著者
四柳 宏 田中 靖人 齋藤 昭彦 梅村 武司 伊藤 清顕 柘植 雅貴 高橋 祥一 中西 裕之 吉田 香奈子 世古口 悟 高橋 秀明 林 和彦 田尻 仁 小松 陽樹 菅内 文中 田尻 和人 上田 佳秀 奥瀬 千晃 八橋 弘 溝上 雅史
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.117-130, 2012 (Released:2012-03-07)
参考文献数
69
被引用文献数
3 3

B型肝炎ワクチンは諸外国では乳児期に全員が接種を受けるユニバーサルワクチンである.しかしながら我が国では任意接種(セレクティブワクチネーション)となっており,母児感染防止の場合のみワクチン接種が健康保険でカバーされている. こうしたセレクティブワクチネーションのみでは我が国のB型肝炎を制圧することは困難である. 本稿では平成23年6月2日に第47回日本肝臓学会(小池和彦会長)において行われたワークショップ「B型肝炎universal vaccinationへ向けて」の内容を紹介しながら,ユニバーサルワクチネーションに関してまとめてみたい.
著者
山田 典栄 四柳 宏 小板橋 優 長瀬 良彦 奥瀬 千晃 安田 清美 鈴木 通博 小池 和彦 飯野 四郎 伊東 文生
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.553-559, 2008 (Released:2009-01-09)
参考文献数
11
被引用文献数
18 19 5

首都圏のB型急性肝炎のウイルス学的及び臨床的解析をgenotype Aを中心に行った.Genotype Aの割合は1994年から1997年では31.8%,1998年から2001年では35.3%,2002年から2005年では41.5%であったのに対し,2006年から2008年では73.0%と急増していた.Genotype Aの感染経路として同性間,不特定異性との性交渉のみならず,特定の日本人パートナーとの異性間性交渉を通じて広がり始めていることが示唆された.Genotype A症例の1例が慢性肝炎へ移行し,肝炎が遷延した2例に対し,Entecavirの投与が行われた.また,genotype A症例の14.3%にHIV合併感染を認めた.a determinant regionのアミノ酸配列の解析を行ったところ,genotype Aの1例では,分離されたウイルスクローンのすべてに,免疫グロブリンによる感染防御からエスケープすることが報告されているアミノ酸変異(G145A)が認められた.Genotype Aを中心としたB型肝炎ウイルスの伝播を防止するために,一般市民に対する啓蒙,genotype A HBVキャリアの実態把握,universal vaccinationの検討など公衆衛生面での対応を急ぐ必要がある.
著者
櫻本 恭司 後藤 耕司 岡本 耕 貫井 陽子 畠山 修司 四柳 宏 小池 和彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.4, pp.831-833, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

Mycobacterium marinumは,皮膚に結節や潰瘍を形成し,時に深部に進展して関節炎,腱滑膜炎,骨髄炎などを来すことがある.症例はprednisolone10mgを内服中の60歳代女性.手関節の腫脹で発症し,広範な皮膚潰瘍と四肢深部膿瘍を呈した.難治性の皮膚潰瘍をみた場合,抗酸菌感染症も念頭に置く必要がある.
著者
四柳 宏
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.115, no.9, pp.777-780, 2018-09-10 (Released:2018-09-10)
参考文献数
13

B型肝炎ワクチンの定期接種化は,母子垂直感染対策だけでは水平感染のコントロールができなくなったことが主因である.定期接種化により今後日本のB型肝炎の新規発生は激減すると考えられるが,定期接種の対象とならない児や青少年に対するキャッチアップを行う必要がある.今後解決すべき問題としてエスケープ変異,ワクチン無効例への対策,ブースター接種の検討などが挙げられる.
著者
青柳 宏幸
出版者
教育思想史学会
雑誌
近代教育フォーラム (ISSN:09196560)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.205-219, 2008-09-12 (Released:2017-08-10)

マルクスが労働と教育の結合を主張したことは余りにもよく知られているが、この場合、教育と結合されるべきとされた労働は資本制的生産関係下における賃労働としての児童労働であった。本稿は、国際労働者教育協会ジュネーブ大会における教育論争に注目し、その中にマルクスを位置づけることを通して、労働と教育の結合が彼の当時の社会変革構想の要約的表現であったことを明らかにしたものである。マルクスは、イギリス工場法の歴史の分析を通して、労働者階級の中で最も弱い存在である子どもの保護の必要性が認められることが大人を含めた労働者階級全体の労働時間を制限することの出発点となることに注目していた。そして、その短縮によって生じた自由時間を有効に用いることによって労働者階級が政治的な主体形成を実現していくという社会変革の展望を抱いていた。マルクスにとって、賃労働としての児童労働は、かかる社会変革の構想を可能とするものとしてきわめて重要なものであったのであり、厳格に規制されるべきではあるがけっして禁止されてはならないものであったのである。
著者
四柳 宏
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1071-1075, 2020 (Released:2020-12-01)
参考文献数
10

B型肝炎治療の最終目標は、治癒、すなわちウイルスの肝細胞からの排除にあるが、その達成はこれまでのインターフェロンや核酸アナログだけでは難しい。最近、新たな抗ウイルス薬や宿主免疫に作動する薬物が数多く開発され、それらの臨床試験が開始されており、今後の進歩が期待される。
著者
四柳 宏
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.115, no.9, pp.777-780, 2018

<p>B型肝炎ワクチンの定期接種化は,母子垂直感染対策だけでは水平感染のコントロールができなくなったことが主因である.定期接種化により今後日本のB型肝炎の新規発生は激減すると考えられるが,定期接種の対象とならない児や青少年に対するキャッチアップを行う必要がある.今後解決すべき問題としてエスケープ変異,ワクチン無効例への対策,ブースター接種の検討などが挙げられる.</p>
著者
青柳 宏幸
出版者
教育思想史学会
雑誌
近代教育フォーラム (ISSN:09196560)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-14, 2012-10-13 (Released:2017-08-10)

マルクスが「資本論」において「全体的に発達した個人」という表現を用いたとき、彼がその表現によって表現しようとしていたのはプロレタリアートという近代的な労働者のすがたであった。「全体的に発達した個人」という表現によってマルクスは富一般の創造手段としての労働の主体とされているプロレタリアートのすがたを批判的に把握しようとした。マルクスにおいて「全体的に発達した個人」とは機械制大工業の発展の結果として必然的に現れる人間像を記述したものであり、意識的にその実現をめざすべき教育目的などではなかったのである。マルクスは自由時間を享受した主体は労働時間においても単なる労働の主体ではない「別の主体」になると考えていた。そして、労働者の「別の主体」への転化すなわち人間の解放は、資本制的生産関係の下での機械の発展のなかで既に密やかに始まりつつあると考えていたのである。