著者
倉藤 祐輝 尾頃 敦郎 藤井 雄一郎 小野 俊朗 久保田 尚浩 森 茂郎
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.425-431, 2008 (Released:2008-07-25)
参考文献数
21
被引用文献数
5 5

ブドウの早期成園化と高品質な果実の多収を目的に,灌水同時施肥による超密植栽培システムを開発した.本システムは,根域を制限せずに,10 a当たり800本以上の挿し木苗を超密植し,樹冠下に不透水性マルチシートを設置し,自動灌水制御装置と液肥混入器および点滴灌水チューブを用いて,生育ステージに応じて灌水と施肥を同時に行う方式である.定植2年目には成園並みの果実生産が可能であった.果実品質と収量に及ぼす新梢密度の影響を調査したところ,着果基準を15果房・m−1と設定した場合,新梢密度を10~20本・m−1とすることで,果粒重,糖度および果皮色の優れた果実の多収生産が可能であることが明らかとなった.以上の結果から,本方式での3か年の果実品質と収量から,年間の灌水同時施肥基準を策定した.
著者
松枝 洋二郎 森 茂
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.8, pp.235-243, 2022-08-01

プラスチック基板上にTFT (Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)アレーを形成したFLX-OLED (Flexible Organic LED:フレキシブル有機EL)ディスプレイは,3D曲面を駆使した質感の高いデザインを採用し,各種センサーを内蔵したモバイル市場の頂点に立つ最先端の電子デバイスである.積極的な製造ラインへの投資が続く中国のFLX-OLED市場では,世界初の新技術も次々に登場し,韓国と熾烈な技術開発競争を繰り広げている.FLX-OLEDのバックプレーンには,従来のLTPS (Low Temperature Polycrystalline Silicon:低温多結晶シリコン) TFTだけでなく,低消費電力を特徴とするLTPO (Low Temperature Polycrystalline Oxide) TFTも登場し,酸化物TFTも含めた次世代バックプレーンの三つ巴の戦いの様相を呈している.本論文ではモバイル用有機ELディスプレイの最新技術開発動向をレビューするとともに,最大の課題であるコスト削減のためのTFTの要求性能について議論する.
著者
西 優輔 長森 茂之 佐野 敏広 難波 加奈 松岡 寛之
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.21-25, 2021-05-31 (Released:2021-09-01)
参考文献数
21

