著者
島地 岩根 阿部 勲 武田 明正 吉村 貢 シマジ イワネ アベ イサオ タケダ アキマサ ヨシムラ ミツグ Shimaji Iwane Abe Isao Takeda Akimasa Yoshimura Mitsugu
出版者
三重大學農學部附属演習林
雑誌
三重大学農学部演習林報告 (ISSN:05441005)
巻号頁・発行日
no.16, pp.p61-79, 1988-03

森林未利用資源の一つである樹皮を成型燃料として活用するために、三重大学農学部附属演習林における低質広葉樹林の林分構造と現存量および広葉樹樹皮の諸性質に関する一連の基礎研究を実施した。 1 低質広葉樹林の林分構造と現存量 (1)林分構造 かつて薪炭林として利用されていた低質広葉樹林には、ほぼ30~40種の木本類が生育しており、これらの樹種が、高さ14mから20mに達する高木層、7~13mの亜高木層、6m以下の低木層の三層を形成していた。高木層の構成種としては、コハウチワカエデ、イタヤカエデ、ヤマモミジ、ケヤキ、ミズキ、クマシデ、ヤマザクラなどが優占種であった。亜高木層ならびに低木層においては、エゴノキ、カマツカ、クロモジ、アブラチャン、ヤブムラサキなどが優占種であった。(2)現存量 層別刈取法により調査した部分別の乾重は、上・下層では、幹30.0~34.3kg、樹皮5.2~5.4kg、枝12.8~17.3kg、葉2.0~2.3kgで、各層合計乾重は、上層54.7kg、下層54.6kgであった。林床層では、幹0.075kg、樹皮0.008kg、落枝10.050kg、葉0.140kgで、下層合計乾重は10.3kgであった。各層におけるha当りの合計現存量は、上・下層がそれぞれ11t、林床層が2tで、ha当りの総現存量は24tと算定された。このうち樹皮現存量は、上層1.1t、下層1.0t、林床層0.002tであったが、成型燃料化にあたっては、上・下層に現存するha当り約2tの樹皮を利用対象とし、林床層は植生保続のうえから残存させることが得策であると考えられた。(3)樹皮率 広葉樹の樹皮率は2.4~55.6%にわたり、樹種により、同じ樹種でも異なった。そのため、各層における全樹種込みの樹皮率を求めた。その結果、上層10.1%、下層13.1%、林床層9.6%、平均10.9%となった。したがって、平倉演習林の低質広葉林における樹皮現存量は、皮付き幹現存量の約10%であることが推察された。 2 樹幹樹皮の物理化学的性質と成型性 (1)樹皮の粉砕性 材料の靭性に影響する内樹皮率は樹種によって異なるが、大部分の広葉樹樹幹樹皮の内樹皮率は針葉樹樹皮より大きく、80~90%であった。広葉樹樹皮の粉砕性は、針葉樹の場合と同様、原料の靭性、剛性および粉砕機の種類によって異なる。ウイレーミル試験によると、針葉樹樹皮は広葉樹樹皮より粉砕され易いが、他機種では異なった結果がえられ、特にヒノキ、ケヤキ、ミズナラ樹皮など靭性組織の多い試料は粉砕が困難であった。以上の試験によって、物性の大きく変化する木質系試料ではカッター型粉砕機の方が適当しているものと結論づけられる。(2)樹皮の抽出成分含有量とpH 気幹樹皮の熱水および1%NaOH抽出成分含有率は、それぞれ4.3~28.8%、および21.3~61.0%であり、特にカラマツ、キブシ、ムラサキシキブ、サルナシには多くの抽出物が含有している。また、熱水抽出液はpH3.8~5.7の弱酸性を示し、針葉樹樹皮や一般木材のそれと類似していた。なお、加圧成型試験に供した試料のうち、カラマツ、ミズキ、リョウブ、エゴノキ樹皮には多量のメタノール抽出物を含有していた。(3)樹皮の発熱量 一般的に、木材質の発熱量は4,500kcal/kgであるが、樹皮は灰分および抽出物含有量が大きく異なるため、発熱量の樹種による変動も大であると推定される。しかし、大部分の広葉樹樹皮の発熱量は4,000~5,000kcal/kgであり、針葉樹樹皮より約400kcal/kg小さな値を示した。また、樹皮の灰分含有率は木質部より大であり、灰分含有率と発熱量との間には負の相関関係が認められた。(4) 樹皮の加圧成型性 木質系バイオマスには、非結晶性成分を含んでいるが、これら非結晶性物質は熱可塑性を有しているため、加圧加熱によって自着性を示し、高密度物質とすることができる。ペレット状固形燃料化の難易を判定する指標をえるため、ウイレーミルと粉砕試料から5mm厚のボードを作製し、その平面引張り強さを測定した。試験の結果、スギ樹皮は最も成型性に劣り、カラマツ、エゴノキは易成型性樹皮であり、また一般的に抽出成分量の多い試料は、成型性にすぐれていた。なお、難成型性樹皮は、適当な材料の混入によって改善することが可能である。
著者
石綿 肇 杉田 たき子 武田 明治
出版者
Japanese Society of Food Chemistry
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.145-150, 1997-02-24 (Released:2017-12-01)
参考文献数
15

