著者
松本 文博 桃田 幸弘 高野 栄之 松香 芳三
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.81-85, 2016-12-25 (Released:2017-04-12)
参考文献数
16

症例の概要:症例は35歳の女性.X年6月頃より食事の際に食物が口に入ると左側耳前部,下顎角部から顎下部にかけて刺すような痛みを覚えるようになった.開業歯科医院を受診し顎関節症と診断されスプリント治療を受けたが改善なく,同年10月徳島大学病院高次歯科診療部顎関節症外来を受診した.疼痛は1~数分間持続し特に酸味や濃い味の食物で激痛となった.舌咽神経痛を疑いカルバマゼピンの内服を開始し疼痛の軽減を認めたが消失には至らなかった.その後薬物治療中に手の違和感を訴えたため,血液検査を行ったところ著明な血糖値の上昇を認めた.内分泌内科にて2型糖尿病と診断され,糖尿病治療を受け約1年後には発作性神経痛はほぼ消失した.考察:糖尿病神経障害の一つとしての舌咽神経痛の報告例は少ないが,その特徴として,40歳以下が多いこと,過半数が両側性であることなどが指摘されている.本症例においても年齢が35歳と若年であり,糖尿病治療中に両側性に発作性疼痛を認めたことなど過去の報告例と一致していた.また血糖値をコントロールすることで発作性疼痛が完全に消失したことなどから糖尿病神経障害と確定診断した.結論:糖尿病合併症の一つである舌咽神経痛の一症例を報告した.歯科医師は顎関節部を含む口腔顔面領域の疼痛性疾患の診断に際し糖尿病神経障害にも留意し,現病歴,既往歴,家族歴,心理・社会的要因を含め丁寧な医療面接を心がける重要性が確認された.
著者
桃田 幸弘 高野 栄之 可児 耕一 松本 文博 青田 桂子 山ノ井 朋子 高瀬 奈緒 宮本 由貴 小野 信二 東 雅之
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.53-59, 2016-12-25 (Released:2017-04-12)
参考文献数
37

口腔顎顔面領域に発症する神経障害性疼痛は従来の薬物療法(非ステロイド性抗炎症薬,いわゆるNSAIDs)が奏効し難く,対応に苦慮する.1990年代,米国において新しい疾患概念として口腔顔面痛が提唱され,本邦においても,その対策は喫緊の課題とされる.近年,プレガバリン・トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠(T/A錠)・加工附子末などが用いられ,その経験が蓄積されつつある.今般,われわれはプレガバリン,T/A錠および加工附子末製剤の三剤併用が奏効した口腔顔面痛の3例を経験したので報告する.患者は男性1名,女性2名,年齢50~81歳(平均65歳)であった.全例に対してプレガバリン,T/A錠および加工附子末製剤を併用し,痛みは緩解もしくは消失した.特記すべき有害事象は認められなかった.口腔顔面痛に対するプレガバリン,T/A錠および加工附子末製剤の三剤併用の有用性が示唆された.
著者
大曽根 隆志 岩田 栄之
出版者
富山県立大学
雑誌
富山県立大学紀要 (ISSN:09167633)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.60-68, 1991-03-30

By using Synthesized Crystal Growth Technology which can simultaneously grow several kinds of semiconductor crystals on a single substrate, it is proposed that high-performance Synthesized-CMOS Devices with high electron & hole mobilities can realize both of ultra high speed operation and ultra low power dissipation. Assuming the supply voltage of 3.0V and operation temperature at 77K, it is estimated that CMOS devices fabricated by the combination of (p-GaAs/n-Ge) crystals may show the most high performance characteristics among many combinations of element and III-V compound semiconductors. From the circuit simulations of CMOS inverter chain, delay time (τ) and product of delay time and power dissipation (τP) may be improved by a factor of 15 and 14,respectively, in comparison with the conventional Si-type CMOS devices. Moreover, it is expected that the integration density of the Synthesized-CMOS Devices may become higher by about 10 times.
著者
松田 栄之 中村 太一
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.307-313, 2001-05-29
被引用文献数
2

