著者
小瀬 航 鈴木 栄幸
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.91-94, 2016 (Released:2018-04-07)
参考文献数
5

本研究では、大学生を対象とした説明的文章の読解方略の現状を調査するとともに、先行研究をもとにその現状を改善するための読解手法を提案する。まず、大学生を対象に読解学習の実態調査を行い、説明的文章読解において文章全体の構造を把握する作業(=構造注目方略)が不十分であるという知見を得た。この結果を踏まえ、文章全体の構造に注目させるための手法として「タイトル生成法」を提案した。大学生対象に実践したところ、記憶レベルでの理解度には有意傾向の差が見られたものの、状況モデルレベルでの理解度では差が見られなかった。今後、実践の具体的方法を見直し、改善を施した上で再度実践を行う予定である。
著者
鈴木 栄幸 加藤 浩 伊東 祐司
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.9-10, 1993-03-01

筆者らは、教育におけるコンピュータを「教えるための道具」としてではなく、学習者の思考や話し合い等を支援し促進する「活動のための道具」として位置づけている。本稿では、筆者らが開発した教育用のプログラム言語「アルゴブロック」を取り上げ、その概要・特徴を述べるとともに、思考・共同作業の道具としての適格性について、利用実験の結果を交えながら考察する。
著者
望月 俊男 佐々木 博史 脇本 健弘 平山 涼也 久保田 善彦 鈴木 栄幸
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.319-331, 2013-11-20 (Released:2016-08-10)

ロールプレイはさまざまな分野の学習において,学習者の視点の拡大や転換を促進する強力な学習方法として知られている.本稿では,とくに複雑で非構造的な(ill-structured)問題状況下におけるコミュニケーションや意思決定についてロールプレイする上で,対面協調学習の中で人形劇を使うことで,これまでにない多様な視点からの洞察を促す可能性について議論する.複数の人形を操作して人形劇をすることで,演者である参加者と,直接演じている人形との間の心理的距離を作り出すとともに,多様な役割で演技をしやすくすることができる.本稿ではこれを理論的に示した後,人形劇のロールプレイによって演者がより現実的な状況を再現するように様々な役割を演じることを事例研究から示した.そして,そうした人形劇をロールプレイの媒介として利用する上で,学習支援テクノロジの可能性について議論した.
著者
阿部 裕子 楠本 誠 久保田 善彦 舟生 日出男 鈴木 栄幸 加藤 浩
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.141-144, 2012
参考文献数
6

本研究は,「ごんぎつね」のクライマックス場面のマンガを,Voicing Boardで作成した.マンガ作成による視覚化と,児童の情景及び心情理解との関連を明らかにすることが,研究の目的である.その結果,以下のことが示唆された.物語の語り手の視点にある登場人物の心情は,マンガ作成の有無にかかわらず,理解しやすい.語り手の視点にない登場人物の心情は,マンガの作成を通してその視点が獲得できるため,理解が向上しやすい.複数の構図を想定できる場合は,情景理解が曖昧になり,マンガ作成による心情理解の効果を得にくい.
著者
久保田 善彦 舟生 日出男 鈴木 栄幸
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.449-452, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
8
被引用文献数
3

現代社会は,気候変動やパンデミック,原子力発電に関連する問題など,科学に関連する複雑な問題が多い.それらに対し市民が意思決定をするには,日常的に得られる科学的主張の信頼性について評価する「科学メディアリテラシー」が必要になる.科学者が科学的主張を生み出し,市民が認知するまでの過程を,生産・伝達・消費 (認知) に分け,信頼性を評価する観点から検討した.検討結果から,科学的主張の生産・伝達・消費を俯瞰し,その信頼性を評価するためのチェックリストを開発した.チェックリストは,生産4項目,伝達2項目,消費1項目で構成される.今後は,この案をベースに実践を行い,チェックリストの一般化を目指す.そのために,実践の方法やなじみのない用語を解説する教材の開発等を検討する必要がある.
著者
葛岡 英明 加藤 浩 鈴木 栄幸 久保田 善彦 山下 淳
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

