著者
戸塚 唯氏 早川 昌範 深田 博己
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.26-36, 2001-12-25 (Released:2010-06-04)
参考文献数
16

防護動機理論 (protection motivation theory: PMT) とはRogers (1983) によって提唱された脅威アピールの説得効果を説明するための理論である。本研究の目的はPMTに基づいて, 環境ホルモン (擬似エストロゲン物質) の対処行動意図を促進, あるいは抑制する要因を検討することであった。独立変数は, 脅威 (高・低), 反応効果性 (高・低), 反応コスト (高・低), 性 (男性・女性) であり, 400人の被験者 (男性200人, 女性200人) を16条件のうちの1つに割り当てた。その後被験者に説得メッセージを呈示し, さらに質問紙に回答させた。分散分析の結果, 脅威と効果性, 性の主効果が見いだされ, 脅威や効果性が大きいほど, また男性よりも女性の方が, 環境ホルモン対処行動意図が大きいことが明らかとなった。次に実験的検討を補うために, PMT認知要因 (深刻さ, 生起確率, 効果性, コスト, 自己効力, 内的報酬), 性, 恐怖感情を順に説明変数に投入する階層的重回帰分析を行った。その結果, コストを除いたPMT要因と性, および恐怖感情が環境ホルモン対処行動意図に影響を与えていることが明らかとなった。
著者
木村 堅一 深田 博己
出版者
対人コミュニケーション研究会
雑誌
対人コミュニケーション研究 = The Japanese journal of interpersonal communication (ISSN:21874433)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-16, 2013-03

本研究の目的は、エイズキャンペーンへの参加が、参加者のエイズに関する意識改善にどのような効果を生じさせたかを検討することであった。大学生92名をエイズキャンペーン参加群65名と不参加群27名に配置し、キャンペーンの前後でエイズに関する意識を同じ質問紙によって測定した。その結果、36変数中5変数で変化が認められた。キャンペーン参加群は不参加群よりも、コンドーム使用の規範認知が増加し、HIV感染者・エイズ患者(PWH/A)との共生行動のコスト認知が減少した。また、PWH/Aとの共生行動の報酬認知が増加し、PWH/Aとの共生行動意思が強まった。本研究で取り上げたエイズキャンペーンは、HIV感染予防に対しては目立った効果を生じさせないが、PWH/Aとの共生に対しては特定の効果を持つことが証明された。
著者
児玉 真樹子 深田 博己
雑誌
産業ストレス研究 = Job stress research (ISSN:13407724)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.145-155, 2005-04-25
参考文献数
28
被引用文献数
4
著者
町 一誠 樋口 匡貴 深田 博己
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.173-186, 2006-02-08 (Released:2017-02-07)
被引用文献数
2

This study aims to examine the effects of a speaker's use of dialect on the impression given by that person. The experimental conditions were as follows : (1) the speaker used a common language and a dialect with appropriate code-switching according to the situation; (2) the speaker used the same, but with inappropriate code-switching; (3) the speaker consistently used a common language; and (4) the speaker consistently used dialect. The subjects consisted of two hundred and eighty undergraduate students, some of whom were native speakers of the dialect while others were not. The experiment revealed that the impression given by and the interpersonal attractiveness of a speaker who used a common language and a dialect with appropriate code-switching according to the situation were more favorable. On the other hand, the impression given by and the interpersonal attractiveness of a speaker with inappropriate code-switching were less favorable. These results were discussed from the viewpoint of the evaluation of the dialects in Japan.
著者
深田 博己
出版者
島根大学教育学部
雑誌
島根大学教育学部紀要 教育科学 (ISSN:0287251X)
巻号頁・発行日
no.21, pp.p71-79, 1987-12

本研究では,恐怖喚起コミュニケーションの説得効果を予測あるいは説明するために提出された既存の理論・モデルの特徴と限界を考察し,試案段階であるが,認知−情緒統合モデルを提案する。
著者
深田 博己 戸塚 唯氏 湯 永隆
出版者
広島大学
雑誌
広島大学大学院教育学研究科紀要. 第三部, 教育人間科学関連領域 (ISSN:13465562)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.273-280, 2002-02-28

The experimental study on censorship was conducted to investigate the effects of (1) censor power and (2) the type of freedom re-establishment of communication on the recipients' attitude change in hypothetical situations. The censor was either a powerful or powerless agent, and the type of freedom re-establishment was direct re-establishment of freedom, re-establishment of freedom by implication, or non-re-establishment of freedom. The results indicated that both of the two independent variables, i.e. (1) and (2), mentioned above did not influence the subjects' attitude change toward the censored communication topic. The subjects in the non-re-establishment condition perceived greater threat to freedom than those in the direct re-establishment condition. And the subjects in the direct re-establishment and re-establishment by implication conditions perceived the communicator more positively than those in the non-re-establishment condition. The results in the present experiment have been interpreted according to the psychological reactance theory.
著者
江崎 修司 深田 博己
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.2, pp.201-220, 2002

