著者
森 玲奈 村上 正行
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.2, pp.24-31, 2021-07-03 (Released:2021-07-05)

本研究では,大学院生のより詳細な教育状況・学修状況の把握を目的として,都内の私立X大学大学院生を対象に半構造的インタビューを行い,大学院生活の躓きと乗り越えを明らかにすることを目指す.本稿では大学院生17名に行った半構造化インタビューの結果について述べる.大学院生は不可避な研究生活における躓きを研究室・ゼミや指導教員以外のリソースからの支援を活用し乗り越えていることが明らかになった.
著者
杉山 昂平 森 玲奈 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.41087, (Released:2018-03-08)
参考文献数
28
被引用文献数
2

成人による趣味の追求をインフォーマルな学習環境はいかに支えるのだろうか.趣味における興味に着目してきた先行研究に対し,本研究の目的は「興味の深まり」という新たな概念を提案し,「成人の趣味活動において学習環境との関わりによっていかにして興味が深まるのか」を明らかにすることである.趣味活動の事例としてアマチュア・オーケストラを対象とし,オーケストラ団員15名に対して回顧的インタビュー調査を行った.分析の結果,興味の深まりには(1)音楽的な無自覚からの脱出,(2)上達・達成へのとらわれからアンサンブルへ,(3)参加すること自体の価値を見いだす,という3類型が存在し,それぞれの興味の深まりは(a)活動形態の異なる共同体への移動,(b)活動理念の異なる共同体への移動,(c)目標を焦点化する役割付与,という学習環境との関係性において生起することが明らかになった.
著者
杉山 昂平 森 玲奈 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.43058, (Released:2019-12-16)
参考文献数
31

人々が興味を深めるとき,ゆるやかな社会関係はいかに関与するのだろうか.本研究の目的は,興味追求としての趣味に着目し,強固な実践共同体に対比されるゆるやかな実践ネットワークが,趣味人の興味の深まりにいかに関与するのかを明らかにすることである.事例としてデジタル時代のアマチュア写真を取り上げ,アマチュア写真家14名に対してインタビュー調査を行った.その結果,興味の深まりに関与する実践ネットワークとして「刺激的な隣人」と「不特定の観衆」の存在が明らかになった.「刺激的な隣人」は自立的に興味を追求する多様な趣味人の姿を可視化し,「不特定の観衆」は作品に対してフィードバックを与え,それ自体が深い興味の対象になったり,興味を深めるさらなる行動を促したりする.こうした実践ネットワークはSNSによって形成されることもある一方,展覧会や撮り歩き会のような,趣味の世界における対面的な活動によっても形成されていた.
著者
杉森 玲子 前野 深
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.59-73, 2023-06-30 (Released:2023-07-27)
参考文献数
41

Historical materials have revealed that the Hokkaido-Komagatake Volcano erupted in 1640. In this study, we reviewed in detail the historical materials from a period closer to the eruption, which had yet to be investigated. We then evaluated the reliability of the historical materials and tried to interpret their descriptions from a volcanological point of view. As a result, we found descriptions that support the previous understanding of the number of deaths, tsunamis, and volcanic edifice collapses, or provide more detailed information. In contrast, we also found descriptions of the duration of the 1640 eruption, which lasted about one day and night, of the fallout tephra containing charred wood chips suggesting the occurrence of high-temperature phenomena and subsequent buoyant plumes, and of the volcanic activity that continued for a long time after the eruption. Examination of these historical materials revealed a picture of the eruption that could not be understood from the historical materials used in the past. This study demonstrates that investigating the characteristics of historical materials and the reliability of their descriptions and comparing the information obtained from them with volcanological knowledge can be useful in clarifying the phenomena and processes of past volcanic eruptions.
著者
安斎 勇樹 森 玲奈 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.135-145, 2011
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究の目的は,協同制作を課題とした大学生向けのワークショップにおいて,創発的コラボレーションを促すためのプログラムデザインの指針を示すことである.本研究では,創発の源泉としての「矛盾」の効果に着目し,「作品の制作課題に,相反するイメージを持ちながら多様な解釈の可能性を持った2つの条件を設定する」というデザイン原則を仮説として設定した.デザイン原則に基づく実践を4回(全15グループ),比較対象としてデザイン原則に基づかない実践を4回(全11グループ)行い,各グループの制作プロセスを質的に分析した.その結果,デザイン原則に基づく実践においては,制作中に提案されたアイデアや制作物に対する視点に揺さぶりがかかり,創発的コラボレーションが促されることがわかった.ただし,参加者が設定した2条件を「相反するもの」として解釈しなかった場合は,視点の揺さぶりがかからないために創発的コラボレーションは起こりにくいことがわかった.その点に留意すれば,本研究で提案したデザイン原則は有効であることが示された.
著者
杉山 昂平 森 玲奈 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.31-41, 2018-07-10 (Released:2018-07-10)
参考文献数
28
被引用文献数
2

