著者
福島 邦彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:03736091)
巻号頁・発行日
vol.J62-A, no.10, pp.658-665, 1979-10-25

パターン認識における最大の難題は,入力パターンの位置がずれたり形がゆがんだりしたときに,どのような処理を施すべきかという問題であり,この問題に対する根本的な解決法はこれまでみいだされていなかった.筆者は,動物の視覚神経系の構造からヒントを得て,この問題を解決する新しいアルゴリズムを考察し,これを実現する多層の神経回路モデル(ネオコグニトロンと呼ぶ)を構成し,計算機シミュレーションによってその能力を確認したので報告する.この神経回路モデルは,自己組織化能力をも有する.認識すべき複数個のパターンを回路に繰返し呈示しているだけで,回路は,それらのパターンを区別して正しく認識する能力を,教師なし学習によって身につけていく.自己組織化が完了した状態では,回路は,入力パターンの呈示位置がずれても,その大きさや形が多少変形しても,多少の雑音が含まれていても,正しくパターンを認識する.
著者
福島 邦彦
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.212-218, 1984-03-20 (Released:2011-03-14)
参考文献数
8
被引用文献数
1

生物の脳は, 現在のコンピューターでは実現できないような高度の情報処理能力を示す.神経回路モデルを中介としてそのメカニズムを探り, 新しい情報処理装置の設計原理を見いだそうとするバイオサイバネティクス研究が注目されている.このような研究の結果, 高度のパターン認識能力と学習能力をもつ新しいパターン認識方式「ネオコグニトロン」が生まれた.
著者
福島 邦彦
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第30回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.318-323, 2014 (Released:2015-04-01)

階層型多層神経回路「ネオコグニトロン」は,高いパターン認識能力を学習によって獲得していく.ここでは,新しい学習法を用いたネオコグニトロンについて論じる.ネオコグニトロンでは,多層回路の中間層で,特徴の抽出と統合を繰り返しながら次第に高次の特徴を抽出していく.中間層の学習にはadd-if-silent則を用いる.最上位層では,抽出された特徴をもとに内挿ベクトル法を用いてパターン識別を行なう.手書き数字認識において,学習パターン数や,内挿ベクトル法に用いる閾値が,ネオコグニトロンの認識率や回路規模(演算コスト)にどのように影響するかを論じる.
著者
庄野 逸 福島 邦彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.940-950, 1994-05-25
被引用文献数
6

手書き英字筆記体連結文字列認識を行うシステムの一つとして選択的注意機構を用いたシステムが今川らによって提唱された.しかしながら今川らのシステムは,それほど高い認識能力をもっていたわけではなく,認識する文字カテゴリーも5文字と比較的小規模なシステムであった.本研究では今川らの認識システムを拡張し,更に高い認識能力をもつシステムを作成した.我々は"選択的注意のモデル"の一部分がパターン認識システム"ネオコグニトロン"に類似していることに着目した.ネオコグニトロンにおいて,折れ点検出回路を導入すると認識能力の向上が認められることが報告されているので,我々は今川らのシステムに折れ点処理回路を導入したシステムを作成した.更に本システムに対して種々のテストパターンを与え,コンピュータシミュレーションを行い,筆記体連結文字列の認識に対して有効であることを確認した.
著者
福島 邦彦
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.212-218, 1984
被引用文献数
1

生物の脳は, 現在のコンピューターでは実現できないような高度の情報処理能力を示す.神経回路モデルを中介としてそのメカニズムを探り, 新しい情報処理装置の設計原理を見いだそうとするバイオサイバネティクス研究が注目されている.このような研究の結果, 高度のパターン認識能力と学習能力をもつ新しいパターン認識方式「ネオコグニトロン」が生まれた.
著者
福島 邦彦 三宅 誠 伊藤 崇之 河野 隆志
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.627-635, 1987-06-15

