著者
小林 正佳 今西 義宜 石川 雅子 西田 幸平 足立 光朗 大石 真綾 中村 哲 坂井 田寛 間島 雄一
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.986-995, 2005-10-20 (Released:2010-12-22)
参考文献数
35
被引用文献数
9 9

嗅覚障害の治療としてステロイド薬の点鼻療法が一般的に行われているが, 治療が長期にわたる症例も多くその副作用が懸念される. ステロイド薬点鼻療法長期連用に関してその安全性を有用性と比較して検討した報告はない. そこで今回は当科嗅覚味覚外来で同療法を施行した患者を対象にこの比較検討を施行した.0.1%リン酸ベタメタゾンナトリウム液 (リンデロン液®) の点鼻療法を施行した62例中42例 (68%) に点鼻開始後1~2カ月で血清ACTHまたはコルチゾール値の低下が出現したが, 異常な理学的所見や自覚的症状は認められなかった. 点鼻療法を中止した8例は全例1カ月後にそれらの値が正常範囲内に回復した. 一方, 同療法を継続した34例中4例で開始後2~5カ月で自覚的な顔面腫脹感, 顔面の濃毛化というステロイド薬のminor side effectが出現したが, 中止後1カ月ですべての症状が消失した. 同療法のみを3カ月以上継続した23例の治療効果は, 自覚的嗅覚障害度, 基準嗅力検査上ともに統計学的に有意な改善がみられ, 日本鼻科学会嗅覚検査検討委員会制定の嗅覚改善評価法でも78%例で何らかの改善判定が得られた.ステロイド薬点鼻療法の長期連用は軽度で可逆的な副作用を生じ得る. 一方, 嗅覚障害の治療効果は高い. よって同療法は有用な嗅覚障害の治療法であり, 臨床的必要性に応じて十分な注意の下に長期連用することは可能と考えられる.
著者
都築 建三 深澤 啓二郎 竹林 宏記 岡 秀樹 三輪 高喜 黒野 祐一 丹生 健一 松根 彰志 内田 淳 小林 正佳 太田 康 志賀 英明 小早川 達 阪上 雅史
出版者
Japan Rhinologic Society
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-7, 2009 (Released:2009-12-18)
参考文献数
9
被引用文献数
12 14

We evaluated a 20-item self-administered odor questionnaire for assessing olfactory function, proposed in 2003 by the Japan Rhinologic Society committee on olfaction tests. The 20-items selected based on results of olfactory studies in Japan were steamed rice, miso, seaweed, soy sauce, baked bread, butter, curry, garlic, orange, strawberry, green tea, coffee, chocolate, household gas, garbage, timber, stercus (shit), sweat, flower, and perfume. Subjects were 302 people —179 men and 123 women (average age: 35.7 years)— having no history of nasal or paranasal disease and tested between December 2004 and December 2007. Subjects were asked to score items as follows: “always smelled” (2 points); “sometimes smelled” (1 point); “never smelled” (0 points); or “unknown or no recent experience” (no score). Scores were calculated and represented using a percentage. Response was 99.3% (300/302), with two subjects excluded for reporting more than 10 “unexplainable” items. The mean score was 95.2% (n=300). Of the 302, 281 (93.0%) agreed on the number and 252 (83.4%) on the content of items. Scores correlated statistically significantly with those of a visual analogue scale (rs=0.501, p<0.0001, n=300). We concluded that the self-administered odor questionnaire is useful in assessing olfactory function in normal subjects. The next step will be to administer the questionnaire to diseased or otherwise compromised subjects to determine whether it is useful for clinically diagnosing such olfactory dysfunction.
著者
藤枝 重治 坂下 雅文 徳永 貴広 岡野 光博 春名 威範 吉川 衛 鴻 信義 浅香 大也 春名 眞一 中山 次久 石戸谷 淳一 佐久間 康徳 平川 勝洋 竹野 幸夫 氷見 徹夫 関 伸彦 飯野 ゆき子 吉田 尚弘 小林 正佳 坂井田 寛 近藤 健二 山岨 達也 三輪 高喜 山田 奏子 河田 了 寺田 哲也 川内 秀之 森倉 一朗 池田 勝久 村田 潤子 池田 浩己 野口 恵美子 玉利 真由美 広田 朝光 意元 義政 高林 哲司 富田 かおり 二之宮 貴裕 森川 太洋 浦島 充佳
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.6, pp.728-735, 2015-06-20 (Released:2015-07-18)
参考文献数
21
被引用文献数
2 9

