著者
清水 誠也 水谷 政美 鶴田 徹
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.J24-J29, 2014 (Released:2013-12-20)
参考文献数
8

筆者らは,駐発車を含むさまざまな運転状況でのドライバ視覚支援を目的とし,4台の車載カメラ映像をもとに,自車両の近傍だけではなくより広い範囲の状況を立体感のある全周囲立体映像として合成し,視点を自由に動かしながら表示できる全周囲立体モニタ技術を開発した.本技術により,駐車時,交差点右左折時,高速道路の本線合流時などさまざまな運転状況に応じて死角のない車両周辺映像をリアルタイムに合成し,車載モニタで確認できるようになった.全周囲立体モニタ技術は,すでにドライバ視覚支援製品として実用化されており,ドライバの安心・安全の向上を通して社会に貢献している.本稿では,全周囲立体モニタ技術の原理について述べた後,実用化の課題であったカメラ間の視差と輝度差への対処について示す.さらに車載組込み系システムへの実装と,実車両への適用について報告する.
著者
清水 誠治
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.2357-2368, 2018 (Released:2018-11-20)
参考文献数
114
被引用文献数
2

collagenous colitisは非血性の慢性下痢をきたし,病理組織学的に大腸の上皮基底膜直下に膠原線維束を認める疾患であり,おもに生検組織で診断される.CCはlymphocytic colitis(LC)とともにmicroscopic colitis(MC)に包括されている.MCは欧米で1980年代から1990年代にかけて経年的に罹患率が増加していたが,2000年以降はほぼ一定の水準であり,CCよりむしろLCの方が多い.病因は未だに明確ではなく発症には多因子の関与が想定されているが,欧米では複数の症例対照研究でNSAID,PPIがCCの発症リスクを高めることが示されており,近年はとくにPPIの関与が注目されている.本邦では2000年代に入って以降CCの報告が増加している.本邦には疫学的データは存在しないが,頻度は欧米に比べかなり低率である.LCは本邦でほとんど報告がなく,CCもほとんどがPPI(とくにランソプラゾールやNSAID)などの薬剤に関連して発症しており,欧米より薬剤起因性と考えられる症例の割合がかなり高い.このように欧米と本邦ではMCに関する実態に大きな乖離がみられる.CCでは元々,画像上異常を認めないと記載されていたが,内視鏡所見の異常がまれでないことが明らかになってきた.内視鏡所見としては,1)色調変化:発赤,発赤斑,褪色など,2)血管像の異常:血管透見低下・消失,血管増生など,3)粘膜表面性状の異常:浮腫,易出血性,粗糙粘膜,顆粒状粘膜,偽膜,粘膜裂創(線状・縦走潰瘍/瘢痕,“cat scratch”),ひび割れ様所見など,4)その他:ハウストラ消失,が挙げられる.とくに粘膜裂創と顆粒状粘膜は本症を疑う上で重要な所見である.内視鏡的有所見率は欧米で約20%と報告されているのに対して,本邦では70%以上である.治療としては,原因と考えられる薬剤を中止することでほとんどの症例で下痢が軽快する.MCの病態に関してはなお不明な点が多く,疾患のheterogeneityを含めた問題点の解明を期待したい.
著者
清水 誠治
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.74, no.10, pp.606-612, 2021 (Released:2021-11-29)
参考文献数
26
被引用文献数
1

腸間膜静脈硬化症は右側結腸を中心に慢性静脈性虚血性変化をきたすまれな疾患である.内視鏡所見では特徴的な粘膜色調変化(青銅色~暗紫色),半月ひだの肥厚がみられ,潰瘍を認めることも多い.生検では粘膜固有層の膠原線維沈着がみられる.CT所見では腸管壁内外の静脈の線状ないし樹枝状石灰化と腸管壁肥厚が特徴的である.病因として山梔子を含む漢方薬の長期服用が関与することが明らかとなった.症状は腹痛,下痢が多いが無症状例も少なくない.病変が進行し通過障害が高度になると手術が必要になる場合があり,これまでに約20%の症例で手術が施行されている.山梔子を含む漢方薬服用が確認されれば中止により病変の改善とともに手術を回避できることが多い.炎症性発癌の可能性は低いと考えられているが,今後癌の合併も注視していく必要がある.
著者
清水 誠治 横溝 千尋 石田 哲士 森 敬弘 富岡 秀夫
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.3-14, 2014 (Released:2014-02-22)
参考文献数
37
被引用文献数
1

潰瘍性大腸炎とCrohn病はいずれも原因不明の慢性疾患であるが,慣例的に狭義の炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease;IBD)と呼ばれ,それぞれに診断基準が定められている.診断においては画像診断が重要な役割を担うが,IBDと画像所見が類似する様々な疾患を鑑別する必要がある.近年,IBDの治療が進歩するとともに,さらに正確な診断が求められている.特に,カンピロバクター腸炎,アメーバ性大腸炎,腸結核,エルシニア腸炎などの腸管感染症をIBDと誤診することは回避しなければならない.また,潰瘍性大腸炎とCrohn病の鑑別が問題となる症例の対応にも注意を要する.本稿ではIBDと鑑別を要する疾患との大腸内視鏡による鑑別診断について解説した.
著者
清水 誠治
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.814-815, 2012-05-24