インターネットの普及によりネットワークに接続されているパソコンなどの端末やサーバの数が急速に増大している.いつでも, どこでも, 気軽に利用できるインターネットの普及によりそのサービス形態にも大きな変化をもたらしている.従来のシステムは, 国内のユーザのみを対象にして, 朝8時から夜7時までのサービスというような形態であった.しかし, インターネットでのサービスは, 世界中のユーザを対象にし, 24時間365日の稼動が求められる.インターネットが社会のインフラとなりつつあり, システム構築にオープンシステムを利用するようになり構築技術も変わってきている.また, インターネット時代のサービスを保証する考え方も新しく生まれてきている.本稿では, システムの信頼性, 特に可用性を中心にインターネット時代のネットワークシステムの構築に関する動向について述べる.
著者
岡田 誠司 岩波 明生 石井 賢 中村 雅也 戸山 芳昭 岡野 栄之
出版者
日本炎症・再生医学会
雑誌
炎症・再生 (ISSN:13468022)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.602-610, 2004 (Released:2006-10-25)
参考文献数
43

Neural stem cells (NSCs) are multipotential progeniotr cells, which can generate neurons, astrocytes, and oligodendrocytes, the three major cell types in the central nervous system. They also have the self-renewal activity and can be expanded in an undifferentiated state in vitro. Due to their capability of multipotency and chemotaxis for lesion site, there has been increasing interest in the identification and characterization of NSCs for therapeutic applications. However some numbers of recent studies demonstrated the existence of endogenous NSCs in adult mammalian central nerve system, their self-repairing activity is very faint. The cause of poor regenerative capability would be included microenvironmental factors that inhibit neurogenesis and axonal regeneration. We have investigated the effect of NSCs transplantation and modification the microenvironment for experimental spinal cord injury. This review will provide an overview of therapeutic strategy for neurodegenerative diseases and traumatic injury, such as Parkinson's disease and spinal cord injury.
著者
箱崎 順一 東村 栄之助 豊田 静子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.887-891, 1968-06-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
6

官能基としてN-ブトキシメチルアミドと酸アミド基を含む反応性アクリル系高分子の橋かけ反応についてTorsional Braid Analysis (TBA) を用いて検討した。TBA 法は今までは主に高分子の粘弾性の熱的変化の測定に用いられていたもので,,橋橋かかけけ反応については定性的な反応過程の追跡がわずかに行なわれているに過ぎない。本報ではアクリル系高分子の橋かけ反応の速度論について化学的手法との対比において剛性率を用いる速度式によって定量的な取り扱いを可能にした。その結果,この系では反応初期では2次反応式に従い,活性化エネルギーと官能基の相互反応性も通常の化学的手法から求めた値と一致した。そして官能基の反応率の変化は橋かけ反応の進行と対応することがわかった。
著者
塩見 春彦 岡野 栄之 塩見 美喜子
出版者
徳島大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

脆弱X蛋白質のショウジョウバエ相同体dFMR1タンパク質がRNAi分子経路と相互作用することを明らかにし、「RNAi分子装置の異常による疾患」という新しい領域を開いた。さらにdFMR1複合体(dFMR1-RNP)の精製を進め、この複合体にはRNAi関連因子AGO2とDmp68のみならず、性行動関連因子Lingererが含まれていることを明らかにした。また、この複合体には約20塩基長の小分子RNAが含まれていることも判明した。クローニングを進めた結果、約20塩基長の小分子RNAは内在性siRNAであると考えられた。そこで、AGO2と相互作用するは内在性siRNAのクローニング法を確立し、それらの配列情報を得た。また、Lingererにはヒト相同体(AD-010とNICE-4)が存在し、これらがヒトFMR1と相互作用することを確認した。一方、Musashi1 (Msi1)に結合する共役蛋白質の濃縮・精製を行い、MALDI-TOF MS法でPoly (A) Binding Protein 1 (PABP1)を同定した。Msi1はPABP1のeIF4G結合部位(PABP1のN末部位)に結合し、eIF4GとPABP1の結合を積極的に解除または弱めていることをin vitroの結合実験で明らかにした。またMsi2単独欠損マウスの個体の解析を行ったところ、背側神経節の発達不全のために脊髄との線維連絡が低下していることが明らかとなった。さらに、Msi2の標的遺伝子の解析を行ったところプライオトロピン(ptn)が同定され、ptnのmRNAの3'非翻訳領域に特異的に結合し、その発現を転写後調節していることが明らかになった。
著者
中内 啓光 丹羽 仁史 横田 崇 須田 年生 岡野 栄之 石川 冬木
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