プラスチック製品は、生態系において分解しにくいことから環境問題として大きく取り上げられている。生分解プラスチックの開発、製品化も図られているが、現在、市販されている製品は大部分が既存プラスチックである。分解促進のために、ポリエチレンのような熱可塑性プラスチックへのデンプンの添加なども試みられている。メラミン樹脂をはじめとする熱硬化性プラスチックは、物理的強度を保つために、通常、製造原料として17%から50%のセルロースが加えられている。そこで、環境保全の観点から、メラミン食器の酵素的及び非酵素的分解について検討を試みた。食器用の未硬化メラミン樹脂コンパウンド及び2種類のメラミン樹脂製コップを粉砕したものを試料として用いた。コンパウンド及びコップ粉末に0.1Mリン酸緩衝液(pH4.5)中40℃でセルラーゼを48時間作用させたところ、コンパウンドではグルコースとして603ppm、コップ粉末では88ppmの糖が遊離した。セルラーゼ無添加では遊離糖は検出されなかった(Fig. 1及び2)。遊離糖のHPLC分析を行ったところ、主成分はグルコースで、セロビオースは見られなかった(Fig. 3)。この時、ホルムアルデヒドとメラミンモノマーの増加がみられたが、セルラーゼの添加による促進は認められなかった。従って、ホルムアルデヒドとメラミンモノマーの増加は、樹脂の非酵素的分解によるものである。コップ粉末での48時間後におけるこれら3種類のモノマーの合計は、原料の約3%であった。メラミン樹脂の非酵素的分解は、温度が高いほど促進され、また、酸性あるいはアルカリ性で促進された(Fig. 5)。これらの結果は、メラミン樹脂は自然環境下で酵素的、非酵素的に徐々に分解されることを示している。遊離したメラミンモノマーはある種の微生物により資化されることが知られており、モノマーによる二次汚染の可能性は低いと考えられる。
著者
綾部 園子 平方 千裕 武田 明日香 藤間 美咲
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】米の需要拡大を目指して、米を用いた各種パンの製法が検討されている。微細な米粉を用いる方法と米を穀粒のまま用いる方法に大別されるが、家庭では精白米粒を用いる方法が受け入れやすく、その中で、米をペーストにする製法(米ペーストパン)と炊飯米を用いる製法(ご飯パン)が実践しやすい方法であろう。そこで、2法によりパンを調製して、物性および嗜好性を検討し、特徴とその要因について検討した。<BR>【方法】通常のパン(食パン)の配合に対し、小麦粉の30%を米ペースト、炊飯米または米粉(米粉パン)に置換して自動ホームベーカリー(SD-BH103、Panasonic)を用いてパンを調製した。製品の比容積、水分量、物性(TPU-2、山電)、色、全糖(フェノール硫酸法)と還元糖(ソモギ・ネルソン法)を測定し、官能評価(評点法)を行った。<BR>【結果】パンの比容積と高さは食パン>米ペーストパン>ご飯パン>米粉パンの順、水分はご飯パン>米粉パン=米ペーストパン=食パンの順となり、米を置換したパンは、色が白く、水分が多く、比容積の小さいパンであった。物性測定の結果、硬さはいずれのパンでも差がなく、凝集性はご飯パンと米ペーストパンで小さかった。官能評価の結果、ご飯パンは甘く、しっとり感ともちもとした弾力があり、総合的に好まれた。甘味の違いを明らかにするために、パンの糖量を測定したところ、全糖量はご飯パンが有意に多かったが、還元糖量には有意の差がなかった。ご飯パンでは炊飯中に生成したグルコースがイースト発酵時に優先的に利用され、結果的にスクロースの残存量が多なり、甘いパンとなったことが示唆された。

