著者
渡辺 伸一 飯島 伸子 藤川 賢 渡辺 伸一
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本報告書は、カドミウム汚染による健康披害、土壌汚染、農業被害に関する社会学的調査の研究成果をまとめたものである。カドミウム汚染は、他の重金属公害に比べて全国的に多発しているが、本調査では、中でも代表的な事例である富山県神通川流域、長崎県対馬佐須地域、群馬県安中碓氷川流域の3事例を対象とし、比較考察すると同時に、全国的状況の総合的把握を目指した。本調査は、イタイイタイ病(イ病)およびカドミウム中毒に関する公害史の試みの一つでもあるが、環境社会学的視点から、とくに、被害者、家族、地域住民、行政、医学者、研究者等の各主体による認識と対応、および、公害にかかわる被害の社会的増幅・拡大(被害構造)を、地域ごとの違いを含めて明らかにすることに留意した。報告書では、前半で富山イ病を中心とする全国状況の把握、後半の各章で各地域の歴史と現状をそれぞれ紹介する。カドミウム中毒は、骨への激甚な被害をもたらすが、より微量でもカドミウム腎症(近位尿細管障害)の原因となることが明らかになってきた。それは、土壌汚染やカドミウム汚染米等の農業被害の問題ともかかわる。そのためもあり、カドミウムによる健康被害をめぐる医学論争は、イタイイタイ病訴訟や「まきかえし」の時代から30年以上たつ現在も継続している。本調査では、この論争をめぐる社会的要因を探ると同時に、論争の背後での被害者への影響を確認した。
著者
渡辺 伸一
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究 (ISSN:24340618)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.129-144, 2001-10-31 (Released:2019-03-12)

環境の保護は,社会的に重要な課題である。しかし,環境保護の実際をみると,学術的な重要性や,保護が生み出す受益のために,特定の少数者に過重な負担や受忍を強いる例が散見される。「奈良のシカ」の事例は,こうした問題がみられてきた典型例である。奈良のシカは,「奈良公園の風景の中にとけこんで,わが国では数少ないすぐれた動物景観をうみ出している」とされる天然記念物であり,奈良における最も重要な観光資源の一つでもある。が,当地では,このシカによる農業被害(「鹿害」)を巡り,シカを保護する側(国,県,市,春日大社,愛護会)と被害農家との間での対立,紛争が長期化し,1979年には被害農家による提訴という事態にまで至ってしまった。本稿では,まず,鹿害問題の深刻化過程をみた後に,紛争長期化の背景を,「シカが生み出す多様な受益の維持」「保護主体間の責任関係の曖昧性」「受苦圈と受益圈の分離」「各保護主体にとっての保護目的の違い」等に着目しながら検討した。鹿害訴訟の提訴と和解(1985年)は,被害農家が長期に亘って強いられてきた状況を大さく改善させる契機となった。しかし,この新しい鹿害対策も,十分には機能してこなかった。そこで,後半では,鹿害対策の現状に検討を加えた上で,依然として問題の未解決状態が続いている理由と問題解決への糸口について考察した。
著者
丹 敦 渡辺 伸一
出版者
奈良教育大学
雑誌
奈良教育大学紀要. 人文・社会科学 (ISSN:05472393)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.165-180, 2004-10-31

Deer in Nara - "Nara-no-Shika"- inhabit the area in and around Nara Park in Nara City, the capital of Nara prefecture. In Nara, they have been protected as sacred animals of the Kasuga shrine for a long time. On the other hand, damage to crops caused by them was so serious that the villages in Nara built "Shikagaki" (Shishigaki) during the Edo period. "Shikagaki" is a piece of equipment which is made of wood, stones and mud to prevent damage to crops caused by wild animals, especially deer in the case of Nara. According to our fieldwork, ruins of "Shikagaki" still exist around Nara Park. However, there has been no study to prove where they are located. We would like to propose that the rums of "Shikagaki" are very precious reminders of Nara's heritage in the sense that they are the products of local villagers' hard work. The purpose of this study is to clarify the distribution of the "Shikagaki" and their present situation.
著者
渡辺 伸一
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.4, pp.69-80, 1991-06-15 (Released:2010-04-21)
参考文献数
30

The concept of “post-materialistic” values has been, either positively or negatively, adopted by scholars who study “new social movements”. Undoubtedly, this implies that the concept has become an essential vehicle to analyze the sense of values and attitude in new social movements. The primary object of this paper is to summarize how this concept, as a conceptual instrument, has made a great impact on the process of analyzing social movements and “new politics”. But I disagree to apply the concept, as Ingelhart's definition remainds intact, to comprehend the meaning of new social movements. In this paper I wish to propose the new interpretation of “post-materialistic” value while removing a nagative influence of the Haslovian linear theory on Ingelhart's concept.
著者
渡辺 伸一
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

公害・環境問題には、その発生から何十年も経つのに依然として未解決という問題が少なくない。本研究では、その代表例であるイタイイタイ病問題(慢性カドミウム中毒問題)について、未解決の理由と解決過程に潜む問題点について解明した。他方、公害・環境問題の中には、社会問題として一定の解決はみたが、どのように解決したのかが未解明という事例が少なくない。本研究では、大分県大分市(旧大分市、旧佐賀関町)における環境問題を選択し、その解決過程を明らかにした。
著者
渡辺 伸一 J de Villiers J van der Merwe 佐藤 克文
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
巻号頁・発行日
pp.110, 2013 (Released:2014-02-14)