成人による趣味の追求をインフォーマルな学習環境はいかに支えるのだろうか.趣味における興味に着目してきた先行研究に対し,本研究の目的は「興味の深まり」という新たな概念を提案し,「成人の趣味活動において学習環境との関わりによっていかにして興味が深まるのか」を明らかにすることである.趣味活動の事例としてアマチュア・オーケストラを対象とし,オーケストラ団員15名に対して回顧的インタビュー調査を行った.分析の結果,興味の深まりには(1)音楽的な無自覚からの脱出,(2)上達・達成へのとらわれからアンサンブルへ,(3)参加すること自体の価値を見いだす,という3類型が存在し,それぞれの興味の深まりは(a)活動形態の異なる共同体への移動,(b)活動理念の異なる共同体への移動,(c)目標を焦点化する役割付与,という学習環境との関係性において生起することが明らかになった.
著者
森 玲奈
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.445-455, 2008
参考文献数
47
被引用文献数
2

研究の目的は,ワークショップのデザイン過程におけるベテラン実践家の特徴的思考を明らかにすることである.本研究では,ベテラン実践家とその集団に属する初心者2組を選定し,発話思考法を用いた実験を行った.分析は,まずベテラン-初心者間における発話の流れを比較し,その上で2人のベテランに共通する特徴を検討した.その結果,ベテランにおけるデザイン時の発話には,依頼内容の確認・解釈の後,コンセプトの立案を行うという共通の流れがあることが明らかになった.また,ベテランの特徴として,(1)依頼内容に対する幅広い確認を行うこと,(2)デザインの仮枠となるデザインモデルを使用すること,(3)保留や選択の余地を残した「やわらかな決定」を行うこと,(4)スタッフの育成に対する意識とデザイン力を持つこと,(5)過去の実践体験の想起や経験から構築された慣習を用いてデザインを行うこと,が明らかになった.さらに,ベテランには経験に裏づけられた「個人レベルの実践論」があることが示唆された.
著者
藤森 玲 佐々木 辰輔 田中 結 長田 駿朗 藤本 貴之
雑誌
研究報告ドキュメントコミュニケーション(DC) (ISSN:21888892)
巻号頁・発行日
vol.2018-DC-108, no.3, pp.1-6, 2018-03-20

