著者
水田 健一
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.57-80, 2017

「ふるさと納税」制度は,納税者が自分の意思で,地方税の納税対象を選択することができるようにすることを意図して,居住地以外の地方団体に対する寄附金に対する所得税,地方住民税の税額控除制度として,2008年度から導入され,その後寄付件数,寄付額共に大きく増大している。本稿では,この制度の創設が議論された総務省の「ふるさと納税研究会」における議論を振り返ることによって,この制度が創設された目的を検討した後に,この制度が持つ問題点と改善すべき諸点について考察を行う。この制度の持つ問題点として,望ましい地方税のための原則に抵触すること,地方交付税特別会計の財源不足を増大させること,寄付を求めての返礼品競争を激化させること,負担を伴わない「寄付」は寄付の理念に反すること,地方団体への寄付とその他の団体への寄付との間での不平等性が発生すること,が挙げられる。さらに一定の仮定の下で,ふるさと納税制度を用いた寄付について,寄付者本人,居住地および寄付先の地方団体,および国の各主体グループ別の受益額と負担額についての検討を行った
著者
林 隆之 齊藤 貴浩 水田 健輔 米澤 彰純 川村 真理 安藤 二香
出版者
政策研究大学院大学科学技術イノベーション政策研究センター (SciREX センター)
雑誌
SciREX ワーキングペーパー = SciREX Working Paper
巻号頁・発行日
no.SciREX-WP-2020-#04, 2020-10

