著者
清田 有希 大森 茂樹 河原 常郎 土居 健次朗 倉林 準 門馬 博 八並 光信
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101860-48101860, 2013

【はじめに、目的】臨床では、Electrical Muscle Stimulation(以下EMS)を使用する機会は多い。EMSは、電気刺激によって筋収縮を起こし、筋ポンプ作用を働かせ、疲労物質の貯留が解消されることで、疲労が回復することが予想される。筋血管内の疲労物質は、この筋ポンプ作用により貯留が解消される。筋疲労は、最適な周波数と最適な刺激間間隔を定めることにより、筋ポンプ作用が促進され、筋疲労を回復させると考えられる。しかしEMSは、異なる周波数や刺激間間隔の違いにより筋疲労の回復に差が生じるかは不明な点が多い。本研究では、筋疲労を回復する最適周波数と最適刺激間間隔を比較し、筋疲労回復の電気治療の有効性について検討した。【方法】対象は、整形外科的、神経学的に問題のない健常成人24名、年齢27.2歳±4.0、BMI21.9±2.2であった。対象筋は、大腿直筋とした(電極:大腿四頭筋の筋腱移行部と大腿直筋のモーターポイント)。各療法の刺激間間隔は、1:1(5sec on:5sec off)、1:5(10sec on:50sec off)の2パターンとした。周波数は、1Hz、5Hz、10Hzの3パターンを行った。筋力測定は、対象の肢位をLeg Extension-Curl(HUR社製)の装置に股関節屈曲50°、膝関節屈曲60°、足関節背屈0°で固定した。最大筋力は、計測器PERFORMANCE RECORDER 9100(HUR社製)をLeg Extension-Curlに取り付け、大腿四頭筋の等尺性収縮での最大筋力を計測した。運動課題は、最大筋力測定時の膝伸展角度を制限として、最大筋力の40%の負荷量で膝関節の屈伸運動を行わせた。運動課題中は、メトロノーム(110bpm、4拍子)を使用し、4拍子目を最大伸展位となるように運動を行わせた。運動課題の終了は最大伸展位まで運動が行えない場合が2回続いた場合、運動課題中メトロノームのリズムから逸脱した場合とした。運動終了後、直ちに計測器で筋力の計測を行った。その後、マルチ電気治療器インテレクト アドバンス・コンポ2762CC(CHATTANOOGA GROUP社製)でEMSを各パラメータで20分間行った。電気刺激強度は、運動閾値の2倍の強度で行った。電気治療後、計測器により筋力の計測を行った。コントロール群は、EMSを施行せず、パッドを貼ったのみの施行を6人に行った。最大筋力を回復筋力で除したものを疲労回復率とし、統計処理は、コントロール群と各周波数の刺激間間隔群を比較した。有意水準は、5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】所属施設における倫理委員会の許可を得た。対象には、ヘルシンキ宣言をもとに、保護・権利の優先、参加・中止の自由、研究内容、身体への影響などを口頭および文書にて説明した。同意が得られた者のみを対象に計測を行った。【結果】刺激周波数別に疲労回復率を比較すると、疲労回復率は、1Hzの1:1は120.0%、1Hzの1:5は134.0%、5Hzの1:1は103.0%、5Hzの1:5は116.7%、10Hzの1:1は115.4%、10Hzの1:5は117.4%となった。コントロール群の回復率は102.0%となった。コントロール群と各周波数別の比較では、コントロール群と1Hzの1:5の群のみに有意な差(P<0.02)を認めた。【考察】疲労回復の度合いをみると、EMSを施行した場合とコントロール群では、EMSを施行した場合の方が疲労回復率は高かった。EMSを行うことで、筋肉の収縮が起こり、筋肉内の疲労物質である乳酸の流動が生じ、疲労回復が促進されたと考えられる。Lindstromらは、活動筋における血液循環が低下することによって、筋中に産生された乳酸が除去されにくくなったことにより筋疲労が起こるとある。市橋らは、主運動後に軽い運動を行なうと血液循環が改善され体内の化学反応が促進されて回復が高まることや運動後の血中乳酸の除去率をクーリングダウンと安静で比較すると軽い運動をした方が、除去率が高いことが報告されている。このことから、EMSにより筋収縮が起こることで疲労の除去が行えると考える。コントロール群と比較し、EMSの各パラメータでは、周波数1Hz、刺激間間隔1:5のものが疲労回復に大きく貢献していた。Bentonらは、電気刺激による筋収縮は生理的収縮より疲労しやすく、長めの休息を設定する必要があるといっている。刺激間間隔は、1:1よりも1:5のパラメータでEMSを施行した方が、有意に差が生じたと考える。【理学療法学研究としての意義】現在、電気療法のパラメータの違いによる筋に与える影響についての研究や疲労回復に関して電気療法を行った研究はまだまだ少ない状態である。本研究により、電気療法のパラメータの適切な選択や電気療法が筋疲労の回復にも影響があることを証明し、理学療法やスポーツ場面の治療法の一助となると考える。
著者
南森 茂太
出版者
長崎大学経済学会
雑誌
経営と経済 (ISSN:02869101)
巻号頁・発行日
vol.99, no.1, pp.77-107, 2020-02

松本睦樹教授定年退職記念号
著者
有森 茂 吉田 美代子 市村 香
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.80-86, 1990-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
13
被引用文献数
6 8