近年,日本の伝統的なかるたである 「小倉百人一首」 をモチーフとしたアニメや漫画などのヒットなどを通して,エンターテインメントとしての百人一首に対する若い層からの再評価が進んでいる.百人一首をモチーフとしたスマートフォンアプリケーションも数多くリリースされている.百人一首のような伝統的なコンテンツとアニメ的な造形の親和性が高く,日本刀を擬人化したゲーム ・ アニメ 「刀剣乱舞」 に代表されるように,多くのコンテンツが登場し,スマートフォンアプリケーションとして展開する事例は多い.百人一首も人気となった漫画 ・ アニメ 「ちはやふる」 などにより近年,非常に注目を集めている日本の伝統的コンテンツの一つである.しかしながら,今日リリースされている百人一首関連のスマートフォンアプリケーションの多くは,クイズゲーム ・ 暗記支援 ・ 読み上げ機能といった 3 つに集約され,いずれも今日注目されているアニメ的造形が利用されているわけではなく,他の伝統的コンテンツのような十分な展開ができているとは言い難い.そこで本研究では,百人一首の絵札 100 枚を全て美少女キャラとして擬人化しつつ,百人一首アプリケーションとしての実用性を持たせたアプリケーションを開発した.
著者
安斎 勇樹 森 玲奈 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.135-145, 2011-11-01 (Released:2016-08-08)
参考文献数
23
被引用文献数
2

本研究の目的は,協同制作を課題とした大学生向けのワークショップにおいて,創発的コラボレーションを促すためのプログラムデザインの指針を示すことである.本研究では,創発の源泉としての「矛盾」の効果に着目し,「作品の制作課題に,相反するイメージを持ちながら多様な解釈の可能性を持った2つの条件を設定する」というデザイン原則を仮説として設定した.デザイン原則に基づく実践を4回(全15グループ),比較対象としてデザイン原則に基づかない実践を4回(全11グループ)行い,各グループの制作プロセスを質的に分析した.その結果,デザイン原則に基づく実践においては,制作中に提案されたアイデアや制作物に対する視点に揺さぶりがかかり,創発的コラボレーションが促されることがわかった.ただし,参加者が設定した2条件を「相反するもの」として解釈しなかった場合は,視点の揺さぶりがかからないために創発的コラボレーションは起こりにくいことがわかった.その点に留意すれば,本研究で提案したデザイン原則は有効であることが示された.
著者
中村 亮一 石瀬 素子 杉森 玲子 佐竹 健治
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