本研究の目的は、多数派への少数派の影響に及ぼす少数派の交渉スタイル(柔軟性一頭強性)の効果に関する研究の問題点を検討し、最適な実験材料を作成することであった。本研究は4つのパートから構成された。最初に、少数派の影響過程の研究における少数派の概念定義を明確化し、次に、少数派の影響方略としての交渉スタイルの問題に言及した。さらに、少数派の交渉スタイルを取り上げた先行研究の問題点を指摘し、研究方法に関する提言を行った。最後に、シナリオ法に基づいて実験材料の作成を試みた。その結果、死刑制度を集団討議話題とし、一貫性の次元では等しく高いが、柔軟性の次元でのみ異なる少数派の交渉スタイル換作用のビデオ刺激(柔軟ビデオと頑強ビデオ)を作製することに成功した。
著者
山崎 祥一郎 井邑 智哉 深田 博己 塚脇 涼太
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.10, pp.53-59, 2010

インターネット利用に関する心理学的研究において, 社会関係資本の概念を用いた研究が注目を集めている。本研究では, (a)インターネット社会関係資本の醸成に, コミュニティサイズの認知及びコミュニケーション時間が及ぼす影響と, (b)インターネット社会関係資本が精神的健康(抑うつ, 幸福感)に及ぼす効果を検討することで, インターネット社会関係資本にかかわる一連の過程を検討した。本研究の結果, インターネット上のコミュニティサイズがインターネット結合型および橋渡し型の社会関係資本を醸成し, インターネット橋渡し型社会関係資本が個人の抑うつを増加させる傾向があるということが分かった。
著者
塚脇 涼太 越 良子 樋口 匡貴 深田 博己
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.397-404, 2009
被引用文献数
3

This study examined the motives for different expressions of humor. University students (<I>n</I>=286) completed a questionnaire regarding motives for three types of humor expressions: aggressive humor, self-disparaging humor, and playful humor. Exploratory and confirmatory factor analyses indicated that the motives for the expressions of humor could be classified into five types: relationship construction, transmitting dissatisfaction, supporting others, managing self-impression, or supporting self. ANOVA was conducted to examine differences in the strengths of the motives among the three types of humor expressions. The results indicated that the motive for transmitting dissatisfaction was stronger in aggressive humor expressions than in the two other types of humor expressions. On the other hand, the motive for supporting others was weaker in aggressive humor expressions than in the two other types of humor expressions. Moreover, the motive for supporting self was stronger in self-disparaging humor expression than in aggressive humor expression.
著者
塚脇 涼太 深田 博己 樋口 匡貴 蔵永 瞳 濱田 良祐
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.9, pp.355-370, 2009

本研究の目的は, 様々な環境配慮行動の種類と諸認知および行動意思との関係を検討することであった。298名の大学生に対する調査データに関して, 独立変数を環境配慮行動の種類(流し台ゴミ除去行動, 油拭き取り行動, 風呂排水ゴミ除去行動, 節水行動, 節電行動, リサイクル行動, 再生紙製品購買行動, 使い捨て商品不買行動, トレー回収行動)と調査対象者の性(男性, 女性)とし, 従属変数を集合的防護動機モデルで仮定されている8つの認知, 利便性認知, 利得性認知, 行動意思の合計11変数とする9×2の分散分析を行った。分析の結果, 9種類の環境配慮行動の中で, 最も多くの種類の認知が高い行動は節電行動であり, 反対に, 最も多くの種類の認知が低い行動は, 風呂排水ゴミ除去行動であることが判明した。また, 9種類の環境配慮行動の中で最も行動意思が高い行動は, 流し台ゴミ除去行動, 節水行動, 節電行動であることが明らかとなった。
著者
児玉 真樹子 深田 博己
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.6, pp.19-25, 2006

本研究は,生産性に関連する態度,行動・行動意図に及ぼす職業的アイデンティティの影響を検討することを目的とした.企業就業者約600名を対象とし,調査を行った(有効回答者数353名).第1ステップに職業的アイデンティティを,第2ステップに生産性に関連する態度(職務満足,仕事への内発的動機づけ,キャリア形成に対する積極性)を,第3ステップに生産性に関連する行動・行動意図(離転職意志,出社拒否による突発的な休み,残業の頻度)を設定し,パス解析を行った.その結果, 職業的アイデンティティは,生産性に関連する行動・行動意図に対して直接的に,もしくは生産性に関連する態度を介して間接的に影響を及ぼすことが確認された.