平成22年度はまず、柏崎中学校において授業を実施した。生徒を、提案システムを利用した実験群と、提案システムからCG映像を削除した統制群に分け、それぞれの群にプレテストとポストテストを実施した。その結果、地球の自転の理解に関して、実験群の点数の上昇が、統制群の点数の上昇よりも有意に高い傾向があることがわかった。しかし、学習の様子を観察した結果、システムには、俯瞰視点(学習者がタンジブル地球儀を見る視点)と地上視点(地上から空を見上げた状況をCGによって合成した映像)を結びつけることが困難であるという問題点があるという知見を得た。そこで、俯瞰視点と地上視点を結びつける補助として、天球映像を提示することを考案した。これは、半球をスクリーンとして利用し、上部からプロジェクタで太陽の動きを投影する装置である。この装置の有効性を確認するために、被験者を、装置を利用した実験群と利用しない統制群の2群に分けて比較実験をおこなった。プレテストとポストテストによって評価をおこなったが、提案した装置の有効性を示すことはできなかった。被験者の感想や実験の様子を観察した結果、天球映像をあまり参照しない学習者が多いことがわかった。この問題を改善するためには、学習課題や学習のためのインストラクションを見直して、それぞれの装置の機能や目的を意識して学習できるようにする必要がある。また、学習の様子をより詳細に分析し、天文学習において何が問題となっているのかということに対する理解を深める必要がある。
著者
松峯 笑子 舟生 日出男 鈴木 栄幸 久保田 善彦
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.103-108, 2021-12-19 (Released:2022-01-20)
参考文献数
5
被引用文献数
1

我々の身の回りは科学に関連する情報で溢れているが,全ての科学情報が正しいとは限らない.より良い意思決定のためには,科学ニュースを正確に読み取る科学メディアリテラシーが必要であるが,未だ注目されていない.それを受けて筆者らは,「科学メディアリテラシーを俯瞰するチェックリスト」を活用した教育実践をデザインし,少人数を対象として試験的に実施した.そこで挙がった改善点から,今回より多くの学生を対象として,チェックリストが科学ニュースの評価に与える影響を確かめた.実践の結果,チェックリストが,科学ニュースを評価する際の批判的視点を持つ指標となり,科学ニュースの評価に影響を与えることが分かった.また,科学やメディアの認識が低く,事例を肯定的に捉える学生がチェックリストを使用したタイミングで批判的視点を持っていたことから,科学ニュースを正確に読み取るために必要な認識の補助的な役割を果たしていると考えられる.
著者
鈴木 栄幸 加藤 浩 佐々木 真理
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.93(1996-CE-041), pp.33-40, 1996-09-20

本報告では、プログラミング協同学習ソフトウェア「あるごありーな」を利用した実験授業のインタラクション分析結果について述べる。「あるごありーな」は、プログラミングを含むソフトウェア作成技術育成を目的とした対戦型相撲シミュレータである。学習者は、力士の動きをプログラム言語を使ってプログラムし、他人の力士と対戦させる。対戦を活動の中心におくことは、強い力士を作ることを共通に志向する実践共同体の形成を支援する。この共同体の中で生徒らは自分の位置、すなわちアイデンティティを確立するともに、ソフトウェア作成技術を身につけていくのである。ビデオ分析結果により、「あるごありーな」が生徒らによるプログラミングの実践共同体の形成・維持を支援すること、学習はその共同体内でのアイデンティティの変容過程として捉えられることが示された。
著者
鈴木 栄幸 舟生 日出男
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.42-55, 2002-03-10 (Released:2017-06-30)
参考文献数
8
被引用文献数
4

In this paper, we focus on the "Question-Answer" function of SOUTO ; a hypermedia authoring system, and classroom activities where learners make hypermedia compositions with SOUTO and discuss their compositions with the function mentioned above. Field tests of the system reveal that ; 1 . The Question-Answer function reconfigures social relationships in the classroom and thus creates a foundation for collaborative learning, 2 . The Question-Answer function creates a field of informal talk, 3 . The SOUTO system provides a foundation on which both formal and informal talks are constituted and woven together, and thus, enables transition between them. Based on these findings, we suggest that educational systems should be designed as mediators which hybridize school-like activities and non-school-like activities.
著者
望月 俊男 佐々木 博史 脇本 健弘 加藤 浩 鈴木 栄幸 久保田 善彦 舟生 日出男
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、多様な人々が関わる問題解決場面における効果的な対話的コミュニケーションスキルを育成する学習環境の開発を最終目的とする。その教育方法としてのロールプレイをより効果的に実施するため、演技全体を見渡す俯瞰視点だけではなく、特定のアクターの視点(他者視点)から対話的コミュニケーションを振り返り、吟味できる3次元リフレクション支援システムを開発した。また、その教育方法を教師教育の授業実践において検討・開発した。授業実践を通して、他者視点と俯瞰視点を往還する中で、他者視点があったほうが、各立場を意識しリフレクションが促され、対話的コミュニケーションを深く検討できるようになることが見いだされた。
著者
鈴木 栄幸 加藤 浩 佐々木 真理
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.93, pp.33-40, 1996-09-20
被引用文献数
1

