著者
舟生 日出男 加藤 浩
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.309-319, 2010

近年,卒業論文や修士論文の研究課題を設定する能力が低い工学系の学生が増えている.そこで本研究では,「課題の設定に関わる力」の効力感を高めるために,CSCLシステム「ProBo」を取り入れて,「協調的調査活動」をデザインし,大学院の授業の中で実践した.協調的調査活動とは,A)先行研究とそれに関連する文献を調査し,その研究の特徴として,位置づけや実現している範囲について吟味し,ドキュメントとしてまとめ,B)ドキュメントについての相互閲覧や質疑応答,発表,それらの結果を踏まえたドキュメントの改善を行う活動である.自己評価や相互評価,質問紙調査の結果,学生の多くは実践を通して,情報活用能力とプレゼンテーション能力について,効力感が得られたことが明らかになった.また,相互にドキュメントを閲覧したり,質疑応答することの有効性についても,多くの学生に認められた.
著者
阿部 裕子 楠本 誠 久保田 善彦 舟生 日出男 鈴木 栄幸 加藤 浩
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.141-144, 2012
参考文献数
6

本研究は,「ごんぎつね」のクライマックス場面のマンガを,Voicing Boardで作成した.マンガ作成による視覚化と,児童の情景及び心情理解との関連を明らかにすることが,研究の目的である.その結果,以下のことが示唆された.物語の語り手の視点にある登場人物の心情は,マンガ作成の有無にかかわらず,理解しやすい.語り手の視点にない登場人物の心情は,マンガの作成を通してその視点が獲得できるため,理解が向上しやすい.複数の構図を想定できる場合は,情景理解が曖昧になり,マンガ作成による心情理解の効果を得にくい.
著者
久保田 善彦 舟生 日出男 鈴木 栄幸
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.449-452, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
8
被引用文献数
3

現代社会は,気候変動やパンデミック,原子力発電に関連する問題など,科学に関連する複雑な問題が多い.それらに対し市民が意思決定をするには,日常的に得られる科学的主張の信頼性について評価する「科学メディアリテラシー」が必要になる.科学者が科学的主張を生み出し,市民が認知するまでの過程を,生産・伝達・消費 (認知) に分け,信頼性を評価する観点から検討した.検討結果から,科学的主張の生産・伝達・消費を俯瞰し,その信頼性を評価するためのチェックリストを開発した.チェックリストは,生産4項目,伝達2項目,消費1項目で構成される.今後は,この案をベースに実践を行い,チェックリストの一般化を目指す.そのために,実践の方法やなじみのない用語を解説する教材の開発等を検討する必要がある.
著者
松峯 笑子 舟生 日出男 鈴木 栄幸 久保田 善彦
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.103-108, 2021-12-19 (Released:2022-01-20)
参考文献数
5
被引用文献数
1

我々の身の回りは科学に関連する情報で溢れているが,全ての科学情報が正しいとは限らない.より良い意思決定のためには,科学ニュースを正確に読み取る科学メディアリテラシーが必要であるが,未だ注目されていない.それを受けて筆者らは,「科学メディアリテラシーを俯瞰するチェックリスト」を活用した教育実践をデザインし,少人数を対象として試験的に実施した.そこで挙がった改善点から,今回より多くの学生を対象として,チェックリストが科学ニュースの評価に与える影響を確かめた.実践の結果,チェックリストが,科学ニュースを評価する際の批判的視点を持つ指標となり,科学ニュースの評価に影響を与えることが分かった.また,科学やメディアの認識が低く,事例を肯定的に捉える学生がチェックリストを使用したタイミングで批判的視点を持っていたことから,科学ニュースを正確に読み取るために必要な認識の補助的な役割を果たしていると考えられる.
著者
鈴木 栄幸 舟生 日出男
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.42-55, 2002-03-10 (Released:2017-06-30)
参考文献数
8
被引用文献数
4