Ge-132, 1, 500mg per day, was administered to 47 y-o house wife who suffered from rheumatoid arthritis associated with Sjögren's syndrome and microcytic hypochromic anemia since 1983. Her clinical stage of rheumatoid arthritis was Stage II and class was 1. Polyarth-ralgia and joint swelling were getting worse even though she was administered both non-steroidal antiinflammatory drug and small dose of prednisolone. Treatment with Ge-132 brought her in a remission state of rheumatoid arthritis and MCV and MCH as well as Hb were improved within 5 months. Two-color flow cytometry of peripheral lymphocytes demonstrated an increase of lymphocyte, CD3-, CD21+ (B cell), CD3+, CD21- (T cell), CD4-, CD8+ (suppressor T cell), CD4+, CD8- (helper T cell), CD16+, DR- (NK cell) and all of double negative cells such as CD3-, CD21- cell, CD4-, C8- cell, and CD16-, DR-cell, parallel to clinical status.These data surely indicated that Ge-132 is effective to this patient.
著者
清田 有希 大森 茂樹 河原 常郎 土居 健次朗 倉林 準 門馬 博 八並 光信
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101860, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】臨床では、Electrical Muscle Stimulation(以下EMS)を使用する機会は多い。EMSは、電気刺激によって筋収縮を起こし、筋ポンプ作用を働かせ、疲労物質の貯留が解消されることで、疲労が回復することが予想される。筋血管内の疲労物質は、この筋ポンプ作用により貯留が解消される。筋疲労は、最適な周波数と最適な刺激間間隔を定めることにより、筋ポンプ作用が促進され、筋疲労を回復させると考えられる。しかしEMSは、異なる周波数や刺激間間隔の違いにより筋疲労の回復に差が生じるかは不明な点が多い。本研究では、筋疲労を回復する最適周波数と最適刺激間間隔を比較し、筋疲労回復の電気治療の有効性について検討した。【方法】対象は、整形外科的、神経学的に問題のない健常成人24名、年齢27.2歳±4.0、BMI21.9±2.2であった。対象筋は、大腿直筋とした(電極:大腿四頭筋の筋腱移行部と大腿直筋のモーターポイント)。各療法の刺激間間隔は、1:1(5sec on:5sec off)、1:5(10sec on:50sec off)の2パターンとした。周波数は、1Hz、5Hz、10Hzの3パターンを行った。筋力測定は、対象の肢位をLeg Extension-Curl(HUR社製)の装置に股関節屈曲50°、膝関節屈曲60°、足関節背屈0°で固定した。最大筋力は、計測器PERFORMANCE RECORDER 9100(HUR社製)をLeg Extension-Curlに取り付け、大腿四頭筋の等尺性収縮での最大筋力を計測した。運動課題は、最大筋力測定時の膝伸展角度を制限として、最大筋力の40%の負荷量で膝関節の屈伸運動を行わせた。運動課題中は、メトロノーム(110bpm、4拍子)を使用し、4拍子目を最大伸展位となるように運動を行わせた。運動課題の終了は最大伸展位まで運動が行えない場合が2回続いた場合、運動課題中メトロノームのリズムから逸脱した場合とした。運動終了後、直ちに計測器で筋力の計測を行った。その後、マルチ電気治療器インテレクト アドバンス・コンポ2762CC(CHATTANOOGA GROUP社製)でEMSを各パラメータで20分間行った。電気刺激強度は、運動閾値の2倍の強度で行った。電気治療後、計測器により筋力の計測を行った。コントロール群は、EMSを施行せず、パッドを貼ったのみの施行を6人に行った。最大筋力を回復筋力で除したものを疲労回復率とし、統計処理は、コントロール群と各周波数の刺激間間隔群を比較した。有意水準は、5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】所属施設における倫理委員会の許可を得た。対象には、ヘルシンキ宣言をもとに、保護・権利の優先、参加・中止の自由、研究内容、身体への影響などを口頭および文書にて説明した。同意が得られた者のみを対象に計測を行った。【結果】刺激周波数別に疲労回復率を比較すると、疲労回復率は、1Hzの1:1は120.0%、1Hzの1:5は134.0%、5Hzの1:1は103.0%、5Hzの1:5は116.7%、10Hzの1:1は115.4%、10Hzの1:5は117.4%となった。コントロール群の回復率は102.0%となった。コントロール群と各周波数別の比較では、コントロール群と1Hzの1:5の群のみに有意な差(P<0.02)を認めた。【考察】疲労回復の度合いをみると、EMSを施行した場合とコントロール群では、EMSを施行した場合の方が疲労回復率は高かった。EMSを行うことで、筋肉の収縮が起こり、筋肉内の疲労物質である乳酸の流動が生じ、疲労回復が促進されたと考えられる。Lindstromらは、活動筋における血液循環が低下することによって、筋中に産生された乳酸が除去されにくくなったことにより筋疲労が起こるとある。