これまで本邦における慢性副鼻腔炎は好中球浸潤が主体で, 内視鏡鼻副鼻腔手術とマクロライド少量長期投与にてかなり治療成績が向上してきた. しかし2000年頃からそれらの治療に抵抗性を示し, 易再発性の難治性副鼻腔炎が増加してきた. この副鼻腔炎は, 成人発症で, 嗅覚障害を伴い, 両側に鼻茸があり, 篩骨洞優位の陰影があった. 末梢好酸球も多く, 気管支喘息やアスピリン不耐症の合併もあった. このような副鼻腔炎の粘膜には多数の好酸球浸潤が認められていたため, 好酸球性副鼻腔炎と命名された. 好酸球性副鼻腔炎は, 徐々に増加傾向を示してきたが, 好酸球性副鼻腔炎の概念, 診断基準はあまり明確に普及していかなかった. そこで全国規模の疫学調査と診断ガイドライン作成を目的に多施設共同大規模疫学研究 (Japanese Epidemiological Survey of Refractory Eosinophilic Chronic Rhinosinusitis Study: JESREC Study) を行った. その結果, 両側病変, 鼻茸あり, CT 所見, 血中好酸球比率からなる臨床スコアによる簡便な診断基準を作成した. さらに臨床スコア, アスピリン不耐症, NSAIDs アレルギー, 気管支喘息の合併症, CT 所見, 血中好酸球比率による重症度分類も決定した. 4つに分類した重症度分類は, 術後の鼻茸再発と有意に相関し, 最も易再発性かつ難治性の重症好酸球性副鼻腔炎はおよそ全国に2万人いることが判明した. 治療法については経口コルチコステロイド以外まだ確立されておらず, 早急なる対応が急務と考えている.
著者
北野 雅子 小林 正佳 今西 義宜 坂井田 寛 間島 雄一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.112, no.3, pp.110-115, 2009 (Released:2010-06-03)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

本研究では当科嗅覚味覚専門外来を受診した嗅覚障害を合併する味覚障害患者を, 自覚的味覚異常症状を訴えるが味覚検査上異常を認められない「自覚的味覚障害 (風味障害)」と, 自覚的味覚異常とともに味覚検査上も異常を呈する「検査的味覚障害 (味覚障害)」に分類して, これらの相違点につき検討した.風味障害群は, 味覚障害群と比べて自覚的味覚低下度が有意に軽度であった. 嗅覚障害の原因として, 感冒の割合が風味障害群で味覚障害群よりも有意に多かった. 治療開始前の基準嗅力検査の平均認知域値は両群間で有意差を認めなかった. 風味障害例に対しては嗅覚障害に対する治療を重点的に施行し, 風味障害でない味覚障害例に対しては亜鉛製薬やビタミンB12 製薬投与や口腔内清潔保持を中心とした治療を施行した. 治療後は両群ともに味覚障害が有意に改善した.今回の結果から, 風味障害例に対しては, 嗅覚障害に起因する障害であることを認識して嗅覚障害に対する治療を重点的に施行すれば味覚障害の改善が得られるものと考えられる. その一方で, 嗅覚障害を合併する検査的味覚障害例に対しては, 適切に味覚検査を施行して風味障害と鑑別し, 嗅覚障害に対する治療と同時に味覚障害に対する治療を原因に応じて適切に施行することが重要と考えられる.
著者
小林 正佳
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.246-251, 2014-07-25 (Released:2018-02-13)
参考文献数
26
被引用文献数
4 3

嗅覚はにおいを感じる化学感覚で,これに異常が生じた状態を嗅覚障害という.嗅覚障害は量的障害と質的障害に分類され,量的障害には低下と脱失があり,質的障害には異嗅症,嗅盲,嗅覚過敏,その他(悪臭症,自己臭症,幻臭,鉤回発作)がある.嗅覚障害は障害発生部位に基づいて呼吸性,嗅粘膜性,混合性,末梢神経性,中枢性の5つに分類される.嗅覚障害の原因疾患は慢性副鼻腔炎,感冒,頭部外傷の順に多く,これらを嗅覚障害の三大原因という.嗅覚障害の有病率は米国で人口の1〜3%であるが,日本ではまだ調査報告がなく,不明なので今後の疫学調査が望まれる.
著者
西田 幸平 小林 正佳 足立 光朗 中村 哲 大石 真綾 坂井田 寛 今西 義宜 間島 雄一
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.107, no.6, pp.665-668, 2004-07-20 (Released:2008-12-15)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

我々の経験した先天性嗅覚障害の2症例を報告する.症例1:13歳女児.症例2:10歳男児.ともに生来においを感じられたことがなく,近医耳鼻咽喉科より当科へ紹介された.嗅裂部を含む鼻副鼻腔所見は両側とも正常であった.基準嗅力検査.静脈性嗅覚検査の結果は共にスケールアウトであった.頭部MRI所見で嗅球,嗅索,嗅溝の低形成が認められた.性腺機能をはじめ,内分泌機能は正常であった.症倒2は先天性小眼球症で全盲状態であった.この例で嗅裂部粘膜生検を施行したが,嗅細胞は認められなかった.今回の2例は性腺機能異常を認めないタイプの先天性嗅覚障害であった.先天性嗅覚障害の診断にはMRIが最も有用であった.
著者
小林 正佳
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.37-48, 2012
参考文献数
16
被引用文献数
1

