著者
田島 裕康 布能 謙
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.9, pp.621-626, 2022-09-05 (Released:2022-09-05)
参考文献数
14

大きな流れは大きな抵抗を生む.こうした関係は,電気抵抗や摩擦など,自然界のいたるところに見出すことができる.例えばオームの法則によれば,発熱量は電流量の二乗に比例する.近年,こうした関係をより一般に「流れの大きさ」と「エントロピーの増大速度(散逸)」の間の関係と捉えた様々なトレードオフ不等式が,非平衡統計力学の分野で導出されている.なにを流れの大きさととらえるかには確率の流れからエネルギー流まで幅があるが,本質的なメッセージは同一である.すなわち,流れを大きくすることと散逸を小さくすることは両立しない.この「流速・散逸のトレードオフ」は,まず物理学の基礎的な面において非常に重要な意味を持つ.具体的には,このトレードオフは熱力学第二法則をより精密にしたものとして捉えることもできる.熱力学第二法則がエントロピーの増大の程度を予言しないのに対し,このトレードオフはエントロピーの増大速度の下界を指定する.流速・散逸トレードオフはまた,量子計算におけるゲート操作の速度限界や,分子モーターの動作精度と熱力学的コストの関係など多岐にわたる応用を持つ.特に重要な応用として熱機関の効率とパワーの間のトレードオフがあげられる.熱機関の効率上限がカルノー効率であることはカルノーの定理によって予言されるが,この効率上限を達成する方法としてよく知られるカルノーサイクルは,パワーを0にしてしまう.そして,カルノー効率を達成しつつパワーを正にする方法があるかないかは,少なくとも熱力学の範囲では結論が出ない.ところが流速・散逸トレードオフから導かれる白石–齊藤–田崎限界は,そのような方法が存在しないことを厳密に示す.熱機関は現代文明の基礎をなすデバイスの一つなので,このことは非常に重要な結論であるといえる.このような重要性から研究が進む一方,量子重ね合わせが流速・散逸のトレードオフにどう影響するのかについては,あまり理解が進んでこなかった.このトレードオフは不可逆性とエネルギーの流れの間の基本的な関係であり,そこに量子効果がどのような影響をもたらすのかは非常に興味深い問題と言える.さらに,このトレードオフは熱機関の性能に対する制限を与えるため,このトレードオフに量子効果がどのように寄与するかを理解できれば,量子効果が熱機関の性能にどのような影響を及ぼせるかを理解できる可能性が高い.こうした状況を踏まえ,我々は流速と散逸のトレードオフ,特に熱流と散逸のトレードオフに対する量子重ね合わせの影響を解析し,系統的な規則を得ることに成功した.得られた規則は以下の3つである.1. 異なるエネルギーの準位間の重ね合わせ(コヒーレンス)はトレードオフを強める.すなわち,異なるエネルギー間のコヒーレンスは熱流のエネルギーロスを強める.2. 縮退間のコヒーレンスはトレードオフを弱める.すなわち,縮退間のコヒーレンスは熱流のエネルギーロスを弱める.3. 縮退間のコヒーレンスが十分な量ある時には,トレードオフが実効的に無効化され,熱がエントロピーの増大なく流れることが可能になる.このことは,マクロな大きさの熱の流れで,エネルギーロスのないものを実現できることを意味する.我々の規則は直接的に熱機関をはじめとしたエネルギーデバイスに応用できる.特に規則3からは,カルノー効率を実効的に達成しつつ,有限のパワーを持つエンジンを実際に構成できる.こうした夢のエンジンの実現のための最初の手掛かりとなること,そして不可逆性と量子性の深い関係を理解する一助となることが期待される.
著者
アメリカ法律協会 統一州法委員会全国会議 田島 裕
巻号頁・発行日
2002

第1編 総則,第1章 本法の略称,解釈,適用および主題,第1-101条(略称)本法は統一商事法典 (Uniform Commercial Code) として知られ,かつ引用することができる。 ...
著者
島宗 理 中島 定彦 井上 雅彦 遠藤 清香 井澤 信三 奥田 健次 北川 公路 佐藤 隆弘 清水 裕文 霜田 浩信 高畑 庄蔵 田島 裕之 土屋 立 野呂 文行 服巻 繁 武藤 崇 山岸 直基 米山 直樹
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.174-208, 2003-09-05

