著者
水田 栄之助
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.135, no.6, pp.789-792, 2015-06-01 (Released:2015-06-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1 3

Individual taste sensitivity affects one's eating habits, and could thus play a role in the development of lifestyle-related diseases, such as obesity, hypertension and dyslipidemia. However, only a handful of studies have been conducted to investigate these associations. Therefore, we performed taste sensitivity tests on approximately 250 patients with lifestyle-related diseases who were undergoing outpatient treatment at the Department of Internal Medicine, or received a health check-up in order to examine the associations of individual taste sensitivity with their eating habits and lifestyle-related diseases. Our findings showed that sensitivity to sweet or salt taste was significantly lower in patients with cardiovascular diseases, and sensitivity to umami taste was significantly lower in obese patients. These findings suggest that taste sensitivity disorders may be linked not only to eating habits and lifestyle-related diseases, but also to the onset of cardiovascular diseases. Many of the drugs used in the treatment of lifestyle-related diseases and cardiovascular diseases, including antihypertensive agents, statins, fibrates, and allopurinol, are known to form zinc chelates and thereby possibly cause drug-induced taste disorders. Focusing on individual taste sensitivity to improve or maintain intake levels may become a new target for drug development in the areas of lifestyle-related and cardiovascular diseases.
著者
中島 栄之介
出版者
奈良学園大学人間教育学部
雑誌
人間教育 = Online Journal of Humanistic Education (ISSN:2433779X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.7, pp.211-219, 2018-09

特別支援学校における人権教育について、兵庫県立A特別支援学校での実践例をもとに検討した。特別支援学校における人権教育は在籍する生徒が差別を受けてきていると同時に差別をする側にもなるという特徴がある。しかし、これまでの特別支援学校の人権教育は性教育などの男女共生教育が中心であり障害者差別を取り上げることは少なかった。A特別支援学校では継続的に人権教育を行うことを目的とし、人権教育の実践を積み重ね障害者差別を題材として取り上げるまでに至った。生徒にとって障害者差別を取り上げることは生徒にとって過去自らが受けてきた差別と向き合うことであり、自身の障害と向き合うこと、さらに今後受けるであろう差別と向き合うこと、そして、自らの持つ差別性と向き合うことでもあった。また、人権教育を継続していくためには、組織やシステムを構築するとともに組織やシステムを動かしていく人材の育成も継続的に必要であると考えられた。
著者
栄之
出版者
永壽堂

上野広小路を行き交う女性たちと若侍を描いたもの。行楽の人々であろうか、桜模様の衣装が華やかである。足元には、忍川に三つ並んで架かる橋(三枚橋。三橋とも呼ばれる)が描かれ、遠景には、桜の名所として名高い寛永寺の森が見える。各画面左下には、絵師名「栄之画」、および版元西村屋与八(永寿堂)の商標が記されている。
著者
中谷 英章 入江 潤一郎 稲垣 絵美 藤田 真隆 三石 正憲 山口 慎太郎 岡野 栄之 今井 眞一郎 安井 正人 伊藤 裕
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
日本臨床薬理学会学術総会抄録集 第42回日本臨床薬理学会学術総会 (ISSN:24365580)
巻号頁・発行日
pp.2-P-M-2, 2021 (Released:2021-12-17)

【目的】最近の動物実験においてニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の細胞レベルでの減少がインスリン抵抗性やアルツハイマー病に代表される老化関連疾患を引き起こすこと、NAD中間代謝産物であるニコチンアミドヌクレオチド(NMN)を投与することによりNAD量を増加させ、病態を改善することが報告されている。しかし、ヒトにおけるNMN投与の安全性については不明である。そこで我々は健康成人男性にNMNを経口投与し、その安全性を確認する臨床試験を行った。【方法】10名の健康成人男性に対し、100mg、250mg、500mg のNMNを1週間毎に段階的に経口投与し、投与前と投与後5時間までの血液データや尿データ、投与時の身体計測、心電図、胸部レントゲン、眼科検査を行った。【結果・考察】NMNの単回経口投与により血圧、心拍数、体温、血中酸素飽和度は変化しなかった。血液データでは、軽度の血清ビリルビンの上昇、血清クレアチニン、クロライド、血糖値の低下以外は変化を認めなかった。投与前後での眼科検査や睡眠の質スコアは変化を認めなかった。また、血中のNMNの最終代謝産物は濃度依存性に上昇し、体内でNMNの代謝がきちんと行われたことが確認された。【結論】健康成人男性においてNMNの単回経口投与は大きな副反応を認めず安全であった。
著者
桃田 幸弘 高野 栄之 可児 耕一 松本 文博 茂木 勝美 青田 桂子 山村 佳子 大守 真由子 東 雅之
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.27-35, 2012 (Released:2013-07-26)
参考文献数
42

