究の蓄積について示唆を得ることを目的とした.[方法]分析の対象は,『介護福祉学』(創刊号〜第18巻第2号)の掲載論文の公表時期および論文タイトルであり,KH Coderを用いてテキストマイニング分析を行った.[結果]その結果,上位150語の頻出語からは研究傾向や特徴が確認できた.また,共起ネットワークからは8つのカテゴリーを作成,介護福祉学の研究傾向におけるキーワードが抽出できた.さらに,対応分析からは研究村象と研究方法の視点から論文公表時期別における一定の研究傾向がみられた.[考察]これらの結果から今後「介護福祉学」の蓄積に向けた学問研究においては,社会のニーズにこたえるといった役割をにないつつ,実証的研究の積み重ねに向けた努力がさらに求められることが示唆された.
著者
松田 実
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.191-195, 2007 (Released:2011-07-05)
参考文献数
20
被引用文献数
1