本報告では、プログラミング協同学習ソフトウェア「あるごありーな」を利用した実験授業のインタラクション分析結果について述べる。「あるごありーな」は、プログラミングを含むソフトウェア作成技術育成を目的とした対戦型相撲シミュレータである。学習者は、力士の動きをプログラム言語を使ってプログラムし、他人の力士と対戦させる。対戦を活動の中心におくことは、強い力士を作ることを共通に志向する実践共同体の形成を支援する。この共同体の中で生徒らは自分の位置、すなわちアイデンティティを確立するともに、ソフトウェア作成技術を身につけていくのである。ビデオ分析結果により、「あるごありーな」が生徒らによるプログラミングの実践共同体の形成・維持を支援すること、学習はその共同体内でのアイデンティティの変容過程として捉えられることが示された。In this paper, AlgoArena system and results of an ethnographic study in an AlgoArena classroom are described. AlgoArena is a Sumo simulator software with which learners can program their own Sumo wrestlers with LOGO-based programming language and can have bouts with the others' wrestlers. The goal of this software is to foster programming ability. AlgoArena supports forming community of learners upon which the collaborative programming learning can be occurred by providing shared place for bouts, shared terms and artifacts to talk about their activities, and shared goal. An ethnographic investigation in the AlgoArena classroom revealed that: AlgoArena supports students to form their community as programmers; students learn programming skills through participating in the community; the process of identity formation in the community is inseparable from the learning process.
著者
鈴木 栄幸 加藤 浩
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1_36-1_47, 1995-02-28 (Released:2008-10-03)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

In this paper, role of computer-based tools is discussed from a standpoint of situated learning theory, which considers learning as a process of enculturation to a community of practice. The authors propose utilizing computer-based tool for supporting collaborative learning and mention AlgoBlock, a tangible programming language developed by the authors, as an example of computer-based tools for facilitating learners' conversation and cooperation.AlgoBlock is a set of physical blocks. Each block corresponds to a command of a Logo-like programming language, therefore, learners can connect those tangible blocks manually to form a program and they can share commands and programs on physical work space. It works as an open tool that enables learners to monitor each other's intention, and to make use of eye lines and body movements as resources for collaboration control, thus this tool supports social interaction among learners. By using this tool within adequate classroom settings, the authors believe, learners can improve their skills for programming and logical thinking through conversation and cooperation. To show the positive effect of the tool on learners' collaboration, the result of observational sessions, in which elementary students engaged in group programming works using AlgoBlock, is described.
著者
脇本 健弘 佐々木 博史 平山 涼也 望月 俊男 Eagan Brendan 結城 菜摘 舟生 日出男 久保田 善彦 鈴木 栄幸 加藤 浩
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.309-324, 2023-06-20 (Released:2023-07-14)
参考文献数
38

本研究は,タンジブル人形劇によるマイクロティーチング支援システム「えでゅーすぼーど」の教師の専門性向上への有効性を検討したものである.本研究では,教員養成課程において実施された「えでゅーすぼーど」を用いたマイクロティーチングにおける学生の談話を分析した.学生は3回のマイクロティーチングに取り組み,2回目に「えでゅーすぼーど」を用いた人形劇によるマイクロティーチングを体験した.学生の談話をEpistemic Network Analysis により分析し,特徴的な変化を抽出し,さらに質的な分析を行った.その結果,「えでゅーすぼーど」を用いた人形劇によるマイクロティーチングでは,教師役の学生が児童役の学生の学習を深めるとともに,授業を円滑に進めるために即興的な働きかけを行っていたことが示された.
著者
森 拓哉 鈴木 栄幸
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.33-36, 2014 (Released:2018-04-07)
参考文献数
4