目的:舌痛の器質的要因をスクリーニングする系統的診断システムを提案し,本法によって診断された舌痛関連疾患を検討する.方法:2007年1月から2009年12月までに舌痛などの舌症状を主訴としてで徳島大学病院歯科口腔外科を受診した患者104名(男性12名,女性92名,平均68歳2か月)を臨床統計学的に検討した.病歴聴取,口腔内・外診査,パノラマエックス線検査,血液検査,培養検査および唾液分泌検査を行った.局所麻酔薬と非ステロイド性抗炎症薬の効果も確認した.結果:原因疾患は口腔カンジダ症,口腔乾燥症,舌炎,舌痛症などであった.器質的変化や自覚症状の乏しい口腔カンジダ症や口腔乾燥症が認められた.舌痛症の多くは舌尖に発現し,食餌性刺激による誘発痛や圧痛が認められないものが多く,局所麻酔薬や非ステロイド系抗炎症薬の効果も乏しかった.舌痛症における味覚異常や低亜鉛血症の発現頻度は低く,手掌部発汗が高頻度に認められた.結論:培養検査や唾液分泌検査が不可欠であり,器質的変化や自覚症状の乏しい口腔カンジダ症や口腔乾燥症は舌痛症と診断される可能性があった.舌尖部疼痛を有し,食餌性刺激による誘発痛や圧痛がないことが舌痛症特異的な所見と考えられ,その病態に舌粘膜障害の関与は否定的であった.味覚障害や低亜鉛血症は舌痛症特異的な所見ではなかった.手掌部発汗は舌痛症特異的な所見と考えられ,その病態に自律神経異常の関与が示唆された.
著者
原 晃一 岡野 栄之 伊藤 豊志雄 疋島 啓吾 井上 賢 澤本 和延 金子 奈穂子 豊田 史香 小牧 裕司 牛場 潤一 武見 充亮 塚田 秀夫 岩田 祐士
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

コモンマーモセットを用いた、開頭を必要としない低侵襲脳梗塞モデル作成法が確立された。統一した手技によって信頼度の高い確率でモデル作成が可能となった。本モデルは大脳基底核を中心とした広範囲な脳梗塞を呈し、病巣と反対側の半身運動麻痺を来たす。本モデルにおいてはこのような神経学的異常所見を客観的に評価するための行動学的解析や、MRI、PETを含めた放射線学的解析が可能であり、げっ歯類に比べ、よりヒトに近い脳梗塞モデルであると考えられる。さらに神経新生などの評価のための組織学的検討のみならず、定位的脳手術による細胞移植も可能であり、今後の脳梗塞治療研究に非常に有用なモデルであると考えられる。
著者
鈴木 栄之心
出版者
会計検査院
雑誌
会計検査研究 (ISSN:0915521X)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.33-50, 2022-03-22 (Released:2022-03-22)
参考文献数
18

