著者
玉野 和志
出版者
首都大学東京
雑誌
人文学報. 社会学 (ISSN:03868729)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.1-21, 2008-03

人文科学研究科社会行動学専攻社会学分野では,2005年度から2年度にわたって東京都知事本局ならびに青少年・治安対策本部との連携研究というかたちで,副題に示したテーマに関する共同研究を行った.今回,その成果の一部にもとづいた論文を掲載するにあたり,プロジェクト全体の経緯と成果について解説しておきたい.
著者
玉野 和志
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.537-551, 2003-03-31 (Released:2009-10-19)
参考文献数
22
被引用文献数
5 2

本稿では, サーベイ調査をめぐる最近20年間の動向を題材に, 日本における社会調査の現状と社会学の課題についてひとつの問題提起を行う.サーベイ調査の回収率は, この20年間で低下する傾向にある.それは主としてとりわけ都市部での拒否と一時不在による.しかしながら, 筆者は必ずしもそのことが社会調査にたいする無関心によるものとは考えていない.むしろ何のために社会調査が行われ, どのような方法で, 誰にとって有用な知識を生み出すものであるかを, 調査対象者がきびしく問うようになっているのである.つまり, 大学の学術研究にたいする素朴な尊重の念は失われ, 社会調査はその科学性と有用性を改めて人々に明快に示して見せる必要に迫られている.そこに社会調査の困難と社会学の課題がある.
著者
玉野 和志
出版者
日本都市社会学会
雑誌
日本都市社会学会年報 (ISSN:13414585)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.14, pp.75-91, 1996-06-22 (Released:2011-02-07)
参考文献数
57
被引用文献数
1 2
著者
玉野 和志
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.224-241, 2015 (Released:2016-09-30)
参考文献数
32
被引用文献数
2

本稿では地方自治体の政策形成に対して, 何らかの関わりをもってきた村落, 都市, 地域に関する社会学研究者の経験を検討することで, 政策形成に関与しようとする社会学者がふまえるべき教訓を導き出すことを目的とする. ここでは, 戦後農地改革の評価を行った福武農村社会学から地域開発政策への批判に及んだ地域社会学への展開, 自治省のコミュニティ施策に深く関与した都市社会学者の経験, そして近年の東日本大震災に関する日本学術会議社会学委員会の提言を取り上げる.そこから, 社会学者は政策の事後評価に関する地道な調査研究を蓄積することはもとより, 市民がより納得できると同時に, 政策の実施者である政府の意向をもふまえて, できるかぎりのことを模索することが求められることが教訓として引き出される. そのうえで, 政策形成に社会学が独自に貢献できるのは, 時間的・空間的に広がる人と人とのつながりに根ざした当時者の主観的な思いによって測られる, 歴史的・文化的な要因を数値などの客観的な表現で示すことであり, その結果, 人々がより納得できる実効ある政策の実現を可能にし, 民主主義の実質化に貢献することであることを明らかにする.
著者
玉野 和志
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.224-241, 2015
被引用文献数
2

<p>本稿では地方自治体の政策形成に対して, 何らかの関わりをもってきた村落, 都市, 地域に関する社会学研究者の経験を検討することで, 政策形成に関与しようとする社会学者がふまえるべき教訓を導き出すことを目的とする. ここでは, 戦後農地改革の評価を行った福武農村社会学から地域開発政策への批判に及んだ地域社会学への展開, 自治省のコミュニティ施策に深く関与した都市社会学者の経験, そして近年の東日本大震災に関する日本学術会議社会学委員会の提言を取り上げる.<br>そこから, 社会学者は政策の事後評価に関する地道な調査研究を蓄積することはもとより, 市民がより納得できると同時に, 政策の実施者である政府の意向をもふまえて, できるかぎりのことを模索することが求められることが教訓として引き出される. そのうえで, 政策形成に社会学が独自に貢献できるのは, 時間的・空間的に広がる人と人とのつながりに根ざした当時者の主観的な思いによって測られる, 歴史的・文化的な要因を数値などの客観的な表現で示すことであり, その結果, 人々がより納得できる実効ある政策の実現を可能にし, 民主主義の実質化に貢献することであることを明らかにする.</p>
著者
玉野 和志
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

