- 著者
-
瀬下 卓弥
武川 直樹
湯浅 将英
笠松 千夏
立山 和美
- 出版者
- 一般社団法人 日本家政学会
- 雑誌
- 一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 60回大会(2008年)
- 巻号頁・発行日
- pp.233, 2008 (Released:2008-11-10)
目的近年,個食の増加が人の様々な面に影響する問題として指摘されている.解決策として共食を推奨するが,その根拠を検証する必要がある.人の食事行動を映像分析し,共食の効果を検証することを目的とする.方法会話分析,行動分析の手法を援用し,共食中の人の行動を撮影して映像分析する.分析材料として,二人が横並びになってラーメンを食べながら会話する設定を用いる.食事中のコミュニケーションを,視線の方向(だれが何を見ているか),食行動の状態(スタンバイ:手が食器から離れている/レディー:手に箸や容器をもっている,麺をつかんでいる/ゴー:口に入れた,咀嚼中)によって分類し分析する.分析は,食状態,発話を時間にそって記述し,定量的な分析をするとともに,人の食べたい,話したいなどの気持ちを読み取る.結果2名3組の共食シーンを収録し,約3分間の行動を書き起こし,発話,食行動,視線量の頻度などを測定した.その結果,実験協力者Aはスタンバイ状態の表出が90秒以上に対し,Bが10秒ほど,Aはレディー状態からゴー状態へ遷移するとき相手へ視線を送る回数が4回に対し,Bは1回以下であった.また,Aの発言量は73秒に対し,Bは26秒であった.これらの数値からこの3分間のコミュニケーションにおいて,Aは会話に対する意欲がBよりも高く,Bは食べる行動の意欲が高いといえる.このような分析は,食行動におけるルールや個性,癖など,人の食事中のコミュニケーションの仕組みを明らかにし,味の評価だけでなく,コミュニケーション満足度の評価指標の確立にも寄与すると考える.今後,分析対象データを増やし,視線配分量や食行動配分量などの行動と共食の満足度との関係を明らかにする.