本研究ではTwitterとNAVERまとめを用いたノートテイキング手法を提案し、評価実験を行った。評価実験では大学生の2グループに紙ノート使用(以降、紙群)とTwitter・NAVERまとめ使用(以降、Twitter群)の2条件で講義ノートを作成させ、授業後、確認テストを実施した。その結果、講師の印象的な発言を挙げる問題と講義で紹介された5つの事例(理論)を挙げる問題においてTwitter群が紙群よりも得点が高いことが確認できた。被験者が構成したノート内容を比較したところ、Twitter群のノートは紙群と比較して①情報量が多いこと、②自身の理解プロセスの再構成になっていること、が確認された。
著者
鈴木 栄幸 加藤 浩
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.196-215, 2008-09-10 (Released:2017-06-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1

This paper describes the concept of a Manga-based thinking method and discusses the results of the field tests of the method. A Manga-based thinking method is a method to encourage participants to scrutinize their presentation from the various viewpoints of related people. According to this method, learners are asked to represent the message of their presentation in the form of a Manga and then reflect on their messages by examining the Manga. It is expected that this method will support learners in grasping the social network of related people through envisioning all the related people's voices since Manga are comprised of spatially located actors who have their own words. The three field tests suggest that Manga-based thinking makes learners' thoughts more actor-oriented resulting in the method expanding learners' understanding about networks of related people and their presentations.
著者
加藤 浩 井出 有紀子 鈴木 栄幸
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.2497-2507, 1999-05-15
被引用文献数
5

プログラミングの導入レベルから反復や条件分岐などの基本的制御構造を使いこなせるレベルまでの初歩的アルゴリズム教育の支援を想定した相撲対戦シミュレーションゲーム「アルゴアリーナ」を開発した. 学習者は力士の挙動や戦略をプログラム言語で記述し 他者のプログラムした力士と対戦させる. 1つで多くの相手に勝てるような強く柔軟な力士を作るためには 高いプログラミング技能が要求されるので ゲームを楽しみながらプログラミングを学習することができる. しかも 学習者が行うのは 状況分析 問題設定 評価などを含むトータルな問題解決活動であるため 包括的なプログラミング技能の向上が期待できる. 本システムの特徴は 状況的学習理論に基づき 対戦ゲームという社会的状況設定を利用して プログラミングを実践する学習のコミュニティを構築し それへの参加による学習を実現するために 学習者のコミュニテイの創造・維持を志向した学習環境デザインを行っていることである. 授業実践を2つの公立中学枚で行った結果 アルゴリズムの基本的制御構造が学習できていることが明らかになった. さらに 特定の生徒を授業全体にわたってビデオ録画し エスノメソドロジー的観点から言動を分析することによって 学習者が次第にプログラマ的アイデンティティを発達させていることが明らかになった. これは「コミュニティへの参加による学習」が生起していることの証左となる.A Sumo wrestling simulation game 'AlgoArena', aiming at basic computer programming education for novices, was developed. A learner is supposed to write a program implementing a wrestler's tactics so that he/she can enjoy the game with colleague. The learner is required, to become skillful in comprehensive programming, which includes analysis, planning, evaluation, as well as program writing, if he/she wants to elaborate flexible and strong program enough to beat some others. We developed a community-oriented method for designing learning environment based on situated learning theory, in which social setting as a bout game was applied to construct a learner's community of practice in order to accomplish learning by participation. We conducted two experiments to examine how well they learned programming at two municipal junior high schools. As the results, it turned out that learners in both schools were highly motivated and successfully acquired the knowledge of basic control structures. In addition, we also conducted a participatory observation at one of the junior high schools to investigate how learners develop their identity in the community of programming practice. An ethnomethodological analysis revealed that the learners gradually develop their identity as a programmer, which endorses the occurrence of learning by participation.
著者
久保田 善彦 鈴木 栄幸 舟生 日出男 加藤 浩 西川 純 戸北 凱惟
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.11-19, 2006-01-31
被引用文献数
14

子どもたちが理科の授業において,科学者が実践するのと同じように「科学する」にはコミュニティの存在が必要不可欠である。小学校の実験室という限られた空間において同期型CSCLを用いることで,コミュニティの変容と,そこでの科学的実践を考察した。同期型CSCLであるKneading Board(通称KB)の利用によって,これまであまり見られなかった実験中の活動班の相互作用が緊密になった。それによって,お互いをリソースとした学習活動やコミュニティに共通する基準の設定などが行われ,教室全休がコミュニティとして機能していった。また,コミュニティ内では,実験班間の競争,データの正当性や信頼性の確保,批判的な検討,評価基準の作成,基準の運用などの科学的実践が行われていた。同期型CSCLを小学校の理科実験で活用することは,コミュニティへの参加を促し,そこでの科学的実践の支援に有効だといえる。