市橋らは、主運動後に軽い運動を行なうと血液循環が改善され体内の化学反応が促進されて回復が高まることや運動後の血中乳酸の除去率をクーリングダウンと安静で比較すると軽い運動をした方が、除去率が高いことが報告されている。このことから、EMSにより筋収縮が起こることで疲労の除去が行えると考える。コントロール群と比較し、EMSの各パラメータでは、周波数1Hz、刺激間間隔1:5のものが疲労回復に大きく貢献していた。Bentonらは、電気刺激による筋収縮は生理的収縮より疲労しやすく、長めの休息を設定する必要があるといっている。刺激間間隔は、1:1よりも1:5のパラメータでEMSを施行した方が、有意に差が生じたと考える。【理学療法学研究としての意義】現在、電気療法のパラメータの違いによる筋に与える影響についての研究や疲労回復に関して電気療法を行った研究はまだまだ少ない状態である。本研究により、電気療法のパラメータの適切な選択や電気療法が筋疲労の回復にも影響があることを証明し、理学療法やスポーツ場面の治療法の一助となると考える。
著者
南森 茂太
出版者
The Japanease Society for the History of Economic Thought
雑誌
経済学史研究 (ISSN:18803164)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.62-78, 2008-07-31 (Released:2010-08-05)
参考文献数
41

Takahira Kanda, with his lifelong interest in economic problems, was a pioneering scholar, teacher, and translator of Western economics in Japan. His Keizai shogaku [Elementary Economics] (1867), for which he translated Western-language sources, is particularly well-known. But it is an earlier work, Noshoben [An Exact Explanation of an Agrarian Nation and a Merchant Nation], published in 1861 that is the focus of this paper. In this book, Kanda's economic thinking appears radical by the standards of the time. It has drawn the attention of economic historians for what they see as a liberal side, and its arguments have often been compared with Western economics. What scholars have tended to overlook, however, is the side of Noshoben that clearly reflects the economic thought prevailing in Japan at the time.Contrary to the current image of Noshoben, this paper attempts to demonstrate that Kanda's thought was largely based on the economic thought of the Edo era. In that book, he argued that taxes on farmers were the cause of the budget deficit and the poverty of farmers, and that those conditions invited aggression by foreign countries, which meant, he said, the necessity of reforming the existing tax system. He proposed tax reform by treating revenue from farm products as commercial profits, and he argued that promoting foreign trade would be effective to increase commercial profits. Those ideas were not new. We can find them in the work of Toshiaki Honda, for example, who wrote most of his treatises in the late 18th century. Nonetheless, Noshoben had considerable originality. For instance, while many Edo era economists regarded merchants as wily and untrustworthy, encouraging the shogunate or feudal rulers to maintain strict control over trade with foreign countries, Kanda recognized the important role merchants could play in external trade, and, consequently, in strengthening the domestic economy. His idea of imposing a tax on the profits of merchants was radical at that time.