我が国は生産年齢人口の減少がすすむ中、デジタル化による産業構造転換に遅れて国際競争に劣後し、さらに、近年は感染症や災害などの問題にも直面するなど、厳しい状況におかれている。この中で、大学は、高度な能力を有する次世代の人材を育成・輩出し、また、先端的な研究開発を通じて新たな知識を形成し社会や産業の課題解決へつなげていく重要な機能を有している。とりわけ国立大学は、公的資金に基づいて、高度な研究開発の実施や国として必要な高度人材の育成を担うことが強く期待されている。しかし、大学はこれまで、大学改革の要求に受け身で対応することによる疲弊や、国立大学法人における運営費交付金の削減等による財政基盤の弱体化により、その機能を十二分に発揮している状況とは言えない。 大学が教育研究活動の現状を国や社会に示し、その方向性を共有することで公的存在としての大学への支持を構築していく手段の一つとして、大学評価があげられる。日本では2004年から、大学評価制度として認証評価と国立大学法人評価という2つの評価が実施されてきた。しかし、現在、2つの評価制度は大学に多大な対応負担を求めているにもかかわらず、現実的には何に活用されるのかが不明瞭な状況になっている。日本の大学評価は、大学の「個性化」を重視してきたがゆえに、大学間の比較可能性を限定的なものとしており、学生や社会が意思決定のために求める大学情報として機能しにくく、また大学自らの切磋琢磨にもつながりにくい状況になっている。 その一方で、大学評価制度とは別に、資金配分のための評価が行われるようになった。大学単位の競争的資金配分や、国立大学の運営費交付金配分のためのKPIによる「機能強化経費」配分、ならびに共通指標による競争的配分である。そもそも先述の2つの大学評価制度は評価結果を運営費交付金の配分に強く影響させないことを前提としており、それゆえに、資金配分のためには別の評価が必要となり、大学に重複した負担をかける状況になっている。 この状況は大学評価の在り方の問題だけではなく、運営費交付金の配分の在り方の問題と一体である。第三期中期目標期間に新たに導入された競争的配分は、運営費交付金の8割以上を占める「基幹経費」部分を圧縮することによって各大学が拠出した額が、毎年の改革状況や実績によって再配分される方法であり、不安定かつ短期的な配分をもたらしている。 一方、基幹経費は、前年度額をもとに算定される方式が法人化以降15年以上続き、大学が現在行っている教育・研究活動に必要なコストと整合した額が配分されているかも不明な状態であるとともに、教育研究実績を向上させるインセンティブが存在しない。 このように、我が国の高等教育や社会を発展させるための全体としての財政理念や長期的な将来展望を欠いたまま、前年度踏襲の漸増減が繰り返されたり、対症療法的な改革点検項目を指標とした評価が行われたりすることは、大学を疲弊させることにつながる。 この点について海外諸国をみれば、財政配分については、その根拠や効果を透明性をともなってわかりやすく社会に提示するため、広い意味での大学評価と関連づけた議論や取組みが進んできている。すなわち、海外では運営費交付金のような基盤経費の配分は、日本のような前年度額や非公式の交渉に基づく配分から、必要コスト(学生数等)や実績指標を総合的に用いた算定方式や、大学と国との契約に基づく配分を含むものへと次第に変化している状況がある。大学評価の方法についても、教育面では、学生満足度調査や卒業率・雇用状況等を、研究面では研究成果の学術的質や社会的効果(インパクト)に対する評価者による研究評価等を活用する国もあるなど、実績を定量的・定性的に測定する方法の開発が進んでいる。一方で、教育の質保証を目的とする評価は、大学内部の評価である内部質保証を厳しく実施することによって、外部からは簡素に評価を行い、大学内部では自ら意義ある取組としての内部評価を実施することが可能となりつつある。 これらの国内外の状況を踏まえれば、我が国の大学評価を、効率的な財政配分への貢献をも正面から見据えて、根本的に問い直すべき時期にきている。本報告では、大学評価と運営費交付金配分方式の一体的改革が必要であることを提言する。 運営費交付金は前年度額に基づく理論なき配分から、大学の教育・研究・社会貢献の機能ごとに、必要コストや実績の測定を行い、配分に反映させる透明な算定方式へ移行することが必要である。そこでは、インプット指標に基づくコストを保証する基盤的部分、教育・研究・社会貢献の実績を測定してインセンティブを付与する部分、大学の戦略をもとに国の政策課題に対する貢献を「契約」する部分など、統合的で一貫性を持った体系へと再設計することが望まれる。このような方法をとることで、運営費交付金が安定的、あるいは期間中の増減が予め把握可能な資金配分となり、また、社会からは大学の実績への理解と支持がえられることで、大学による長期的な視野に立つ自律的経営が可能となることが期待される。 国立大学法人評価は、大学の教育研究活動の状況や実績を量的・質的に把握・評価し、運営費交付金へ反映させることが可能な情報を提供することを目的とする評価へと転換することを提言する。そこでは現在のように、中期目標・計画の達成を厳密に評価するのではなく、教育面では将来必要となる人材の育成のために、学習者や社会のユーザーの視点を反映した基準に基づく評価を行い、研究面では学術的な質の国際的卓越性や研究による社会への効果(インパクト)を把握し、その評価結果を理解しやすい形で提示する。それにより、幅広いユーザーへの有効な情報提供や、資金配分の説明責任を果たすことも期待される。 加えて、大学の戦略的経営の面からは、各大学は独自に「戦略計画」を策定し、それを踏まえて国が提示する政策目的・課題(たとえば、将来社会において必要な領域の人材養成、国際的な拠点となる学術研究、地域創生の拠点としての大学)への貢献を国と契約し、そのための資金配分がなされることも考えられる。これにより、国は、個々の大学の個性や自律性を尊重しつつも、大学セクターへの公共投資の目的を明確化し、大学間での機能分担を促進し、有効性と効率性を高めることが必要である。 一方、認証評価は内部質保証を重視した方向性を堅持しつつ、大学単独だけでなく大学セクターが共同して教育内容や学修成果の水準を外部のステークホルダーの視点も入れながら点検し、教育の質向上を図るよう取組を進めるべきである。 令和2年度において、新型コロナウイルスのパンデミックが緊急の大きな財政出動につながったが、経済状況の回復後は財政再建のための緊縮財政を覚悟しなければならない。そうした中、大学への公共投資には投資効果に関する明確で一貫したわかりやすい全体設計による効率性・透明性の確保と社会からの広範な理解と支援が必要となる。そのためにも、運営費交付金配分と大学評価の一体的改革が不可欠である。
著者
水田 文子 猪狩 俊郎 安田 真 水田 健太郎 城戸 幹太 下田 元 佐藤 実 高橋 雅彦
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.24-30, 2005-06-30

歯科診療室においては, 患者が厚着していることが多いため, 裸腕に代えて脱衣せずに利用できる血圧測定方法がないか, 健康成人40人に対し, オシロメトリック式自動血圧計を用いて検討した。着衣の状態や測定部位は, 上腕裸腕, ワイシャツ, 薄手のセーター, 薄手のセーターを捲り上げ, 厚手のセーター, 厚手のセーターを捲り上げ, ジャケット, 裸腕前腕, 下腿とした。その結果, ワイシャツやワイシャツに2mm程度のセーターの重ね着程度ならば, 裸腕の血圧測定に代えて利用できることが明かとなった。着衣での頻回あるいは長時間におよぶ血圧測定は望ましくはないが, 健康成人で日常の歯科診療室における血圧測定には十分に利用できるものと考えられた。一般に着衣の上からの測定は駆血に要する圧が高めとなるので測定値が高く出, セーターなどを捲りあげての測定では低くなると言われているが, オシロメトリックメトリック方による測定では必ずしもそうとは限らなかった。
著者
藤澤 俊明 水田 健太郎 望月 亮 松村 朋香 立浪 康晴 杉村 光隆
出版者
一般社団法人 日本歯科麻酔学会
雑誌
日本歯科麻酔学会雑誌 (ISSN:24334480)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.52-65, 2022-04-15 (Released:2022-04-15)
参考文献数
9