本特定領域研究では1)細胞の初期化の機構の解明、2)幹細胞の未分化性維持機構、3)幹細胞の多様性と可塑性の三つの柱を中心に5年間にわたり研究を進めた。ES細胞、組織幹細胞のそれぞれにおいて研究が大きく進展したが、最近2年間に本特定領域研究の分担研究者である山中伸弥教授らによって遺伝子導入によって体細胞を多能性幹細胞に変換する技術が開発され、再生医療・幹細胞研究に大きな転換を迎える事態となったことは特筆すべきことである。厳しいガイドラインのため本邦においてはヒトES細胞研究が諸外国と比して進展に遅れていたが、倫理的問題を含まないiPS細胞技術の登場により、多能性幹細胞の分野にも今後大きな研究の進展が見込まれる。そこで昨年度は新しく開発されたiPS細胞産生技術を中心に「幹細胞研究を支える新しいテクノロジー」というテーマのもとでシンポジウムを開催した。産業界を含む300名近い研究者が参加し意見を交換することにより、本研究領域における研究で得られた知見を速やかに共有することができた。また、総括班メンバーを中心に今後の幹細胞研究の進め方などについても討議がなされた。
著者
岡野 栄之
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

神経系に発現している遺伝子の多くは、選択的スプライシングにより遺伝子産物の多様性を形成し、偏在的に発現している遺伝子の中でも神経系における特有の構造と機能を獲得しているものが知られている。この結果生じる遺伝子産物の多様性は、複雑な神経系の発生過程と可塑性等において重要な役割を果していることが予想される。しかしながら、この神経系における選択的スプライシングの機構、特にそこに関与する遺伝子産物に関しては、殆ど知見がない。申請者は、神経系のスプライシングを調節していると考えられる神経細胞特異的RNA結合性蛋白質をコードするmusashi遺伝子を、ショウジョウバエ神経系に異常を有する変異体のスクリーニングにより同定することに既に成功している。loss-of-function typeのmusashi変異体においては、成虫の外感覚器を構成する細胞群(Neuron,Glia,Tricogen,Tormogen)の発生過程における運命決定における異常が観察された。即ち、NeuronとGliaの前駆細胞(Neuron Glia Progenitor,NGP)がTricogenとTormogenの前駆細胞(Socket Shaft Precursor;SSP)に形質転換していることが明らかとなった。従って、ショウジョウバエmusashi遺伝子産物は、RNA結合性蛋白質として、post-transcriptional levelにおいて下流遺伝子群の発現を調節することにより、神経発生過程における細胞の運命決定を制御していると考えられた。更に我々は、より複雑で高次の神経系を有する哺乳類におけるmusashi遺伝子ファミリーの役割を明らかにするために、musashi遺伝子のマウス相同分子(mouse-musashi)の単離にも成功しており、これも神経系特異的なRNA結合性蛋白質をコードすることを明らかにした。mouse-musashi遺伝子産物は、神経系の未分化幹細胞において発現しており、ショウジョウバエの相同分子との類似性より、これも、哺乳類神経発生過程における細胞の運命決定を制御していると考えられた。又、本分子のRNA結合能の証明についても成功しており、今後下流標的遺伝子の同定をおこなって行きたい。