著者
高森 茂
出版者
美味技術学会
雑誌
美味技術研究会誌 (ISSN:13481282)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.3-4, pp.45-49, 2003-10-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
2
著者
河原 常郎 土居 健次朗 大森 茂樹 倉林 準
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0320, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】変形性膝関節症や半月板損傷による歩行は,膝関節の疼痛を訴えるケースが多い。このような症例に対して,歩隔を大きくした歩行(以下,WB歩行)は,膝関節における疼痛の軽減につながることが多くあった。本研究は,WB歩行を運動学的に解析し,その有用性を検討することを目的とした。【方法】対象は整形外科的,神経学的疾患の無い健常成人男性11名(年齢25.6±2.8歳)とした。使用機器は,VICON MXシステム(Vicon Motion System:カメラ7台,200Hz),床反力計(AMTI2枚,1,000Hz),使用ソフトはVICON NEXUS 1.7.1とした。運動課題は歩行動作とし,両踵骨間の距離を,①N:規定なし,②W:左右上前腸骨棘間距離,③WH:②の1.5倍の3パターンとした。マーカは,15体節(頭部,体幹,骨盤,左右の上腕,前腕,手部,大腿,下腿,足部)の剛体リンクモデルを用い,35点を貼付した。解析項目は,歩隔,足角,歩幅,歩行速度,ケイデンス,下肢(股関節,膝関節,足関節)関節角度,関節モーメント,身体重心(COG)位置とした。計測は右脚立脚期に行った。計測時間は,自然3次スプライン補間を用いて,各データのサンプル系列から,全データのサンプル数が同じ長さになるようにデータを正規化した。統計処理は,一元配置の分散分析後,有意差を認めたものに対して多重比較Bonferroni法にて検証した。【結果】1)歩隔:歩隔は,N:93.7±31.0mm,W:288.5±33.3mm,WH:429.0±47.1mmであり,各歩行パターン間に有意差を認めた。2)歩行速度:歩行速度は,N:72.1±5.3m/min,W:70.1±6.4m/min,WH:72.6±7.2m/minであり,各歩行パターンに有意差を認めなかった。3)歩幅,足角,ケイデンス:歩幅は,N:596.0±36.1mm,W:575.4±49.9mm,WH:644.0±31.3mm,足角は,N:5.8±5.1°, W:4.0±2.9°, WH:10.1±3.0°であった。WHはN,Wに対して有意に大きい値を示した。ケイデンスはN:121.1±7.4steps/min,W:122.0±6.2steps/min,WH:112.5±8.2steps/minであった。WHはN,Wに対して有意に小さい値を示した。4)関節角度,モーメント:股関節における関節角度は,立脚期を通して,歩隔の増大に伴い,外転角度増大,外旋角度減少を示した。関節モーメントは,立脚期を通して,歩隔の増大に伴い,股関節内転モーメント(N:760.5±17.9Nmm,W:563.2±53.9Nmm,WH:342.1±84.2Nmm)・膝関節内反モーメント(N:668.3±61.1Nmm,W:599.5±54.2Nmm,WH:555.1±119.2Nmm)減少,足関節内反モーメント(N:34.6±8.5Nmm,W:108.8±22.1Nmm,WH:211.4±16.1Nmm)増大を示した。歩行周期において,WHは,初期接地から荷重応答期にN,Wと比較して股関節内転・内旋モーメント,膝関節内反モーメント減少を示した。その他の関節角度,関節モーメントは,各歩行パターン間において有意差を認めなかった。またWHは,立脚終期に,N,Wと比較して足関節背屈角度減少,股関節内転・外旋モーメント・膝関節内反・外旋モーメント・足関節外転モーメント減少を示した。5)COG:COGの側方変位量は,N:29.9±11.4mm,W:34.6±10.2mm,WH:76.0±11.0mmとなり,歩隔の拡大に伴い増加を示した。重心側方変位の増加量は,歩隔の増加量と比較して減少した。COGの鉛直変位量は,N:37.9±7.2mm,W:38.1±6.0mm,WH:39.0±7.4mmとなり,各歩行パターン間に有意差を認めなかった。