本稿の目的は,公的介護保険制度が施行された2000 年から2014 年までの15 年間を対象として,介護保険料の設定における市町村行動と調整交付金の財政調整効果を検証することにある。 調整交付金は標準給付費の5%を総額として交付されるが,次期保険料の設定では,その他の各要素と同様に市町村の裁量によって決定されるため,調整交付金の目的どおりに市町村間の保険料格差が是正されるとは限らない。また,調整交付金の総額を標準給付費の5%とした特段の根拠は無く,これによって保険料格差が是正されるとは限らない。 そこで本稿では,まず,2 県47 市町村に対するヒアリング調査を実施して,保険料設定に係る市町村の裁量とそれに対する国や県のコントロールの成否を把握した。次に,調整交付金自体の財政調整効果を検証し,最後に,調整交付金による財政調整に市町村行動を加味した保険料格差を検証した。 ヒアリング調査の結果,市町村の裁量のうち保険料水準への影響が最も大きいのは準備基金取崩し額の調整であった。国や県は最低ラインを示しながら,可能な限り全額取崩すよう指導・助言を行っていたが,市町村のコントロールに必ずしも成功しておらず,当初の取崩し額を維持する市町村も散見された。 検証に当たっては,保険料概念を6 種類に整理した。そのうえで,厚生労働省およびすべての都道府県に対して情報公開請求を行い,過去15 年間のすべての市町村別保険財政データを収集して,「介護保険財政データベース」を独自に構築した。 検証の結果,調整交付金は市町村間の介護給付水準に係る格差是正に寄与しており,財政調整効果が制度施行当初から徐々に強化されていた。また,市町村の準備基金取崩しは,市町村間の保険料格差を拡大させていたほか,国の調整交付金による格差是正を阻害していた。 このような事態が起こる原因は,現状の制度設計が,保険料収入の剰余金を次期保険料の抑制に活用できるようになっていることにある。仮にすべての剰余金を当期計画期間において被保険者に還元する制度設計となっていれば,少なくとも市町村の準備基金取崩し額の調整について,国や県のコントロールに係る問題は生じない。 そもそも準備基金への積立金は保険料収入の剰余金であり,結果的に被保険者から過大に徴収したものである。したがって,国としては,市町村が被保険者に対して当期中に還元するよう,制度変更を行うことも検討するべきであろう。
著者
堀 桂子 中村 雅也 岡野 栄之
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.2, pp.53-59, 2013 (Released:2013-04-11)
参考文献数
34
被引用文献数
1

脊髄損傷とは, 外傷などによる脊髄実質の損傷を契機に, 損傷部以下の知覚・運動・自律神経系の麻痺を呈する病態である. 本邦の患者数は10万人以上おり, 加えて毎年約5,000人の患者が発生しているにもかかわらず, いまだに有効な治療法は確立されていない.しかし, 近年基礎研究が進歩し, 中枢神経系も適切な環境が整えば再生することが明らかになった. 脊髄損傷に関する研究も著しく進み, すでに世界中でさまざまな治療法が臨床試験に入りつつある. わが国でも, 神経幹細胞, 嗅神経鞘細胞, 骨髄細胞などを用いた細胞移植療法のほか, 顆粒球コロニー刺激因子 (granulocyte-colony stimulating factor, G-CSF) や肝細胞増殖因子 (hepatocyte growth factor, HGF) などの薬剤が臨床応用される可能性がある.本稿では, 脊髄再生に関する基礎研究を, 細胞移植療法とそれ以外に分けて述べ, さらに現在世界で行われている臨床試験について概説する.
著者
中島 栄之介 森 一弘
出版者
奈良学園大学
雑誌
奈良学園大学紀要 = Bulletin of Nara Gakuen University (ISSN:2188918X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.119-126, 2018-10

特別支援学校において感染性胃腸炎の集団発生を経験した。感染性胃腸炎の集団発生から終息までの欠席・学級閉鎖の状況、対応策等の記録を分析し、感染ルート、感染拡大の原因、対応策等について検討した。感染源をトイレと推定したが、感染経路の特定できない広がりも見受けられた。学校医の助言を受け消毒等を行った。しかし、一般的対応だけでは著効なく、全クラスが時期をずらして学級閉鎖となるほど感染が拡大した他、保護者への感染も確認された。その後、約2週間で新規の感染者は確認できなくなり約3週間で終息した。感染拡大の背景として、感染力の強さに加え、施設設備、児童生徒数の増大による過密化、種々の集団の形成など特別支援学校特有の要因が示唆された。また、保護者への情報提供は感染拡大にも有効であったと考えられた。
著者
中島 栄之介 松﨑 泰
出版者
奈良学園大学人間教育学部
雑誌
人間教育 = Online Journal of Humanistic Education (ISSN:2433779X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.17-26, 2019-01

肢体不自由者教育における対象の変遷と教育的対応上の課題を「重度・重複障害」という言葉に着目して定義とその変遷、学習指導要領上の位置づけを中心に検討した。いわゆる「重度・重複障害」を有する子どもたちの教育は、戦後の福祉制度や特別支援教育の開始時期よりすでに問題になっており制度改革や学習指導要領の改訂ごとに課題とされてきた。特に就学猶予がなくなった養護学校義務化、医療的ケアが話題となっていた特別支援教育の開始時期に課題が顕著になっていた。また、「発達障害」の概念が広がった現行学習指導要領や次期学習指導要領以降には「発達障害」と併せ有する障害、「発達障害」を視野に入れた学びの連続性などが今後「重度・重複障害」を考える上でポイントになると考えられた。