チーターは,陸上動物最速の動物で,草原を疾走する小型の有蹄類を追尾して仕留める.こうしたチーターのハンティングはメディアを通じて研究者でなくとも誰もが知ることである.しかし,チーターのハンティングに関する研究の多くは,広大な草原に覆われた東アフリカの一部の地域で行われてきた.本研究では,チーターのハンティングについて,詳細な研究が行われていない,アフリカ南西部のナミビアで調査した.チーターの行動は,これまで主に目視観察により行われてきたが,潅木が生い茂るブッシュで目視観察は困難である.そこで本研究では,GPS・加速度・動画を記録するデータロガーを用いて,チーターの行動を自動計測した.本研究では,Harnas野生動物保護区で野生復帰プログラム中の雌雄 2個体へデータロガーを装着して行動を記録した.計 19回データロガーを装着して,計 37日間の行動データが得られた.加速度データの周波数特性と GPSによる移動速度のデータから行動を秒間隔で休息,移動,ハンティング,摂食に分類した.その結果,70回のハンティングが記録され,うち 7回のハンティングに成功した.ハンティング時の疾走時間は 35.4 ±26.6(平均 ±SD,レンジ11-152)秒,疾走距離は 160 ±144(29-645)mで,ハンティング中の最高速度は 30.5 ±10.9(13.6-60.7)km/hだった.この値は,これまで計測されたチーターのハンティング時の速度と比較すると最も低い値だった.また,チーターはハンティング後,他の捕食者による獲物の横取りを避けるため,すぐに摂食を始めることが一般的である.しかし,本研究ではハンティング後,6-30分後から摂食を開始し,獲物の傍に 12時間以上滞在した.こうした結果は,これまで知られていたチーターのハンティングのイメージとは大きく異なる.おそらく競争者となる捕食者の密度が低く,灌木林が生い茂るアフリカ南西部の生息環境に本種が適応した結果だと考えられる.
著者
佐藤 克文 島谷 健一郎 依田 憲 渡辺 伸一 高橋 晃周 坂本 健太郎 赤松 友成 高橋 晃周 坂本 健太郎 赤松 友成
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

加速度時系列データから簡便にスペクトログラムを作成し、k-means法による自動判別を行い,いくつかの行動にカテゴライズするソフトウェアーEthographerを作成した。本ソフトを用いることで、複数種類の対象動物から得られた加速度時系列データを簡単に解析する事が可能となり、対象動物毎の生理・生態学上の発見に加えて,種間比較による研究成果が得られた。
著者
渡辺 伸一
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.6, pp.13-24, 1993-06-05 (Released:2010-04-21)
参考文献数
23

In his well-known thesis of post-materialism, Ronald Inglehart offers a theory to explain opinion cleavage and political action in modern industrialized democracies. Inglehart has applied the thesis to value change as it affect voting choice and new social movements in Western democracies. While others have considered it in Japan. Since 1971, Inglehart has offered substantial, if sometimes conditional empirical evidence from Western countries in support of a post-materialist phenomenon. But some scholars have challenged the theory on empilical and theoretical grounds. The object of this paper is to summarize the critical arguments and then to condisider whether the theory of Inglehart still works well for or not.
著者
渡辺 伸一 服部 哲 速水 治夫
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.2, pp.1-6, 2010-01-14

一度見つけた Web ページを再度見つけるためにブックマークが広く利用されている.しかしブックマークは分類の手間が大きい.また,分類を行わないと Web ページを探しづらくなる.そこで本論文では,ユーザの持っているカテゴリに自動分類を行うブックマークシステムを提案する.本システムはカテゴリ毎の Web ページの本文に含まれる単語を学習する.これを利用し,登録の際に最も近いカテゴリをナイーブベイズで決定し,分類する.実際のブックマークを登録して評価を行い,分類精度を調査した.Many people use bookmark to re-find web pages found before. However, there are some problems of the classification of the bookmark. In addition, we cannot look for a Web page unless we classify it. In this paper, we propose the system that automatic bookmark classification to a category. Our system learns a word in the text of the Web page. At the time of registration, our system classify the nearest category using Naive Bayes method. We registered bookmark with a system and tested it and investigated form of the bookmark which system could classify definitely.
著者
早川 典生 陸 旻皎 川田 邦夫 富所 五郎 宮下 文夫 石坂 雅昭 渡辺 伸一
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.分布型流出モデルによる松花江1998年洪水の解析松花江流域全域について、格子間隔30分の分布型流出モデルを開発し、1998年大洪水の流出解析を行い、洪水現象の発生を再現させることができた2.1 松花江流域の積雪量調査を行い、資料を収集して積雪量分布の概略を把握した。2.2 分布型モデルによる融雪流出解析松花江流域の支川,拉林河と甘河において,降水量,流量データを取得し,その分布特性を調べた.その結果,降水量分布に顕著な標高依存特性が見られた。拉林河において,格子間隔90mの分布型流出モデルを開発した。このモデルについて、降水量,流量データを取得し,洪水流出解析、融雪流出解析を行った。その結果洪水流出解析では計算流量が実測流量に比べて少なく出る傾向があった。融雪流出解析では融雪初期の流量を再現するために気温の日較差を考慮した計算手法を考案した。