【考察】WB歩行による歩隔の拡大は,膝関節内反・外旋モーメントを小さくした。その量は,軽く足を開く程度のWにて約1割,さらに足を開くWHにて約3割のモーメントの減少が可能であった。WB歩行は,変形性膝関節症(内側型),内側半月板損傷などの有痛性膝関節疾患のケースにおいてストレスとなる関節運動の制御が「安全」かつ「容易」に可能であるという点で有効であるという事が示唆された。ただし本研究は,対象を健常成人としており,WHは,N,Wと比較してケイデンス減少を示したものの,歩行速度が変わらず,歩幅は増大を示した。また,WB歩行はCOGの側方変位過多や足関節内反モーメント増大など,デメリットの要素も残しており,完全な安定した歩行戦略であるとは言い切れないことがわかった。【理学療法学研究としての意義】今回,我々はWB歩行の解析を行い,その運動学的な特徴を示した。その中でWB歩行は,歩行時の膝関節のストレスが軽減することを明らかにした。このことは変形性膝関節症における疼痛回避の一手段となりうる可能性が示唆された。
著者
森 茂美 太田 善博
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.Supplement, pp.61-69, 1985-12-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
25

ネコの脳幹内には, 既に2つの歩行中枢が同定されている.その1つは視床下核歩行誘発野 (SLR) であり, もう1つは中脳歩行誘発野 (MLR) である.解剖学的に, SLRおよびMLRはそれぞれ外側視床下部および楔状核に相当する.SLRは歩行運動の“発動的”側面を制御していると考えられる.一方, MLRは四肢間協調のような“自動運動的”側面を制御していると考えられる.上丘前縁と乳頭体後縁を結ぶ面で脳幹を切断した除脳ネコ (precollicular-postmammillaly decerebrate cat) において, MLRに連続微小刺激を加えると, 流れベルト上で歩行運動が誘発される.これら2つの歩行中枢に加えて, 最近, 姿勢筋の筋緊張 (postural muscle tone) を“セット”したり“リセット”したりする橋中心部の神経機構が同定されている.正中線上の橋中心被蓋野背側部および腹側部に連続微小刺激を加えると, 同一標本においてpostural muscle toneは, それぞれ長時間抑制および増強した.MLRと背側部を同時刺激すると, MLRの刺激で誘発された歩行のパターンは協調のとれた四足歩行から後肢のステッピングへと変化し, さらにステッピングから歩行運動の完全な抑制へと変化した.その際, postural muscle toneはかなり減弱していた.それと対照的に, MLRと腹側部を同時刺激すると, 歩行パターンは完全な抑制から後肢のステッピングへ, ステッピングから歩行へ, さらに歩行からギャロップへと変化した.その際, 姿勢筋の筋緊張レベルは段階的に増大していた.腹側部により強い単独刺激を加えると, 伸筋の筋緊張の著明な増強を伴なった痙性歩行運動が誘発された.中枢無傷ネコが自発歩行をしている際に橋中心被蓋野の背側部に刺激を加えると, 一連の姿勢変化が誘発された.刺激の開始から数秒後, ネコは歩行を停止し, そのままの状態で直立姿勢を維持した.この刺激を持続するとネコは坐り込み, 次に床の上に腹這いになった.刺激停止後も数分間にわたりネコはその最終姿勢を維持し続けた.橋中心被蓋野の腹側部に刺激を加えると, ほとんど正反対の一連の姿勢変化が誘発された.刺激の開始から数秒後, ネコは腹這いの姿勢からお坐りの姿勢をとり, さらにこの刺激を持続すると歩きはじめた.刺激によってネコは常に覚醒反応 (aler-ted) を示し, また歩行の開始に先行してその頭部を挙上し, 周辺を見まわして相対的位置関係を測るような反応 (oriented) を示した.これらの成績はすべて“歩行”制御系および“姿勢”制御系が脳幹および脊髄内において共通の神経機構を共有していることを示唆する.本諭文においては姿勢および歩行運動の“発動的”および“自動運動的”制御面との関連において, これら橋中心被蓋野のもつ機能を考察した.この内容は特定研究 (1) 「発育期の体力に関する基礎的研究」代表, 小野三嗣教授の研究集会に際して発表した研究成果の要旨をまとめたものである (課題番号: 57123109.58124037, 59127034, 分担課題: 姿勢保持能力と脳幹神経機構) .