行動分析士認定協会(Behavior Analyst Certification Board : BACB)は、国際行動分析学会(Association for Behavior Analysis : International)が公認し、支援している、行動分析学に基づいた臨床活動に携わる実践家を認定する非営利団体である。本資料ではBACBの資格認定システムを紹介し、実践家の職能を分析、定義したタスクリストの全訳を掲載する。タスクリストを検討することで行動分析家の専門性を明確にして、我が国における今後の人材育成やサービスの提供システムについて、検討を始めるきっかけをつくることが本資料の目的である。
著者
内山 拓 岡本 浩昌 田島 裕 香畑 智彦 鈴山 堅志
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.459-464, 2015 (Released:2016-01-07)
参考文献数
7

Cerebral venous thrombosis is a rare and uncommon type of stroke, and the deep venous system is affected in approximately 10% of cases of cerebral venous thrombosis. The clinical presentation of deep cerebral venous thrombosis is variable and nonspecific, and hence, it is difficult to diagnose this condition. In this report, we describe three cases of deep cerebral venous thrombosis. All the cases presented with mild decreased consciousness, and two cases also experienced quadriparesis. Magnetic resonance (MR) images demonstrated vasogenic edema in the thalamus/thalami, and T2* -weighted MR images indicated a thrombus in the deep venous system in all the cases. Hence, T2* -weighted MR images and magnetic resonance venography is useful for the early diagnosis of deep cerebral venous thrombosis, which can be followed by prompt treatment.
著者
古田島 裕斗 嵯峨 智 高橋 伸 田中 二郎
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2017-HCI-172, no.19, pp.1-7, 2017-02-27

近年情報端末上で閲覧する電子書籍が広く普及している.電子書籍は独自の利点を持っているが,従来の紙書籍も多くの利点を持ち,特にページめくりのような自由度の高いナビゲーションは比較の場においてたびたび取りあげられる.本研究では電子書籍上で,紙書籍のような柔軟で直感的なナビゲーションを再現することで,操作性を向上させる手法を提案する.本手法ではタブレット端末と端末背面に設置した圧力センサのみを用いることで,電子書籍の利点を保ったまま,柔軟なページめくり等のナビゲーションを実現する.また本手法を取り入れた電子書籍閲覧システムを実装し,数種類の評価実験を行った.その結果,本手法は多少の改善点は挙げられるが既存の電子書籍リーダーと遜色なく,改善を行えば更なる高評価が望めると分かった.
著者
島宗 理 中島 定彦 井上 雅彦 遠藤 清香 井澤 信三 奥田 健次 北川 公路 佐藤 隆弘 清水 裕文 霜田 浩信 高畑 庄蔵 田島 裕之 土屋 立 野呂 文行 服巻 繁 武藤 崇 山岸 直基 米山 直樹
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.174-208, 2003-09-05 (Released:2017-06-28)

行動分析士認定協会(Behavior Analyst Certification Board : BACB)は、国際行動分析学会(Association for Behavior Analysis : International)が公認し、支援している、行動分析学に基づいた臨床活動に携わる実践家を認定する非営利団体である。本資料ではBACBの資格認定システムを紹介し、実践家の職能を分析、定義したタスクリストの全訳を掲載する。タスクリストを検討することで行動分析家の専門性を明確にして、我が国における今後の人材育成やサービスの提供システムについて、検討を始めるきっかけをつくることが本資料の目的である。
著者
田島 裕 フェンティマン R.G. ミラー C.J. ダイヤモンド A.L. ライダー B.A.K. バークス ペータ 長谷部 由起子 長谷部 恭男 平出 慶道 FENTIMAN R.G MILLER C.J DIAMOND A.L RIDER B.A.K BIRKS Peter ミラー J.C. アダムソン ハーミッシュ デンティス T.C. ゴフ ロード スクリブナ アンソニー
出版者
筑波大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