資本主義世界経済の転換の下で,各国の都市政策には,グローバル・シティ・リージョンズなどの議論にみられるように,国境を越えて結びつき,成長地域を形成していくことが求められている.本研究では,日本の都市と都市政策において,そのような動きがどの程度具体的に進んでいるかを検証した.検討の結果,1970年代以降そのような必要に駆られた欧米と比べると,日本においてそのような戦略が求められるのは90年代後半以降の比較的最近のことであって,そのためかそのような成長戦略の必要性がまだ十分には認識されていないことが明らかになった.この点は現在の日本経済を考える上でも,興味深い点であり,さらなる検討が求められる.
著者
玉野 和志
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.549-558, 2005-09-30 (Released:2009-10-19)
参考文献数
11
被引用文献数
1
著者
玉野 和志
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.442-458, 2012-03-31 (Released:2013-11-22)
参考文献数
75
被引用文献数
1

本稿は, 都市社会研究における家族の位置づけとコミュニティ論の課題について明らかにすることを目的としている. シカゴ学派以来の伝統的な都市社会学は, コミュニティにおける具体的な社会過程と社会的ネットワークのあり方に分析の焦点を絞ってきた. しかしながら, さまざまな事情からそのようなコミュニティ論の中に正当に家族を位置づけることができないできた. また, コミュニティ論は定着的な人口のみを対象とし, 移民や都市下層の問題を十分に扱うことができないとされてきた. 他方, 新都市社会学による批判以降, 世界都市論や新国際分業論の興隆に見られるように, グローバル化の進展にともない, 都市研究は大きな転換を迫られている. 資本主義世界経済のもとにある都市社会研究において, 家族やコミュニティ論はどのような観点から扱われるべきなのか. 本稿では, コミュニティをたんにその内部において社会関係が集積している場所と見るのではなく, 資本主義世界経済の中で何らかの位置づけを与えられた都市地域において, 特定の質をもった産業や労働の集積が求められる空間として位置づけることを提案したい. そのことによって家族を, 求められる労働力の再生産を実現する単位として, あらためてコミュニティ論の中に位置づけることができるだけではなく, 家族を形成しないという側面も含めて, 移民や都市下層をコミュニティ論の中心に据えることが可能になると考えられる.
著者
大内 田鶴子 玉野 和志 林 香織 鰺坂 学 廣田 有里 小山 騰 ディアス ジム 斎藤 麻人 吉田 愛梨 細淵 倫子 清野 隆
出版者
江戸川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

グローバリゼーション下、地域社会と市民・近隣組織に関する新たな理論枠が必要になっている。本研究は新しい社会に対応する近隣組織について実態を把握し、論点を整理した。1.イングランドでは自治会規模の住民組織が準自治体となっている。2.シアトル市ではボトムアップ式の協議体を設置し、合意形成能力を獲得し、その後政治対立に巻き込まれ機能不全に陥った。3.シアトル近郊の極小自治体の長期存続は、住民の凝集性の維持につとめたこと、コモンズの維持管理を行っていることなどによる。4.個人が情報のコントロール力を持ちつつある現在、ITによる意見交換の仕組みと個人の情報発信のスキルが必要であることが明らかになった。
著者
玉野 和志
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

都市の成長ないし衰退の状況を分析するための基礎的な統計単位として,どこからどこまでの地理的範囲を当該の都市地域と設定するかについての方法論的な検討を行った.1㎞四方の範囲に含まれる人口量を示した国勢調査のメッシュデータを用いて,5000人以上の人口を有するメッシュ地域の集積を基本に,都市地域の設定を試みることで,従来の人口集中地区にほぼ相当する基礎統計単位の設定に成功した.この方法を太平洋ベルト地帯を中心とした地域に適用して19の都市地域を区分に,それにもとづく分析を行うことで,三大都市圏を中心とした都市の現状を把握することができた.
著者
森岡 清志 中尾 啓子 玉野 和志 和田 清美 金子 勇 安河内 恵子 高木 恒一 浅川 達人 久保田 滋 伊藤 泰郎 林 拓也 江上 渉
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の課題は、パーソナルネットワークとソーシャル・キャピタルの相互関連、および都市特性・地域特性との関連を明らかにすることにある。統計的調査ではソーシャル・キャピタルを「住民力」と表現し、平成20年11月と平成21年9月に世田谷区住民を対象者として「住民力」に関する標本調査を実施した。20年調査では、45歳以上75歳未満の住民から8,000名を無作為抽出し(回収率65.3%)、21年調査では20歳以上75歳未満の住民を10,000名抽出した(回収率54.5%)。分析結果から、住民力とコミュニティ・モラール、投票行動の間に高い相関が見られること、また、居住年数、戸建率などの地域特性と関連することが明らかになった。