岡山県内の促成栽培イチゴで採集したナミハダニ黄緑型8個体群に対する殺ダニ剤10剤の殺虫効果,11剤の殺卵効果を調査した。さらに,ビフェナゼート剤とアシノナピル剤に対する各個体群雌成虫の半数致死濃度(LC50 値)を調べ,抵抗性比を求めた。その結果,雌成虫に対する殺虫効果は,エマメクチン安息香酸塩剤,ミルベメクチン剤,クロルフェナピル剤,アセキノシル剤,テブフェンピラド剤,シエノピラフェン剤,シフルメトフェン剤およびピフルブミド剤について,多くの個体群において低かった。アシノナピル剤とビフェナゼート剤の殺虫効果は総じて高かった。2剤のLC50 値を調査したところ,アシノナピル剤は,すべての個体群において抵抗性比が1以下であった。一方,ビフェナゼート剤では,抵抗性比が最大で42.04を示し,感受性低下が疑われた。殺卵効果は,エマメクチン安息香酸塩剤,ミルベメクチン剤,エトキサゾール剤,クロルフェナピル剤,テブフェンピラド剤,シエノピラフェン剤,シフルメトフェン剤およびピフルブミド剤について,多くの個体群で低かった。一方,アセキノシル剤,ビフェナゼート剤およびアシノナピル剤の殺卵効果はほとんどの個体群で高かった。
著者
関根 康浩 河原 常郎 土居 健次朗 大森 茂樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】我々は第48回日本理学療法学術大会で下位胸郭の動きが体幹動作に影響する可能性を報告した。生体内では腹腔内圧を高める事で体幹が固定され上下肢筋力発揮は高まるとされる。意図的に腹腔内圧を高めやすくするものとして骨盤コルセットがあるが,自動で腹腔内圧を高める一つのパターンとして横隔膜を上昇させ肋骨下角を減少させる事がある。肋骨下角とは左右の肋骨弓の間にできる角度である。肋骨下角減少・下位胸郭の動きを制限するものとしてDainae Leeが提唱したChest Gripping(以下,CG)があり,これは上部腹筋の過緊張により肋骨下角が減少している(下位胸郭横径拡張不全)状態である。しかし前記の通り自動で肋骨下角を減少させる事で腹腔内圧は高まる事から,CGではなく骨盤コルセットのように他動で肋骨下角を減少させる事で腹腔内圧を高めやすくする事が可能ではないかと考えた。本研究の目的は,肋骨下角を他動および自動で減少させる事による上肢の筋発揮に対する影響を明らかにし,肋骨下角を減少させる事の意義を見出す事とした。【方法】対象は,整形外科的疾患がなく,呼吸器疾患を有さない,非喫煙者である健常成人男性11名(年齢23.4±2.1歳,BMI22.1±1.5)とした。肋骨下角は胸骨下端と両側の乳頭からの垂線と下位肋骨の交点がなす角度と定義した。計測は上肢は体側に下垂した立位にて安静時・最大吸気時・最大呼気時の角度をゴニオメーター(OG技研)にて計測した。筋力測定は肩関節外旋筋力を採用した。測定は,徒手筋力測定器IsoforceGT-310(OG技研)を用いた。端座位で測定側肩関節中間位・肘関節90°屈曲位・前腕90°回外位にて橈骨茎状突起にセンサーパッドが当たるようにした。被験者の正面には床に垂直なテープを貼った全身鏡を用意し,代償を抑制した。測定肢位は安静呼吸での正常群(以下,N群),バンドにて肋骨下角を他動で減少させた群(以下,P群),努力呼気とdrow-inにて肋骨下角を自動で減少させた群(以下,A群)の3肢位とした。P群では強制呼気最終での最小肋骨下角まで減少させた肢位で締め付けた。A群では努力呼気により胸椎が後弯しないよう指示をした。計測は5秒間かけて行い,各肢位で3回ずつ計測(休憩30秒間)を行った。各群間の差の有無は対応のある一元配置分散分析を用いて検証し,多重比較はBonferroni法を用いた。有意水準は5%未満とした。【結果】肋骨下角角度は安静時で87.9±7.9度,最大吸気で101.6±11.1度,最大呼気で79.8±7.8度であった。被験者の肩関節外旋筋力の平均値はN群で66.1±6.2N/kg,P群で62.1±11.0N/kg,A群で69.4±9.6N/kgであり,P群とA群との間で有意差を認めた(p=0.0089)。【考察】腹腔内圧を高めるには腹横筋,骨盤底筋群,横隔膜,多裂筋等が協調して働く必要がある。骨盤コルセットにより腹部を締め付ける事で主に体幹前後の筋(腹横筋・多裂筋)の代わりをし,圧迫された腹腔内圧は垂直方向へ逃げようとし骨盤底筋群・横隔膜を刺激する事で効率よく腹腔内圧を高める事ができる。また脊柱の良肢位の保持をする事でも腹腔内圧を高めやすくしていると考えられる。本研究でのP群は肋骨下角を減少させる事で胸椎後弯位になりやすく,横隔膜が弛緩しやすい状態であった為,腹腔内圧が高まりにくく肩関節外旋筋力発揮も有意に低下したのではないかと考える。A群では被験者に努力呼気の際に胸椎が後弯しないよう指示をしていたが,P群にはそのような指示をしていなかった事からも胸椎後弯姿勢になりやすかったと推察される。逆にP群で胸椎伸展を意識させて行わせる事で背部の多裂筋への刺激が高まり腹腔内圧の上昇が見られたのではないかと考えられた。【理学療法学研究としての意義】本研究により肋骨下角を他動で減少させる事は腹腔内圧を高める事を制限する可能性があり骨盤コルセットのような効果は得られない事が示唆された。肋骨下角を指標とした事については体表からのマニュアル計測とレントゲン画像上での計測結果でマニュアル計測での有意性を出す必要がある。
著者
齊藤 匠 土居 健次朗 河原 常郎 大森 茂樹 倉林 準 門馬 博 八並 光信
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1133, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】神経モビライゼーション(以下NM)とは末梢神経系の感受性,伸張性,運動性を改善する手技であり,その目的には疼痛やしびれの改善,二次的障害の予防がある。NMによって神経伝導速度低下との関係性が示されている。しかし,理学療法分野で臨床的指標となる,筋力や可動性について十分な検証がなされていない。本研究は橈骨神経NMの手関節背屈筋力と手関節掌屈角度に対しての効果を検証することを目的とした。【方法】対象は,健常成人18人(男性15人女性3人:25.8±3.9歳)とした。測定装置は,徒手筋力測定器IsoforceGT-310(OG技研),ストップウォッチ(CASIO HS-70W)とした。NMの対象は利き手側の橈骨神経とした。手法はMaitlandConceptのgrade4の位置から,ULTT2bを選択した。神経の伸張は頸部の側屈を行って確認し,10秒間の伸張位を保持した。NM施行前後に筋の伸長度,筋出力を測定した。筋の伸長度は日本整形外科学会および日本リハビリテーション医学会が制定した関節可動域測定法を参考に,手関節掌屈の角度を測定した。筋出力は手関節背屈筋群の等尺性収縮にて計測した。測定肢位は,椅子座位となり,机の上に前腕を置き,肘関節屈曲90°,肩関節内外旋および,前腕中間位とし,手関節中間位,手指屈曲位とした。解析は可動域と筋力それぞれのNM前群とNM後群の差を検証した。さらに,手関節掌屈の可動域の値の変化をもとに,母集団をA,Bの2群に分け検証した。A群は手関節掌屈可動域の変化量が平均値以上のものとし,平均値以下のものをB群とした。統計処理は対応のある一元配置分散分析とし,有意水準は5%未満とした。【論理的配慮,説明と同意】所属施設における倫理委員会の許可を得た。対象には,ヘルシンキ宣言をもとに,保護・権利の優先,参加・中止の自由,研究内容,身体への影響などを口頭および文書にて説明し同意が得られた者のみを対象に計測を行った。【結果】手関節掌屈の可動域の平均は,NM前は70.9±8.1度,NM後は76.3±7.6度と増加し有意差を認めた(p<0.05)。筋出力の平均は,NM前は1.5±0.3N/kg,NM後は1.7±0.4N/kgと増加したが,有意差は認めなかった。NM前後の手関節掌屈の可動域変化量は,5.4±2.5度であり,筋出力変化量は0.2±0.3N/kgであった。NM後の可動域と筋出力の変化は弱い相関が認められた(r=0.5)。手関節掌屈可動域の変化量は平均5.4度であり,A群7名,B群11名であった。NM前後の筋出力変化量はA群:21.6±19.5Nkg,B群:6.5±23.3N/kgであり,AB間に有意差を認めた(p<0.05)。【考察】NMを行う事で,神経線維の緊張が緩み,神経の伝導速度は低下することが言われている。その際に,神経のみならず周辺組織の緊張が緩むことで全体として可動域の向上がみられたと考えられた。筋出力はNM前後で統計学的有意差は得られなかったが,ほぼ全対象でNM後の増加を確認した。また,A群はB群と比較し筋出力の変化量が大きくなった。A群はNM後の反応が大きかったことから,運動の阻害要素に神経線維が貢献する割合が大きかったと考えた。可動域がNMに対して反応を示す場合は,適度なNMにより筋出力を促す可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究よりNMは可動域・筋力に対し有効な結果をもたらすことが示唆された。しかしながら,適切な伸長の強度,持続時間,頻度など検討すべき項目は残存している。近年,超音波診断装置の普及が目覚ましい。これらの計測装置をNMと併用することで,より客観的かつ効果的な治療の提供につながるものと考えられる。
著者
堀井 道明 土性 裕彦 森 茂博 馬場内 隆男 内田 雅士 Horii Michiaki Dosho Hirohiko Mori Shigehiro Babauchi Takao Uchida Masashi
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構特別資料: 低推力・連続加速を用いた宇宙ミッションに関する研究会論文集 = JAXA Special Publication: Collection of Papers Presented at the Meeting on the Study of Space Missions Propelled by Low-Thrust and Sustained Acceleration (ISSN:1349113X)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-SP-07-020, pp.7-12, 2008-02-29