平成6年4月から3年間にわたる日英間の共同比較法研究の全体を総括し、今後の継続的な研究協力の在り方を検討した。研究者ネットワーク作りに重点を置いて研究活動を行ったが、その目的のために、本年度も田島(研究代表者)がバ-ミンガム大学で研究会(24回)を開催した。バ-ミンガム大学では、英国大学における日本法研究の在り方を問題とし、憲法、民商法、企業法、独占禁止法、訴訟手続法、刑法など12の主要テーマについて、具体的な検討をした。これは昨年度に続く二度目の経験であり、非常に大きな反響を呼んだ。研究会の基礎となるプレゼンテーションをレクチャー.レジュメの形でまとめ、最終報告書に添付した。この研究成果は、田島(研究代表者)の責任で、Western and Asian Legal Traditionsと題する著書(添付書類参照)として近く公刊される。予定どおり平成8年9月にケンブリッジ大学において学会を開催し、本格的な比較法研究を行った。その結果は、Anglo-Japanese Journal of Comparative Lawと題する著書として近く刊行されることになっている。また、予定どおり、平成8年4月に、高等法院裁判官フィリップス卿およびウッド教授(ロンドン大学)を招聘し、企業法学シンポジウム(法的紛争の処理)を開催した。約200名の法律家(学者、裁判官、実務家)が参加し、とくに国際企業取引をめぐる法的紛争の処理に当たりイギリス法を準拠法とすることの問題点を論じた。フィリップス裁判官は、筑波大学などでも陪審制と黙秘権の問題について特別講義を行った。また、マスティル卿(貴族院裁判官)も予定どおり8月に来日され、安田記念講義およびブリティッシュ・カウンシル特別講義を開いた。民事司法改革をテーマとしたが、この講義には約300名の法律家が参加した。平成8年8月に公表されたばかりのウルフ報告書に基づくもので、別途開いた専門家セミナー(国際商事仲裁協会)において、三ケ月章東京大学名誉教授を中心として日本の民事訴訟改正とパラレルに検討する機会をもった。この講義は安田火災記念財団から単行本『英国における紛争処理の動向』(平成8年8月)として既に公刊された。平成8年11月、長谷部(東京大学)、長谷部(成蹊大学)はロンドン大学およびバ-ミンガム大学を訪問し、憲法および訴訟法の領域における共同研究を行った。そして、9月のケンブリッジ大学の学会には、平出(中央大学)と田島(筑波大学)が出席した。その学会で特に焦点を当てたのは会社法および金融法・銀行法の領域である。正式の学会とは別に、この共同研究が今後も継続されるようにするため、研究参加者の間で具体的な検討を数日に渡って熱心に行った。その結果、平成9年10月に東京で学会を開催し、その折りに新たな共同研究の基礎づくりをすることになった。その主要研究テーマは、会社法と金融法・銀行法の他、司法制度と国際法・国内法の融合の問題とする。来日が既に確定しているのは、ライダー教授(ケンブリッジ大学)、ア-デン裁判官(高等法院;現在は、法律委員会の委員長と兼任)夫妻、およびヘイトン教授(ロンドン大学)である。なお、オックスフォード大学のバ-クス教授(オールソールズ・カレッジ)は、まだ来日していないが、平成10年に来日を約束している。その機会に日英学会の創設を本格的に検討することになると思われる。なお、研究協力者以外にも数多くの学者、実務家の協力を得たことも付記しておきたい。上記の三ケ月教授のセミナーはその一例である。平成9年4月にはジョン・ボールドウイン教授(バ-ミンガム大学)が来日されるが、これもわれわれの研究活動につながるものである。3年に渡る共同研究を通じて、日本法に関心のある非常に若いイギリス人研究者を数多く(約100名)育てることができたことも協調しておきたい。現在、そのうち2人のイギリス人大学生が日本を訪問し、研究を続けている。最後に、当該研究は、将来も継続されるべきものであり、今回の3年の研究を通じて問題を別に添付した『研究報告書』の中で説明した。それも読んでいただきたい。