従来のパターン認識は入力パターンの変形や位置ずれの影響を避けるために まず入力パターンの位置や大きさの正規化を行った後に特徴抽出や識別を行う方式が多かった.これに対して 筆者らは先に 生物の視覚神経系を参考にして 高度のパターン認識能力と学習能力を持つ神経回路モデル"ネオコグニトロン"を提案した.ネオコグニトロンは 入力パターンの変形が位置ずれ ノイズなどに強いパターン認識能力を示す.生物の神経系をヒントにしているため その反応特性は人間に似ており 人間が似ていると感じるものはネオコグニトロンも似ていると判断する.しかも学習能力を持っているので あらかじめ学習させておけば どのようなパターンでも認識させることができる.すでにわれわれは ネオコグニトロンによる手書き数字認識システムをミニコンピュータで実現しているが 今回は ネオコグニトロンの演算量がどの程度かを一般の技術者に直感的にわかってもらうため 広く普及しているマイクロコンピュータを用いてシステムを構成した.プログラムは できるだけ高速に動作させるために種々の工夫をこらして作成した.このシステムがマイクロコンピュータでも実現可能であるということは その演算量がそれほど膨大なものではなく 専用のハードウェアを用いれば 実用になる速度で働くシステムを製作できることを示している.
著者
谷川 昌司 福島 邦彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.10, pp.2215-2222, 1993-10-25
被引用文献数
8

ネオコグニトロンはパターン認識能力をもった階層型の神経回路モデルである.ネオコグニトロンの中間層にはさまざまな種類の部分特徴を抽出する細胞(特徴抽出細胞)が存在している.特徴抽出細胞は可変入力結合をもっており,特徴抽出細胞の結合荷重は抽出する特徴の種類ごとに異なる.この結合荷重は,教師なし学習法によって決められ,ある標準的なパターンが刺激として与えられたときに,細胞が最大出力を出すように調節される.この標準的なパターンからどの程度変形した特徴までを同じ特徴であるとみなすかの度合(特徴選択性)は,特徴抽出細胞のしきい値によって調節することができる.本論文では,ネオコグニトロンの中間層において,特徴選択性を定めるしきい値が認識率にどのような影響を与えるかを調べる.そして,従来のネオコグニトロンでは学習段階のしきい値と認識段階のしきい値を同一にしていたが,認識段階のしきい値を学習段階のしきい値よりも小さく設定することによって,認識率を大きく向上できることを明らかにする.
著者
庄野 逸 福島 邦彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング
巻号頁・発行日
vol.93, no.537, pp.57-64, 1994-03-25

手書き英文筆記体連結文字列認識を行うシステムの一つとして選択的注意機構を用いたシステムが今川らによって提唱された.本研究では今川らの認識システムを拡張し,更に高い認識能力をもつシステムを作成することを試みた.ところで,パタ-ン認識システム"ネオコグニトロン"において,エッジ抽出回路と折れ点検出回路を導入すると認識能力の向上が認められることが報告されている."選択的注意のモデル"の一部分は,パタ-ン認識システム"ネオコグニトロン"に類似しているので,我々は今川らのシステムにエッジ抽出回路と折れ点処理回路を導入したシステムを作成した.さらに本システムに対して種々のテストパタ-ンを与え,コンピュ-タシミュレ-ションを行い,筆記体連結文字列の認識に対して有効であることを確認した.
著者
渡部 修 福島 邦彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング
巻号頁・発行日
vol.95, no.598, pp.235-242, 1996-03-18

視覚系によって外界の構造を推定するときには, オクルージョンという問題が存在する. 両眼視では, オクルージョンによって, 一方の眼からは見えている領域が, もう一方の眼からは遮蔽によって見えなくなるという状況が起こりうる. このような両眼非対応領域上の点は, 偽対応しか生成しない. 心理物理学的知見からは, オクルージョンの処理は初期視覚の段階で行われていることが示唆されている. 本稿では, オクルージョンの存在を考慮した, 視差推定アルゴリズムを提案する. 本稿で提案するアルゴリズムは, 対応点問題を解く最も基本的なアルゴリズムである, Marr-Poggioの第1アルゴリズムを拡張したものである. このアルゴリズムは, オクルージョンが生じる幾何学的性質を考慮し, 両眼非対応領域のような対応が与えられない領域の視差推定も行うことができる.
著者
福島 邦彦
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.14-23, 2022-03-01 (Released:2022-03-15)
参考文献数
20