In this paper, we focus on the "Question-Answer" function of SOUTO ; a hypermedia authoring system, and classroom activities where learners make hypermedia compositions with SOUTO and discuss their compositions with the function mentioned above. Field tests of the system reveal that ; 1 . The Question-Answer function reconfigures social relationships in the classroom and thus creates a foundation for collaborative learning, 2 . The Question-Answer function creates a field of informal talk, 3 . The SOUTO system provides a foundation on which both formal and informal talks are constituted and woven together, and thus, enables transition between them. Based on these findings, we suggest that educational systems should be designed as mediators which hybridize school-like activities and non-school-like activities.
著者
望月 俊男 佐々木 博史 脇本 健弘 加藤 浩 鈴木 栄幸 久保田 善彦 舟生 日出男
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、多様な人々が関わる問題解決場面における効果的な対話的コミュニケーションスキルを育成する学習環境の開発を最終目的とする。その教育方法としてのロールプレイをより効果的に実施するため、演技全体を見渡す俯瞰視点だけではなく、特定のアクターの視点(他者視点)から対話的コミュニケーションを振り返り、吟味できる3次元リフレクション支援システムを開発した。また、その教育方法を教師教育の授業実践において検討・開発した。授業実践を通して、他者視点と俯瞰視点を往還する中で、他者視点があったほうが、各立場を意識しリフレクションが促され、対話的コミュニケーションを深く検討できるようになることが見いだされた。
著者
脇本 健弘 佐々木 博史 平山 涼也 望月 俊男 Eagan Brendan 結城 菜摘 舟生 日出男 久保田 善彦 鈴木 栄幸 加藤 浩
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.309-324, 2023-06-20 (Released:2023-07-14)
参考文献数
38

本研究は,タンジブル人形劇によるマイクロティーチング支援システム「えでゅーすぼーど」の教師の専門性向上への有効性を検討したものである.本研究では,教員養成課程において実施された「えでゅーすぼーど」を用いたマイクロティーチングにおける学生の談話を分析した.学生は3回のマイクロティーチングに取り組み,2回目に「えでゅーすぼーど」を用いた人形劇によるマイクロティーチングを体験した.学生の談話をEpistemic Network Analysis により分析し,特徴的な変化を抽出し,さらに質的な分析を行った.その結果,「えでゅーすぼーど」を用いた人形劇によるマイクロティーチングでは,教師役の学生が児童役の学生の学習を深めるとともに,授業を円滑に進めるために即興的な働きかけを行っていたことが示された.
著者
鷹岡 亮 光原 弘幸 瀬戸崎 典夫 舟生 日出男
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.283-294, 2021-12-20 (Released:2022-03-18)
参考文献数
41

ネットワーク,クラウドコンピューティング,AI,IoT,ロボティクスといった先端技術の著しい進展に伴い,社会全体でのデジタル化が急速に進んでいる.このデジタルデータとデジタル技術はこれからの新しい社会を構成する中心的な要素となり,これらの技術を駆使して新たな価値を産み出していくことが求められている(経済産業省 2021).教育の世界においても,教育データやデジタル技術を活用したデジタル化のみならず,教育サービスや教育モデル,さらには新しい時代に適した教育に変革していくための教育DX の推進が求められている.そこで本稿では,この教育DX を実現するために,初等中等教育を対象にして,新たな教育(学習)モデルやサービスの変革や拡張を創りだす学習支援技術・授業支援技術の動向と今後の展望について解説する.特に,VR/AR/MR 技術と技術活用事例,そして協調学習支援技術に焦点をあてて説明を展開する.
著者
大黒 孝文 山本 智一 出口 明子 竹中 真希子 黒田 秀子 舟生 日出男
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.29-32, 2019-06-01 (Released:2019-05-29)
参考文献数
13