消化管に好酸球浸潤を来す疾患は“eosinophilic gastrointestinal disorder”と総称されており,その内原発性で,消化管のみに病変がみられるものが好酸球性胃腸炎である.病変部位によって好酸球性食道炎,好酸球性胃炎,好酸球性小腸炎,好酸球性大腸炎とも呼ばれる.好発部位は胃,小腸とされているが,従来まれと言われていた食道や大腸病変の報告も最近増加している.気管支喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患が約半数に合併する. 診断基準としてはTallyら1)のものが一般的であり,(1) 消化管症状の存在,(2) 消化管の1か所以上に生検で好酸球浸潤が証明されるか,または末梢血好酸球増多と特徴的なX線所見がみられる,(3) 寄生虫など好酸球増多を示す他疾患を除外できる,の3項目を満たすことで診断されるが,病変部位によって臨床像が異なっており,均質な疾患群とは考えにくい.生検診断においては強拡大視野で20個以上の好酸球が存在することが一応の基準であるが,部位により浸潤程度に差があるため多数点での生検が必要である.
著者
堀口 敏宏 趙 顯書 白石 寛明 柴田 康行 森田 昌敏 清水 誠 陸 明 山崎 素直
出版者
日本海洋学会沿岸海洋研究部会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.7-13, 2000-02
被引用文献数
6

船底塗料などとして使用されてきた有機スズ化合物(トリブチルスズ(TBT)及びトリフェニルスズ(TPT))によって,ごく低濃度で特異的に誘導される腹足類のインポセックスのわが国における経年変化と現状の概略を種々の野外調査結果などに基づいて記述した.1990~1991年の汚染レベルに比べると近年の海水中の有機スズ濃度は低減したと見られるものの,イボニシの体内有機スズ濃度の低減率は海水中のそれよりも緩やかであり,またその低減率が海域により異なっていた.また環境中の有機スズ濃度の相対的な減少が観察されるものの,イボニシのインポセックス発症閾値をなお上回る水準であるため,インポセックス症状については全国的に見ても,また定点(神奈川県・油壺)観察による経年変化として見ても,十分な改善が認められなかった.この背景には,国際的には大型船舶を中心になお有機スズ含有塗料の使用が継続していることとともに,底泥からの再溶出の可能性及びイボニシの有機スズに対する感受性の高さなどが関連していると推察された.
著者
山内 邦男 清水 誠 高宮 幸江 川上 浩 GANGULI N. C.
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.329-335, 1983

2種のインド水牛,Murrah種とSurti種,より得た乳からカゼインと乳清蛋白質を単離し,その性質を調べた.全カゼインの電気泳動パターンとアミノ酸組成は2種の水牛乳でほとんど同じであった.Murrah種の水牛乳からα<sub>s1</sub>-, α<sub>s2</sub>-, β-,およびκ-力ぜインをAmberliteCG-50およびDEAE-Sephadexクロマトグラフィーによって単離,精製した.各カゼイヤのアミノ酸組成は,イタリア水牛のカゼインについて報告されている値と一致していた.スラブ電気泳動で水牛乳α<sub>s1</sub>-カぜインは複数のバンドを示した.ホスファターゼ処理によってバンドは1本になることから,この不均一性はりん酸化の違いによるものと考えられた.α<sub>s1</sub>-, α<sub>s2</sub>-, β-およびκ-カゼインの量比は40:9:35:12であり,α<sub>s2</sub>-カゼインの比率が低い点でイタリア水牛(α<sub>s1</sub>-とα<sub>s2</sub>-カゼインがそれぞれ30および18%)と異なっていた,Murrah種とSurti種の全乳清蛋白質をスラブゲル電気泳動,SDSゲル電気泳動によって比較した結果,両者はほぼ同様のパターンを示した.また,抗-ウシ乳清蛋白質血清を用いた免疫電気泳動の結果,水牛乳の主要乳清蛋白質は牛乳のそれと免疫化学的に類似していることが示された.
著者
清水 誠 薩 秀夫
出版者
公益社団法人 日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.555-563, 2004-11-20 (Released:2017-10-10)
参考文献数
36

食品中の栄養素や機能性成分が体内に吸収される場として小腸上皮はもっとも重要である. 小腸における吸収(物質輸送)の効率を変化させれば, 体内に入る栄養素の量をコントロールすることができる. 近年開発が急速に進んでいる特定保健用食品の中には, 腸管における栄養素吸収を制御することを主要なメカニズムとする製品も多い. 糖の消化吸収を抑え血糖値の上昇を抑制する食品, コレステロールの吸収を抑えて血清コレステロールレベルを制御する食品, 中性脂肪の消化吸収を抑えて肥満を予防しようという食品, ミネラルの腸管吸収を促進する食品など, 腸管における栄養素の消化吸収を制御することは, 生活習慣病の予防のための簡単でかつ実効性の高い戦略と認識され, 利用されている. また, 腸管上皮は食品成分をはじめとする腸管内容物と直接接触する組織であり, 食品成分の影響を受けやすい組織でもあると推定される. 物質の吸収のみならず, 食品成分が持つさまざまな情報を受容し, それに応答する組織としても腸管上皮は興味深い.