2 0 0 0 阿波の伝説

著者
武田明 守川慎一郎著
出版者
角川書店
巻号頁・発行日
1977
著者
関田 寛 武田 明治 内山 充
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.57-63, 1983
被引用文献数
1

多種多様の果実野菜類が世界中で大被害をこうむっているミバエ類に対して, 唯一有効なくん蒸剤であるとして植物検疫上世界各国で使用されているEDBには近年発癌性のあることが判明して以来, 食品衛生上重大な危ぐの念が抱かれるに至った. これを契機として, 著者らはEDBくん蒸後に輸入された生鮮果実類中のEDBの簡便迅速な残留分析法の確立を検討し, あわせて著者らの方法を用いて実態調査を行った.<br>1) EDBは果実類 (可食部) の均一化試料の水混和物から Dean-Stark 蒸留装置を用いて留出し, ヘキサン層に移行させ, ヘキサン層を液相分離用ロ紙を用いてろ過したものをECD付きガスクロマトグラフィーを行うことにより, 簡便かつ迅速に, しかも, 高感度かつ高精度に定性及び定量することができた. 本法におけるEDBの検出限界は0.005ppmであった.<br>2) 今回検討した果実類のうちで, グレープフルーツ以外の全ての果実試料検液のガスクロマトグラム上にそれらの果実成分に由来する大小多様のきょう雑ピークが観察された. これらのきょう雑ピークの除去法を検討したところ, 残留農薬分析に常用されている活性化フロリジルを検液中に直接添加することにより, レモン, オレンジ及びマンゴー試料の場合には, きょう雑ピークのみを完全に除去することができた. この方法により, レモン及びオレンジの場合には, ガスクロマトグラフイーの所要時間を大幅に短縮することができ, マンゴーの場合には, 保持時間が近接しているためにEDBとまぎらわしいきょう雑ピークを除去することができた. しかし, このフロリジル添加法は, パパイヤの成分に由来する検液注入約3時間後に出現する巨大なきょう雑ピークを消失させる効果は, 全く認められなかった.<br>3) 今回の調査結果では,1981年10月に米国から輸入されたレモンから0.045~0.617ppm, ネーブルオレンジから0.042~1.890ppm, 同時期にハワイ州から空輸されたパパイヤから0.084~0.465ppmのEDBが検出された. そしてこれらの一部のものには, 厚生省が定めたEDBの残留許容値 (0.13ppm) を越えるものがあった. 他方, 同時期にメキシコから輸入されたグレープフルーツからは0.040ppm以下の極めて低いEDB残留が認められたに過ぎなかった. また, 1982年3月フィリピンから空輸されたマンゴーからは, EDBは全く検出されなかった.<br>4) 生鮮果実類中に残留するEDBは, その初期濃度が同一でも, 果実の種類, 果実の保管貯蔵場所の室温あるいは通風換気の状況によって, その経時的減衰の動向が大きく異なることが推測された.
著者
ガン エン 松藤 寛 千野 誠 合田 幸広 豊田 正武 武田 明治
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.298-303, 2001-10-25 (Released:2009-03-25)
参考文献数
11
被引用文献数
2 4