1. はじめに1855年(安政二年)安政江戸地震の深さは,未だよく分っておらず,太平洋プレートで発生した深い地震とするものから極浅い地殻内地震であるという説まで様々ある.その根拠は震度分布の他,史料から推定されるS-P時間がある.後者のS-P時間については,歌舞伎役者中村仲蔵の記述が有名である.萩原(1990)はこれに基づき10秒程度と読取り~100kmの深さとした.中村・他(2003)は仲蔵史料に他の記事も含め5-10秒としフィリピン海プレート内の地震と推定した.宇佐美(1983)は,仲蔵の記事から3-5秒と読み取った.これによると前の2研究よりも浅い地震となる.これらいずれも,「日本地震史料」(武者,1951)に記載された内容から推定されたものである.これに対し我々は今回「日本地震史料」の記述とは異なる記載の仲蔵自筆の原本(崩し字)が国会図書館古典籍室に存在することを明らかにした(以降「国会本」と称する).これは2018年8月9日に国会図書館に古書店から納品されたものである.郡司(1944)によると仲蔵の自筆本は散佚したとされているが,「国会本」は,その一部である可能性がある.本発表は,この発見を報告するものである.2. 中村仲蔵記事の資料間の比較 中村仲蔵の記事は,上述「日本地震史料」と「国会本」の他,『手前味噌』という題目で「歌舞伎新報」(明治十二年創刊:ブリタニカ国際大百科事典.国会図書館で閲覧可能)に掲載されている.「国会本」は全16冊あり第9冊と第10冊に安政江戸地震のことが書かれているが,両者の記述内容は異なっている.すなわち中村仲蔵による安政江戸地震の記述が4種類存在することになる.「国会本」の翻刻は著者の一人である杉森により行われてきている.その第9冊と「日本地震史料」のS-P時間の推定に該当する記載部分を表1に示す.この太字部分が異なっている.最初の部分を見ると「日本地震史料」では地面が下から持ち上がる「動き」が描かれているのに対して,「国会本」第9冊では「音響」が描かれていることがわかる.音響としては地鳴りや建物の振動等によって生じたもの等が考えられるが,安政江戸地震では地鳴りが記述されている史料が他にも多くあることから地鳴りの可能性が高い.さらに,「日本地震史料」と「国会本」第10冊および「歌舞伎新報」の記載内容は似ている一方,これらと「国会本」第9冊とは異なることがわかってきた.「歌舞伎新報」の記事は,仲蔵自筆の記録を基に,狂言作者久保田彦作が補綴・省略し掲載されたということである.実際,「歌舞伎新報」は読み手がいることを意識した書き方がなされている.また,これら4種類の史料が書かれた年代については,記述内容の分析から,「国会本」第9冊は他の3史料よりも以前に書かれたものである可能性が高いことがわかった.「国会本」第9冊は一次史料に近い(地震発生時により近い時期に作成された)ものと考えられ,今後,地震の検討を行う際には,「国会本」第9冊の内容を用いることが望ましい.3. S-P時間推定に与える影響「日本地震史料」と「国会本」第9冊は,音響(地鳴り)から始まるか,動きから始まるかの違いがあった(表1).地鳴りはP波の振動が空気に伝わり生じたとするとP波到達時刻推定には大きな影響がないと考えられる.一方,S波主要動については,「日本地震史料」では歩き出すと揺れはじめたことが記されているのに対して,「国会本」第9冊では立ちあがると揺れはじめとなっていて,これからS-P時間は若干短くなると考えられる.また,大きな地震では,震源の破壊開始からいわゆる強震動発生領域(SMGA)に達するまでに時間遅れがあることが知られ,その場合はS波初動の振幅が小さく,大きく揺れ出すまでに時間がかかることがある.つまり,実際のS波到達と体感でのS波到達時時間差が生じると考えられる. これらのことを踏まえると,実際のS-P時間は,これまでよりも短くても説明が可能と考えられる.4. S-P時間から考えられる深さ S-P時間が仮に5秒として全国を対象としたJMA2001走時表を用いると,震央距離が20kmの場合の震源深さは40kmとなる.しかし,厚い堆積層に覆われた関東地方では,JMA2001走時表を用いた震源より浅くなると考えられる.どの程度浅くなるかを検討するため,図2に仲蔵が被災した両国からさほど離れていないK-NET猿江(TKY021)で観測されたS-P時間が5秒の地震波形を示す.これは羽田沖の深さ23㎞(2015/12/26,M3.4, 震央距離20 km)の地震であり,この程度の深さである可能性も考えられることがわかる.
著者
森 玲奈
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.51-62, 2009
被引用文献数
2

本研究の目的は,ワークショップ実践家のデザインの方法が変容した契機に着眼し,実践家がデザインにおいて熟達する過程を明らかにすることである.本研究では,経験年数5年以上のワークショップ実践家19名に対し,半構造化インタビューを行った.分析の結果,実践家におけるデザインの方法の変容の契機は,(1)対象者の違いに応じたデザインの必要への気づき,(2)自己の立場の変化に応じたデザインの必要への気づき,(3)他者との協働デザインの中での気づき,(4)継続の必要性,(5)実践の内省による気づき,の5つに類型化することができた.さらに,ワークショップ実践家がデザインにおいて熟達化する過程では,(1)実践家としての原点,(2)葛藤状況とブレイクスルー,(3)他者との関係構築への積極性,(4)個人レベルの実践論の構築,という4つの要素が関わり合っていることがわかった.
著者
友森 玲子 花田 道子 宮野 のり子
出版者
Japanese Society of Pet Animal Nutrition
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.Suppl_30-Suppl_31, 2012