Deep convolutional neural networks (deep CNN) show a large power for robust recognition of visual patterns. The neocognitron, which was first proposed by Fukushima (1979), is recognized as the origin of deep CNNs. Its architecture was suggested by neurophysiological findings on the visual systems of mammals. It acquires the ability to recognize visual patterns robustly through learning. Although the neocognitron has a long history, improvements of the network are still continuing. For example, learning rule AiS (add-if-silent) for intermediate layers, learning rule mWTA (margined WTA) for the deepest layer, pattern classification by IntVec (interpolating-vector), a method for reducing the computational cost of IntVec without sacrificing the recognition rate, and so on. This paper discusses the recent neocognitron, focusing on differences from the conventional deep CNN. Some other functions of the visual system can also be realized by networks extended from the neocognitron, for example, recognition of partly occluded patterns.

1 0 0 0 OA 学習のモデル

著者
福島 邦彦
出版者
一般社団法人 日本生体医工学会
雑誌
医用電子と生体工学 (ISSN:00213292)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.319-330, 1981-09-30 (Released:2011-07-05)
参考文献数
59
著者
吉塚 武治 庄野 逸 宮本 弘之 岡田 真人 福島 邦彦
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.266-272, 2007-12-05 (Released:2008-11-21)
参考文献数
19
被引用文献数
1

It is known that the object recognition is processed in the ventral pathway of the visual system in humans and monkeys. The neocognitron that was proposed by Fukushima is a hierarchical neural network model for pattern recognition. In this paper, we show that the neocognitron can be regarded as a proper biological model of the ventral pathway. From the biological point of view, the model of the ventral pathway should satisfy the following conditions. The model should be hierarchical, the synaptic connections should spread locally, and each component in the hierarchy should be homogeneous. The network architecture of the neocognitron satisfies these conditions. Thus, we investigate the functional similarity between the neocognitron and the ventral pathway. We compared the response property of the neocognitron with that of IT cells. On comparing our results with those obtained by Logothetis et al., we found that the result were very similar qualitatively. Thus, we conclude that the neocognitron is a proper model for the ventral pathway.
著者
伊藤 崇之 福島 邦彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09135713)
巻号頁・発行日
vol.J70-D, no.2, pp.451-462, 1987-02-25

非線形な抑制機構を持つ神経細胞を構成要素として聴覚神経系の特徴抽出モデルを構成し,計算機シミュレーションでその動作を確認した.モデルは,基底膜に相当するバンドパスフィルタ群,ヘアセルに相当する半波整流回路,および特徴抽出部からなる.特徴抽出部は,同一の特性を持つ細胞を一次元的に並べた細胞層を,複数段,縦続接続して構成した多層回路である.個々の細胞は,入力側の層との空間結合と一次遅れ要素により,興奮性入力,抑制性入力それぞれに時空間的な加算を行った後,非線形な抑制機構(シャント型抑制)とアナログしきい特性を経て出力を出す.生理学的な知見および音声の特徴を考慮して,周波数一定部分を抽出するCF型細胞層,周波数の変化する部分を抽出するFM型細胞層,摩擦性雑音を検出する摩擦性雑音型細胞層の3種の特徴抽出細胞層を構成した.これらは,それぞれ,母音のホルマント,子音から母音へのわたりや拗音,多くの子音に対応する特徴である.実際の音声を入力して計算機シミュレーションを行い,モデルが,上に述べた音声に含まれる種々の特徴を正しく抽出することを確認した.
著者
福島 邦彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.542, pp.457-462, 2008-03-05
被引用文献数
1

視覚パターンの一部がほかの物体で覆われて隠されていても,われわれ人間は,見えている箇所の輪郭をもとに,隠されている箇所の輪郭の形状を推測することができる.このようなアモーダル補完の能力を持つ神経回路モデルを提唱する.モデルは,ボトムアップとトップダウンの信号経路を持つ階層型多層神経回路である.特定の方位のエッジに選択的に反応するV1野の細胞や,輪郭の折れ曲がりの角度に選択的に反応するV2野の細胞などを持っている.モデルは,折れ曲がり抽出細胞の出力をもとに,隠されている輪郭の曲率と位置を予測し,輪郭を少しずつ外挿していく.種々の刺激パターンに対して,心理実験で観測されるようなアモーダル補完が行なわれることを計算機シミュレーションで示す.