市販食用緑色3号(主色素:HSBA-(m-EBASA) (m-EBASA), m,m-G-3)に含まれる付随色素について,高速液体クロマトグラフを用いて分析したところ,8つの付随色素の存在が確認された.それらの中で,4つの付随色素(付随色素 C, F, G, H)を精製単離し,質量分析計並びに核磁気共鳴分光計を用いて構造決定した.付随色素Cはm,p-G-3, 付随色素FはHSBA-(ethylaniline: EA)(m-EBASA), 付随色素Gは HSBA-(di-EA) (m-EBASA), 付随色素Hは HSBA-(ethylbenzylaniline: EBA)(m-EBASA)であった.付随色素Gは,これまでに報告例のない新規な付随色素であった.
著者
楠見 孝 村瀬 公胤 武田 明典
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.33-44, 2016-06-20 (Released:2016-06-17)
参考文献数
32
被引用文献数
2

本研究は,児童・生徒用一般的批判的思考態度(CT-G)と学習場面の批判的思考態度(CT-S,各10項目)を用いて,認知的熟慮性-衝動性,認知された学習コンピテンス,教育プログラムとの関係を解明した.小学校5,6年生312人,中学1,2,3年生306人に,4ヶ月間隔をおいた2回の調査を実施した.そのうち,中学1年生125人に対しては,28ヶ月後の3回目調査を実施した.1回目調査において一般的および学習場面の批判的思考態度の2尺度の信頼性を内的整合性によって確認した.さらに,構成概念妥当性を確認的因子分析,基準関連妥当性を関連尺度との相関に基づいて確認した.パス解析の結果,3回の調査いずれにおいても,(i) 熟慮性は,一般的批判的思考態度に影響を及ぼし,(ii) 一般的批判的思考態度は学習場面の批判的思考態度に影響を及ぼした.そして,(iii) 学習場面の批判的思考態度は学習コンピテンスに影響を及ぼした.最後に,教育プログラムの影響について考察した.
著者
武田 明子
出版者
奈良大学史学会
雑誌
奈良史学 (ISSN:02894874)
巻号頁・発行日
no.17, pp.41-62, 1999

江戸時代末期の庶民の生活を描いた『守貞漫稿』によると、京都の髪結の記述に「毎坊、會所ト号ケテ、市民會合ノ家一戸ヲ置ク」とあり、近世の京都の町には木戸や番所と同じく、一般的に町有の施設として町会所が置かれていた。町会所は、恒常的な自治運営の場であり、町と共同体の性格を見る上で非常に重要な共有施設であるが、その実態や成立については十分に明らかにされていないのが実情である。京都の町会所についての研究は、川上貢氏と谷直樹氏による『祇園祭山鉾町会所建築の調査報告本文編』が主なものである。山鉾町の町会所を中心に述べられており、町会所は町衆自治の伝統を継承し、育んできた町の核であったとしている。そこで本論では、京都市中の町会所を対象にして、近世の京都における町会所の役割について述べたいと思う。京都の町会所は、原則的に各町に設けられたが、行政の末端組織として取り込まれていたとされている。しかし、権力者側のみの要求で存在したものではなく、町の共同体側からの必要性にも支えられて恒常的な施設として存在していたのではないだろうか。従って、町会所が町の人々にとってどのような存在であり、役割を担っていたのかを述べることによって、町共同体からの必要性を考察したい。また、会所の役割を分析することにより、京都がどのような性格をもった都市であったのかについても考察したいと思う。内容構成においては、はじめに町会所の初見や成立要因を探り、会所の成立意義について考察する。ついで会所の設立や構造、利用方法について具体的な事例を検討し、会所の実態に迫りたい。さらに、町会所の様々な機能についても事例を集め、町共同体にとって会所がどのような役割を果たしていたのか、また、その背景について述べることにする。
著者
石綿 肇 杉田 たき子 武田 明治
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.145-150, 1997-02-24