Geostationary satellites need yearly velocity increment of 40 to 50 m/s for the North-Sounth (NS) station keeping. JAXA's recent satellites are adopting low-thrust and high Isp (specific impulse) engines such as DC arc jets and ion engines for the NS station keeping. This paper reports the operation results of such NS maneuvers for the Data Relay Technology Satellite (DRTS: KODAMA) and the Engineering Test Satellite-8 (ETS-8: KIKU No.8).
著者
南森 茂太
出版者
経済学史学会
雑誌
経済学史研究 (ISSN:18803164)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.46-67, 2016 (Released:2019-08-30)

Abstract: The purpose of this article is to show that Takahira Kanda’s( 1830―98) evaluation of “the people” was closely related to his political and economic reform plans. Since the early 19th century, ships from American and European countries had been coming to Japan, and the Tokugawa Shogunate felt compelled to reinforce their armaments. In order to raise the vast funds necessary for reinforcement, the shogunate tried to promote various domestic industries. The Meiji Government that later overthrew the shogunate also succeeded in such promotional policies. Thus, “the modernization” policies of the government spread to several fields, and the top governmental officials, bureaucrats, and western scholars presented numerous modernization plans, most of them insisting that the government carry out various reforms. However, they believed that “the people” were “ignorant” and did not have the ability to be involved with such reforms. On the other hand, Kanda evaluated “the people” as political and economic subjects. Such ideas had already appeared by the end of the shogunate. In Nosyoben( 1862), Kanda insisted that “the people” are independent economic subjects with political interest; he succeeded to gain recognition for his thoughts after the Meiji Era. Thus, the idea of the assembly and patent systems in Japan was based on the recognition of his thoughts. In order to carry out his reform plans, Kanda had to wipe out the evaluation of people made by the top governmental officials and bureaucrats and hence made his reform plans public through magazines and newspapers. His activities were closely watched by the top governmental officials, and finally the Meiji government managed to weaken his influence. However, his thoughts contributed much to the pioneering achievement of “the local notable theory” during the middle of the Meiji Era. JEL classification number: B 31.