肝臓がんで腹水が貯留しているラブラドール系雑種オス犬を動物愛護相談センターより引取り、余生の QOL 向上のために、当サロンと自然療法を行なっている動物病院で栄養管理を行ったところ消化機能が改善されて、皮膚の状態、外耳道炎等も好転した。保護当初歩行困難を呈していた両側膝蓋骨脱臼に対しては当サロンではプールで運動させ、さらに動物病院では理学療法を施したところ、走れるまでになった。その後、一時飼養ボランティア宅で栄養管理を行ったところ 2 年余り小康状態を維持している。
著者
杉山 昂平 森 玲奈 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
2018

<p>成人による趣味の追求をインフォーマルな学習環境はいかに支えるのだろうか.趣味における興味に着目してきた先行研究に対し,本研究の目的は「興味の深まり」という新たな概念を提案し,「成人の趣味活動において学習環境との関わりによっていかにして興味が深まるのか」を明らかにすることである.趣味活動の事例としてアマチュア・オーケストラを対象とし,オーケストラ団員15名に対して回顧的インタビュー調査を行った.分析の結果,興味の深まりには(1)音楽的な無自覚からの脱出,(2)上達・達成へのとらわれからアンサンブルへ,(3)参加すること自体の価値を見いだす,という3類型が存在し,それぞれの興味の深まりは(a)活動形態の異なる共同体への移動,(b)活動理念の異なる共同体への移動,(c)目標を焦点化する役割付与,という学習環境との関係性において生起することが明らかになった.</p><p></p>
著者
柳田 多寿 大森 玲子
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.351-360, 2007-07-01

平成17年7月に施行された「食育基本法」では、(1)食に関する知識、(2)食を選択する力、(3)健全な食生活を実践する態度の3項目を育成することが目的とされ、なかでも食育の対象として子供に焦点がおかれている。本研究では、食に関心を持ち、将来にわたり正しい食の選択ができる児童を育成するための方策について、食生活実態調査に基づき、検討した。宇都宮市内4校で実施した児童の食生活実態調査の結果、朝食およびおやつの摂取状況、野菜嫌いな児童の割合において、地域差が認められた。都心部の児童に野菜嫌いが多かったことから、野菜を用いた献立による栄養教育および調理実習を実施し、その実践的効果を検証した。その結果、食に関する知識を示し、栽培から調理までを通した食育は偏食を改善する上で効果的であると思われた。また、食生活実態調査から、おやつによる糖分および油分の摂取過多が懸念されたため、校内におやつ掲示板を設置し、児童がおやつを適切に選択できるよう、知識や情報を提供した。さらに、児童が望ましい食生活を送る上で、家族の関わりは重要である。学校と家庭が連携して食育に取り組むために、調査結果の公表や保護者への啓発活動の手段として、学校ホームページに「早寝早起き朝ごはん」サイトを構築し、食に関する情報を発信した。
著者
杉山 昂平 森 玲奈 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.381-396, 2020

<p>人々が興味を深めるとき,ゆるやかな社会関係はいかに関与するのだろうか.本研究の目的は,興味追求としての趣味に着目し,強固な実践共同体に対比されるゆるやかな実践ネットワークが,趣味人の興味の深まりにいかに関与するのかを明らかにすることである.事例としてデジタル時代のアマチュア写真を取り上げ,アマチュア写真家14名に対してインタビュー調査を行った.その結果,興味の深まりに関与する実践ネットワークとして「刺激的な隣人」と「不特定の観衆」の存在が明らかになった.「刺激的な隣人」は自立的に興味を追求する多様な趣味人の姿を可視化し,「不特定の観衆」は作品に対してフィードバックを与え,それ自体が深い興味の対象になったり,興味を深めるさらなる行動を促したりする.こうした実践ネットワークはSNS によって形成されることもある一方,展覧会や撮り歩き会のような,趣味の世界における対面的な活動によっても形成されていた.</p>
著者
友森 玲子 花田 道子 宮野 のり子
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.15, no.Suppl, pp.Suppl_30-Suppl_31, 2012-07-01 (Released:2013-03-21)
参考文献数
2