プラスチック製品は、生態系において分解しにくいことから環境問題として大きく取り上げられている。生分解プラスチックの開発、製品化も図られているが、現在、市販されている製品は大部分が既存プラスチックである。分解促進のために、ポリエチレンのような熱可塑性プラスチックへのデンプンの添加なども試みられている。メラミン樹脂をはじめとする熱硬化性プラスチックは、物理的強度を保つために、通常、製造原料として17%から50%のセルロースが加えられている。そこで、環境保全の観点から、メラミン食器の酵素的及び非酵素的分解について検討を試みた。食器用の未硬化メラミン樹脂コンパウンド及び2種類のメラミン樹脂製コップを粉砕したものを試料として用いた。コンパウンド及びコップ粉末に0.1Mリン酸緩衝液(pH4.5)中40℃でセルラーゼを48時間作用させたところ、コンパウンドではグルコースとして603ppm、コップ粉末では88ppmの糖が遊離した。セルラーゼ無添加では遊離糖は検出されなかった(Fig. 1及び2)。遊離糖のHPLC分析を行ったところ、主成分はグルコースで、セロビオースは見られなかった(Fig. 3)。この時、ホルムアルデヒドとメラミンモノマーの増加がみられたが、セルラーゼの添加による促進は認められなかった。従って、ホルムアルデヒドとメラミンモノマーの増加は、樹脂の非酵素的分解によるものである。コップ粉末での48時間後におけるこれら3種類のモノマーの合計は、原料の約3%であった。メラミン樹脂の非酵素的分解は、温度が高いほど促進され、また、酸性あるいはアルカリ性で促進された(Fig. 5)。これらの結果は、メラミン樹脂は自然環境下で酵素的、非酵素的に徐々に分解されることを示している。遊離したメラミンモノマーはある種の微生物により資化されることが知られており、モノマーによる二次汚染の可能性は低いと考えられる。
著者
甲平 一郎 二宮 庸太郎 武田 明雄 小幡 典彦
出版者
JAPAN EPILEPSY SOCIETY
雑誌
てんかん研究 = Journal of the Japan Epilepsy Society (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.167-173, 2002-10-31
被引用文献数
1

てんかん重積状態で入院した35歳の女性例を報告した。34年間の部分発作と全身痙攣発作を有するてんかんの病歴があった。入院時には右上下肢の強直性間代性痙攣へ二次性に進展していく顔面の運動発作が2分置きに出現していた。入院直前10時間の間に経静脈的にフェニトイン750mgとアセタゾラミド500mgで加療を受けていた。入院後直ちにミダゾラム10mg、ベクロニウム10mg、プロポフォール200mgを静脈内にボーラスで投与後発作は消失した。気管内挿管し人工呼吸器管理を行い、ミダゾラムの持続点滴を開始した。発作消失26時間後より顔面の痙攣が出現し2日続いたため、プロポフォールの持続点滴を開始した。プロポフォールの静脈内投与にて全ての発作は消失した。発作が消失して17日経過して再度てんかん重積状態となりプロポフォールの経静脈内投与を行ったところ発作は直ちに消失した。2回目のてんかん重積状態の治療は経静脈的にはプロポフォール単独で行った。今回の症例はフェニトインやミダゾラムに抵抗性の難治性てんかん重積状態の治療においてプロポフォールが有用である可能性を示唆している。<br>

1 0 0 0 OA 衛生薬学

著者
秋山 高 河村 太郎 富田 基郎 武田 明治
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.15, no.12, pp.1137-1142, 1979-12-01

戦後, 我々の日常生活が豊かになるにつれ, 工業生産が増大しましたが, 反面, 我々の日常生活や生産活動に由来した廃棄物による種々の汚染が社会問題化してきました.社会的要求の変化に伴い, 社会科学の一のである薬学も質的変化を来し, 薬学領域における衛生薬学の比重が飛躍的に増大してきました.今日は, 広い衛生薬学のうちでも一応公衆衛生の分野を中心として, これからの衛生薬学のあり方につきお話を伺いたいと思います.