交通事故などで生じる頭部外傷は、副鼻腔炎、感冒とともに嗅覚障害の三大原因のひとつであり、他の原因と比較して嗅覚の予後が悪い。本来嗅神経には他の脳神経よりも強い再生能力が備わっているにもかからわず、外傷性嗅覚障害の予後成績がよくないのはなぜか?これを突き止めるために外傷性嗅覚障害モデルマウスを用いて予後因子の探究と予後改善のための治療研究を施行した。嗅神経の確認が容易なOMP-tau-lacZマウスを用い、2種類のカッターを使い分けて嗅神経を切断して軽傷と重傷の外傷性嗅覚障害モデルを作製し、篩板-嗅球創部の傷害組織の所見、局所炎症の程度、嗅神経の再生度を比較検討した。その結果、外傷性嗅覚障害の予後は局所炎症の程度に依存し、外傷後早期に積極的な消炎治療を施行すれば、外傷性嗅覚障害の予後成績を改善できる可能性が示唆された。消炎治療薬として抗IL-6受容体抗体はステロイドよりも副作用が少なく、実際に臨床応用できる外傷性嗅覚障害の有効な治療薬の候補であると考えられる。
著者
小林 正佳
出版者
日本鼻科学会
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.77-79, 2013 (Released:2013-05-01)
著者
小林 正佳
出版者
天理大学人間学部総合教育研究センター
雑誌
総合教育研究センター紀要 (ISSN:1347975X)
巻号頁・発行日
no.9, pp.58-63, 2010

1年間の台湾滞在で一番思い出深いのは,今回も「日本語劇」だった。みんなが参加してくれるきっかけになったのは天理大学生の中国語劇台湾公演で,4 0人以上の学生が集まった。劇のスタイルは能狂言とギリシャ劇が手本。あくまで日本語学習の中での劇だから,正しい日本語をきちんと話すことを目指した。台詞はできる限り完結した文章の形の丁寧語で書き,演技にスタイルは,日常的な会話調より定型化された様式を採用した。大きな声での発声を重視したが,日本語らしいイントネーションを生み出す仕掛けとして,「発音」というより「発声」に注意を向けさせることはよいきっかけになる。天理大学と文化大学両校の学生が一緒に演じるという夢を実現するためにも,日本語劇が再び恒例の伝統行事となってくれたら嬉しい。1年間の台湾滞在で一番思い出深いのは,今回も「日本語劇」だった。みんなが参加してくれるきっかけになったのは天理大学生の中国語劇台湾公演で,4 0人以上の学生が集まった。劇のスタイルは能狂言とギリシャ劇が手本。あくまで日本語学習の中での劇だから,正しい日本語をきちんと話すことを目指した。台詞はできる限り完結した文章の形の丁寧語で書き,演技にスタイルは,日常的な会話調より定型化された様式を採用した。大きな声での発声を重視したが,日本語らしいイントネーションを生み出す仕掛けとして,「発音」というより「発声」に注意を向けさせることはよいきっかけになる。天理大学と文化大学両校の学生が一緒に演じるという夢を実現するためにも,日本語劇が再び恒例の伝統行事となってくれたら嬉しい。
著者
小林 正佳 今西 義宜 石川 雅子 西田 幸平 足立 光朗 大石 真綾 中村 哲 坂井田 寛 間島 雄一
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.986-995, 2005-10-20
被引用文献数
5 9 3

嗅覚障害の治療としてステロイド薬の点鼻療法が一般的に行われているが, 治療が長期にわたる症例も多くその副作用が懸念される. ステロイド薬点鼻療法長期連用に関してその安全性を有用性と比較して検討した報告はない. そこで今回は当科嗅覚味覚外来で同療法を施行した患者を対象にこの比較検討を施行した.<BR>0.1%リン酸ベタメタゾンナトリウム液 (リンデロン液®) の点鼻療法を施行した62例中42例 (68%) に点鼻開始後1~2カ月で血清ACTHまたはコルチゾール値の低下が出現したが, 異常な理学的所見や自覚的症状は認められなかった. 点鼻療法を中止した8例は全例1カ月後にそれらの値が正常範囲内に回復した. 一方, 同療法を継続した34例中4例で開始後2~5カ月で自覚的な顔面腫脹感, 顔面の濃毛化というステロイド薬のminor side effectが出現したが, 中止後1カ月ですべての症状が消失した. 同療法のみを3カ月以上継続した23例の治療効果は, 自覚的嗅覚障害度, 基準嗅力検査上ともに統計学的に有意な改善がみられ, 日本鼻科学会嗅覚検査検討委員会制定の嗅覚改善評価法でも78%例で何らかの改善判定が得られた.<BR>ステロイド薬点鼻療法の長期連用は軽度で可逆的な副作用を生じ得る. 一方, 嗅覚障害の治療効果は高い. よって同療法は有用な嗅覚障害の治療法であり, 臨床的必要性に応じて十分な注意の下に長期連用することは可能と考えられる.