肝臓がんで腹水が貯留しているラブラドール系雑種オス犬を動物愛護相談センターより引取り、余生の QOL 向上のために、当サロンと自然療法を行なっている動物病院で栄養管理を行ったところ消化機能が改善されて、皮膚の状態、外耳道炎等も好転した。保護当初歩行困難を呈していた両側膝蓋骨脱臼に対しては当サロンではプールで運動させ、さらに動物病院では理学療法を施したところ、走れるまでになった。その後、一時飼養ボランティア宅で栄養管理を行ったところ 2 年余り小康状態を維持している。
著者
森 玲奈
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.445-455, 2008-03-10 (Released:2016-08-04)
参考文献数
47
被引用文献数
3

研究の目的は,ワークショップのデザイン過程におけるベテラン実践家の特徴的思考を明らかにすることである.本研究では,ベテラン実践家とその集団に属する初心者2組を選定し,発話思考法を用いた実験を行った.分析は,まずベテラン-初心者間における発話の流れを比較し,その上で2人のベテランに共通する特徴を検討した.その結果,ベテランにおけるデザイン時の発話には,依頼内容の確認・解釈の後,コンセプトの立案を行うという共通の流れがあることが明らかになった.また,ベテランの特徴として,(1)依頼内容に対する幅広い確認を行うこと,(2)デザインの仮枠となるデザインモデルを使用すること,(3)保留や選択の余地を残した「やわらかな決定」を行うこと,(4)スタッフの育成に対する意識とデザイン力を持つこと,(5)過去の実践体験の想起や経験から構築された慣習を用いてデザインを行うこと,が明らかになった.さらに,ベテランには経験に裏づけられた「個人レベルの実践論」があることが示唆された.
著者
森 玲奈 孫 大輔 渡辺 雄貴 北村 智 堀 里子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S44038, (Released:2020-11-09)
参考文献数
11

本研究では高齢者の学習課題の中で健康に関する学習に焦点を当て,自己調整学習理論を参照し,主体的に健康について学ぶことができるワークショップを設計・実践・評価することを目的とする.ワークショップ「すまけん」は,参加者に健康情報の取得へのネットの活用可能性の理解と利用の自己効力感の向上を促すものである.その結果,事前に比べて事後のヘルスリテラシーの自己効力感並びにスマートフォン活用の自己効力感が高まっていた.またワークシートの記述内容の分析から,すまけんワークショップ内では,殆どの参加者が健康情報の探索を学んだことが示された.
著者
森 玲奈
出版者
日本教育方法学会
雑誌
教育方法学研究 (ISSN:03859746)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.49-58, 2014-03-31 (Released:2017-07-19)
参考文献数
28

本稿では,日本におけるワークショップの展開とその特質に関し,ワークショップ実践史を整理する。その上で,これまでワークショップ実践史の源流にあるとされてきたデューイの教育思想を手がかりとし,実践者育成のための方法を検討することを目的とする。本研究では,以下の作業を通じ,日本のワークショップの系譜とその背景にある思想を明らかにする。第一に,アメリカを中心とした海外のワークショップ実践の背景を整理し,その背景にあった社会状況を明らかにする。第二に,日本におけるワークショップ実践史を,海外から方法の移入した状況や契機,実践者同士の交流と相互作用に着眼し記述,整理する。第三に,海外におけるワークショップの系譜と,日本におけるワークショップの系譜との差異について確認し,日本におけるワークショップの系譜が独自の展開を遂げてきたことを示す。これらを通じ,(1)海外では各領域における問題解決のための「新しい方法」としてワークショップが生み出されており,その時期は領域によって差があること,(2)日本では,1970~80年代にその契機があり,個々の領域において領域に特化された手法として別個に導入されたため,実践者育成が領域の中の細分化された集団で行われることが多かったこと,(3)ワークショップをプラグマティズムという思想潮流の中で捉えることにより実践者の育成に貢献できること,を論じる。