本研究では,教員に協同学習の指導力を付けることを目的に,教員研修及び教員養成課程において使用するマンガケースメソッド学習プログラム:ジグソー編を開発し評価を行った.学習プログラムは,現在マンガケースメソッド教材とテキストが完成している.兵庫県内の国立大学法人に通う中学校高校理科教員志望大学生43名を対象に3時間の授業において実験研究を行った.評価の内容は,学習プログラムの使用感や有効性とジグソー学習に対する関心・意欲に関する質問紙調査であった.評価の結果,すべての項目において有意に肯定的な評価を得た.以上から本プログラムの有効性が示唆された.
著者
山口 悦司 舟生 日出男 出口 明子 稲垣 成哲
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.391-392, 2010

筆者らは,iPhone/iPod touchの環境で運用できるデジタル運勢ラインシステムを開発している.本研究では,同システムの試験的評価として,大学院生を対象とした実験授業を実施し,大学院生への面接調査を通して,iPhone/iPod touch版システムとして新たに生じると考えられるユーザインターフェース上の利点や問題点を明らかにした.その結果,小さくて,軽いデバイス上で同システムを利用すること,マルチタッチ入力のデバイス上で同システムを利用すること,1人1台のデバイス環境で同システムを利用することの利点や問題点が明らかとなった.
著者
出口 明子 舟生 日出男 山口 悦司 稲垣 成哲
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.35-38, 2003
参考文献数
13
被引用文献数
4

筆者らは,再構成型コンセプトマップ作成ソフトウェアの開発に取り組んできている.本稿では,ユーザーのニーズを反映しながら2003年度に行ってきたソフトウェアの機能拡張について報告するとともに,カラーパレットの色数を増加した最新バージョンを紹介する.
著者
久保田 善彦 鈴木 栄幸 舟生 日出男 加藤 浩 西川 純 戸北 凱惟
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.11-19, 2006-01-31
被引用文献数
14

子どもたちが理科の授業において,科学者が実践するのと同じように「科学する」にはコミュニティの存在が必要不可欠である。小学校の実験室という限られた空間において同期型CSCLを用いることで,コミュニティの変容と,そこでの科学的実践を考察した。同期型CSCLであるKneading Board(通称KB)の利用によって,これまであまり見られなかった実験中の活動班の相互作用が緊密になった。それによって,お互いをリソースとした学習活動やコミュニティに共通する基準の設定などが行われ,教室全休がコミュニティとして機能していった。また,コミュニティ内では,実験班間の競争,データの正当性や信頼性の確保,批判的な検討,評価基準の作成,基準の運用などの科学的実践が行われていた。同期型CSCLを小学校の理科実験で活用することは,コミュニティへの参加を促し,そこでの科学的実践の支援に有効だといえる。
著者
山口 悦司 稲垣 成哲 舟生 日出男 疋田 直子
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.15-28, 2002-11-15
被引用文献数
23

筆者らは,再構成型コンセプトマップ作成ソフトウェアを開発している。ソフトウェアの特徴的な機能は,次の2点である。(1)再生機能:コンセプトマップの作成過程を自動的に保存し,作成途中でも随時,その作成過程を再生することができる,(2)修正機能:作成過程の任意の時点までアンドゥすることによって遡り,修正できる。本研究の目的は,小学校の理科授業へソフトウェアを導入し,ユーザーインタフェースの有効性や再生機能の内省や対話支援の有効性について実践的に検討することであった。児童39名を対象とした質問紙調査の結果を通して,ソフトウェアの使用感のよさや操作性は高く評価されたことがわかった。また,再生機能の有効性についても,ある程度認められていたことがわかった。教師2名を対象とした面接調査の結果からは,ソフトウェアの再生機能は教師の学習指導や子どもたちの学習を概ね支援できていたと評価されたことがわかった。再生機能利用場面の相互行為分析では,再生機能が子どもたちの学習内容に関わる思考過程の内省や対話を支援していることが授業の文脈に即して例証された。これらの結果を考察することで,本ソフトウェアの実践的な評価や今後の課題が議論された。