著者
森 茂郎
出版者
医学書院
雑誌
medicina (ISSN:00257699)
巻号頁・発行日
vol.25, no.10, pp.2052-2053, 1988-09-30

■診断基準 1)免疫芽球性リンパ節症(IBL)ないし血管免疫芽球性リンパ節症(AILD)の確定は病理組織学的診断による.すなわち,T・B両系統のリンパ球および非リンパ系細胞である好酸球,好中球,類上皮細胞を含む組織球など多種類の細胞により構成された病変があり,かつ間質を構成する要素である血管や濾胞の樹状突起細胞などの顕著な関与があり,これによってきわめて特徴的組織像を呈するものをこう呼ぶ.他方,胚中心の消失ないし極端な萎縮は本病変のnegative側の重要な組織学的特徴である1). 2)臨床的には全身の系統的リンパ節腫大,発熱,皮疹,肝・脾腫,多クローン性高ガンマグロブリン血症などの症状をみることが多いが,これらの有無は本症の確定診断のための必要条件とはならない.
著者
佐藤 洋介 高尾 昌幸 近藤 拓也 大森 茂樹 斉藤 剛史 三宅 英司 門馬 博 倉林 準 八並 光信
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ca0271, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 我々は、第46回日本理学療法学術大会でバドミントン選手において、股関節内転可動域は立位での回旋動作に影響することを報告した.体幹の動作解析は、前後屈における腰椎骨盤リズムなど矢状面上の解析が多く報告されているが、回旋動作の動作解析を報告したものは少ない状況である.体幹の回旋動作は日常生活、スポーツでも頻繁に行われる動作であり、同動作で症状を訴える症例は臨床でもよく経験する.それらの症例を前にして、体幹の回旋動作に影響する因子を知っておくことは、障害予防・パフォーマンス向上においても重要であると思われる.本研究は、健常成人を対象に回旋動作の2次元動作解析を行い、メディカルチェック(以下、MC)との関連性を明らかにし、評価・治療の一助とすることを目的とした.【方法】 対象は立位における体幹回旋動作で痛みが生じない健常成人47名(男性37名、女性10名、平均年齢25.4±3)とした.静止画撮影は、デジタルカメラ(HIGH SPEED EXILIM EX-ZR 10BK、CASIO)を用い、反射マーカを両側肩峰・両側第5肋骨・両上前腸骨棘の計6点に貼り、正面から行った.運動課題は、足隔を肩幅に開いた静止立位から体幹の立位最大回旋動作を行った.運動課題時は、体幹回旋時に肩甲帯の前方突出を防ぐため、上肢を固定した.さらに口頭にて足底全面接地、両膝関節伸展位保持を指示し、確認しながら計測を行った.得られた画像に対して画像処理ソフトウェアImageJで各反射マーカの座標を求め、肩峰・肋骨・上前腸骨棘レベルにおいて静止画像と体幹回旋後の画像から左右のマーカの直線距離を算出し、三角関数を用いて回旋角度を求めた.MCは、関節可動域表示ならびに測定法:日本リハビリテーション医学会(以下、ROM)に準じた方法で、座位体幹回旋、股関節内転、股関節内旋(背臥位)の可動域を測定した.さらに腹臥位で膝関節90度における股関節内旋(以下、股関節内旋(腹臥位))可動域を測定した.得られた座位体幹回旋、股関節内転、股関節内旋(背臥位)の可動域は、関節可動域の参考可動域を基準として、制限がある群とない群の2群に分類した.股関節内旋(腹臥位)の可動域はこの計測データにおける中央値を基準に、制限がある群とない群の2群に分類した.体幹の立位最大回旋動作時の肩峰・第5肋骨・上前腸骨棘の各レベルに対する回旋角度について、一元配置分散分析を行い、要因の主効果が認められた場合に多重比較検定を行った.有意水準は危険率5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 所属法人における倫理委員会の許可を得た.対象には、ヘルシンキ宣言をもとに、保護・権利の優先、参加・中止の自由、研究内容、身体への影響などを口頭および文書にて説明した.同意書に署名が得られた対象について計測を行った.【結果】 座位体幹回旋制限群と股関節内旋(腹臥位)制限群の双方は、肩峰、第5肋骨、上前腸骨棘の各レベルにおいて有意差を認めた(P<0.05).股関節内転可動域制限群は、肩峰レベルでのみ有意差が認められた(P<0.05).背臥位での股関節内旋可動域制限群は各レベルで有意差を認めなかった.【考察】 前回報告したバドミントン選手における傾向と同様に、体幹の立位最大回旋動作は、股関節内転が参考可動域より下回ることで、制限を受けることが認められた。体幹の立位最大回旋動作と股関節内旋(腹臥位)とで関連性が認められた.股関節内旋(腹臥位)は、測定肢位が股関節中間位であり、股関節周囲の軟部組織における緊張が、立位と同様である点が反映したものと考えられた.