【要約】 本邦の歯科医院における全身的合併症発症時の院内救急体制の整備状況と実態を明らかにするため,全国の郡市区歯科医師会および歯科医院を対象にアンケート調査を行った.歯科医院および回答した歯科医師会は392団体(回収率51.2%),歯科医院は392施設(回収率25.5%)であった.救急薬剤を配布している歯科医師会は48.5%,歯科医院における救急薬剤の常備率は74.5%であり,歯科医師会による配布薬剤,歯科医院における常備薬剤ともアドレナリン,アトロピン,ニトログリセリンが多かった.救急薬剤を投与した経験のある歯科医院の割合は5.6%であった.また,医療用酸素,生体情報モニタ,AEDの配備率はそれぞれ82.7%,66.3%,71.5%であった.「救急薬剤を配布している」と回答した歯科医師会190団体のうち,救急薬剤投与法の講習/研修会を開催していた歯科医師会は75.8%であった.また,過去5年間に緊急時対応・救急蘇生法の講習/研修会を開催していた歯科医師会は68.9%を占めた.歯科診療においては,生命に関わる重篤な全身的合併症を予防することはもちろん,その発症時に適切に対応するには,救急薬剤および器材を常備し,研修を怠らないことが医学的および倫理的見地から重要である.歯科医師が現実的に使用可能な救急薬剤の選定とその適正使用についての卒前・卒後教育の充実が今後の課題であると考えられた.
著者
水田 健
出版者
The Japanese Society for the History of Economic Thought
雑誌
経済学史学会年報 (ISSN:04534786)
巻号頁・発行日
vol.32, no.32, pp.16-27, 1994 (Released:2010-08-05)
参考文献数
24

There are some types of money market models in the history of economic theory. They are the quantity theory of money, the Keynesian approach and the Banking School theory. The object of the present article is to place Thornton in the proper position among those theories.His theory is included in the quantity theory. It is true that he instists on the theory in his Paper Credit, but he also mentions the effect of money on the real variables in an economy. However, that is true of other quantity theorists, such as Hume and Fisher. They recognize that changes in the quantity of money affect output and employment in the short run, while emphasizing that the price level is determined only by the money supply in the long run. Therefore, Thornton is in the same camp as they.He also belongs to the Wicksellian stream, which begins with Thornton, followed by Ricardo, Joplin and so on, and then reaches to Wicksell. According to the argument, changes in the money stock originate from a disparity between the rate of interest and the rate of profit.
著者
松塚 ゆかり 水田 健輔 佐藤 由利子 米澤 彰純
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成29年度の研究目的は、マクロデータを用いて学生と高度人材の国家間移動と移動を規定する要因を分析することであり、課題中心的観点から理論、定量、定性研究を組み合わせて以下を遂行した。1.理論研究: モビリティーを軸に、公共財政論、人的資本論、規模の経済性理論、国際流動化論、移民論等の基礎文献を収集・整理し、共用ドライブ上で研究メンバー間で共有するとともに、定量研究のための仮説を整えた。2.定量研究: (1) 学生と高学歴者の国家間移動データをUNESCO:UISとOECD移民データベース(DB)等から、(2) 経済力、雇用、所得格差等の経済指標をWorld Development Indicators等から、(3) 就学歴、大卒収益率、高等教育費公私負担率等の教育指標をEducation at Glance等から収集、統合・加工した後、各国が提供するデータで補強し、高等教育をめぐるモビリティーとその規定要因を分析するためのデータベース(Database for Higher Education Mobility〈DHEM〉)を構築した。DHEMは研究メンバーの専門と関心を軸に複数にデータセット化し、専用ドライブで共有して分担分析した。さらに、平成30年度の計画研究である個票データの収集を試行し、DBの具体的設計を終えた。3.定性研究: 平成30年度の米国現地調査に向けて上記の定量及び理論研究の成果を参考に、訪問候補の政府機関と大学の情報収集、調査プロトコールと質問項目の作成を進めた。4.研究成果の公開: 全米比較国際学会でのパネル会議開催の申請が採択され、同学会で上記の理論研究、定量研究の成果を発表した。 発表件数: 7件、研究論文: 1件、図書: 1件
著者
江藤 光紀 城多 努 辻 英史 水田 健輔
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

各地に劇場が林立し、劇場大国と呼ばれるドイツだが、地方分権が行き届いているため、各地の劇場のあり方も様々である。本研究では、それぞれに性格の異なる劇場をサンプル的に抽出し、その地の歴史性・特殊性/日々の公演の実際・運営上の工夫/財務構造とその問題点、という三つの視点から分析することにより各劇場の特性を総合的に捉え、「劇場大国」と一口にくくられるドイツの劇場が抱える問題の共通性と個別性を明らかにした。