股関節内旋(背臥位)と体幹の立位最大回旋動作で関連性が見られなかったのは、股関節内旋可動域(背臥位)は股関節屈曲位で測定するため、軟部組織の緊張や股関節面の適合度が立位での回旋動作と異なったためと考えられた. 今回の結果では、座位体幹回旋と股関節内旋可動域(腹臥位)と、体幹の立位最大回旋動作との関連が考えられた.股関節内旋可動域(背臥位)は立位での体幹回旋動作と関連しないと考えられた.体幹の立位最大回旋動作は、股関節中間位における関節面適合度と股関節周囲における軟部組織の影響が及ぶと考えられた.同じ股関節の運動で、肢位によって関連性に差がみられたことから、各種作業やスポーツ動作それぞれに応じた姿勢で評価しなければ動作を反映しているとは言い難く、姿勢に合わせた評価・治療が重要であると考えた.【理学療法学研究としての意義】 体幹の回旋動作は日常生活、スポーツ動作でも頻繁に行われる動作である.今回の実験結果から、立位での体幹回旋動作は体幹回旋可動域と腹臥位での股関節内旋に着目していく必要性が示唆された.
著者
久米 真 米沢 圭 東 久弥 森 茂 米山 哲司 二村 学 山本 秀和 白子 隆志 岡本 亮爾 横尾 直樹
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.9, pp.2181-2185, 1994-09-01
被引用文献数
4

小腸ポリープ107個中2個に悪性化を認めた Peutz-Jeghers 症候群 (以下, PJ 症候群) の1例を経験したので報告する. 症例は25歳の男性. 7歳時, 口唇指趾の色素沈着と直腸ポリープを認め PJ 症候群と診断された. 1990年7月4日腸重積発作を起こし, 緊急開腹術を施行し小腸のほぼ全長にわたるポリープの存在を確認した. 1991年2月19日開腹下内視鏡的ポリープ切除術を施行した. 小腸の2箇所より内視鏡を挿入し径約 5 mm 以上のポリープ107個すべてを摘出した (このうち1個のみ小腸切開下に摘出). 組織学的にその大部分は Peutz-Jeghers Polyp の典型像を呈していたが, 内2個 (径26mm, 7mm) の表層に一部癌化を認めた. PJ 症候群は悪性化の危険性を有する. 自験例からポリープの径にかかわらず予防的にすべてのポリープを摘出すべきであることが示唆された. 摘出には開腹下内視鏡的ポリープ切除術が有用であった.
著者
吉井 賢資 池田 直 松尾 祥史 森 茂生
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.162-168, 2009-04-30 (Released:2010-11-05)
参考文献数
25

The rare-earth iron oxides RFe2O4 (R = Y, Ho-Lu) have a rhombohedral crystal structure, consisting of an alternating stacking of triangular lattices of R, Fe and O ions. Recently, we have proposed that this system shows a new mechanism of ferroelectricity ; the ferroelectric state originates from a polar charge-ordered structure of Fe2+ and Fe3+ on a triangular lattice. In this article, a review is given on the details of this ferroelectricity, which were revealed by measurements of synchrotron X-ray diffraction and dielectric properties of one of the RFe2O4 oxides, LuFe2O4.
著者
森 茂晃 星野 由美子 豊田 暁 田尻 浩伸
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.223-233, 2023-10-24 (Released:2023-10-31)
参考文献数
38

2020年2月に宍道湖に2万羽を超えるトモエガモAnas formosaが飛来していることが確認された.このトモエガモの集団は,朝と夕方に宍道湖を飛び立って湖外に飛行していた.飛行先を調べたところ,斐伊川中流域の丘陵林に降りていることが確認された.その丘陵林にはドングリが結実するカシ類があり,センサーカメラによってカシ類のドングリが落ちている場所で嘴を地面に向けている個体が撮影されたことからドングリを採食していたと考えられた.